エリオSS「夢の続き」



SS仕様書
メインキャラ:エリオ・ストラーダ
話数:短編・1話完結
カラー:シリアス トーン:少し暗め?
カップリング:エリオxキャロ
備考:ストラーダ人間形態あり、エリキャロと言いつつキャロ出番無し
  
 
 
 
今の生活は、まるで夢のように幸せで、幸せすぎて、朝 目を覚ますのが怖くなる時がある。
目を覚ましたら自分は六課の隊舎ではなくて、あの研究施設の、清潔だけど何の暖かみもない白くて冷たい部屋で目を覚ましそうな気がして怖い。
そんな時はいつもベッドの中で体を丸めて、ギュッと目を瞑って目覚まし時計のベルが鳴るのを待つ。
あの白い部屋には、目覚まし時計なんて無かったから、だからベルの音がすれば六課の自分の部屋で目を覚ますことができるから・・・。
ストラーダに声を掛ければ、きっと応えてくれるだろう。
でも、あの忠実な相棒も、今の夢のような生活の中で出会った物だ。
だから、彼に声を掛けて何のいらえもなければ、夢が夢だという証拠になってしまう。
(自分でも子供っぽいと思うけど・・・)
それでも怖いのだ。今の生活を喪うことが・・・。
だからひたすら待ち続ける、夢の生活が始まる合図を。
 
普段ならそのまま待っていれば、いつかはベルの音がして安堵の溜息を吐きながら身支度を調えるのだが、今日は違った。
ベッドの中で丸まっているエリオを、小さな手がゆさゆさと揺さぶる。
「主エリオ、起きて下さい。急がないと早朝訓練に遅れてしまいます」
どこかで聞いたような、でも聞いたことのないような声にエリオは驚いて跳ね起きる。
ベッドの傍に小さな人影があった。
年齢はヴィヴィオと同じくらいだろうか?身長もあまり変わらなさそうだ。
エリオと同じデザインのバリアジャケットに身を包み、背中まで伸びた深い紺色の髪は首の後ろで一つに纏められている。
整った顔立ちは、どこかで見たような気がするが思い出せない。
「・・・だ、誰?」
呆然としつつ聞いてみる。
「ストラーダです」
にっこりと満面の笑みを浮かべて少年が答える。
「えっと・・・僕、まだ寝ぼけてる?」
「二度寝している余裕なんてありませんよ? ほら見て下さい」
ポンッ と軽い音と共に少年の体が煙に包まれ、次の瞬間にはストラーダの待機状態である腕時計が煙の中から現れる。
文字盤に表示されている時間は・・・・
「・・・! あ、あと十分で訓練開始ッ!?」
<だから急いで下さいと言ったんです>
「な、何で目覚ましが鳴らなかったんだ? 寝ぼけて止めちゃった?」
大あわてで訓練着を取り出し、寝間着を脱ぎながら確認する。
<故障か、さもなければ電池切れのようですね。時刻は03:56で止まっています>
「ゆ、昨夜見た時は普通に動いてたのに・・・!」
いくら恨み言を言ってもそれで時間が巻き戻るわけでもなく。
<主、あと五分です>
「うわぁぁぁ!」
大あわてで訓練着に着替えると、浮かんでいたストラーダを引っ掴んで走り出す。
「ま、魔法! 魔法使いたい! ソニックムーブ!!」
<こんな理由で使ったら、怒られますよ?>
「わ、分かってるけど! 全力全開で走るけどぉ〜〜!」
それでも使いたいと思うくらいは良いじゃないか。
「・・ハァ、ハァ・・ストラーダ・・・」
<はい>
「明日も・・・起こしてくれる?」
<もちろんです。いつか貴方が安心して起きられるようになるまで、ずっと・・・>
ありがとう、そう呟くとエリオはさらにスピードを上げる。
その顔は、全力疾走のせいか、それとも照れているのか真っ赤になっていた。
そんな主の顔を見ながらストラーダは声に出さず呟いた。
(いつか、素敵な女性が貴方を起こしてくれるようになるまでは、ですが)
きっとその女性は、柔らかな桃色の髪をして、ちいさな竜を従えていることだろう。
そう遠くない未来の光景を思い、彼は小さく微笑んだ。
 
 
 
 
 
 


後書き
最後までお読み下さって有り難うございます。
どうか最後の一文はツッコミ無しでお願いします。orz
腕時計がどうやったら笑えるんだっての。
不自然なのは分かっているんですが、でもどうしてもあれで締めたかったので・・・。
 
年齢は幼いのに、色々抱えているせいで精神年齢高めなのは、なのはキャラのお約束。
エリオも、研究施設で色々実験されていたようなので、同じ境遇だったアギトと腹を割って話が出来れば、良い友達になれそうなんですが・・・。
今のところ、この2人には接点がありませんからねぇ。
ルーテシア組は条件さえ整えば六課に協力してくれそうな気がするんですが、どうなるのかなぁ。
 
ストラーダの幼児形態。モデルは幼い頃のエリオです。
フェイトが取り溜めていた写真をもとにデザインした、ということで。 
 

スリングさん
スリングの雑記帳




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