修羅場暴風注意報




管理局本局巨大データーベース無限書庫。
本日、無限書庫に修羅場暴風注意報 が発令されました。
無関係の人々は、速やかに避難してください。



「というわけで! 実況は私、第三期では、登場すらしないエイミィ・ハラオウンがお送りしますよ〜」
「おい、エイミィ。これは何だ?」
「解説は、空気が読めないことで有名のクロノ・ハラオウンさんです! クロノさん、こんばんは〜」
「あ、こんばんは。…って、余計なお世話だ!」
「さて、我々は今、本局のとある会議室を陣取り、無限書庫をモニターしています!」
「そうだよ! なんで僕たち、こんなところでこんなことしてんだよ!?」
「……実は、本日、無限書庫全域に修羅場暴風注意報 が発令されたんです」
「な!? ほ、本当なのか!?」
「……はい」
「バカな! 早すぎる! 前より早いじゃないか! まだ一年も経ってないんだぞ!」
「ですが、本当なのです。機動六課も本日お休みです」
「な、なんと言うことだ……」
「諦めて解説しようね、クロノくん! では、本日のゲストを紹介しま〜す!」
「……ゲスト?」
「調査協力もしてくれた、アコース査察官と聖王教会・騎士カリムのお二人で〜す!」
「こんにちは、カリム・グラシアです」
「やぁ、クロノ君。今日は同席させてもらうよ」
「ヴェロッサ!? 騎士カリム!? なんでここに!?」
「お二人は調査協力をしてくれたんですよー」
「な!? ……まさか?」
「えぇ、カリムさんが本日のことを予言して、アコースさんが六課を調査してくれたんです!」
「……ヴェロッサ、よく生きてたな」
「さすがに場所が場所だったからね……命懸けの調査だったよ」
「おッ! さっそく第一、第二接触者が現れましたね!」

四人が目を向けるは、巨大モニター。
そこに写るは、果たして何か。
ところ変わって、無限書庫室内。

「オース、ユーノォ!」
「ユーノ、元気してる?」
「ロッテさん、アリアさん、こんにちは。どうしたんですか?」

何十もの本を自分の周りに浮かせ、作業する無限書庫司書長、ユーノ・スクライア。
そのユーノに会いに来た、リーゼロッテとリーゼアリア。
周りを見渡して、ちょっと疑問に思ったことをユーノに聞くアリア。

「今日、司書少ないね。どうしたの?」
「いえ、今日は殆どの人が休暇を申請して休んでるんですよ」
「そうなの? 人手不足なら、私ら手伝うよ〜」
「あ、良いですよ。今日は資料請求もなく、暇なんです」

ロッテの好意をやんわり断るユーノ。
暇と言う割には、働いている僅かな司書たちは忙しそう。
ユーノでさえ、いつもの通り、検索魔法を展開している。
またまた疑問を口にするアリア。

「本当に暇なの?」
「えぇ、暇ですよ。だから今日は、久しぶりに書庫の整理をしようと思いまして」
「あ、だったら、私たちも一緒に手伝ーう!」
「そうね。私たち今日、父様居なくて暇なんだ。だから手伝わせてよ、ユーノ」
「そんな、良いですよ」

またまたロッテたちの好意を笑顔で断るユーノ。
だが、ロッテとアリアも唯では引けない。自分たちの将来のために!
そう意気込み、ユーノに詰め寄るロッテにアリア。

「遠慮するな! ユーノは私たちの次のご主人様なんだから!」
「そうよ、ユーノ! だから何でも命令して!」
「いえ、だから、それは何度も断って……」

ところ変わって会議室モニタールーム。
ユーノの困った顔を見ながら、楽しそうに説明するエイミィ。
それに応える相方、クロノ。

「グリアム元提督がそろそろ寿命らしいんだよね」
「それであの二人は新しいご主人様を探してるところってことか……良いのか?」
「グリアム元提督が、そうしなさいって言ったらしいよ」
「……だが、なんでユーノなんだ?」
「さぁ〜?」
「それについては、僕が調査しといたよ」
「ヴェロッサ。(いつ調査したんだ、こいつ?)」
「何でも、闇の書事件の時から、アリアさんはユーノ先生を気にしていたらしいよ」
「一目惚れってやつだね、クロノくん!」
「あのアリアが一目惚れ? 信じられんのだが…」
「真剣なユーノ先生の横顔に惹かれたと調査で判明しているね」
「……ロッサ?」
「なんだい、カリム?」
「ロッテさんの方は?」
「あぁうん。えーと、事件解決後、彼に迷惑をかけたことを謝りに行ったらしいんだけど…」
「というか、関係者全員に謝りに行ってたよねぇー」
「そーだな。僕らのところにも来たし…」
「その時謝ったら『何で謝るんですか?』と笑顔で返されて困ってしまったらしいんだけど」
「それで?」
「騙してしまったからと言ったらユーノ先生は…」

『そんな、僕は騙されたなんて思ってませんよ。無限書庫でも手伝ってくれたじゃないですか。
 逆にお礼言いたいぐらいですよ。すごく助かりました、ありがとうございます。ロッテさん、アリアさん♪』

「…って、笑顔で」
「…ユーノくんらしいというか、なんというか……」
「それで惚れたわけか?」
「そうみたいだね。ちなみにその時、アリアさんも一緒だったんだけど…」
「一目惚れが、マジ惚れに変わったってことだね!」
「そう言うこと」

そんな会話が繰り広げられている中、画面の向こう、無限書庫では…
ユーノがちょっと困った顔をしていた。
ロッテとアリアは、真剣な表情で、さらに詰め寄る。

「私たちの新しいご主人様は、ユーノしか居ないよ!」
「そーよ、ユーノ。私たちは、あなただから仕えたいと思ったのよ!」
「そ、そんなこと言われましても……ほら、僕、見ての通り、ただの司書ですし…
 ロッテさんもアリアさんも優秀なんですから、僕なんかよりもっと凄い人探した方が良いと思うよ?」
「「………………はぁぁぁ〜…」」
「ど、どうしました?」

同じく会議室で盛大な溜め息をつく四人。
ユーノを知る者ならば解る、あれは本気で言っている顔だ。
そう思って、エイミィは答えがわかりきっている質問を相方にする。

「ねぇ、クロノくん。ユーノくん以上に凄い人、……管理局に居る?」
「……残念ながら存在しないな」
「ユーノ先生、自覚ないんですね〜」
「六課でさぇ、引き抜けなかったと言うのに……」

カリムの言う通り、優秀な人材を各所から集めた機動六課ですら、ユーノを占有することはできなかった。
高町なのは、フェイト・T・ハラオウンといったエースたちを引き抜けたのにである。
時空管理局は、ユーノをそれほどまでに重要視している。
いや、下手したら、時空管理局で一番必要な人物が、ユーノ・スクライアなのだ。
……それなのに、である。
本人にいたっては……別に自分、居ても居なくても変わりなくね? 状態で、まったく自覚なし。

「ねぇ、クロノくん。ユーノくん、いつ自分が凄く優秀なんだって自覚すると思う?」
「……一生こないだろう。そんな自覚があったら、今頃、管理局のトップだ」
「そうなってくれた方が僕たちは、もっと自由に動けるんだけどね…」
「そうですね。聖王教会とも、今よりもっと上手くいきそうですね」

会議室で色々、愚痴にも似た話し合いが行われてる中、無限書庫では…
ロッテとアリアが、書庫整理を手伝い始めていた。
どうやら、今日はもう無理だと諦めたのだろう。
手伝いも、押し切って、ユーノに無理やり了承させたようだ。

「結局押し切られてるね、ユーノくん」
「まぁ、あの二人に押し切られたら、頷くしかないだろうな…」
「あの二人以外にも、押されたら弱そうですけどね、ユーノ先生は…」
「あら? また別の方が来ましたね…」
なに!? もうか!?

クロノが叫びと同時に、画面の向こう、無限書庫に新たに姿を現せる者がいた。
ユーノも、それに気付き、作業していた手を一旦止め、来訪者を迎える。

「すずかにアリサ、こんにちは。…今日はどうしたの?」
「ユーノくん、こんにちは。借りてた本、返しに来たよ♪」
「……私は、すずかの付き添いよ」

来訪者は、なのはの出身世界の友人、月村すずかにアリサ・バニングスだった。
実はこの二人、結構、時空管理局と関わっていたりなんかする。
敷地や物資など、機動六課に援助してたりする(詳しくはサウンドステージ01を聞こう♪)
なので、こうして時々、ユーノの居る無限書庫に顔を出しに来たりする。
重に、すずかが本を借りに来るという名目のもと、結構頻繁にユーノに会いに来ている。
そのことを知っているクロノとエイミィは、モニターを見ながら溜め息をついた。

「……やっぱり来たねー、あの二人」
「あの二人は、時間が空きさえずれば、来るからな…」
「僕もあの女性二人は、本局でよく目にするね。綺麗で目立ちますし…」
「まぁ、あの二人がはやての言っていた親友さんなんですね。今度ゆっくりお話ししたいわ」

カリムが目をキラキラさせている中、モニターの向こう、無限書庫では…
ロッテとアリア同様、同じ疑問を口にする、すずかとアリサ。
同様の質問に、さっきと同じ説明をするユーノ。
すると、すずかがあまり見せない強気な姿勢でユーノに手伝いを申し出る。

「私、今日は大学お休みで暇なんだ! お手伝いしても良いかな!?」
「そんな、悪いって。すずかは気にせず、自分が読みたい本を気楽に探してて良いんだから…」

さっきと同じように、笑顔で遠慮するユーノ。
そこを、なぜか怒った口調のアリサが攻める。

「私たちは手伝いたいって、言ってんのよ! 黙って手伝わせなさい!!」
「…え、あ、うん」
「最初から、そう言えば良いのよ! さ、手伝うわよ、すずか!」
「うん。ありがとう、ユーノくん。私、頑張るね!」
「…うん。すずか、アリサ、……ありがとう」

笑顔でお礼を言うユーノに、頬を赤く染める二人の女性。
一人は、ニコニコ微笑んで誤魔化し、一人は、怒ってそっぽ向いて誤魔化す。
こうして、穏やかな空気の中、書庫整理が再開された。
ところ変わって会議室。

「すずかちゃんもアリサちゃんも、顔真っ赤にして可愛いなー、もう!」
「……なぁ、エイミィ?」
「ん? なぁに、クロノくん?」
「あの二人は、ユーノのどこに惚れたんだ? 今いち解らんのだが…」
「いくらなんでも、そこまでは私も解らないな〜」
「なら僕が話そう」
「なんで知ってるの、ロッサ?」
「愚問だよ、カリム。調査したからに決まってるじゃないかっ」
「……ヴェロッサ。(どう調査したんだよ?)」
「何でも、あの二人、すずかさんにアリサさんは、六課のエースたちとは大の仲良しらしく…」
「あ、それは私もはやてから聞いてるわ」
「小さい頃は、いつも五人で遊んでたらしいね。
 で、いつからか、その中にユーノ先生もよく加わり始めたんだ」
「そうだね。よくなのはちゃんから、一緒に遊ぼうって誘われてたのを見たことあるよ」
「……だが、一緒に遊んだだけで惚れたりするものか?」
「話しはまだ終わってないよ、クロノ君」

ある日、月村家に集まった仲良し五人と、どっかの司書長。
五人の遊ぶ姿を、ちょっと遠くから見てた考古学者に、すずかが輪から抜けて話しかけた。
好きな本の話しから入り、今まで以上に意気投合。結構肩とか接触。
ほんわかラブラブカップルな雰囲気を展開、固有結界化してたりする。
そんな中、楽しそうに遺跡や本の話をする、年相応の少年の意外な素顔を直視。
……すずか、撃沈。普段見られないギャップに、すずかは一瞬で墜落し、白旗を揚げた。

「ほぇ〜、すずかちゃん、ギャップ萌えだったんだ〜」
「そういう言い方するなっ」
「普段は大人っぽいですからね〜、ユーノ先生は…」
「なるほど、そうですか…。……で、アリサさんの方は?」
「あぁ、そうだね。彼女は…」

ある日、喫茶店「翠屋」に呼び出された、どっかの司書長。
アリサは一人で、みんなの代わりに、考古学者に誰が好きなのか尋問を開始する。
渋る、というか取り乱したので、一人一人名前を挙げ、どこが良いか詳しく聞く。
それなら答えられるらしく、すらすら言ってきたので、ついでにと自分のことも聞いてみた。
なんの恥ずかしさもなく、良い所……笑った顔が可愛いと言われたので、思わず凝視。
……アリサ、轟沈。実に嘘のない笑顔で言い切られ、アリサは最速で陥落し、白布を投げた。

「なるほど、反撃をクロスカウンターで返されちゃったのか〜」
「エイミィ、わかるように言えっ」
「基本的に嘘がつけませんからね〜、ユーノ先生は…」
「二人の経緯はわかったのですが、…ロッサ?」
「なんだい、カリム?」
「どう調査すれば、そんなことがわかるの?」
「なに、簡単だったよ。月村家には、監視カメラに当時の映像が残っていましてね」
「監視カメラ!? それに、なんで残ってんだよ!?」
「記念らしいよ。アリサさんの方は、喫茶店の従業員が当時のことをしっかり覚えていたよ」
「も、桃子さん。(というか、こいつ凄く暇なんじゃないか?)
「…あ、また誰かほかの方が来ましたね…」

カリムの言葉に、モニターに目を向ける……が、今度はかなり驚いた。
女性二人に、少女が一人。さらに狼が一匹。
クロノなどは、最大級の音量で叫ぶ。そしてエイミィは危ないことを口走る。

ヴォ、ヴォルケン・リッターだとぉぉぉ!?
さ、三人もっ! ま、まさか、ザフィーラもなのぉぉぉ!?
「落ち着きなよ、2人とも。ユーノ先生に用があるのは一人だけだよ」
「「…………え?」」

見事にハモる、ハラオウン夫妻。それを落ち着かせる査察官。
モニターの向こう、無限書庫では、さっきと同じ問答が行われている。
そして、また押し切られているユーノ。
書庫整理の手伝いを始めるヴォルケン・リッター……と思ったら、少女が一人動かず佇んでいる。
俯いてるのに、顔が真っ赤なのがわかってしまう、モジモジしている少女……ヴィータだ。
彼女にしては珍しい……というか見たことない態度に、シャマルが近づいて背中を押す。
たどたどしい状態で、ユーノの前に来たヴィータの後ろ手には、包みが握られていた。

「ぁ、ぁあぁぁぁあぁのょぅ、ユーノ?」
「ん? なに、ヴィータ?」
「…ぇっと、……は、はら! 腹減ってねぇかっ!?」
「? うん、少し減ってるかな」
「くっ! クッキー、焼いてきたんだけどっ! その……食べるか?」
「うん、頂こうかな。…って、ヴィータが作ったの?」
「あ、あぁ……これ、なんだ、けど…」

沸騰しそうなヴィータは、持っていた包みを、少し驚き顔のユーノに突き出す。
渡された包みからは、大小様々な大きさの動物型クッキー。
ユーノは、とりあえず、包みの中から、カニ? 型のクッキーを取り食べる。
おそるおそる、食べた感想を聞こうとするヴィータ。

「……ど、どうだ? ま、不味いなら不味いって正直に言えよな!?」
「……うん、美味しいよ。このカニ? 型クッキー」
「ほ、本当か!? …って、カニじゃねー、ライオンだ今のっ!!」
「そうなの? でも本当、美味しいよ。ヴィータも食べてみなよ。…ほら、あーん」
「…ぅ……ぁ、あーん。……ぁむ…」
「ね、美味しいでしょ?」
「……ちょっと甘過ぎたな」
「そう? 僕は甘い方が好きだけど…」
「…ん。……まぁ、私も…そうだ、な…」

と、仲良くクッキーを食べ始める二人。
クッキーを食べ終えると、感謝の意を表しているのだろう、ヴィータの頭を撫でるユーノ。
俯き、黙ってしまったヴィータは、でも嬉しそうに撫でられている。
すでにそこには、甘ったるい空気を展開、空想具現化してたりする。
どうやらほかのヴォルケン・リッターは、付き添い(応援)のようだ。
一方、そんな甘ったるさの直撃を受けた会議室はというと…

「……クロノくん、顔赤い…」
「こんな甘ったるさ見せられりゃ、赤くなりもする!!」

……万年バカップル夫婦が、顔を赤くしていた。
だが…と、本当に意外な顔をするクロノ。

「あのヴィータが……信じられないんだが…」
「そ、そうだよね! いったいいつからなんだろうね!?」
「ん? 結構前からだよ」
「……なんでお前が知ってるんだ?」
「え? 知らなかったのかい、クロノ君?」

逆に聞き返されるクロノ。
エイミィはさきのセリフよりわかる通り、知らなかったみたいだ。
本当に、なんで知ってるんだ、こいつ?
カリムも疑問に思ったらしく、やんわりとヴェロッサに聞く。

「……ヴィータさんは、いつからユーノさんのことを?」
「もう随分前になってしまったけど、高町なのはさんの重傷事件は知っているね?」
「……えぇ、はやてから聞いているわ。それとどんな関係が?」
「なのはさんが重傷に遇った時、彼女は、なのはさんと同じ部隊に居たんだ…」
「「「………………」」」

三人は、つい黙ってしまったが、ヴェロッサは構わず話しを続けた。
あの日、なのはが重傷を負ってしまった日から、ヴィータは自分を責めた。
責めて、塞ぎ込んでしまった。みな声をかけるが、大した反応も示さなかった。
みな見守るしかできそうにないと思って諦めてしまう中、ただ一人、ユーノだけは違った。
ユーノは、なのはを支えながらも、必死にヴィータを励まし続けた。
彼だけが笑顔で、ヴィータに責任はなく、悪くないと言う。
ヴィータはその言葉に、怒りを覚え、感情を取り戻しかけ、ユーノの胸倉を掴んで叫んだ。

「…ヴィータは何も悪くないよ」
「悪くないだ? 悪いに決まってんだろ! 私はアイツの傍に居たんだぞ! なのに守れなかった!」
「……ヴィータ」
「何にもできなかったんだ! それでもお前は私が悪くないって言えんのかよ!? ああっ!?」
「……うん、悪くないよ。ヴィータは何も悪くない…」
「…てめぇ、まだ!──────」
「…悪いのは、僕だ」
「なっ!?」
「全ての責任は僕にある。……ヴィータは何も悪くない。だから、元気出して…」

そう言う声色は優しくて、顔は笑顔……でも泣きそうな悲しい顔。
ヴィータは何も言えなくなった。目の前の少年は本気で言っていると解ってしまったから。
その場に居なかったとか理屈じゃない……ユーノは本気で自分だけが悪いと思っている。
それなのに、……自分を責めているのに、彼はなのはとヴィータを支えようとしていた。

「その日以来、ユーノ先生が何を考えて行動しているのか気になりだしたんだろうね」
「…その想いが、やがて?」
「まぁ、そうなんじゃないかな」
「確かにヴィータちゃん、徐々に元気取り戻していったけど…」
「…………」
「…ユーノくん、今でも自分を責めてるのかな?」
「でなければ説明できないだろう、あいつの無茶な行動は…」
「っと、僕としたことが、シリアスな空気を作ってしまったね…」
「……ロッサ、まだ少し疑問が残るのですが…?」
「なんだい、カリム?」
「どう調査したら、そんなことがわかるの?」
「何、簡単さ。はやての家に盗聴器を…ゲフンゲフンッ! ……虫の知らせさ」
「お前今、盗聴器って言っただろ!? 犯罪じゃないか!!」
「待ちたまえ、クロノ君。今のはやての家には何も仕掛けてはいないよ」
「だからなんだよ!?」
「つまり過去のこと。気にしてはいけないよ」
「……。(こいつ後で絶対逮捕してやるっ)」
「え、え〜と…あ、ほらほら、クロノくん! 次来たよ!」

場を誤魔化そうとするエイミィはモニターを指し、クロノを呼ぶ。
渋々モニターに視線を移すクロノ。そのモニターの向こう、無限書庫では…
ヴィータからも一旦離れ、作業を再開するユーノに、三人の女性の姿が…

「ティアナにスバル…ギンガさん、こんにちは。三人一緒なんて珍しいね、どうしたの?」
「ユーノさん、こんにちは。…あの、お仕事手伝いに来ました!」
「ティアと同じく! 何か手伝わしてください、ユーノさん!」
「…私も、何かお役に立てればと思って来ました」
「えっと、ヴィータに聞いたんだけど、三人とも、今日休暇だよね?」
「「「はいっ!」」」
「せ、せっかくの休暇なんだから、自分のやりたいことやりなよ…」
「「「はい、だから来ました!」」」
「……なんで?」

もう訳がわからないといった感じのユーノ。
同様に、会議室のクロノも訳がわからないといった感じになっていたりする。
それは、エイミィも同じみたいだ。

「ティアナ・ランスターにナカジマ姉妹……どういうことだ?」
「うーん、ユーノくんとの接点なんてあったかな〜?」
「……ロッサ?」
「なんだい、カリム?」
「説明、お願いできますか?」
「あぁ、任せてくれ。僕の調査によると…」
「……。(こいつ、説明だけをしに来たんじゃないか?)」
「ティアナ・ランスターさんは、ユーノ先生によく勉強を教えてもらいに来てるみたいだね」
「確か、執務官を目指して勉強してるんだよねー?」
「そうだね。…で───」

ティアナは、執務官を目指していた。それはすでに周囲にも知られていることだった。
ある日、ティアナは悩んでいた。独学で、出来る範囲頑張ってきたけど、所詮独学。
教えてくれる人が誰も居なくて、限界を感じていた。
フェイトに教えてもらうのも手ではあるが、それは嫌だった。プライドの問題だ。
そんなティアナを見かねた、ある親切な男性は、迷わずユーノを紹介する。
ユーノ、あっさり承諾。ティアナ、ユーノの元、司書長室で勉強を開始する。

「…って、わけさ」
「それで、段々と司書長室に行く目的が変わっていったって言うこと?」
「まぁ、そういうことだね。ティアナさん自身、まだ自分の想いに自覚ないみたいだけど」
「……なぁ、ヴェロッサ?」
「なんだい、クロノ君?」
「その、ある親切な男性って誰だ?」
「? 僕だよ」
お前かよッ!?
「フェイトさんの時も、彼が教師をしていたそうじゃないか。だから適任かな? って…」
「まぁ確かに、フェイトちゃん。ユーノくんが教えてくれたおかげで執務官になれたよねー」
「…あれはフェイト個人の実力だ。ユーノはまったく、これっぽっちも関係ない!」
「……シスコン」
「なんか言ったか、エイミィ…?」
「いえ、何も言ってませんよー!!」
「……で、ロッサ。スバルさんの方は?」
「う〜ん、その前に、姉のギンガさんから話そうか…」
「あ、それ、私も知りたーい! 一番接点なさそうだよ、この二人!!」
「エイミィの言う通り、接点がまったくないように見えるぞ」
「うん、そう思ってしまうよね。……実は───」
「「……実は?」」
「2人はお見合いをして知り合ったんだよ…」
「「…は、はいぃぃぃぃぃぃ!?」」
「息ぴったりですね、お2人とも…」
「二人とも、大袈裟だな〜」
「「…い、いつ!?」」
「ティアナさんと同じぐらいかな…」

ある日、ゲンヤ・ナカジマは困っていた。それは自分のことではなく、娘のことで。
娘が普通の人間でないのは、よくわかっている。だが、結婚はさせてやりたい。
そういう人間を差別せずに接してくれる、理解ある人間が好ましい。
そんなゲンヤに相談された、ある親切な男性は、迷わずユーノを紹介する。
ユーノ、ゲンヤに泣いて頼まれ、お見合いを承諾。ギンガと知り合い、以降仲良くなる。

「…ってわけさ」
「…それで、お見合いは成功したの?」
「いや、ユーノ先生が…」

『すみません、突然なことで、戸惑ってしまって良い返事ができません。
 ギンガさんの事情も知っています。ですから、良く考えないで返事をしたくありません…』

「…と発言し、友達から始めましょうってことになったのさ」
「ユーノくんらしいというか、なんというか……」
「……おい、ヴェロッサ?」
「なんだい、クロノ君?」
「その相談された親切な男性って、まさか…?」
「? 当然、僕だよ」
やっぱりかよっ!!
「……ロッサ?」
「なんだい、カリム?」
「なぜ、あなたはその時の会話を知っているのですか?」
当然、僕がお見合いの仲人を務めたからさ!
「……。(こいつぜってぇ仕事してねぇ!)」
「でも、こうして見ると……なるほど〜」
「? どうした、エイミィ?」
「いやね、ユーノくんとギンガさんって組み合わせも悪くないな〜と思ってねー」
「きっと、真面目過ぎる者同士、気が合うんだろう…」
「だからこそ、お見合いさせたんだけどね!」
「……それで、スバルさんの方は?」
「あぁ、彼女? 彼女の方は……特にないかな」
「「……え?」」
「単純に、ティアナさん、ギンガさんにくっ付いて来ているだけだからね」
「それにしては、ユーノくんに、すっごく懐いているように見えるんだけど?」
「まぁ、兄のように慕っているってところかな」
「なるほどね〜、確かに頭撫でられて嬉しそうにしてるねー」

モニターには、無限書庫で、ユーノに頭を撫でられ、嬉しそうにしているスバルが映っていた。
その後、何度見たかわからない問答が行われ、また押し切られるユーノ。
書庫整理の手伝いを始めだした三人を見つめ、ユーノはちょっと考え出す。
なんでみんな集まってくるんだ? ……今さらな疑問であった。
疑問を残して作業を再開しようとしたユーノだが、またも訪問者。

「ユーノく〜ん、逢いに来たでぇ〜!」
「ユーノさーん、お久しぶりですー!」
「はやて、リィン…、今日休みでしょ? どうしたのさ?」
「休みやからこそ、ユーノくんに逢いに来たんやないかー!」
「そーです! リィンも逢いたいから来たのです!」
「…え、えっと、ありがとう」

照れるユーノに、元気に話しかける訪問者、はやてとリィン。
一方、秘密会議室では、クロノくんが各所に緊急通信を行っていた。
そのクロノくん、かなり焦りまくってます。

「各武装隊、緊急突入転送準備の方はどうだ!?」
『すみません、もう間もなくです!』
「ック! 結界魔導師部隊の方はどうだ!?」
『あと、八分待ってください!
「そんなに待てん! 四分でやれ!」
はっ! 了解しました!!
「はやてが来たということは、もうあまり時間がないということなんだぞ!!」

などと物騒な指示を飛ばす。
飛ばす方も飛ばす方なら、指示をもらう方ももらう方だ。
なんでそんなに臨機応変に対応しているんでしょうね。

ちなみに、この映像、管理局本局全域にバッチリ生放送しちゃってます!
「……ロッサ? 前々から気になっていたのだけど…」
「なんだい、カリム?」
「はやてはユーノさんのどこに惹かれたんですか?」
「うーん、僕もこればっかりは、詳しく知らないんだよね…」
「結構、前からだもんね〜、はやてちゃん」

などど、近くで騒がしく指示を飛ばすクロノを無視して会話を進める三人。
内容もいたって平穏。なぜあんなにクロノは怯えて、焦っているのだろうか?

「僕が思うに、リィンホースちゃんを誕生させた時だと思うんだよね」
「確かに。ユーノくん、進んで協力してたなー。自分の寝る時間結構削ってたもん」
「まぁ…。では、リィンホースを誕生させたのは?」
「うん、ユーノくんのおかげだね。はやてちゃん、凄く感謝してたよ」
「言うならば、リィンホースちゃんのお父さんってことだね」
「うわ! ユーノくん、一児の父親だったんだ!」
「で、お母さんがはやて! 良い親子関係じゃないか」
「……ロッサ? 話しが脱線してますよ」
「ん? あぁそうだね。…まぁ、何にせよ、その時じゃないのかな?」
「ユーノさんを異性として意識しだしたのは?」
「そーだね。その時から、はやてちゃん、ちょっと変わっていったし…」

と議論を交わしている一方、モニター向こう、無限書庫では…
同じ問答が繰り返されていた。そして、またもや押されるユーノ。
そもそも、口論ではやてに勝てる人間なぞ、存在しないというのがユーノの持論だ。
そこにリィンホースも加わったら、言うだけ無駄である。
リィンが嬉しそうにヴォルケンズの方に手伝いに行く中、はやては嬉しそうにユーノに話しかける。

「ユーノくん、最近無理してへんかー?」
「大丈夫だよ、はやて。まだ無理してないから」
「……何日寝てないで仕事してるん?」
「う〜ん。…うん、まだほんの二日だね♪」
……今日の分の整理終わったら、ちゃんと寝ぇよ! 解ったな!?
「…う、うん、解った」

なぜか怒られてしまったユーノ。はやて、ヴォルケンズと合流。
本人、なんで怒られたのか、まるでわかってない。…はて? って感じだ。
その姿に、再度盛大な溜め息をつく、会議室の面々。

「なんであそこで疑問に思うんだろう?」
「…あいつははっきり言ってやんないと解らないからな」
「あ、クロノくん復活したんだ」
「僕の調査によると、ユーノ先生の一週間の平均睡眠時間は、…約十四時間」
どこの傭兵だよ、それ!?
「……なんで生きてるんだ、あいつ?」
「ちなみに、僕の一週間の平均睡眠時間は、その約五倍さ」
「……。(確信した。こいつ絶対仕事これっぽっちもしてないっ!!)」
「寝過ぎですよ、ロッサ。少しはユーノさんを見習いなさい」
「これでも減らしている方なんだけどね…」
「あッ! クロノくん、フェイトちゃん来たよー!」
「なにぃぃぃぃ!?」

過剰反応する妹思いのシスコン。目を見開き、モニターを凝視する。
その姿にちょっと引き気味の三人も、モニターを見る。
モニターの向こう、無限書庫では…
みんな大好き、フェイト様とその子供たちがユーノに話しかけていた。

「ユーノ、こんにちは。エリオとキャロも連れて来たよ」
「ユーノさん、こんにちは!」
「お久しぶりです、ユーノさん!」
「やぁ、フェイト。エリオとキャロも、こんにちは。久しぶりだね、元気だった?」
「「はいっ!」」
「そう、良かった。で、今日はどうしたの? 家族でお出かけ?」
「うん。エリオがここに来たいって言うからさ…」
「え? それはフェイトさんが…」
ん? 何かな、エリオ…?
ななななな何でもありませんっ!!
「???」
「あ、ユーノさん!」
「なに、キャロ?」
「デバイスなしでのラウンド・シールド、ちゃんと展開させることができました!」
「へぇー、もう出来たのかい? 凄い凄い!」
「…えへへ♪」

キャロの頭を撫でるユーノ。キャロ、かなり嬉しそう。
なにかあると、人の頭を優しく撫でるユーノくん。お前は悟史か?
そして、なぜか羨ましそうに、その様子をじっと見るフェイトさん。
とりあえず、フェイトの頭も撫でる。フェイトさん、悦に浸る表情がちょい危ない。
仲良く会話? する四人は、はたから見たら家族のように見えなくもない。
そんなことを考えている、会議室のエイミィ奥さん。
夫は、俯き、呪詛のように「ユーノ殺す…」を永遠呟いている。

「は〜、ほんわかした家族のようだね、クロノくん」
……武器管理局員、ヤツの防御を突き破れる武器はあるか?
残念ながらありませんっ!
「ちょっと、クロノくん! 落ち着きなって!!」
「だってあいつマジでムカつくんだもんっ!!」

一瞬、マジで別れようか考えてしまったエイミィ…
……まぁ、無理もない。誰もエイミィを責めることはないだろう。
というか、ユーノの防御魔法、破れる武器ないのか管理局。

「……ロッサ? ルシエさんとモンディアルさんもユーノさんと親しそうだけど、何かご存知?」
「カリム、なめないでくれ。ちゃんと調査済みさ!」
「報告、お願いできる?」
「わかったよ。まずはキャロ・ル・ルシエさんからだね、彼女は───」
ならあいつを、アルカンシェルで蒸発させてやる! アースラに連絡を──
「クロノくーん、落ち着いて〜! そんなテロみたいなことしないで〜!!」

ある日、キャロは悩んでいた。それは異性関係ではなく、自身の能力に対して。
もっと防御、補助が上手くなりたい! でも、周りはみんな攻撃型。
自分と同じタイプで、尚且つ、解りやすく指導をしてくれる人が良い。だが居ない。
そんな困り果てたキャロに、偶々通りかかった親切な男性は、一直線にユーノを紹介。
ユーノ、快く承諾。以降、キャロの魔法の先生となり、家族的関係を築く。

「…ってわけさ」
「まさに『まいふぁみり〜』ですね♪」
カリムさん、それ色々マズイから!!
「……つまり、キャロがあんなにユーノに懐いているのは、お前が元凶というわけだな?」
「あ、復活した」
「やだなー、クロノ君。一言も、僕が紹介したなんて言ってないじゃないか〜」
「…ほぉ〜、では、誰なんだ? その偶々通りかかった親切な男性は?」
「ヴェロッサ・アコース…っと呼ばれてるね、その人」
…決めた。今逮捕する。すぐ逮捕する。速攻で逮捕する!
「おいぉぃ、僕は彼女の願いを叶えただけだよ」
「……願い?」
「父親がほしいと言う彼女の願いさ!」
「まさに『まいふぁ───
だからマズイってば、カリムさんっ!!
「父親なら僕でも良いだろう! …まったく、なんでフェイトは何も言わないんだ?」
「ユーノくんは、絶対的に信頼されてるし、凄く優しいからね〜」
「それに彼女……フェイトさんも、ユーノ先生でよかったとコメントしてるよ」
……面白くない
「うわ、本音出ちゃったよ…」
「……それでロッサ? 彼、エリオ・モンディアルさんの方は?」
「あぁ、エリオ君かい? 彼は小さい頃から、よくユーノさんと遊んでたんだよ」
「え、そうなの?」
「うん。よく遺跡の発掘とかに連れて行ってもらってたらしいね…」
「まぁ、男の子は、そういうの好きそうだもんね〜」
「だから彼も、父親…とまではいかないかも知れないけど、お兄さんとして慕っているのさ」
「ユーノくんほど優しいお兄さんは、そうそう居ないだろうね〜」
「……なぜ、あの子たちは、僕のところに一回も会いに来ないんだ?」
「クロノ君、君はすでに、可愛い子供たちが居るじゃないか」
「…それは、そうなんだが……」
「……。(あの子たち、クロノくんの顔覚えているかしら?)」
「? なんだ、エイミィ?」
「な、なんでもないよ〜…」
「…それで、フェイト執務官の説明もするかい?」
「あー、それは良いやー。約一名、怒り狂いそうだし…
「フェイトさんのことは、はやてからちゃんと伺ってありますわ」
「…そう、なら説明は省くよ」

執務官になるための勉強中、ずっとユーノのところに通っていたフェイト。
執務官になった今も、頻繁に来てたりする。誰の眼から見ても明らかだ。
気になりだしたのも、下手したら、もっと幼い時からかもしれない。

仲良く話す、アット・ホーム雰囲気たくさんの四人に、ちっちゃな女の子が割って入ってきた。
ユーノをパパと慕う、幼な過ぎる少女……ヴィヴィオ登場。
ヴィヴィオは、そのまま、大好きなパパに抱きつく。
受け止めるユーノも、ちょっと崩れた顔。…親バカ丸出しである。

ユーノパパァ〜〜!!
「ヴィヴィオ、よく来たね! なのはママは? 一緒じゃないの?」
「一緒だよ〜! でもね、なのはママ、あそこから動かないの…」

と指差す方、入り口付近に……管理局の白い悪魔が降臨していた。
俯いて、何かブツブツ言いながら、肩を小刻みに震えさせている。
その姿を見ていた、秘密会議室の面々は、嫌な戦慄が流れていた。
ついに……ついにこの時が来てしまったんだ!!

「な、なのはちゃん、すでにリミットブレイク発動寸前だよ!?」
「あぁ、早過ぎる! 間に合わないのか!?」
『武装隊! 緊急転送準備、整いました!』
「よし! 指示を出したら、突入してくれ!!」
『了解!』
「ユーノ先生、前回の汚名を晴らせますかね…」
「すでに危ない状態です。……最初の一言が肝心でしょう…」
「ユーノくん、頼んだよ!」

管理局の平和は、ユーノの知らないところで、ユーノ本人の手に託された!
……その前に、少し説明しよう。
なぜ、なのはさんが着て早々に、リミットブレイクしかけているのか…
それは、単純に『嫉妬』です。
この時と同じように、なぜかユーノに好意を寄せる少女たちが一斉に集まる日があります。
申し合わせたように、全員暇で、ユーノの居る無限書庫に集まってくるんです。
そして、なぜか決まって一番最後に現れる、万年ユーノラブなのはさん。
本人は、気合を入れるのに、時間がかかってしまうようなのだが、決まって最後。
そして石化。大好きな人が、複数の女性と仲良く書庫整理。冥王スイッチ・オン♪
実は、なのはさん……すんげぇ嫉妬深いんです。
ユーノくんが、知らない女性と会話しているところを目撃しただけで、
「……ちょっと、お話し聞かせてもらおうか…」と有無も言わさず連行。
「……少し、頭冷やそうか…」とバインドで縛り上げ……後はご想像にお任せします!

「ユーノ先生が連行されてる時に、バッタリ遭遇した時があるんだけど…」
「どうしたの、ロッサ? 顔色が悪いわよ?」
「いや、その時に、逃げずに頑張って挨拶したんだ……そしたら…」

『……アコース、……教会へ帰れ…』

「って、トーン下げた声で言われてね! 以来、あれがトラウマだよ…」
うわ、別の意味で恐ッ!!
「…いやに想像できてしまうから、恐ろしい」
「その日から、何日か引き篭もってたものね、ロッサ…」

現在、その恐怖を更に上乗せし、それでも震えながら自身を抑えるなのは。
まだ、この時点なら、ユーノの一言で、何かが変わる。
少なくとも、無限書庫壊滅は免れる。
今、管理局の命運はユーノの一言に掛かっているのだ!!
それを解ってるのか解ってないのか、ユーノくん、渾身の一言。

「あれ? なのは、何しに来たの? ヴィヴィオの付き添い?」

ブチンッ! ……なのはさん、最後のリミッター完全解除。
実に良い笑顔で、自ら魔王を覚醒させる、本日殉職予定のユーノくん。
呆れる一同と、武装隊に突入命令を送るクロノくん。
どうやら、彼はこうなることを、確信していたようだ。
だが、当然のごとく、覚醒したなのはさんは強過ぎた。
突入されてくる武装隊を、アクセル・シューターで落していく。
その数、100以上。ちなみに、ノー・モーション。
突然の事態に戸惑う司書長。やれやれまたか…と呆れる女性陣。
それも束の間、女性陣、顔を見合わせ、頷き合い、即座に攻撃準備。
『これを機に最大最強のライバルを亡き者にしよう作戦』が発動された。

ロッテさん、アリアさん……マジ、本気。魔力使い過ぎて、お父様殺す気?
すずかさん……その背中の漆黒の翼とドス黒い、全身を覆う気はなに?
アリサさん……髪と眼が紅く輝いているのと、燃え盛ってる刀はなに?
ヴィータさん……轟天爆砕!…って、武装隊も巻き添えのフルドライブ?
ティアナさん、ナカジマ姉妹……書庫全域にウイング・ロードに幻影魔法って何がしたいの?
はやてさん、リィンさん……武装隊の魔力、蒐集して力に変えるなんて外道過ぎじゃありません?
フェイトさん、キャロさん……何、バカでかい竜騎召還して、上に乗っかってるんですか?

始めはなのはさんが狙われてたはずなのに、今では、全員が違う相手を狙っている。
そんな中を、武装隊の罪なき方々がボロ雑巾のように、宙を舞う。
なにをどうしたらこうなるのか、今や無限書庫は、荒れ狂う戦場と化している。
離れたところで、ヴィヴィオを守りながら見ていたユーノも、危機感を覚えた。

「とりあえず、結界をっ! シャマルさん、ザフィーラさん! 手伝って……て、居ない!?
「ユーノさん、あの2人なら、シグナム副隊長と共に、すでに無限書庫から離脱しました」
「え、エリオ……よく逃げなかったね…」
「……逃げ遅れたんです」

あー、僅かな司書たちが、宙を舞っている……今日休暇が多い理由は、こういうことか〜
などと、やっと事態の深刻さを、嫌というほど痛感したユーノ。
一方で、秘密会議室も混迷を辿っていた。とくにクロノが…

「突入部隊、各小隊で散開し、一人一人捕えていけ!!」
『駄目です! 各個人の能力が高過ぎて、強過ぎます!!』
「弱音を吐くな! 結界魔導師部隊、無限書庫の隔離封印は済んだか!?」
『無限書庫内の魔力密度が濃過ぎます! これでは、隔離封印できません!!』
「えぇい! まだだ、まだ終わらんよ!!」
「……クロノくん、意外とノリノリでしょ?」

すでにモニターには、『第何回? ユーノ争奪戦(エイミィ名)』が開催されている。
もはやクロノに余裕の余の字もない。ほかの三人は余裕そうだけど…
管理局本局が無くなるかもしれない中、エイミィがあることに気付いた。
その目は、モニターに映る、ユーノに抱きついているヴィヴィオに向けられている。

「クロノくん、ヴィヴィオって誰かによく似てない?」
「ヴィヴィオ? いや、僕には解らないが…」
「そうだね。あの髪の色とかが似ているね…。カリムは、どう?」
「……あの声が、どことなく似ていますね」
「そうだよね〜。あの両目とかもさ〜」
「おい、僕にも解り易く説明してくれ。いったい誰に似てるんだ?」
ユーノくんとフェイトちゃん
「……は?」
「ヴィヴィオちゃんの両目、赤と緑でしょ? フェイトちゃん赤だし、ユーノくん緑だし…」
「あと髪の色だね。お二人とも、ヴィヴィオちゃんと同じ、綺麗な金髪ですしね…」
「そして声。…どことなくユーノさんに似ていますわ」
「…………」
「ヴィヴィオちゃんも、二人のこと、パパママって呼んでるし…」
「これはもしかしたら、本当に…」
…お人の子供?
………………(ブチッ)
「ど、どうしたの、クロノくん? や、やだな〜、軽い冗談だよ〜」
「そうだよ、クロノ君。もしそうなら、十五才ぐらいで生んだことになるんだからさ」
「そうですよ。あのお二人が十五才の時に◯◯◯◯したなんてことある訳ないじゃないですか」
…………いくぞ、デュランダル…
o,ok boss!!
「って、ちょ! クロノくーん!?」
「…凄まじい速さだね」
「あらあら♪」

凄まじい勢いで、会議室を飛び出していく管理局きってのシスコン。
もはや、彼を止められるものは存在しない。
というか、モニターの向こう、無限書庫に姿を現している。

「速っ!!」
「しかも、丁度良い具合に、ヴィヴィオちゃんが離れているね」

せめて自分だけでもっと思って結界を張ろうとし、エリオにヴィヴィオを預けていたユーノ。
突然のクロノの襲撃に、激しく驚く。クロノ、容赦なく最大攻撃。

「く、クロノ!? 何しに───」
「永遠に凍てつけ、淫獣ぅぅぅぅ!!」
E,Eternal Coffin!!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!? なんだなんだ!? なにすんだよ!?」
「やかましい! よくも妹を傷物にしてくれたな!! 貴様だけは、絶対に許さんぞぉぉぉ!!」
「……はぁ? なに言って───」
「言い訳するな!! 貴様なぞ完全凍結して、宇宙の果てに捨ててやるぅぅぅぅ!!

超本気。無限書庫内、どんどん凍る凍る。巻き込まれた武装隊、司書たちも凍る凍る。
ユーノ、防御しながら逃げる逃げる。クロノ、すでに目が正気じゃない。逝っちゃってます。
そんなことお構いなしと、戦い続ける、最強の乙女たち…
そんな光景を引きつった顔で眺めるエイミィ。
彼女は最後まで実況しようとしていた。ちょっと引き気味だけど。

「え、えっと、…どうやら今回も被害は拡大していく模様です」
「…まぁ、こうなるかな? とは思っていたけどね」
「予言通りになってしまいましたね…」
「本局に居るみなさん、避難はできましたか?」
「この後、さらに被害が広がることが予想されますね…」
「私たちも、そろそろここを離れなくては…」
「それでは、みなさん、また会いましょう〜!」

「全力全壊!! スターライト・アルティメット・ブレイカァァァー!!!」

「…もう会えないかもね〜(桜色の閃光に包まれる管理局)」




あとがき

ユーノくんって、カップリングしたら誰と合うかな〜っと思い書き始めたもの。
それが、こんな壊れたモノに……しかも、若干、ヴィータ寄り。
男性キャラもだいたい出せて満足なんだけど……クロノファンから怒られそう。
書き終わった後に気付いたけど、ユーノくんとなのはさん、会話してない(笑)
S・O少尉さん
月月月

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