ぼくたちオトコノコ、チャチャチャ




注意書き
・みんな馬鹿です。
・イメージが崩れたと言われても責任はとりませんのであしからず。
・剃刀を送ってこないでください。


いま一杯やっているんだが、君もどうだ?
ヴェロッサと気楽にやってるから、という友人の声に懐かしさを感じて行ってみたのが運のつき。
見事に捕まってしまったいけにえが、僕ことユーノ・スクライアである。
みんな酔っ払っていた、僕も酔っ払った、ここにいるのは駄目駄目な男三人組。


『ぼくたちオトコノコ、チャチャチャ』


久しぶりに会うヴェロッサさんに挨拶をして、かけつけでビールを一杯。
炭酸の感触が駄目で、お茶ばかり飲んでいた昔からは考えられないが、まぁこれも歳をとったということなんだろう。
しかし一口目は美味しいのに、何で二口目からは苦くなるんだ?

とまぁそんなこんなで枝豆を摘みながら、一杯、二杯と重ねていく。
最初は近況のお堅い話(スカリエッティ事件の余波は未だに収まっていない)だったのだが、
のほほんとした顔の緑髪の男が

「そういえば、少し前に監査に入った店の店主がそれはもう美しい人でね」

と言い出した辺りから、だんだんと話が脱線していったように思う。
とりあえず、迎えだけは呼んでおこうか。
最近飲酒運転の取締りが厳しいし。


「ご近所では才色兼備で貞淑なご夫人で通っているんだけど、実は若いツバメが二人もいてさ。
 見た目と振る舞いが、これまた王侯貴族顔負けの気品がある人でね。
 何せ百戦錬磨のミッドチルダ銀行マンが特優つけて融資してるんだから、たいした悪女だよ、うん。
 被告席に入ってくるだけでさ、場がパーッと明るくなるんだよねぇ。
 陪審員も見た目だけで騙されてね、結局無罪放免さ」

上司にたっぷり絞られたよ〜とかボヤキながらもニヤニヤしてやがる。
取調室で思わず電話番号を訪ねてしまったよ〜とかいってるし。
こら、仕事しろ税金泥棒。


「ほう、そんなに凄かったのか」と、興味津々な目の前の二児の父。

いいのか? 奥さんに告げ口するぞ。

「いいんだよ、最近アレが冷たくてさぁ」

と愚痴るかっこ悪い大人がここに1人。


ハラオウン家で今一番ホットなのが二人の子供。
嫁さんは旦那をほったらかしで子供の面倒を見ているらしい。

あれ?

「アルフがいるじゃないか。
 それにリンディさんもいるわけだし、
 他の家庭よりも時間が取れるだろうに」

「いや、それがな」


何でも美由希さんの友人の巫女さんが最近海鳴に赴任してきたのだが、
ペットがとても可愛いらしく(ちっちゃな狐だとか)、ずっと神社に入り浸っているんだとか。
他にもご近所の奥様がたと色々あるらしく、自分は放置されているんだそうだ。
休日残された旦那様は1人、部屋で趣味の自作デバイスを弄くっているそうな、暗いな。


「狐に……狐に負けたんだ、ふふふ。 妻の愛は狐に取られたのさ」

はははは、クオーーーーーン、と叫ぶ馬鹿亭主。
そろそろ帰ってもよろしいでしょうか。


いや、まだだ、と唸る友人。
そうですよユーノ先生、まだ話はあるんですから〜とニコニコ遮る緑髪(なんか無性に殴りたい、酒って怖いな)

「「最近、なのは(ちゃん)とはどうなんだ(なっていますか)」」

「いや別に何とも」


とまぁこの辺りはいつも通り、しかし……

「な〜にいってんだ、お前の話はちょくちょく聞いてるぞ」
「いくつか縁談持ちかけられているとお聞きしていますよ、その辺りは?」

なんかしつこいなぁ……なんかあったっけなぁ……あ。


「そういえば……最近告白されたなぁ」
「「なっ……」」

なんだってーーー!?と乗り出す男二人。
目が据わってるよ二人とも、ほら、いいから座るんだ。

「いやね、無限書庫の部下の子がさ、先週おつきあいしてくださいっていってきたんだよ」
「そ、それは黒髪の長い子? それともシャギーの入った茶髪で、右目の下の泣き黒子が色っぽい?」
「あー黒髪の子のほう。 ところでさ、確かに両方とも居るけど、なんで知ってるの?」

目をつけていたからね、えっへんと胸を張るピーマン、死んでしまえ。


「いやさ、慕ってくれていたのは分かっていたんだけど、突然告白されたから僕も混乱してね。
 思わずいいよって言っちゃったんだよ」

「ほほう、二股ですか。 やりますね先生」
「流石だな、淫獣」

黙れエロノ・ハラオウン。
あと二股言うな、なのはとは別になんともない。


「別になのはと付き合っているってわけじゃないから。
 まぁ確かに僕も歳だし、そろそろ女性と付き合うのもいい経験かなって思ったんだよ。
 そのあと何だかウキウキして仕事に手が付かなくてね」

 (はっ、童貞だな)(童貞さんですね)(黙れ)

「時間後も残って残業していたんけど……」

あー思い出したくない思い出したくない。


「何だ、もったいぶらずに話せ」
「そうだ話すんだパワハラ上司どの〜」

ハハハハハ、友情って何処で売っているのかな、セブンイレ○ン?


「まぁそれでさ、急にその子から電話が掛かってきてさ。
 先ほどの話は無かったことにさせてくださいって言い出してきたんだよ」

はぁ? という顔をする二人。
うん、僕もその時はそうだった。


何でも長い間慕っていた僕に告白してOKを貰い、舞い上がったはいいんだけど急に不安になり、
電話で友人に相談したところ、不安なら止めておきなと言われたんだそうだ。
あっという間の告白とお別れ、その時間僅か4時間。
短い春でした。

「何だそれは、告白しておきながら他人に判断してもらって別れてくださいっていうのか?」
「まぁそうらしい。 僕も事態についていけなくてね」
「それはまた……何ともだな」
「本当にわけがわからなくてさ」
「いやいや、そんな意志薄弱な人と付き合わなくてよかったんじゃないか?」

と女心の複雑さについて話し合う男二人……二人?


「……もったいない」

顔を険しくして考え込んでいたヴェロッサさんが、急にそんなことをのたまいだした。
……何を言い出すんだ?


「なんて勿体無いことをするんですかユーノ先生!!
 友達に言われてふらふらしてるような子なんだから、おせば絶対ヤレるじゃないですか!!」

ぶっちゃけやがった、この男!!
せんせーここに犯罪者がいます!!

今度僕に紹介してくださいとか言いながら満面の笑みを浮かべるピーマン。
こっちみんな、知り合いと思われたくない。


「しかし、やれるというがなヴェロッサ。
 人生の伴侶は、こうきちんと熟考して答えを出したほうがだな」

「ふふふ、一度寝たくらいで結婚とは、クロノ君もなかなかお純だねぇ。
 アレかな? もしかして、気が付いたら朝チュンで、責任とりますとか言って求婚したのかな?」


俯いた黒髪、うわ……そんな経緯だったのか。
そりゃ他人に話したくないよね、不覚すぎだよクロノ。


「それにですね、気弱ってことは、強引に押し倒しても『やっぱり合わないよ』で別れられますし」

うわ、最低だこの男。


「何言っているんだよ君!! 少し頭おかしいんじゃないのか!!」
「そうだぞヴェロッサ、職場の人間だと後々面倒じゃないか」
「あ、そうだった。 書庫勤務だとその後も顔を合わせるんでしたね。
 僕は職務上各地を飛び回りますから、
 ほとんど顔を合わせなくてもいいんですよねー、失念してました」

……いや、問題はそこじゃなくて。


「しかしユーノもなかなかやるじゃないか」
「そうですよ、見直しました。
 てっきり年齢=彼女居ない暦だと思ってましたよ」
「……四時間だけだけどね、逆に惨めだ」

思いっきり笑われるし。


「しかし職場での恋愛は燃えるよね」
「いやいや、やってはいけないからこそ燃えるんだ。
 アースラに居た時は、事務員の尻がキュンと引き締まっていてさ」
「ああ、確かルキノさんだっけ、例のレリックの封印の時に作業をしていた」
「そうそう、なんでもさる所の情報によると、
 グリフィスにちょくちょくお弁当を持ってきているらしいぞ」
「ほほう、あのムッツリメガネ。
 僕の可愛いはやてや、幼馴染だけでなく、あの子まで狙っていたのか……」
「そうあのムッツリだ、ムッツリのくせに生意気だな、今度絞っておかないと。
まったく、ムッツリはムッツリなんだから近場でガマンするべきだというのに」
「はやてに手を出したら許さなーい」
「そうだ、いいから帰って押し倒せムッツリー」
「そうだかえれかえれー」

イジメかっこ悪い


「そういえば、クロノくん。 最近僕の義姉さんと妙に親しいそうじゃないか」
と、拳を振り上げたままの格好で振り返るヴェロッサ(もう呼び捨てでいいや、こんなの)

「そりゃ、仕事上色々とある、邪推するな……」
と、拳を下ろして顔を背けるクロノ(既婚)
いったい何をやったんだ、きみ。


「まぁまぁ、『クロノ提督のスーツ姿、素敵でした……』とかいっちゃてさ、満更でもなさそうだったよ〜」
「……あー……そのな」
「いいから、耳を貸して」

とかもうごしょごしょとまぁ、何喋っているんだか。
あ、だんだん盛り上がってまいりました。


「そうか……不倫というのはそれだけ燃えるものなのか」
「そうだよクロノくん。 人間というものは、脳で恋愛をするもので禁忌に引かれるのが摂理」
「そうか不倫サイコーだな!! 熟れた身体を持て余して、身体を開いて心が開くってー寸法かー」
「そうそう、不倫はいいよね!! 旦那がいるから後腐れもなくて!!」

あ、お迎えが来た。
すみませーん、勘定お願いしまーす。


「「はい?」」

だるまさんが……

「ふぅん……」
「成程、そんなことまでしていたのですか……」
「はわわわわわわわ」

転んだ

ピタッ……停止する馬鹿二人。


あ、いや清算別個でお願いします。
はい、4千円で……あ、どうもありがとう。


「ごめんね、なのは。 お待たせして」
「あ、ううんいいよユーノくん。
 でもクロノくんたちが……」
「いいんだよ、あの二人はフェイトとシスター・シャッハにお任せしておけばいいから」
と、手を握って歩き出す。


「あ、えーと……」

後ろを振り返り振り返りしながらも、僕の手に引かれて歩き出すなのは。
なのはは優しいなぁ、後ろには蛇と蛙が二組居るだけなのに。
さーて、早くなのはを連れて退避しないと、おしかり(制裁)に巻き込まれちゃう。
僕はにんまりと口元に笑みを浮かべた。

(おしまい)




あとがき

酒飲んで馬鹿やる三人が書きたかった、反省してる。
まぁ幼馴染の男同士の飲み会なんてこんなものですよね、もっと酷くすればよかった(それはどうか
期限遅れたり手直しさせたり、コンさんには色々とお手数をおかけしましたー。
墓の下さん

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