†バレンタインデーSS飽きた(注※なのは無関係)†



  ―――Let's Rock!!



 銃は使わない。この男とは純粋な剣技のみで決着をつけたかった。鋭く重い神懸かった剣撃が、曲芸師のような身のこなしが、彼は超一流の剣士であると言外に主張していた。
 刃打ち合い火花散る。鋼奏でる剣撃音。常人には目視不能、当人達は注目必死。達人であるなら―――自信を打ち砕かれる。
 男達の剣舞はもはや神域に達していた。
 打ち合う音はリズムを刻み、剣閃は陽光を受けて輝いていた。
 熾烈な斬り合いは剣士達の昂りを示すかのようにテンポを上げる。

 ―――2ビート、8ビート、16ビート!

 一際大きな金属音を立てると男達は羽織ったコートを翻して間合いを切った。銀髪の男は新鮮な血液を塗り固めたかのような真紅のコートを。
 茶髪の男は騎士甲冑を想起させる清廉な純白のコートを。

 ―――寂れた街に男が二人。

 幅広の大剣を担いだ銀髪の男は飄々と、細身の長剣を下げた茶髪の男はきりと。
 あるいは最も彼らに似合わぬ陽光の下で至上最強の名を負う二人の剣士は―――それが必然であるように―――斬り合っていた。

 ―――激突音、戦慄く。

 鍔競りシノギを削り刃を越して睨み合った。
 口を開いたのは果たしてどちらが先だったか。

 ―――お前は何者だ。

 それは奇跡。
 決して出会わぬはずの二人が因果と運命を超えて顔を合わせ、戦った。
 純粋に互いが最強であるからこそ頂点を奪い合った。

 ―――剣閃は交わった。

 互いに悪魔を狩るべき太刀を手にした二人は、ただ、己が誇る技の名誉に懸けて激突した。
 偉大な父を追いかけて得た自らの剣技こそが最強であると証明するために!



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