……自分がおかしいと……


……自分で理解している……


……何故だろう……


……何故直ぐに……


……終えようとしないのだろう……


……心が不安定になった為……


……『力』が溢れて……


……このような情景を造り出した……


……ならせめて……


……この情景の中……


……気が済むまで舞い続けよう……


……自分も母も好きだった……


……桜の花の下で……


――?――


……目の端で捉えたのは……


――まさか――


……此方を見つめている……


――何故――


……少女の姿を……


「……神威…君…?」

――此処に――

「……はやて……」


……こうして……


……二人は巡り合った……



『――桜吹雪の舞う中で――』


海鳴臨海公園に向かう道、すずかと牙神が並んで歩いていた。

「…大丈夫でしょうか…はやてちゃん?」
「……解らない……ただ言える事は…」
「?」
「…はやてを信じろ…」
「……はい!」



桜台の頂上で、二人は向かい合う。
桜の舞い散る中で、永遠のような静寂が続く。

「…踊り…」

はやてが口を開く。

「…上手やな…」

そうして笑う。

「…ああ…」

それに簡単に応える。

「…今のは何…?」
「…別に…何処にでも在る日本舞踊だ…」

少しギクシャクとした会話

「…そんな事無いよ……凄く綺麗やった…っ!」
「………」

彼は照れたように、顔を背ける。

「……今のは、お母さんの?」

その知っているような物言いに、多少驚いたようにはやてを見た。

「…何で…?」
「ん?…何と無くや…」

そう言い、はやては笑った。

「…この桜…神威君が?」
「…気が付いたら…な…」
「…凄いな…めっちゃ綺麗や…」
「…ん…」
「…街中が大騒ぎやったけど…」
「…ぅ…っ…」

それに、ばつが悪そうに目を反らす。

「…でも、私は好きや…」
「………」
「…今の舞いも…神威君も…綺麗やった…」
「………」

はやてにそう言われ、若干頬を染めて、そっぽを向く。

「…なあ…?」
「…ん…っ!?」

振り向いた神威が見たはやては…

「…何で昨日…帰らへんかったん…?」

凄く真剣で、寂しそうな顔をして、聞いて来た。

「…俺の念願も叶った…もう終わりだ…」

それに、彼も寂しそうに返す。

「…終わり…?」
「…未練は無い…だから…」
「!?」

……それはつまり……

「…ぃ…や…」
「?」
「……嫌やっ!」
「…はやて…?」
「……神威君が居なくなるなんて……絶対嫌やっ!!」

はやては、彼を睨み付けた。

「……ずっと昔から…決めていた事だ…」
「…っ…!」
「……俺は一度死んだ……」
「…え…?」

反論しようとしたはやてが、目を見開く。
それじゃあ、今の彼は一体…?

「……だから決めたんだ……仮初めの命でも良い……日本がどうなったか……見てこようって……五年間……」
「………」

彼は、視線を横に向ける。
桜台からは、海鳴の街を一望出来た。

「…幕末が終結して…平和な世になっていた…それが見れただけで…十分だ…」

彼はまた、はやてに向き直った。

「……俺にはもう……生きる意味が……」
「そんな事無いっ!」

はやてが彼の言葉を遮る。
今にも泣きそうな顔をして言う。

「生きるのに意味が必要やなんて!!有る筈無いやんか!?そんなん誰が決めたんやっ!?」
「………」
「……せやから……」
「……?」
「……そんな事……言わんといてよ……」

はやての目元から、涙が零れ落ちる。

「……お願いやから……言わんといてよ…っ…!」

はやては泣いていた。
新しく出来た家族が、大好きになった人が、居なくなる。
そんな事に、はやては耐えられなかった。
もう二度と、あんな思いはしたく無かった。

「……お願い…やから…っ!」
「……はやて……」

彼も、とても悲しそうな顔をしていた。
はやてをあんな風に泣かしてしまった事で、胸が締め付けられていた。

「……なあ…っ…?」
「……ごめん…俺は武士だから…」
「……っ……!」
「……意味が無ければ……何も…」
「……あほ……」
「…は…?」

はやてが泣いたままで、彼を睨む。

「…そんなん…私が嫌やで…?」
「……でも……」

彼は、申し訳なさそうに俯いた。

「……俺は……有ってはならないから……居てはいけないから……」
「…そんなん……あらへんよっ!」
「?」

彼が顔を上げると、急にに抱き締められた。
横目で見ると、小刻みに揺れる、栗色の髪が見えた。
そして、啜り泣くような声が聞こえる。

「……居ったらあかん筈無い……」
「………」
「……そんな命……有る筈無いやんかっ!!」
「…はやて…」

抱き締めているのは、はやてだった。
とても、暖かいと思った。
はやての体温が、身体に染み渡って行き、とても暖かかった。

……それはまるで……

「……それでも……」
「?」
「……それでもあかんのやったら……」

……母のような……

「……私が保証したる…っ!」

……自分の存在を認めてくれているような……

「……私が神威君の事を保証したるから……認めたるから……居て欲しいから……っ!」
「………」
「……せやから……何処か行ったら嫌や……」
「………」
「……そんなん……嫌や……」
「………」

……彼の手が動く……

……それはゆっくりと……

「っ!?」

……はやての背と頭に……

「……神威…君…?」
「……はやて…」

……添えられた……

「…ありがとう…」
「…っ…?」

そうして、はやては抱き寄せられ、頭を撫でられる。

「……っ!」
「…良いのか…?」
「…ええよ…」
「…でも…」
「…ええから…っ!」

はやての顔は、涙で濡れている。
だがその顔は…

「…ありがとう……はやて…っ!」
「……うんっ♪」

満面の笑みだった。

「…でも…やっぱり俺は…」
「…まだ言うんか?…そんな意味欲しがったらな…」
「?」
「私が一緒に居りたいと思っとるから、私を意味にしいや♪」
「…滅茶苦茶な…」
「別にええやろ?」
「……ああ……」

そんな言い合いを続けながら、二人は更に身体を寄せ、抱き締め合う。
もう無くさないように、離さないように、ずっと一緒に居たいから、お互いに抱き締め合っていた。


―――桜吹雪の―――


―――舞う中で―――








その頃のヴォルケンリッター

「皆!見付けた?」
「ああ!」
「おう!」
「バッチリです!」
「抜かりは無い!」

意気揚々と言うシグナム達、そして取り出したのは…

「見ろ!『よもぎ饅頭』だ!」
「『生八つ橋』だぜ!」
「『鹿さん達との記念写真』です!」
「そして『鹿煎餅』だ!」
「……へ?」

探索結果は、無意味だった。

「何で京都観光してるのよ!?」

若干奈良が入ってました。

「お前が言うなシャマル!」
「へ?」

シャマルの今の格好『舞子さん』の衣装

「だってだって!私見たいに『綺麗な』お嬢さんにはよく似合うって!私見たいに『綺麗な』!」
「…おい…」
「そこを強調するのかよ…」

シグナムとヴィータは、肩を落とす。

「そう言えば、私達は何を探していたのでしょうか?」
『………』

そのリインの一言で、皆が気付いた。

『……忘れた……』
「?

しょうがないので、京都観光してから、帰る事にした。

「はやてちゃんのお土産は何が良いかしら?」
「やはり茶菓子だろうか?」
「アイスは途中で溶けるしな…」
「アクセサリーも良いですよ?」
「工芸品も良いだろう」

そんな事を話し合いながら――――




あとがき


このシリーズで結構重要な話なのに、意外に短く纏まりました。
そんな第十話でした。

はやてが必死で訴えるのが、伝わって下されば幸いです。

それにしても、恋するはやても良いですね?

ぶっちゃけると、はやてに『私を意味にして』的なのを、言わせたかっただけです。

次回は!!

ラブコメ編突入!?

……するかな……?


そうそう、神威の本名が判明しますよ?
牙神の名前の由来も一緒に…
後は、ユーノ出します。




――――――以上!!





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