……接近してくるのが数人……

……他は射撃系のようだ……

……どう戦うか……

「気合い入れてくよ!リイン!!」
《はい!!》

「………」


『雷光の鮫!!』


星さえ見えそうな快晴の空、月も瞬いている。
その一角では……

『はぁぁあっ!!』

激闘が繰り広げられていた。


因みに別の場所では……

「!?」

神威が急に目を見開く為、牙神は溜まらず声を掛ける。

「どうした神威!?」
「…こ…!」
「!?」

かなり神妙な様子、これは……!?

「…この鯉…生焼けだった…っ!」
「何っ!?」

………

「見ろ…」
「あ、本当だ…」

……二人は池の畔に居た。
そこで、鯉を串に刺して焼いて居た。

「もっと丹念に焼くべきだったかな?」
「焼き直せば良いだろ?」
「だな!」

そうして、鯉を焼き直し始める……?

……手に持ったまま見たいだけど……

……どうやってんの……?


はやての方は、正に死に物狂いと言った感じかもしれない。
当たるかどうかのギリギリで、接近攻撃を避け、至近から直射魔法を放つ。
それに捲き込まれて、一人か二人一緒に蹴散らした。
更に、やや交差気味に『シュヴァルツェ・ヴィルクング』で、殴り飛ばす。
そうして接近系を、何とか片付けた。
そのまま、射撃系と対峙する。

「…最大射程と効果範囲やったら…」

夜天の書と魔方陣を展開
魔力スフィア精製

「……負けへんでっ!!」
《ですっ!!》

広域射撃開始!!
次々と、相手を撃ち落として行く!

「…へぇ…」

その様子を見ていて、少年は感心したような声を出す。

「…意外に……でも…」

しかし、また鋭い目線で見始めた。

「…僕の敵じゃない…ねぇ…『シャークボルト』…」


「……よ…っしゃ…っ!……こ……れで……残り…三人……っ!」
《はい!多分もうすぐシグナム達が助けに…!》
「…よ……よしゃっ!」

はやては相当疲労が有り、多少の怪我も負っている。
無理も無い、あの人数相手に、あんな無茶な戦い方をしたのだから、ここまで戦えたのですら、奇跡的だ。
しかし、きっと仲間が来てくれる。
家族達が助けに来てくれる筈だと、そう信じて粘り続ける。

「…しょうがないな…」

ボードの上で寝そべっていた少年が、怠慢に身体を起こした。

「…下がってて良いよ…僕が相手するから…」

それに、残った魔導師達が退いて行く。

「……?」
「…流石に…そろそろ帰りたいから…」
「………」
《………》

はやてとリインは、じっと身構えた。

「…無理はしない方がいいよ…君もう限界でしょ?」
「!?」
「当たり前だよね、本来後方支援なのにこんな無茶苦茶な戦い方して……魔力も体力もかなり消耗しているし…」

ふっと、一息吐く。

「…融合騎を渡せば…命だけは助かるかもよ…?」

少年は、またもや投降を進めて来た。

「…いやや…!」
《…です…!》

しかし、それに頑として、首を縦に振らないはやてとリイン、少年はため息を吐く。

「…勝てないのに…」
「…そ…そんなん…!」
「勝てないよ……例え万全だったとしても…」

そう言い、手を差し出す。

「…さっきまでの戦闘……しょうがないとは言え、相当無茶だった。
あれじゃあ何時撃墜されてもおかしく無かったし、今此処に居るのは、偶然の賜物、運が良かったとも言う…」
《なっ!?》

その言い種に、リインは反論しようとする。

「本当の事だよ?事実、君達がその程度の怪我で立ってられるのは、奇跡意外に無いしね?」
「…そやな…」
《はやてちゃん!?》
「…それでもな…私らは此処に居る!奇跡的やろうが何やろうが!此処に居るんは間違い無いで!?」
「………」

少年は、はやての言葉を、ゆっくり吟味して、

「…一利有るね…」
《…はやてちゃん…》
「………」

はやては、笑みを浮かべる。

「た、隊長?」
「…平気だよ…もっと下がってて…」
『はっ!』

部下の魔導師達は、更に離れて行く。

「?」

おかしい、今の距離でも充分の筈なのに、何故そこまで……?

「…さっきの…」
「へ?」
「…意味無いよ…?」
「?」
《どう言う事ですか?》

少年は、差し出していた手から、雷を放ち始めた。

(『魔力変換資質』!?)

少年は、ゆっくり目を閉じた。

「…だって…結果が駄目だったら…過程は関係無いもん…」
「………」
「…つまり…負けるんだから意味無いって事…」
『!?』

そして少年は、その手の雷を…

「…シャークボルト…セットアップ…」

上空に放った。

「?」
《何故空に?》

すると、その雷が雷雲を形成し始めた。

『!?』

そして帯電する雷は、段々大きくなって行き、次いで落雷が発生した。
その落雷は少年の傍に接近、何かの形状をとり始めた。

「…嘘…?」
《…落雷が…!?》
「…紹介するよ…」

その姿は…

「…僕の相棒の『シャークボルト』だ…」

鮫だった。
雷で形成された鮫が、そこに居た。

「…な…何やそれ!?」
「ん?…君の方と同じかな?…理由が解らないなら、君の相方に聞けばいいよ?」

鮫の額を撫でながら、呑気な口調で答えて来る。

「何言っとるんや!?リインがそんなん解る訳……?」
《……》

しかし、リインは何も言わない。
……震えて居るようだ。
恐怖で無く、驚愕で震えて居る。

「…リイン…?」
《…はやてちゃん…リインも信じられませんが…あれは…あの鮫は…》

そうしてリインが言った言葉は、驚愕意外に無かった。

《…『ユニゾンデバイス』です…》
「…へ…?」

………はやては一瞬、あまりの事に呆けてしまった。
それは有り得ないからだ。
…そう…有り得ない筈だった。

「…ユニゾン…デバイス…?」
「そうだね、シャークボルトは簡単に言えばそれだよ?」
「…嘘やろ…?」

はやては、力無い声を振り絞る。

「確かに、厳密に言えば違うけど、間違い無くユニゾンデバイスでは有る…」

よく見ていると、額を撫でられて居て、鮫は目を細めて居た。

(……感情が……生きとる……!?)

……少なくとも、意思が有る何かと言う事だ。

「……っ!」

はやては意を決し、少年に向き直る。

「…やるんだ…?」
「当たり前や!」
「そ…」
「……ユニゾンせんのか?」
「ああ、するよ…」

そして少年は、鮫から手を離した。

「……シャークボルト……『フォースイン』!!」
「!?」
(…え…『フォース』…!?)

そして、鮫が少年の中に入り込んだ。

「!」

そして、内側から溢れ出した雷が、槍を形成し、ボードも強力な放電を行い始めた。
その槍は、正に『鮫』そのものだった。

「…ユニゾンデバイスが…」
《…武器に…?》
「…行くよ…」

少年は飛び出して来た。

「!?」

それは正に、雷光と呼ぶに相応しく。
その速さと機動力は、フェイトと勝るとも劣らない程だった。

あまりの動きに、はやては殆んど反応出来ない。
その機動力と雷撃で、縦横無尽から、はやてに襲い掛かって来る。

「…ぐぅ…っ!」
《はやてちゃん!?》

障壁を展開しても、ものともせに易々と貫かれる。
幸いなのは、僅かに障壁の影響で、多少威力が削がれ、決定打に到らない事だろう。
もっとも、それがはやてを、苦しめても居たが……

「…ぅ…ぐっ…!」
《…ぁ…ぁあ…っ!》
「まだ粘るの?突きだけじゃなくて、電撃も浴びてるんだから、無理しない方が良いよ?」
「…こ…っの…!」

距離を置き、槍をはやての方に突き付ける。

「……障壁とか張らずに、素直に彼女を渡すか、刺されてくれれば良いのに……」

相当に無茶な要求だった。

「……従ってくれそうに無いね……それじゃあ仕方無い……」

槍の穂先に、膨大な雷が集中して行く。

「――死――ね――ッ!」

集中した雷撃が、はやてに向かって放たれた。
おそらく砲撃では無く、砲撃級魔法と言う物だろう。


――回避は不可能――

――防御も同様だろう――

――打つ手無しだ――

――終わった――


『……っ!』

それでも、はやては歯を食い縛り、防御魔法を展開した。
リインも同様だ。
しかし、二人が協力して張った障壁も、呆気なく雷撃に破壊された。

「…あ…っ…」
《―――はやてちゃん―――ッ!!?》

リインの悲鳴のような叫び声は、雷鳴の轟音によってかき消され、閃光が視界一面を覆った―――。




あとがき


はやて死すっ!?
物語序章からこれとは……書いてて自分もびっくりですよ。
『シャークボルトって何』とか!『鮫型ユニゾンデバイスってどんだけ』とか!
そんなんが有りそうですが。
リインが連れ去られたら、全部解りますよ?

………ごめんなさい………

さて!
閃光に包まれたはやては一体どうなったか!?
リインの運命は!?
後、少年の正体は!?

………鯉って、普通に食べて平気なの?

――――では!!





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