「だりゃぁぁぁぁっ!!」

結界外、ヴィータは最後の魔導師を倒した所だった。
落下していく魔導師を、他の奴らが運んで、何処かに転送していた。

「おい!さっきからこいつら逃げ腰だそ?」
「おそらく内部で、何か動きが有ったんだろう」

やがて、全ての魔導師達が逃げて居なくなった。
そこに、黒いジャケットの二人が飛んで来た。

「おーいっ!」
「あれは!」
「クロノにテスタロッサ?」
「皆大丈夫!?」
「いきなり封鎖結界と戦闘反応が出たし、Sランクの魔力も観測出来たから、慌てて飛んで来たんだ」
「私達は大丈夫、それでクロノ君、Sランクって?」
「解らない!ただ此方に飛来して結界内に消えたから…」

クロノの言葉に、シグナムが顔を歪ませる。

「…なら…奴か!」
「奴?」
「あたしらが戦ってる時に、変な奴が現れたんだよ!」
「我々を気にせずに、結界を貫通して中に入って行った為、何者かは解らんが…」
「敵か!?」
「いえ、その後で、敵の魔導師達に動揺が走った為に、おそらく違うでしょう…」
「でも、私達の味方とも限らないね」

そして、全員で頷き合い、結界を見据える。

「とにかく結界を破らないと!」
「それが、構成が複雑過ぎて…」
「だったらあたしが壊してやる!」
「私もやろう!」
「仕方無い、フェイト、君も頼む!」
「うん!」

そして三人が並び、結界破壊の準備を行おうとしていた。


『火の鳥と黒き影と…』


一方、結界内部では…

「…此処から出るぞ…」

此方も脱出を試みようとしていた。
神威は、また疲れたような無表情になっていた。

「でも、どうするんだ?」
「そうですよ!凄く硬そうですよ?」
「…あいつにやらせば…」

そう言い、さっきぶっ飛ばした少年を見た。

「…いない…?」

しかし、既に逃げた後だった。



「…ぐ…っ!」

結構遠方で、鮫に乗って逃げていた。

「…何で…あんな…!」

鮫が呻き声を上げる。
慰めているようだ。

「…次は…殺してやる……っ!」

そうして、光に包まれて、居なくなった。



「……どうする?勝手に消えそうに無いし…」
「うう、しゃあないから、私が何とか…」
「でも、はやてちゃんは魔力が…」
「せやかて…」

そうすると、神威か伸びをし始めた。

「…俺がやる…お前ら下がってろ…」

そう言い、手で避けていく。

「手伝おうか?」
「…平気…」

そして神威は、手を掲げる。

『?』
「…まぁ…結構面倒臭そうだから…」

すると、神威の手が燃え上がり、の炎が何かを形作り始めた。

「…え…?」
「…これ…?」

それは鳥だった、大きな火の鳥…!

「…これくらいは要るか…」

それは、先程の少年と同じ…

「…ユニゾンデバイス…?」
「……行け!」

その鳥は、結界に向かって飛び立った。


「行くぞ!」
「おう!」
「はい!」

外では、シグナムを筆頭に、ヴィータ、フェイトが、フルドライブしようとしていた。

「……ん?」

しかし、急に結界に亀裂が走った。

「何だ!?」
「結界が!壊れる!?」

結界が崩壊した。
それに続き、火の鳥が飛び立って行った。

「うわ!?」
「シャマル!何だあれは!?」
「解らないけど、何かの魔法かも…」

結界を破壊し終えると、鳥は飛散して、無くなった。

「ん?」

ヴィータが中に目を向けると、

「…砕けた…」
『………』
「流石だな…」

壊れた結界内から、呆然としたはやてとリインを連れた、変な二人が現れた。

「はやて!?
「……あ…ヴィータ!」
「ヴィータちゃん!」

はやてとリインは、ヴィータ達に近付いて行く。

「はやて!大丈夫か!?」
「うん、平気や!」
「…怪我してます!今治しますね?」
「ありがとな」

ヴィータに続き、シャマルもはやてに近付く。
それを見た後、クロノは神威に目を向ける。

「…助けてくれたのか…?」
「…一応な…」

そこに、シグナムが割り込んで来た。

「…主はやてを助けてくれて…感謝する…私はシグナム…お前は?」
「…神威……夜月神威…」
「牙神だ…」
「神威に牙神か……僕はクロノ・ハラオウン、君達に聞きたい事が有る…」
「?」
「何だ?」

しかし、見るからに変な二人だった、ジャケットも展開していないし、服装もおかしい。
クロノは一息吐いて、切り出した。

「君達は何者だ?」
「…神威…」
「…牙神…」
「……………?」

……………

「……名前じゃない!」
「…牙神…」
「何だ?」
「…俺達…何だっけ?」
「…私も知らない…」
「…………」

クロノは、少し頭に来た。

「ふざけるな!真面目に言え!」
「俺達は放浪者だ…」
「解らない…」
「何っ!?」
「クロノ!落ち着いて!?」

飛び掛かろうとするクロノを、フェイトが必死に止める。

「…すまない…取り乱した……それじゃあ、相手は?この結界を張った奴らは?」
「それも解らない…」
「…数年前から…俺達にちょっかい出してくる奴らが居た…多分その仲間だと…」
「他には?」
「…それ以上は知らない…」

クロノは、二人の様子を見ながら考える。
嘘を言っているとは考え辛い、とは言え、何も知らな過ぎるようだ。

「……とにかく、詳しい事情を聞きたいから、君達も着いて来て……?」

しかし、振り向いた先に、神威と牙神は居なかった。

「……な……!?」
「…すまないが…」
「!?」

声のした方を見ると、少し離れた場所に、二人が居た。

「…馴れ合うつもりは無い…」
「それじゃあ…」

二人は飛んで行ってしまう。
それなりの速度で…

「…なっ……フェイト!捕まえるんだ!君なら追える!」
「うん!」

フェイトがそれを追って、飛んで行った。


「……?」
「どうした、神威?」
「…追って来た…」
「?」

牙神が後ろを見ると、フェイトが高速度で飛行して来ていた。

「……どうする?」
「…一気に引き離すぞ…」

神威がそう言うと、二人が魔力光に包まれた。

「………?」

フェイトがそれを見ていると…

「え!?」

次いで瞬間加速、圧倒的な速度で、一気にフェイトを引き離した。

「……嘘……?」


「…………」
《……良いのか……?》
「……ああ……」

白銀の光に包まれ、超高速度で飛行しているその影は、銀髪の少年一人だけだった。



とある無人世界、闇に拡がる空間、その中に人の影が…

「…くっそっ!」

神威にやられたあの少年だった。
彼は被っていたヘルメットを叩き付け、怒りを露にしていた。
その金髪も、逆立っているように見える。

「…何で……何でっ!」

そう言いながら、その辺に当たり散らして行く。
このままデバイスを出しそうだ。

「…落ち着け…」

すると、そこに誰かがやって来た。
第一印象が、黒っぽいと言った男だった。

「…お前は…っ!」

すると、少年は今まで以上に殺気立ち始めた。

「何しに来たんだ!?」

そう言い、男の胸倉に掴み掛かった。

「ああ、奴に会ったんだろ?」
「…何の事だ…」

少年は、ばつが悪そうに顔を反らす。

「……お前は知らなかったようだが、奴は火も使えるぞ?」
「…な…?」
「確か、強い赤の混じった……さしずめブラッディオレンジと言った色だったな…」
「…く…っそ…!」
「…それで奴は?」
「知るかっ!」

少年は、男を力任せに突き放す。

「…落ち着け…」
「……お前が指図するな!!」
「………」
「…何だよ……あんな奴…!」
「…お前には無理だ…」

それに、少年は凄い形相で男を睨み付けた。

「…俺がやる…」
「…ふざけるな……僕の獲物だ…!」
「無理だと言っている…」

それに、少年は掴み掛かる。

「うるさいんだよ!指図するなって言っただろ!!」
「………」

しかし、次の瞬間…

「…え……ぐぁっ!?」

男の身体から出て来た、細長い何かに捕まり、少年は壁に叩き付けられた。

「…ぐ……っ!」
「…諦めろ…無理だ…」

少年は歯を食い縛り、男を睨む。

「…お…お前…っ!…自分のはオリジナルだからって…っ!」
「………」

男が顔を背けると、少年を抑えていた何かが離れ、少年は床に落ちる。

「……っ!」
「…あいつに言わせれば……関係無い、だな…」

男は、その場から立ち去る。

「……暫く休め、俺が上に言っといてやる……」
「………」

男が居なくなった後、少年は床を叩いた。

「………っ!」

そして、悔しさで涙を流した。

「……くそ……っ!」


軌道上、ここは次元航行艦アースラの会議室、そこに何人か、人が集まっていた。

「……ごめんなさい……」

フェイトは、しょんぼりとして、皆に謝っていた。
その表情は、本当に申し訳無いと思っており、逆に此方が罪悪感を感じてしまう。

「フェイトの責任じゃないよ」

クロノが、そんなフェイトを宥めようとする。

「…でも…」
「……もう良いから…」

そう言い、フェイトの頭に手を置き、頭を撫でた。
するとフェイトは、とても気持ち良さそうに、目を細めた。

「…あの〜…クロノ君?」
「えっ!?」
「ひゃっ!?」
「…皆待ってるんだけど…」

エイミィが苦笑している。
と言うか、会議室に居る皆が苦笑していた。

「す、すまない!」
「…ごめんなさい…」

二人は、慌てて席に着いた。
そして、クロノは一つ咳払いをした。

「……さて…はやて、話を聞かせて貰おうか?」
「…う…うん…!」

そして、はやては話し出した。
あの少年の事、そしてリインを狙っていた事、
そして…

「…ばかな…!」
「本当なの、はやてちゃん?」
「間違い無いよ…」
「……鮫の……獣型のユニゾンデバイス…だと……?」
「…うん…」
「それに襲われている時に…」
「あの二人…夜月神威と牙神に助けられた…と?」
「…せや…」

そして、神威の事を話し始めた。
圧倒的な炎熱能力、力と技を兼ね備えた鋭い剣閃、凄まじいまでの反応と機動力、それらを、少しづつ語っていく。

『……………』

全てを語り終えた後、その場は静寂に包まれた。
信じられないと言うのが強いだろう。
しかし、無くはない筈だ。
あの強硬な結界を単身であっさり破壊した魔力、フェイトをも振り切ったスピード、少なくとも、その二つは本物だ。

「…結界を破壊時、彼が出した鳥は?」
「はい、あれはユニゾンデバイスでは無いと思うです」

リインが難しい顔をしながら答える。

「どうしてだい?」
「はい、鮫のデバイスからは、明確な意思を感じましたけど、あの火の鳥は、意思は有りましたが、明確とは言えない程度でした…」

そうか、とクロノが言い、考え始める。
それに皆も、考えを巡らせる。

不明な点は大いにある。
何故奴らは、リインフォースを狙っていた?
あんなデバイスを持っているなら、リインのようなユニゾンデバイスは要らない筈だ。
そして神威は何故、あの場に居た?
シグナム達が見たと言う影と、神威達が連想されない。
結界を破壊して、はやて達と一緒に出て来たのは、確かに二人だった。
だが、シグナム達の証言と、幸いにも、アースラに記録されていた映像では、一人だった。

「…くそ…」

クロノは額を押さえる。

「…せめて…二人から詳しい事情を聞ければ…」

そう、二人に会えば、何か解るかもしれない。

「……はやて、リイン、二人が何処かに行くとか、そんな事を言って無かったか?」
「…無いな…?」
「…無いです…」
「…そうか…」

その後は、そのまま話が進ま無いまま、一時解散となった。



翌日、はやてはシグナムとヴィータと一緒に、買い物に出掛けていた。

「…ごめんな…二人共…」
「…すみませんです…」

はやてとリインは申し訳無さそに俯く。

「気にしなくて良いって!」
「そうです!我々が着いていた方が安全ですし!」
「…うん…!」
「ありがとうです!」

あの後、クロノは一応、無限書庫に資料検索を依頼した。
ユニゾンデバイスに付いての資料の、検索と洗い直しだ。
もしかしたら、大小の人間型意外に、獣型の融合騎、守護獣のようなものが、制作された事例が有るかもしれない。

「………」

しかし、はやては俯いて、ため息を吐いていた。
こんな事なら、あの時嘆いていないで、もっと話を聞いたりしていれば良かった。

「…何処に居るんやろ…?」

そう言い、顔を上げると…

「………?」
「…へ…?」

…………………?

『………』

―――居た―――

―――目の前に居た―――

(眼前に居った〜〜〜っっっ!!!??)

ヴィータが、警戒心を剥き出しにして、神威を睨む。

「…てめえ…何で此処に!?」
「奇遇だな?」
「…このっ……?」

ヴィータが飛び掛かろうとしたが、シグナムが手を出して、制止した。

「……御同行願おうか…?」
「……拒否したら…?」
「…手荒になる…!」

そう言い、デバイスを握り締める。

「…神威…?」

牙神が心配そうに、神威の方を向く。

「…行くぞ…」
「…へ…解った!」
「?」

シグナムが、不可解な言葉に疑問を感じていると、

「…よっ!」
「…ほっ!」
「…え…?」

二人はいきなり飛び上がり、民家の屋根に飛び乗った。

「な!?」
『じゃっ!』

そして二人は、そのまま何処かに行く。

「…くっ…!ヴィータ!お前はここに居ろ!」
「…あ…ああ!」

そしてシグナムは、魔力強化した脚力で屋根に飛び上がり、二人を追いかけた。


「…まさか…こんな場所で会うとは…」
「…全くだな…」

二人は軽快な足取りで、屋根を飛び交っていく。

「待て!」
『?』

すると、シグナムが飛んで先回りして来た。

「大人しくしろ!」
「………」
「………」

すると二人は、心底困ったと言う感じに、顔を見合わせた。

「…いいから尋常にお縄に着け!!」
「…断る…」
「……ならっ!」

シグナムはデバイスを起動した。

「無理にでも来て貰う!」
「………」

そして、レヴァンティンを降り下ろした。

「っ!」
「…――」
「!?」

神威は避けた。
そして何時の間にか、シグナムの背後に居た。

「…く…っ!」

シグナムが振り向くと、神威は手に火を灯し、刀を精製した。

「!?」
(主はやての話ていた…!?)

シグナムは身構える。
互いに睨み合う。

因みに牙神は…

「…良い天気だ…」

屋根の端で我関せずと、のんびり座っていた。

「………」
「……っ!」

シグナムは飛び出し、剣撃を繰り出す。
神威はそれを受け、シグナムと大差無い速さで動き回る。
互いに飛び交い、剣撃を放ち合っていく。

(…何…?)

しかしこれは、殆どシグナムが攻撃をしている。
神威は、防ぐか避けるかしか、していない。
放っているのは全て、受けるか避ける為の剣撃だけだ。

(…それに…っ!)

シグナムの攻撃を避ける時に、何度か姿を見失う。
そんな時は、決まって背後から気配がする。

「…ちっ…!」

振りかぶって斬りかかるが、それも避けられる。

「……っ!」
「!?」

そして静かに、シグナムに刀を突き付けた。

「…っ…!」
「………」

そして、神威が刀を引く。

……その時っ!

「なっ!?」
「え?」

神威がバインドに絡め捕られた。

「神威……っ!?」
「…悪いな…」

牙神は、グラーフアイゼンを突き付けたられていた。

「…こっちも仕事でな…」

ヴィータが冷やかに言った。

「………」
「…っ…」

神威の前には、はやてが立っていた。

「…ごめんな…こんな事してもて…」
「…平気だ…」
「?」

すると、次の瞬間……!

「…っ…!」
「…え…?」

はやてのバインドに、無数の亀裂が走り……っ!

「…お…おぉぉっ!」

バインドを砕いた。

「…嘘…?」
「………」

そして神威は…

「………」
「………」
「…っ…」
「!?」

………両手を上げた………

「…へ…?」
「……どう言うつもりだ?」
「…見ての通りだ…」
「…降参…?」

神威は無言で頷く。
それにシグナムは、警戒しながら詰め寄る。

「……何故だ、お前ならこの状況でも逃げられるだろう?」
「…多分な…」
「せやったら何で?」
「…ここで逃げるより…お前達と一緒の方が良いと…」

シグナムは、不信感を感じながらも、はやてに決定を委ねる事にした。

「…どうします…」
「……よっしゃ!せやったら、事情聴取とかせなあかんし、ちょっと時間取るけど、ええか?」
「…話せる範囲なら…」
「ほんならクロノ君呼ばな、集合先は何処がええかな?」

そんな事を言い、はやて達は神威と牙神を連れて、何処かに向かった。



一方無限書庫では…

「スクライアは何処だっ!?」
「何でこんな時に休みなんだよっ!?」

………大変な事になっていた………




あとがき


遂に六話まで来ました。
因みにユーノが居ないのは、なのはの処に行ってるからでは有りません。
それと、クロフェが好きです。

……実は、この話には凄い場所に繋がる……かな?

火の色は、赤が強いオレンジだと思って下さい。

そうそう、そう言えば、謎は全然解けませんね?
一応話す場所は考えてます。

因みに、これらの小説のネタは、色々な物語をモチーフにしたり、適当に練ったりしてます。



――――――そんじゃ!





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