――某世界――

「……何処に居る?」
「はい、ここに反応が…」
「じゃあ私が行く♪」
「え?」

何だか、女の子が普通に手を上げた。

「行って来ま〜す♪」
「えっ!…ちょっ!?」

そして、普通に出掛けた。


――同時刻のある世界――

「……パパ……何処……?」

ある廃墟街で小さな子供が、父親を探してさ迷っていた。


『波乱を呼ぶ事情聴取……?』


駅前喫茶店、翠屋に珍しい客が来ていた。

「…先ずは名前を…」
「…以前名乗ったが?」
「…覚えて無いのか?」

眉が一瞬動いた。

「……念の為だ…」
「…夜月神威…」
「…牙神…」
「…出身世界は?」
「…現在探している…」
「…無い…」

口元が僅かに動いた。

「…君達の経歴は?」
「…話せる範囲外だ…」
「…約五年前に神威に拾われた…以上」
「………」

耐え兼ねたのか、テーブルを叩き付けた。

「いい加減にしろ!やっと話す気に為ったかと思ったら!」
「ク、クロノ君!」
「クロノ!落ち着いて!」

暴れ出しそうなクロノを、エイミィとフェイトが抑える。

神威と牙神を連れたはやてらは、クロノ達と翠屋で合流、そのまま事情聴取を始めた。
だが…

「二人共真面目に答えろ!神威!何でも良いから経歴を話せ!牙神!神威に会う前はどうした!?」
「最初に話せる範囲ならと言った…」
「言う事が無い…」
「……っ!」
「クロノ君駄目だよ!?」
「クロノ!デバイスは出したら駄目!!」

クロノは、二人に砲撃魔法を撃とうとしている。
それをエイミィとフェイトが、また止めた。

「……にしても、神威が魔導師だったとは…」

そう言いながら、恭也が各自の注文を運んで来た。

「…俺も…あなたと繋がりが有ったとは思わなかった…」

そうして、神威と恭也が視線を合わせる。

「…私らも、恭也さんと神威君が知り合いやったとは…」

それを見て、はやては苦笑する。
因みにその様子を、士郎がカウンターから身を乗り出して、ジッと見ている。

「…まあね」
「…色々…」

すると、クロノが咳払いをして、また話し出した。

「…いい加減に話してくれないか?」
「言えないものは言えない…」
「言う事が無い…」

クロノは軽く頭を抱える。
そして、意を決したように…

(…仕方無い…)
「…こちらも、別に手段を…」
「…『手段を選ぶ必要は無い』…か?」
「!?」

神威は、クロノが言おうとした言葉を、遮りながら先に言った。

「…だから…」
「…『だから手荒な真似も出来る』…とか?」
「………」

大体が言おうとしているのと、同じ事だ。

「……言って置くが、俺に尋問は無意味だぞ?」

神威は、至極面倒臭そうに、疲れた風に言う。

「……別にやる事も無いし、目的も注して重要でも無い……元々諦め半分だから、監禁されても、脱獄出来ればするし、無理ならしない……」
「………」
「……別に殺されても構わない……長生きする気も無いし、目的が済めばそれまでだ……」

………言い切った………

「………」
『………』

クロノを含め、フェイトとエイミィ、はやてとリイン、シグナムとヴィータ、恭也と士郎、こっそり見ていた桃子と美由紀も、固まって黙り込んだ。
そんなまさかと、笑い飛ばせる者は居なかった。
クロノも、瞳を見て唖然としていた。

その瞳は本気だった。
嘘で無く、本気でそう思っていて、死を望んでさえいる瞳だった。
しかしその瞳は、純粋でも有る。

(……これじゃあ、何時も子供らしく無いと言われる僕や、フェイト達の方が、よっぽどましだな……)

クロノは、顔を掌で押さえた。
そして牙神に顔を向ける。

「私も無駄だ……何せ、尋問されて出る物等無いからな…」

此方も言い切った。

「私は本当に何も知らないからな?気が付いたら神威と共に旅をしていた…」

此方も嘘を付いている様子は無い、瞳も神威よりも澄みきって、あらゆる意味で、本当に純粋だ。

「…何か知っていそうなのは神威だけだ…」

そのまま、神威に話しを振る。

「…だが、話せん事は話さん…」

クロノは悩んだ。
これでは事情聴取をする意味が全く無い。

「…せ…せやったら!あの魔導師達の事も言えんの?」
「…いや…別に…」
「それなら話せるけど?」
「…へ…?」

クロノは耳を疑った。

「…俺は…俺の事は話さんと言った…」
「…私も…奴らの事なら多少は知っている…」
「………」

この際、二人の事は置いといて、魔導師達の事から聞く事にした。

「…じゃあ…奴らについて教えてくれ…」
「…ああ…」

神威は座り直し、話し出す。

「…詳しくは知らない…だが、それなりの組織力を持っていて、強い魔導師とやらも、結構抱え込んでいるようだ…」
「……君達との関係は?」
「……簡単に言えば追われている…」
「…奴らは何故か、私か神威を捕らえようとしている…」
「何?」

はやて達の時は、リインフォースだけを狙い、主のはやて自身は殺害するつもりでいた。
しかし神威達は、二人共捕獲しようとしていた。

「…何故だ…?」
「多分、ユニゾンデバイスを探している」
「そうだな、その小人もそれで、牙神も狙われていた……先ず間違いない…」
「……そうか…?」

今、不振な点が有った気が……?

「……じゃあ次、あの鮫は?」
「…これはあいつらが言ってた事だけど…」
「………」
「…確か『フォースデバイス』とか言ってた…」
「…フォース…?」

確かに、はやてが言うには、鮫とユニゾンする際、相手は『フォースイン』と言っていたらしい。

「…で…一体どんな…?」

すると、神威と牙神は…

「………」
「………」
『……っ!』

同時に……!

『……?』

神威は真横を、牙神は自分自身を、指差した。

「…こいつ…」
「…私…」
『……は……?』

…………?

「…こいつフォースデバイス…」
「…私フォースデバイス…」
『…………!?

叫び声は上がらなかった。
しかし、全員が驚愕していた。

「…改めて…フォースデバイスの牙神だ…」
『………』

何も言えない。

「…どうした…?」
「…ちょ…ちょっと待ってくれ!…今…情報を整理するから…」

クロノは、額に掌を当てて、必死に考えを纏める。
他の皆も似たり寄ったりだ。

「…君…デバイスだったのか?」
「ああ……それか?…らしいが…」
「………」

クロノは、疲れたように肩を落とした。

「…じゃあ、フォースデバイスに付いている説明してくれ…」
「解った」
「…簡単に言えば…『森羅万象』だな…」
「…は…?」

神威の説明に、首を傾げる。

「…確か…そんなのだろ?」
「ああ」

何か、二人だけで理解し合っている。

「…済まないが…判りやすく説明してくれ…」
「ん?…ああ」

そして、牙神が説明し直す。

「…フォースデバイスとは、この世のエレメント『自然の力』を使うらしい、火や水、土と言った風に…」
「自然の力?」
「まあ、神威の言う通り、森羅万象とも言えるな…」
「…それで…?」
「…フォースデバイスと一体に為ると、それぞれの属性の、自然の力が使える…」
「…そうか…」

クロノは一つ頷き、

「なら、フォースデバイスとは何だ?何故造られた?」
「…後は武具に成れるくらいだ…それ以上は私も知らない…」
「…じゃあ、奴らの目的は?」
「…それも…解らない…」
「………」

多少は謎が解けたが、やはり解らない事だらけだ。

「…それじゃあ、何ではやてちゃん助けてくれたの?」

今度はエイミィが聞いて来た。
「それはな……死んだ母が、他人を、特に女を大切にしろと…」
「…お母さん?」
「ああ、だから女が困ってると助ける事にしている…」

エイミィは、興味深そうに頷く。

「…そうなんだ…それで、何でまだこの世界に居たのかな?」
「……あいつらが出た後で、世界間移動したら、追っ手が来るから…」
「だから、その後は当分の間、世界間移動はしない事にしている」
「…成る程…」

多分、次元転送の反応を感知しているのだと…

「せやったら神威君ら、当分この世界に居るん?」
「ん?……そうなるが?」

すると、はやては嬉しそうに、

「せやったら!暫く私の家に住まん?」

突然そんな事を言い出した。

『え!?』

それに、声を上げたのは、はやて意外の全員だ。
神威は眉が少し動いた程度だが、牙神は口をあんぐりさせている。

「はやて!?」
「主はやて!何を!?」
「だって、助けてくれたし…お礼したいから…」
「……気付かなかったら、助けに行かなかったが?」
「!?」
「っ!」

神威が冷たく言った言葉に、シグナムとヴィータは過剰反応した。
つまり、はやてを見捨てると…

「確かにそうやけど、知らへんかった事攻めても、意味無いやん、それに神威君が助けてくれたのは事実やで?」
『………』

確かに、何も知らない事を攻めたとしても、詮の無い話しだ。
「た、確かに…」
「…そうですが…」
「せや、神威君もそないな言い方せんでええやん?」
「………」

皆に同意を求めるはやてに、クロノが立ち上がった。

「だが、彼は得体が知れないし、そう簡単に…」
「だからこそや」
『?』

はやてが、自信満々に言い切る。

「得体が知れへんからこそや!せやから局員で有る私達の監視下に置くと言う意味で、私の家に住んで貰うんや」
「だ、だが、君の家で無くとも…」
「クロノ君家やと、もしも神威君が、何か暴れたりとかしてきたら困るやろ?」
「しないが…」
「そんな時、止める人が必要やろ?私の家やったら皆が魔導師やし、常に私らの誰かが神威君らを見張れる筈やろ?」
「…そうだが…」

しかしと、クロノは悩む。

「……神威……君は、僕達全員と一度に戦っても、勝つ自信は有るか?」
「…有る…だが難しい…牙神と一緒なら可能だ…」

それに、クロノはため息を吐く。
ならば、神威と牙神を別々に、しかも複数で同時に戦う必要が有ると言う事だ。
そうなると、ヴォルケンリッターが相手をするのが最適だ。
自分とフェイトだけでは手に追えない。

「……解った……」
「おい、クロノ!?」

ヴィータが難色を示す。

「母さんには、僕から言って置くから…」
「ありがとな♪」

そうして、神威と牙神は、八神家に居候する事に為った。

「…本人達の意思は関係無しだな…」
「…俺は良いけど…」



その頃、ユーノ君はと言うと…

「…此処か…」

ある次元世界に来ていた。
そこで、運命の出会いが待っているとも知らずに――――ッ!



あとがき


どうも、冒頭と最後のは、何か有りますが、あまり気に止めなくて良いですよ?
暫く掛かりますから?
今回で色々謎が解けましたが、まだまだ不明な点が、多々存在します。

次回は、フォースデバイスと神威に付いての、もう少し詳しい事を書きます。
ユーノはもっと後かな……?


―――――それじゃあ!





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