『―――しかし、二年ぶりですか。その割には成長していない・・・・・・と言うより、縮んだようにも見えますが』
「言わないでよ・・・・・・クラインさんのせいなんだから」
『蒼き隼の悪癖ですか・・・・・・困ったものですね』

クリアスゼロを手に、クローセスはトレーニングルームの扉をくぐった。何人かの局員が訓練に勤しんでいたが、構わずクローセスはその中に入り、モニター室にいる二人の姿を見上げる。
ユーノとマリエルは、こちらの視線に気付くと手を振ってくれた。

「さて・・・・・・できる、フィアナ?」
『ええ、マリエル―――マリーがガイドを付けてくれましたから。どうすればいいかは分かります。それと、クロス』
「あ、ゴメン。クリアって呼ぶんだったよね」
『ええ。私は貴方の武器ですから』

小さく笑ったような声が響く。かつても自分の事を助けてくれた優しい声に、クローセスも同じように笑顔を浮かべた。

「じゃあ、行くよ・・・・・・クリアスゼロ、セットアップ!」
『Set up, approval.』

刹那、クローセスの身体はクリアスゼロから放たれた光に包まれた。服の上から光が走り、その服をバリアジャケットへと再構成してゆく。作り上げる服はやはり、黒の下地と紅い上着。そして額には、風になびく白いバンダナが巻かれた。

次に、武器。両側に広げた両手に、銀の光が集中する。手を覆い、装甲が現れ、右手のそれには透明な宝玉がはまる。両足も同様だった。膝下までを覆うブーツのような足甲が生まれ、装着される。両手両足を一周りほど大きくしたそれらは、無骨さを感じるよりもまず美しさを覚える、見事な白銀色をしていた。

『Completion・・・・・・なるほど、こうなるのですか』
「うん、僕の方もいい感じだね」

軽く身体を動かし、頷く。大きさは今まで使っていた武器より遥かに大きいというのに、重さはほとんど感じなかった。どんな動作も妨害は受けず、非常に動かし易い。
手を握ったり開いたりしている所に、マリエルの声が響いた。

『起動は上手く行ったみたいだね。じゃあ、仕様説明行くよ?』
「あ、はい」
『とりあえず、なのはちゃんたちと一緒でモードは三つ。拳での戦闘形態のナックルフォルム、短剣での戦闘形態のブレイドフォルム、そしてフルドライブのブラストフォルムだよ』
「フルドライブって言うのは?」
『高出力形態の事。カートリッジやら魔力やらを大量に消費するけど、その代わりにマスターの最大出力の強化の他、高威力魔法とかを簡単に扱えるようになるの』
「短期決戦向き、ですか」

確かに、一撃の威力の低い自分には必要になるかもしれない。ただし、あくまで切り札として、だが。

『モードチェンジは後でして貰うとして、まずは足甲についてる機能の方を説明するよ!』
「こっちにも何かついてるんですか?」

自分の足元を見て、クローセスは首を傾げた。確かに使い易そうなレガースではあるが、見た所だけでは特別な機能があるようには見えない。

『クロス君が注文した通りだよ。飛行魔法より先に、その足甲には小型のフローターフィールド作成の能力がついてるの。つまり、空中で好きなように足場が作れる訳』
「なるほど・・・・・・」

飛行では足元の踏ん張りが利かないような気がしてならなかったからダメ元で頼んだのだが、確かにそれなら都合がいい。ただ、クローセスほどの高速戦闘で自在に作り出すのは困難なのだろうが―――

『クロス君とクリアスゼロが深層意識で繋がってるからこそ出来る芸当になるだろうけどね。何せ、勝手に意思を汲み取ってくれるんだし』
「それは運がよかった、って事で」
『だね。とりあえず、魔法をいくつか試してみて』
「はい・・・行くよ、クリア」
『分かりました』

クリアスゼロが明滅し、頭の中にいくつかの情報が流れ込んでくる。セットされたいくつかの魔法、その内一つをクローセスはピックアップした。

「ストライクファング」
『―――Strike Fang, set.』

足元に魔方陣が輝き、同時に指の間に感触が生まれる。手を挙げれば、指の間に挟まる三本のナイフを見る事ができた。魔力による物質生成、ヴィータのシュワルベフリーゲンと同種の魔法である。
その出来に満足し、クローセスはそれを振りかぶった。

「駆けろッ!」
『ショット』

銀色の魔力に包まれ、三本のナイフが駆けた。速度、威力、射程共に普段使っているナイフよりも能力は高い。ただし、その分ほとんど直線にしか飛ばないようだが。だが、この魔法はそれだけではない。

「ブレイク」
『Fang Burst.』

スペルと共に、飛んでいたナイフが爆砕した。込められた魔力を炸裂させ、着弾時の威力を高めるのだ。この魔法にはその他にも、障壁突破の能力も付加されている。戦闘では非常に使い易い能力だ。

「んー、次は・・・・・・」
『これなどはどうでしょうか、クロス』

一つ一つ魔法を試しながら、クローセスの時間は過ぎていった。


 * * * * *


学校も終わり、なのはは時空管理局に顔を出していた。レイジングハートを受け取りがてら、ユーノの顔を見に来たのである。

「調子はどう、レイジングハート?」
『All right. Condition all green.』
「よかった、突然言い出したからびっくりしたんだよ?」
『Sorry, my master.』
「ううん、気にしないで・・・・・・でもユーノ君、何でトレーニングルームに行ったんだろ?」

無限書庫に行っても見当たらず、しょうがなくフェイトと手分けして探していたのだが・・・・・・先ほど、少々不機嫌そうな声でフェイトが念話を送ってきたのだ。それも少々気になったのだが、インドア派のユーノがトレーニングルームに行った理由も気になる。

「・・・・・・また結界を頼まれたのかな?」
「半分正解やで、なのはちゃん」
「にゃっ!? は、はやてちゃん!?」
「何やなのはちゃん、ユーレイでも見たみたいに」

突然隣から声をかけられたから驚いたのだが―――苦笑しながら、なのはは小さく溜め息を吐いた。とりあえず気を取り直して、事情を知っているらしいはやてに疑問を投げかけてみる。

「はやてちゃん、何か知ってるの?」
「まーな。何でも、クロス君のデバイス慣らしに一緒に付いて行ってたらしいんよ」
「クロス君の、デバイス慣らし?」

一瞬疑問を覚えてから、なのははぽんと手を打った。あまりに強かったから忘れていたが、クローセスはデバイスを持っていなかったのだ。

「なるほど・・・・・・でも、何でそれをはやてちゃんが?」
「デバイス慣らし、そして私が知っとる・・・・・・この二つから導き出せる答えは、そう多くないで?」
「・・・・・・?」

首を傾げながら、最後の角を曲がる。もうトレーニングルームはすぐ傍だったので、もったいぶるはやてから聞き出すよりも直接見たほうが早いと、なのはは早足で近付き、その中へと入った。
―――そしてそれを見た瞬間、思わず納得してしまっていた。

「スクライアの結界も展開したようだな。始めるぞ、シェイン」
「ええと・・・・・・僕、デバイス使うの初めてなんですけど・・・・・・」

広い訓練場の真ん中で、やる気満々でレヴァンティンを構えるシグナムと、頭を抱えたクローセスが対峙していた。

「な、分かったやろ?」
「うん・・・・・・」

大方、クローセスのデバイス慣らしに鉢合わせしたシグナムが、模擬戦を申し込んだと言う所だろう。溜め息を吐きつつ辺りを見回すと、同じように困った表情をしたユーノと、他のヴォルケンリッター、そして不機嫌な表情のフェイトを発見できた。

「ユーノ君!」
「あ、なのはもこっちに?」
「うん、それで・・・この状況は・・・・・・」
「まあ、予想通りのものだと思うよ・・・・・・シグナムさんも、前々からクロスと戦ってみたかったみたいだし」

乾いた笑みを浮かべつつ、ユーノが深々と嘆息する。模擬戦の時には毎回呼ばれているのだから、溜め息も吐きたくなるだろうが。

「それにしても、私はクロス君とはいっつもすれ違いっぱなしやったんやなぁ。直接顔合わせたの初めてみたいな気がするわ」
「と言うか、実際初めてだね、はやては」
「にゃはは・・・・・・クロス君、アースラにいる間は半分ぐらい寝てたからね。血が足りないーって」
「アースラに戻ってきた時にははやてはいなかったし」

運悪いなー、と呟いているはやてに苦笑し、なのはは視線を別の方向へと向けた。もう一人の、見るからに不機嫌そうな親友の方へと。

「フェイトちゃん、ライバルを取られたのが納得いかんみたいやな」
「今日は、本当はフェイトがシグナムさんと戦う予定だったんだっけ」
「それはシグナムさんが悪いとなのはは思うのですが・・・・・・」

じーっとシグナムとクローセスを見詰めているフェイトと、出来るだけ彼女から離れているヴォルケンリッター達に複雑な視線を向ける。
フェイトの空気が怖いのは・・・・・・今は諦めるしかないようだった。




一方、フェイトの視線の最中にいる少年も、そろそろ諦めたようであった。

『・・・・・・諦めましょう、クロス。彼女は好戦的な時の貴方の姉と似たような性格です』
「・・・・・・まあ、ケンカ売る時売られる時は、姉さんもこんな感じだったかな」
「覚悟は出来たようだな―――行くぞ、レヴァンティン!」
『Jawohl!』
「はぁ・・・・・・ま、怪我しないように頑張ろうか、クリア」
『ええ、貴方には傷一つ付けさせません、我がマスター』

やる気満々な騎士とデバイスに嘆息して、クローセスは拳を構えた。とはいえ、油断できない相手である事は分かっている。疲労感に溢れる思考はカットし、クローセスは眼術を発動させた。

「それが眼術か・・・・・・話には聞いているぞ」
「はは・・・ま、これぐらいしか取り柄はありませんし」

呟き、クローセスは駆けた。一瞬身体を左にずらすように見せながら、一気に右へ。フェイントを混ぜつつ横に回ったクローセスは、シグナムの脇腹に拳を叩き込んだ。が、寸前で差し込まれた刀身に拳は防がれる。

「驚いたな・・・・・・スピードはテスタロッサ以上とは言っていたが、これほどとは」
「初見で見切りますか・・・・・・」

シグナムがレヴァンティンを打ち上げ、その反動に拳を弾かれる。再び振り下ろしてくる刃に無理な攻撃は入れず、クローセスはそれを受け流してから距離を取った。

「クリア、エナジーバレット」
『Energy Bullet―――ショット』

飛び離れつつ、クリアスゼロに命じて魔法を発動する。生み出した六つの魔力弾が、それぞれ回り込むような軌道でシグナムに殺到した。ストライクファングと違い、操作性の高い魔力弾である。
それを見たシグナムは、正面から刃を振りかぶった。

「奔れ、陣風!」
『Sturmwellen!』

空薬莢が飛び出し、レヴァンティンの刀身から衝撃波が放たれる。迸ったそれはエナジーバレットを消し去り、さらにクローセスの身体を弾き飛ばす―――が、その手には既に新たな魔法が握られていた。

「駆けろ、狼の牙!」
『Strike Fang.』

両手に二本ずつ、現在制御できる限界の数のナイフを放つ。高速で駆け抜けた刃はレヴァンティンを振り切ったシグナムに流星のごとく迫った。
無論、ただでそれを喰らうシグナムではない。

「レヴァンティン!」
『Panzergeist』
「爆ぜろ!」
『Fang Burst.』

着弾、炸裂。衝撃と轟音が駆け抜け、煙が立ち込める。非殺傷設定ながら、一切手加減なしの威力だった。
が―――

「―――この程度では、私の甲冑は貫けんぞ」
「―――でしょうね」

声は、シグナムの真上から響いた。同時に、一点に魔力が集中する。

『Load Cartridge.』
「一点、集中・・・・・・!」

機構内のリボルバー型カートリッジシステムが回転し、拳に魔力が満たされる。それを拳の前に収束させつつ、クローセスは上下逆さまになっている状態から虚空を蹴った。シグナムはその顔に笑みを浮かべ、己の愛剣に命じる。

「行くぞ、レヴァンティン!」
『Explosion!』

レヴァンティンから空薬莢が飛び出し、刀身に炎が纏われる。クローセスの拳の前には、銀色の魔力の塊が現れた。
―――そして、激突。

「バーストナックル!!」
「紫電一閃!!」

ドンッ!!
重く下腹部に響くような衝撃が駆け抜けた。一瞬の拮抗を見せた魔力は、力の行き場を失ってその場で爆裂する。爆風に押されてくるくると回転しながら飛び離れ、着地したクローセスは再び油断無く構えた。
立ち込める煙の中から、心底愉快そうなシグナムの声が響いてくる。

「やるな、シェイン。あそこまで気配を感じさせぬとはな」
「流石に、カートリッジの魔力までは隠蔽できませんでしたけどね」

煙が晴れ、無傷のシグナムが姿を現した。こちらも傷は無いが、体重と勢いと魔力を込めた一撃を簡単に受け止められてはクローセスも苦い笑みを浮かべる他無い。

(この人は・・・・・・強い。接近戦でだ。この人なら、姉さんの防御も抜けるかもしれない)

暴風を纏う姉の姿を思い浮かべ、クローセスは嘆息した。隙を突かなければ攻撃も届かなかった相手に、シグナムは攻撃を届かせる事が可能かもしれない。

(・・・・・・本気で、行くか?)

操り切れるかどうかも分からない、最後の切り札。ブラストフォルム以上の禁じ手とも言える、眼術の最終奥義―――

(・・・・・・だめだ、そもそも上手く発動できるかすら分からない。クリアは起きてるけど・・・・・・結局、二年前に使ったっきりなんだ)

二年ぶりに揃った条件であるが、上手く行くかは危うい。せめてもう少し身体を慣らしてからでなければ。覚悟を決め、クローセスはクリアスゼロに命じた。

「ブレイドフォルム」
『了解。Load twin Cartridge.』

両手のカートリッジが回転し、手甲が形を変える。無骨な手甲は形をスマートに、篭手のような形にその姿を変えた。そしてその両手首の上に当たる部分から、それぞれカートリッジ一本分の魔力を込めた半実体化魔力刃が伸びる。

『Set up completion. Blade form.』

軽く振り、クローセスは感触を確かめた。この重さも問題ない。頷き、駆ける。
―――だが、それより早く。

「それがお前のもう一つの姿か・・・・・・ならば、レヴァンティン」
『Schlangeform.』

クローセスの接近より先に、レヴァンティンの形態が変化した。高速で駆ける連結刃が、クローセスの行く手を阻む。

「蛇腹刀!?」

舌打ちして、足を止める。辺りを舞う刃は長く、広い。切先を見つけ出すのは中々に時間がかかりそうだった。

「我が蛇の舞・・・・・・お前は躱せるか?」
『Schlangebeisen Angriff』

気付けば、クローセスは螺旋を描く蛇のごとき刀身に取り囲まれていた。周りから逃げ出そうとしても、すぐさま刀身に阻まれる。

「ッ・・・・・・クリア」
『Strike Fang.』

手に現れた三本のナイフ、それを一気にシグナムに向かって投擲する。刀身の合間を縫って高速で駆けたナイフは一気に彼女に肉薄するが―――後一歩の所で、レヴァンティンの刀身に阻まれた。

「ブレイク」
『Fang Burst.』

再び、破裂。煙で視界が塞がれたためか、レヴァンティンの動きが一瞬鈍った。その隙を逃さずに刃の中から脱出し、クローセスは再び駆けた。姿勢を低くし、無音で地面を駆け抜ける。クローセスは一切の気配を逃がさず、右手の刃に再び魔力を込めた。

『Load Cartridge.』
「・・・・・・ッ、そこか!」

シグナムが気付いたときには既に、クローセスはその背後まで迫っていた。その右手が、銀に輝く。

『Thrust Edge.』

銀色に輝く刃が、シグナムに向かって突き出される―――込められた魔力が開放され、シグナムに叩きつけられた。
―――が。

『―――Panzergeist』
「な・・・・・・ッ! 鞘!?」

パンツァーガイストの付加された鞘が、クローセスの刃を受け止めていた。鞘にはひびが走っていたが、不安感無くクリアスゼロの刃を受け止めている。流石のクローセスも、予想外の防御に驚愕を隠せずにいた。
冷や汗を垂らすシグナムが、顔に笑みを浮かべて告げる。

「今のは・・・・・・肝を冷やしたぞ」
『―――ッ! クロス!!』
「え―――?」

クリアスゼロの警告。刹那、クローセスは横から叩きつけられたレヴァンティンの切先に弾き飛ばされていた。

「っ、ぐ、ぅ・・・・・・・・・!!」

間一髪その切先を右手で掴んではいたが、その勢いから逃れられない。そのまま壁に叩きつけようというのか、刀身はクローセスの身体を捕まえたまま一気に反対の壁へと向かっていた。

「クリ、ア・・・・・・ッ!」
『Load Cartridge.』

左手の手甲が、二発のカートリッジをロードする。それと共に左手の刃が伸び、激しく唸りを上げ始めた。

「スラッシュ・・・インパクトッ!!」

一閃に大量の魔力を込め、炸裂させる。爆ぜた魔力が大きく唸り、レヴァンティンの進行方向を真上の方向へと逸らした。勢いは殺しきれずにごろごろと地面を転がってから、何とか体勢を立て直す。

「―――飛竜、一閃ッ!!」

―――気付いた時には、炎を纏った刃の奔流が迫っていた。




ドォンッ!!!
砲撃に等しき破壊力が、クローセスの姿を消し飛ばした。もうもうと立ち込める煙の中には、動くものの気配は無い。
模擬戦は終了と誰もが息を吐いた、その瞬間だった。

―――からん。

レヴァンティンがシグナムの手から零れ落ち、床で小さな音を立てる。

「・・・・・・《弧狼爪牙》」

シグナムの背後に、彼はいた。両手を振り抜き、シグナムに背を向けた姿勢で。シグナムは―――ゆっくりと、その場に崩れ落ちた。クローセスの顔に表情は無く、まるでそこに存在しないかのような空虚さを感じる。

「シグナ―――」
「ああああああっ!!? だ、大丈夫ですかシグナムさん!?」

はやてが駆け寄ろうとした瞬間、絶叫を上げたのはクローセスだった。大慌てでシグナムに駆け寄り、その身体を仰向けに転がす。シグナムの騎士甲冑は、×字に大きく切り裂かれていた。

「脈、脈は!?」
『落ち着きなさい、クロス・・・・・・私を付けていて分かる訳が無いでしょう。それに、衝撃波の威力は抑えました』
「全くだ。自分でやっておいて、今更驚くな」
「シグナムさん!」

半眼で見上げてくるシグナムに、クローセスはほっと息を吐いた。

「手加減をされていた、とはな」
「いえ、手加減はしてませんでしたけど・・・・・・魔法だけでどれだけ出来るか、試してみたかっただけです」
「なるほど・・・・・・では私は、魔法使いとしてはお前に勝っていた、という訳だな」
「はい」

ふっ、とシグナムは笑う。好敵手を見つけたと言わんばかりの満足気な笑み。

「では次は、全力のお前を倒させてもらおう」
「はは・・・・・・楽しみにしてます」

二人の異なる世界の騎士は、互いに笑みを浮かべて手を握り合っていた。







あとがき?



「クロスVSシグナムの模擬戦。軍配はクロスの方だったな。ま、戦闘能力からいえば当然の結果とも言えるが」

「僕のスピードに対応できる人は中々いませんから・・・・・・でも、シグナムさんも強かったです。眼術なしの単純な身体能力だけだったら、きっと負けてました」

「ま、それだけ相手の技量が高かったってことだな。とはいえ、初見で発動率五十%の《瞬狼眼》の動きを捉えたってんだから随分なもんだが」

「最後は咄嗟に九十%まで引き上げちゃいましたし」

「ま、流石に対応できなかったみたいだが。ちなみにとらハを例に出して言うなら、九十%は神速以上神速二段未満って所か」

「まあ、魔力で身体を補強しないとすぐガタが来ますし」

「人間万能にはなれんという事だ。さて、お前の魔法の説明でもしとくか」

Strike Fang (ストライクファング)
物質生成系直射型射撃魔法
威力A 射程D 発射速度AA 誘導性能E
備考:Fang Burstのスペルで爆発、また若干防御魔法に対する貫通効果もある。

Energy Bullet (エナジーバレット)
誘導操作型射撃魔法
威力B 射程A 発射速度A+ 誘導性能S
備考:ディバインシューターに近い。威力は無いが高い誘導性能を誇る。

Burst Knuckle (バーストナックル)
近接型砲撃亜種魔法
威力AA 射程E 発射速度B
備考:砲撃魔法の亜種。五mほどなら離れていても届くが、ほぼ近接向き。

Thrust Edge (スラストエッジ)
近接型魔力付加魔法
威力AAA 対象:敵一体
備考:ブレイドフォルムの刀身に魔力を込め、攻撃と共に炸裂させる。殺傷能力は高い。

Slash Impact (スラッシュインパクト)
近接型魔力付加魔法
威力A〜AAA 対象:敵数体
備考:ブレイドフォルムの刀身に魔力を込めて伸ばし、一閃と共に衝撃波を放つ。直接刀身に当たった場合の威力はカートリッジ二本を消費するだけあって、かなり高い。

「―――とまあ、見事に近接攻撃に威力を注ぎ込んでるな」

「カートリッジを使うものと使わないものの差が大きいですね・・・・・・」

「ま、そっちはあくまで牽制だろ」

「確かに、一番使ってるのはストライクファングですけど」

「元々あったものに近いからだな。まあ、他にも魔法の用意があるが、それは追い追い公開していくか」

「ですね」

「うむ。じゃあ、また次回にな」






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