「ん・・・・・・・・・」 ゆっくりと目を開けて、なのはは身体を起こす事無く自室の天井を見上げていた。ボーっとしながら、机の所に置いてあるバスケットへと視線を向ける。 ―――そこに、見知ったフェレットの姿は無い。 「ユーノ・・・君・・・・・・」 何であんな事を言ってしまったのか―――何故、言い方を考えなかったのか。後悔ばかりが残って、なのははベッドに転がったまま膝を抱えた。誤解を与えてしまった事よりも・・・・・・傷つけてしまった事の方が、ずっと辛かった。 「・・・・・・・・・」 脳裏に浮かぶのは、かつてジュエルシードを探していた日々の事。こちらが先に起きればバスケットで丸まっているユーノの姿を眺める事ができて、彼が先に起きれば優しく起こしてくれる。同時に目覚める事があれば、二人で同時に朝の挨拶をして、二人で笑い合った。 「・・・・・・どうして、だろ・・・・・・」 小さく呟く。たった一人の部屋では、その小さな声も十分な大きさを持って隅々まで響き渡った。その静けさが、その孤独感が―――辛い。 「昔は、いつもこうだったはずなのに・・・・・・」 慣れていたつもりだった。一人で大丈夫だと思っていた・・・・・・そもそも、今は家族もいる。寂しさを感じる理由など無いはずだ。それなのに――― 「なのに―――」 ユーノと出会う前の状態に戻った部屋・・・・・・思わず違和感を感じてしまう広さの中で、なのはは膝に顔を埋めていた。 「なのに、背中が寒いよ・・・ユーノ君・・・・・・」 かつて共に戦った時の安心感を、一体感を感じる事は―――出来なかった。 * * * * * 「―――んで、朝からあの状態な訳?」 腰に手を当てて呆れた表情で嘆息するアリサに、フェイトは思わず苦笑していた。はっきりしない事が嫌いなアリサらしい反応だが、どうこうする事もできない。魂が抜けたように机に突っ伏しているなのはの姿を見て、すずかは心配そうに眉根を寄せた。 「大丈夫かな、なのはちゃん・・・・・・」 「うん・・・・・・まさか、ここまで酷いとは思ってなくて・・・・・・クロスがフォローはしてくれたんだけど」 クローセスがフォローしてくれていなかったら、一体どこまで落ち込んでいたのか・・・・・・正直、想像がつかなかった。 「で、そのクロスは何て言ってたのよ?」 「それが・・・・・・『ある意味好都合かもね』だって」 「何よそれ!?」 その言葉に真っ先に反応したのはアリサだった。背後には炎を燃やし、怒りのままに叫び声を上げる。 「何て事言うのよ、あいつは! そりゃなのはの自爆かもしんないけど・・・・・・好都合は無いでしょ!? あいつ、何かなのはに恨みでもある訳!?」 「あ、アリサ、落ち着いて・・・・・・えっと、私も一回怒っちゃったんだけど、クロスが言うには『一度自分と向き合う事で、もしかしたら自分の気持ちに気付いてくれるかもしれない』って言う事だったから」 何気なくなのはに止めを刺しているアリサを抑え、フェイトは嘆息した。どこか慣れた様子のクローセスに疑問を覚えていたのだが、ちゃんと二人のことを案じていてくれた事には感謝したものだ。 「自分の気持ちに気付く、か・・・・・・そうだね、なのはちゃんなら時間はかかるかもしれないけど・・・・・・」 「クロス曰く、どうすればいいかって言う思考に一段落が着いた辺りで、何でこんな風に悩んだのかを考えさせてみろって言う事だったけど」 「何か、手馴れてるわね・・・・・・自己体験かしら?」 「―――――」 自己体験、と言う言葉に、フェイトはぴたりと動きを止めた。アドバイス役が板についていて気にならなかったのだが―――どうしてクローセスはそんな詳しい手段まで知っていたのだろうか? と―――いつの間にか沈んだ表情になっていたフェイトに、その表情を発見したアリサがにやりとした笑みを浮かべて声を上げた。 「おやおや? 今度はフェイトもお師匠様の事でお悩みかしら?」 「えっ!? ち、違うよアリサ! そんなのじゃなくて―――」 「そんなのってどんなのかな、フェイトちゃん?」 「すずかまで!?」 標的を変えた親友達に悲鳴を上げて、フェイトは一歩後ずさった。それでも、二人の悪意に満ちた(ように見える)視線からは逃れられない。 「いーんじゃない、フェイト? アンタも恋する乙女でもさ」 「クロス君、カッコいいし優しいよ」 「ふ、二人とも! クロスとはそういうのじゃないよ!」 あくまで師匠と弟子―――と言う風には見えないかもしれないが。今の所魔力と気配の消し方しか習っていないので、一般的に言う師弟関係とはまた違うような気がする。 「でもさー」 一人で悩み始めようとしたフェイトの耳に、先ほどまでの意地悪な様子の消えたアリサの声が響いた。 「あいつも、実年齢は十六なんでしょ? 彼女の一人や二人や三人、いてもおかしくないんじゃない?」 「三人は流石に多いんじゃないかな・・・・・・」 「彼女・・・・・・」 ―――何故か嫌な感じのする響きに、フェイトは再び黙り込んだ。クローセスは、今の所一言も以前の世界に帰りたい、と言うような言葉は発していない。だが―――向こうにも、きっと大切な人はいるはずである。 「・・・・・・クロスの、大切な人・・・・・・」 「ありゃりゃ」 「こっちも重症みたいだね、アリサちゃん」 虚空を見上げてボーっとし始めたフェイトに、アリサとすずかの二人は小さく嘆息した。 * * * * * 「―――これでいいの?」 「おー、そやで。おーきにな」 五冊の本を持ち、はやての隣に座る。海鳴市の図書館で、クローセスとはやては時間を潰すために本を読み漁っていた。 「ミッドの文字も、アルファベットも似とるからな。こーやって、アルファベットに置き換えてからローマ字に当てはめれば・・・・・・」 「あー、うん。これならいくらか読めるかな」 とりあえず日本語の本ばかりなので、暇つぶしにと日本語の勉強を始めたのだが―――これがまた難しい。一つの言語で文字が数種類あるというだけでも、クローセスとしては理解しがたいものだった。 「何でこんな複雑にしたんだろうね、この国の人は」 「ま、えーんやない? 使いこなせば表現には便利や」 「いやまあ、そうなんだけどさ・・・・・・」 苦労しながら子供向けの本を読み、苦笑する。表現の幅が広がることは事実だが、せめて二種類ぐらいにはしてもらいたいと思ったのだ。 「いやー、うちの騎士達に日本語教えるのも苦労したで? 何せ、喋れるのに読めん書けんのやからな。まー、手取り足取り教えてやったんやが」 「・・・・・・手をわきわきしながら言わない。意味分かってる?」 「もちろんや。シグナムの揉み心地は最高やで?」 「何のっ!?」 「決まっとるやないか。そりゃ―――」 「あーいい分かった! 言わなくていいから!」 騎士達の苦労を思って、クローセスは深々と嘆息した。真面目にこの子の将来を心配するが、何故か動いても無駄な気がしてならない。 「いやー、シャマルも結構あるんやけどな。弾力や大きさを総合するとシグナムが一番や」 「・・・・・・真剣に君の将来が心配になってきたよ・・・・・・女なのにセクハラで訴えられかねない」 「だいじょーぶや。私の虜にしたるから」 「ダメな方向に自信満々!?」 「だめやで、図書館では静かにや」 正論を説かれる事に理不尽さを感じながらも、クローセスは慌てて声のボリュームを下げた。半眼を向けつつ、再び声を上げる。 「出来れば、ツッコミをさせるような発言を控えて欲しいんだけど」 「何ゆーとるんや。せっかくこんな一々ツッコんでくれる相方がいるゆーのに」 「あー・・・・・・何かいきなり漫才の相方にされてるし・・・・・・」 世界はこんなはずじゃない事ばっかりだ―――クロノの台詞を強奪しつつ、クローセスは天を仰いだ。しかし染み一つ無い天井を見ていても悟りを開けるはずも無く、諦めて現世に視線を戻す。 隣では、生き生きとした表情のはやてがまだ己の論理を展開していた。 「いやー、フェイトちゃんも大きさは将来かなり有望やけどな。やっぱ、バランスはなのはちゃんの方が上かと思うんよ」 「いや、同意を求められても。って言うか本当にセクハラだよ、それ?」 「相手がここにいなければ問題ナッシングや」 「いやダメだって人間として!」 これはもう強制的手段で矯正するべきかと半ば本気で悩みつつ、再び嘆息する。自分の親友達にまでその魔の手を伸ばそうとするはやてに、もう今のうちに気をつけるように言っておこうかと本気で考察し始めた。 「で、クロス君はどんなタイプが好みや? 大きい方か? それともバランス?」 「胸限定!?」 「何ゆーとるん。男の子は皆大好きやろ?」 「何その差別発言!?」 この国の教育について半ばショックを覚えつつ、帰ったらフェイトに忠告しておこうと心に決める。しかし、ヒートアップしたはやてはまだ止まっていなかった。 「胸が嫌い・・・・・・いやまさか、貧か!? 無いほうがいーと言う人種なんか!?」 「勝手に人の事を貶めないで!?」 「じゃあ何なんや!? まさか、あっちか!? シャマルが大好きなあっち方面なんか!?」 「何引いてんの!? シャマルさん何が大好きなんですかアンタ!?」 後であの湖の騎士を小一時間ほど問い詰めようと決心して、クローセスははやての頭を本ではたき倒した。頭の上に氷を乗せて冷やしてやろうかとも思ったが、人目があるので流石に止めておく。 「いたた・・・・・・何するんや、クロス君。レディに手を上げたらあかんのやで?」 「ハリセンが無かったのが非常に惜しいよ」 「む、そうやな。今度マリーさんにデバイスで創ってもらおかー・・・・・・」 「そんな仕事も初めてだろうけどね・・・・・・」 うんざりとしつつ嘆息する。ようやく止まってくれたはやてに安堵して、クローセスは再び本に視線を戻した。 「でもまー、あれやろ? 十六年も生きとるんやし、好きな子の一人ぐらいいたやろ?」 「好きな子、ね・・・・・・あんまり心当たりが無いんだよなぁ・・・・・・」 子供の頃―――十三歳の頃までは、そんな事を考える余裕も無かった。ただ己を磨く事のみに時間を使っていた―――今思うと、つくづく面白味の無い子供時代だったと思う。 ―――いやまあ、今でも子供なのだが。 「枯れとるなぁ・・・・・・ほれ、自分の知り合いの女の子の名前挙げてってみぃ」 「枯れッ!? はぁ・・・・・・知り合いの女の子? 姉さんは違うし、アリスは兄さんの事があれだし・・・・・・ルヴィリスは・・・・・・まあ、あれだし」 騎士団の仲間の名前を一つ一つ挙げてゆくが、やはり恋愛対象として見た覚えは無い。そもそも相手がいる人だったり、一方的に兄に詰め寄って行ってる人だったり、そもそも人間ですらなかったりするためでもあるのだが。 「リウは・・・妹みたいなもんだし。後は・・・・・・リー、ス・・・・・・・・・」 「お? そのリースって子は?」 「―――――」 「? クロス君、どないした?」 虚空を見上げてボーっとし始めたクローセスに、はやてはにやりと笑みを浮かべた。これは当たりか、と。 「クロスくーん?」 「―――へっ!? あ、何?」 「だから、そのリースって子の事や」 「あ、うん・・・・・・リースは・・・・・・」 クローセスが浮かべた表情に、はやては思わず笑みを引っ込めてしまっていた。裏を見せないクローセスの顔には、普段見せないような影が浮かんでいたのだ。 「・・・・・・・・・親友、かな。多分、それが一番合ってる」 「そか・・・・・・ゴメンな、変な事聞いて」 「いや、気にしなくてもいいよ」 はやてが再び顔を見た時には、クローセスからはその表情は消えていた。いつも通りの、どこか仮面じみた愛想笑いが浮かんでいる。 「でも、女の子ってやっぱりそういう話が好きなんだね・・・・・・」 「んー、そやな。何てったって恋する乙女やもんな」 「乙女・・・・・・?」 「何や、その心底疑問に思っとるような反応は」 軽く漫才をして、強張りかけた空気を解す。乗ってくれたはやてに感謝しつつ、クローセスは再び本に視線を戻した。と――― 『―――皆、聞こえてる?』 「・・・・・・レイ?」 「こっちもや」 全体通信として発せられた念話に、クローセスとはやては首を傾げた。どこから発しているのか―――レイの声はさらに続く。 『敵の構成が少しだけ分かった。もうすぐ放課後でしょ? 終わったらハラオウン家に集まって』 「・・・・・・そう、か」 「ふむ・・・・・・どう予想する、クロス君?」 「予想も何も・・・・・・レイの口調なんていつも変わんないし。僕でも判別できないって」 嘆息しつつ、黒い子犬の姿を思い出す。ただ僅かな違和感が、レイが少し機嫌が悪いのではないかと言う予想を伝えてきた。普段感情を乱さない彼にしては、少々珍しい。 「ま、話を聞いてからだよ。いい知らせにしても悪い知らせにしてもね」 「そやな」 肩を竦めて頷いたクローセスの言葉に、はやてもまた同意していた。 * * * * * 「―――んじゃまぁ、結論から言っとこうか」 集まってからのレイの第一声は、焦らしも何も無いいつも通りの淡々とした口調のものだった。機嫌が悪かったと思った自分の考えを即座に捨て、いつもと変わらない様子の言葉に耳を傾ける。 「《原書》が認識した第二階梯古代魔導族の数は三人・・・・・・まあ、その内一人はガルディアラス。つまり―――」 「僕自身、って事か」 つまり、敵となる第二階梯の古代魔導族は二人と言う事になる。一体誰がいるのかと、クローセスは眉根を寄せた。 「そして残りの二人・・・・・・記された名前は、ウェルフィレアとメルレリウスの二人だった」 「―――っ!」 「クロス君、どないした?」 「・・・・・・一体何者なんだ、その二人は?」 息を飲んだクローセスの様子にはやてが首を傾げ、クロノがレイの言葉の先を促す。テーブルの上に立つ子犬は、小さく息を吐き出してから答えた。 「正直な所、一番嫌な類の連中だね」 「人間をオモチャか何かと勘違いしてる、最悪な連中だ。ウェルフィレアは自分の魔力を植えつけた物を操る能力を、メルレリウスは『人形』を作り出す能力を持ってる」 「にんぎょう?」 フェイトが首を傾げる。どんなものを想像しているのかは分からないが、恐らく答えに行き着いているという事はないだろう。小さく息を吐き出し、クローセスは続けた。 「人の記憶を読んで情報を引き出して、そこからその人に親しい人間そのものの人形を作り出して襲わせる・・・・・・」 「おまけに人形の方も元になった人間の人格そのものだから、襲ってる方も襲われてる方も苦しむって寸法。それを眺めて悦に浸る、とんでもなく性根のひん曲がった奴だよ。同族だと思うだけで虫唾が走る」 やはり先ほどのレイの声から感じた苛立ちは本物だったかと、クローセスは嘆息しつつ頷いた。しかもこの二体はどちらも魔力値自体は高く、普通に戦っても苦戦は免れない。 二人の説明を聞き、皆は顔をしかめ―――特にアルフが大きくその反応を示した。 「何つー外道だよ、そいつは!」 「それには同意するよ・・・・・・ウェルフィレアも似たようなもんだし」 「人間を殺して魔力を植えつけて、その人間を操って別の人間を殺して遊ぶ、とかね」 うんざりとレイが呟き、それに頷く。古代魔導族たちには一般認識として『自分達は人間より優れている』と言う考えがあるが、それが極端な例になった結果がこれである。人間と隔絶した超越種である事は事実だが、流石に許せる事と許せない事があった。 ―――嘆息し、話を切り替える。 「とりあえず、強力ではあるけど単独で出てくれば倒せない訳じゃない。後は第三階梯以下だけど・・・・・・それ以下でシアシスティーナみたいな戦闘能力を持ってるのは稀だから、そちらも何とかできるはずだ」 「・・・・・・君にしては楽観的だね、クロス」 「元気付けてるんだから台無しにしないでくれ」 事実、一対一で第二階梯と戦って勝てる自信はクローセスにも無い。どちらかと言えば、一撃の威力の大きいなのはの方が見込みがあると思える―――そこまで考えて、クローセスはなのはがまだ一言も発していない事に気付いた。 何となく予想して視線を向けると―――案の定、上の空の様子のなのはの姿がある。 「こっちも何とかなってくれればいいんだけどね・・・・・・」 中々先の思いやられる様子に、クローセスは深々と嘆息していた。 あとがき? 「古代魔導族の名前っつーのは、何でこー長ったらしくて覚えにくい・・・・・・お? あいつらまたいないな・・・・・・ネタバレしそうな話題の時はいつもバックレるんだな・・・・・・ま、こういう時はいつも―――」 「あ、この間の人」 「なのは、知り合い?」 「予想通りだな。いや、偶然だななのは嬢、フェイト嬢」 「今予想通りって言いませんでした?」 「って言うか、何で私の事・・・・・・」 「気のせいだ。あーんど、お前達は有名だから誰でも知ってるぞ」 「そんな無理に二人分答えなくても・・・・・・」 「有名、なのかな?」 「はっはっは。ところで、どうかしたのか? またTRBの帰りか」 「してませんっ!」 「TRB?」 「略語だ。トレーニングル―――」 「にゃあああッ!! 何でもない! 何でもないの!!」 「そ、そう?」 「何を今更。日常的にやってる事だろ」 「最近はそんなにやってません!」 「何で?」 「真面目に聞き返さないで下さいっ!」 「えー」 「何かすっごく不満げ!?」 「なのは、落ち着いて・・・・・・」 「全ての犯罪者から恐れられる『管理局の白い悪魔』が加減をするなどらしくない。ほれ」 「そんなあだ名で呼ばないでくださ―――何ですか、それ?」 「ICレコーダー。ほれ、ぽちっとな・・・『これが私の全力全開!』」 「にゃ? 私の声―――って、フェイトちゃん!? どうしたの!?」 「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイSLBダケハヤメテクダサイ・・・・・・」 「九歳の子供に深刻なトラウマを与えるとは、流石悪魔」 「違いますっ!」 「何を言うか。お前さんに襲われた者は、ピンクと白に対して拒絶反応を起こすと聞いたぞ?」 「誰ですかそんな事言った人!?」 「さあ・・・・・・お、ちょうどいい所にヴィータ嬢。ちょっとこっちに」 「あ? 誰だよお前・・・・・・なのは? 誰だ、こいつ」 「さあ・・・・・・?」 「しつれーな。それはともかく、ほれ、おやつをやろう」 「へ? あ、ありが―――ぎゃあああああッ!?」 「にゃっ!? ヴィ、ヴィータちゃん!? どーして逃げるの!?」 「あーあ、可哀想に・・・・・・大福と桜餅を食えんなんて」 「にゃ、にゃぁ・・・・・・ち、違うもん! 悪魔じゃないもん! わあああああんっ!」 「―――ありゃ、逃げたか。さて、この辺りで・・・・・・この娘を放っとくのもアレか。ほれ、ぽちっとな・・・『スターライトぉ・・・ブレイカ――――ッ!!!!』」 「―――!!?? きゅぅ・・・・・・(ぱたり)」 「気絶したか。凄まじい威力だな・・・・・・さて、じゃあこの辺りで帰っておくか」 |