「―――――」

《原書》の前に、人間の姿のレイが目を閉じて立っている。《原書》のページはそれと共に流れ、ある場所で突然停止した。その文字が輝き―――その場に、十本の短剣が生み出される。

「ふぅ・・・・・・完成、と。助かったよ」
「ま、別にいいけど・・・・・・その代わり、約束は果たしてよね」
「分かってるよ」

レイに声をかけたのは、近くの椅子―――その背もたれの上に腰をかけている一人の少女だった。浅葱色の髪をツインテールに縛る彼女は、重力を感じさせない―――いや、浮き上がっている髪から見るに、その身は恐らく重力とは関係ないのだろう。

「それにしても、突然君が僕の目の前に現れたときには驚いたよ」
「あたしだってそんなつもりは無かったわよ。クラインに殴り込みに行ったら、突然こんなとこに飛ばされたんだから」

笑みを浮かべるレイに、少女は憮然とした表情で答える。しかし、一瞬後にはその表情を綻ばせた。

「でも、ちょっとは感謝してるわ。何だかんだで、クロスに会えるんだから」
「相変わらずだね、君も」
「千年前から変わらないわよ、あたしはね」

ツインテールに巻きついたリボンをいじりつつ、少女は不敵に笑みを浮かべる。確かに、と頷いて、レイは小さく肩を竦めた。思えば、知り合った頃からこの少女はこうであった気がする。

「僕としては嬉しい誤算かな・・・・・・あのクロスも、唯一君にだけは多く心を許してるからね」
「―――やっぱり・・・・・・殺すつもり、なの?」
「・・・・・・・・・」

不敵な笑みは消え、少女の顔に不安気なものが広がる。沈黙を返し、レイは静かに目を閉じた。思い返すのは三年前、クローセスと初めて会った時の事。長い封印で古代魔導族としての記憶を失っていた―――あの時にこの記憶があれば、もっと上手くできたはずなのに。

「あたしは知ってるんだよ。ちっちゃいクロスが、一人で部屋の中で泣いてた事・・・・・・助けてあげたかったのに、抱き締めてあげたかったのに・・・・・・出来なかったんだ。あの子は―――」
「・・・・・・僕だって、やりたくは無いさ」

友人であり、仲間であり―――同胞の子孫であるあの少年を殺めたくは無い。だけど、それでも―――

「けど、『欠落』がクロスを壊したら、僕はクロスを殺す。それは一種、第一階梯としての僕の義務でもあるからね」
「・・・・・・・・・」

少女は俯いて唇を噛む。理屈では分かっているのに心が受け付けないのだ。

「・・・・・・どうして、こんな事になっちゃったんだろうね」
「『魔導王』がこの力を作り出したから―――そして、魔導の力が人間にも扱えるようになってしまったから・・・・・・僕らの力は、間違いから生まれてしまった力。一人の・・・奴の欲望が、世界全体を歪めてしまった結果だ」
「でも―――そうじゃなかったら、あたしはガルディアラスにも・・・・・・クロスにも会えなかった。感謝するべきなのか憎むべきなのか・・・・・・あたしには分からないよ」

俯く少女に、レイは小さく苦笑した。古くからガルディアラスの一族と共に在った彼女にとっては、どちらも受け入れがたい事なのだろう。

「一途だね、君は・・・・・・」
「・・・・・・何か、馬鹿にされてるような気がする」
「気のせいさ」

小さく笑い、レイは《原書》を消失させた。それでも消える事無く残っている短剣に満足し、再び背後の少女に向かって声を上げる。

「己の力じゃどうにも出来ないから、誰かに力を借りる。それは、別に悪い事じゃないさ。だから、独占欲なんて出してないで―――」
「分かってるわよ! 人をクロス離れできないみたいに・・・・・・」
「でも、取られるのが嫌なのは事実だろ?」
「うぐ・・・・・・」

図星を指され、少女が言葉を詰める。その様子にもう一度笑い、レイは彼女に向き直った。

「大丈夫さ。今の所、クロスにとっては君が唯一の家族なんだから」
「・・・・・・うん」
「それに、誰かが君たちの中に入ってきたって・・・・・・君が態度を変える事なんて、無いだろ?」
「・・・・・・・・・」

声には出さず、こくりと頷く。満足して、レイは頷いて踵を返した。小さく足音を立てながら、十本―――それと、もう一本の短剣を持って歩き出す。部屋から出る間際、彼は笑みを交えて振り向いた。

「―――だから、期待してるよルヴィリス。存分に煽ってくれよ?」

つい、と―――
ルヴィリス=リーシェレイティアはその笑みから顔を背けていた。


 * * * * *


「渡したいものがある、ね・・・・・・」

レイから言い渡された言葉を思い出し、クローセスは小さく首を傾げた。今更何を渡すと言うのか。

「私達に必要なもの、って言ってたけど」
「何やろね?」
「う〜ん・・・・・・レイさんが何かをくれる、かぁ」

何を想像しているのか、複雑そうに唸る三人娘に苦笑し、クローセスは再び視線を前に向けた。向かう先はアースラのミーティングルーム。全体通信を行ったレイは、そこで何かを用意しているらしい。

「また、何か怪しげなマジックアイテムでも作ったんじゃないだろうな・・・・・・」

レイがユーノのために作り出したデバイス、クレスフィードを思い出す。自分自身で人格を作り上げたのだろうが、あそこまで人間らしい、子供らしいものを作り出したのはただの趣味としか思えない。しかも、普段では作り出したらそのままほっぽって置くから始末に悪い。

(・・・・・・そういえば)

デバイスの事で思い出した。今ここに、ユーノはいない。能力的に、ユーノとレイが同時に無限書庫を離れる訳には行かないのだ。今はレイが出ているために、ユーノは無限書庫にいる。
だが今の所、ユーノは局員待遇の民間協力者という役割であり、司書の地位を持っていると言ってもまだ多少は自由が利くらしい。そのため、今現在アースラチームに一時的に加わるための申請をリンディ経由で行っているそうだ。

(けどまぁ・・・・・・)

ちらりとなのはに視線を向ける。彼女、己の本心を自覚したのはいいが―――恥ずかしがって、その本人に会おうとしない。そのためユーノがアースラチームに加わると言う話は伏せているのだが―――

(せっかく自覚したってのに、何でこの二人はここまでゆっくりかなぁ・・・・・・)

別に、文句を言える立場と言う訳でもないのだが・・・・・・まあじれったいと言うか何と言うか。

「・・・・・・ま、仕方ないか」
「? 何か言ったか、シェイン」
「いえ、何でもないです」

シグナムの問いを誤魔化し、クローセスは小さく苦笑した。ゆっくりとは言え、二人は徐々に距離を詰めて行っている。このままなら、いつかきっと伝え合えるはずだ。

(そうすれば、きっと・・・・・・ユーノも、大丈夫だよね)

口に出さず、小さく笑う。ユーノは、独りではないのだ。自分のように勘違いもせず―――きっと、それを受け入れられる。そうすればきっと―――自分のように、『欠落』する事も無い。

「壊れないさ、きっと」

誰にも聞こえないよう小さく呟き、クローセスはミーティングルームの扉を潜った。刹那―――

「―――クロスッ!!」
「ぐえっ!?」

突然飛びついてきた何かに首を絞められ、思い切り後ろに転倒した。ついでに強く後頭部を打ち付け、一瞬意識が飛びかける。朦朧とする頭を抱え、クローセスは自分に飛びついてきたものに視線を向けた。

ツインテールに淡い色のリボンを巻きつけた、浅葱色の髪の少女。群青のワンピースに、腰の部分がからはレモンイエローの腰布が伸びている。その服の胸の部分には、妖精の羽根のような赤い文様が刻まれていた。

「・・・・・・ルヴィ、リス?」
「うふふ・・・・・・そうだよ、クロス。やっと会えた・・・・・・」
「え、でも・・・・・・」

ぺたぺたと、ルヴィリスの体を触る。首を傾げながらそれを続け―――悪戯っぽい表情を浮かべた、紅と空色のオッドアイと視線が合った。

「あらクロス、昼間っから大胆ね♪」
「へ? ・・・・・・はっ! いや、違っ―――」
「ほらいいのよ、触れるんだからもっとやっても♪」
「だから違うってば!」

馬乗りになっているルヴィリスをどかし、起き上がる。残念そうな表情で横に座るルヴィリスに向かって、クローセスは思わず叫び声を上げていた。

「今まで君は虚像だったじゃないか! 何で実体を―――」
「いいじゃない。これで心身ともにクロスの所有物って事で♪」
「わざと言ってるでしょ君は―――」

―――刹那、凄まじい殺気を感じてクローセスは言葉を切った。絶対零度の空気が流れてくる方へと、恐る恐る視線を向ける―――

「・・・・・・バルディッシュ」
『・・・・・・Yes, sir. Haken form.』

そこに、きんいろのしにがみがたっていらっしゃいました。

思わず後ずさりしようとして―――そこで再びルヴィリスに抱き留められる。無論、殺気はさらに高まった。

「クロス・・・・・・そのひと、だれ」
「え、あの・・・・・・彼女はその、ルヴィリスと言いまして―――」
「私はクロスの所有物よ♪」

びしっ、と―――
何かにひびが入るような音が響き、クローセスはさらに表情を引きつらせた。

「ふぅん・・・・・・そうなんだ。へえぇ・・・・・・」
「いや、あの、フェイトさん? そういう事ではなくて・・・・・・ちょっと、ルヴィリス!」
「別に間違ってないでしょ? いざって時は私を同じベッドに入れて寝てたじゃない」

今度は、ぶちっ、という音が響いた。
口元に三日月の笑みを貼り付けさせて、フェイトがバルディッシュに命じる。

「バルディッシュ、ザンバーフォーム」
『Y・・・Yes, sir. Zamber form.』

瞬間、バルディッシュの形態は大鎌から大剣へと変化していた。バチバチと放電する刃を構え、フェイトがくすくすと笑い始める。
が―――

「それにしても、クロス可愛くなったわねぇ♪ 九歳か十歳ぐらい? 懐かしいなぁ」
「これ以上煽らないでよっ! ―――って、コラ、何する! 服に手をかけないでよ!?」
「ふ、ふふ・・・・・・ふふふふふふふふふふふふふふふふふふ・・・・・・・・・」

フェイトの周りに複数のプラズマスフィアが形成、それがバルディッシュの刀身に吸収されてゆく。凄まじい魔力密度に悲鳴を上げかけるが―――咄嗟にそれを飲み込んだ。

(落ち着け、何か打開策は―――)
「・・・・・・フェイト」

と、それまで傍観していたレイが声を上げた。フェイトはエネルギー収束をやめないが、とりあえず話は聞いているらしい。今までニヤニヤしながら見ていたはやてや、おろおろしながら見ていたなのはも、彼の声に耳を傾けた。
助け舟にほっと息を吐き―――

「結界は張ってあげるから、遠慮なく」
「裏切り者―――ッ!!」
「プラズマザンバー・・・・・・」

魔力収束の終えたバルディッシュを、フェイトが大上段に構える。今度こそ慌てて、ルヴィリスの事を説明しようと―――したのだが、いつの間にか彼女の姿は消え去っていた。

「ルヴィリスッ!? って、ちょっと待ってフェイト! それは非殺傷設定でも死ぬ―――」
「ブレイカ――――――ッ!!!」

凄まじい閃光と爆音が―――アースラのミーティングルームのみを、激震させた。


 * * * * *


「会議を始める・・・・・・んだが、クロス・・・・・・君は何で焦げてるんだ? それと―――」
「聞かないで・・・・・・」

クロノの問いに、椅子の後ろに立つルヴィリスに抱きつかれながら、クローセスは精も根も尽き果てた様子で声を上げた。今もなおフェイトは殺気を向けてきているため、胃がきりきりと痛むのを感じる。

「君がはっきりしないからだろ」
「レイ・・・・・・いいから話を進めて」

机に突っ伏そうとするが、巻きついたルヴィリスの腕がそれを許さない。その彼女は至ってご機嫌であり、久しぶりのクローセスを堪能しているようだった。
その様子に苦笑し、レイは話を始めた。

「皆に配りたいものは、これ」

言いつつレイが取り出したのは、緑がかった刀身を持つ十本の短剣。それを机に並べ、レイは続ける。

「封印の術式を込めた短剣だ。かつて人間が古代魔導族を封印するために用いたものを、僕なりにアレンジしてみた」
「それを作るためにあたしが協力したのよ」
「まあね」

レイは誇らしげに胸を張るルヴィリスに笑い、そのすぐ傍で嘆息するクローセスに向かって、一本の短刀を差し出した。鞘に収まった、柄に浅葱色の宝玉のはまった、一本の短刀。

「それでルヴィリスがここにいた訳か・・・・・・レイが呼んだの?」
「クラインが送りつけてきたんだよ」

刃を受け取り、鞘から刀身を晒し―――小さく笑う。整備せずとも汚れ一つ無い、綺麗な状態だった。ラベンダーに近い色の刃を鞘に収め、クローセスは全員―――主にフェイトに向かって声を上げた。

「これは僕の一族に代々伝わる刃・・・・・・《ルヴィリス》。その名の通り彼女が作り出して、彼女の魔力と精神が宿ってる代物だ」
「そーゆーコト。あたしは元第二階梯古代魔導族、ルヴィリス=リーシェレイティアよ」
「いつもは虚像しか出せなかったんだけど・・・・・・レイでしょ、実体化プログラムを追加したの」
「まあね」

事も無げに頷くレイに、クローセスは深々と嘆息した。
古代魔導族の意思の秘められた武具―――それは、その古代魔導族が最期に生み出した武装である。その生命魔力の全てを使い果たし、一つの武具を作り出す。それによって、その存在は『永遠』に朽ち果てないものへと進化するのだ。
とは言っても、八百年の時を経た今、人格が崩壊せずに残っているものは少ないのだが。

「つー事は、さっき言ってたのは・・・・・・」
「敵の襲撃があるかもしれない時に、《ルヴィリス》を持ってベッドに入ってたってだけだよ。それを君は・・・・・・」
「うふふ♪」

はやての問いに答え、クローセスは再び嘆息した。全くもって反省していない。この小悪魔的な性格には前々から痛い目に遭わされてきたが、改善しようにも千年前から変わらないものらしい。

「―――まあ、それは後でいいや。クロノ、分かった事は?」
「特には。ただ、この間の襲撃で向こうの持つディープスフィアの数は八個になったはずだ」

ロストロギアの保管庫―――他にも貴重な物はいくらでもあったのだが、その中から敵はそれと魔力結晶のみを奪っていった。不幸中の幸いとも言えないが、とりあえず次元災害を起こすような物は奪われていない。

「それと・・・・・・襲撃の中で出てきた古代魔導族の映像だ。なのはとあのフェレットもどきが戦ったグランゼストと、あと一人」
「おや」
「あら」

出てきた映像に声を上げたのは、レイとルヴィリスだった。映像に写るのは、弓を持つ赤髪の女性。高密度の炎を固めた矢を放ち、局員達を焼き殺す様が映し出されている。

「オーバーSランク魔導師の出撃で退散はさせられたが、仕留められはしなかったそうだ」
「でしょうね。あの子、逃げ足は速いし」
「知ってるのか?」

クロノの言葉に肩を竦めて頷き、ルヴィリスはクローセスの後ろから離れてその隣のテーブルに腰を降ろした。丈の短いワンピースから覗く足から、クローセスはすぐさま視線を外す。

「カルハリア=ティリウリス・・・・・・第三階梯よ。多分人形じゃないわね・・・・・・二年前の時はあの子、封印が解けてなかったみたいだし」
「詳しいな」
「ま、生きてた頃はあの子とも交流があったしね」

嘆息交じりに声を上げ、ルヴィリスはついとレイに視線を流した。その多少の苛立ちが混じった視線にレイもまた肩を竦め、小さく嘆息する。

「見た目はルヴィリスより大人だけど、中身がね」
「悪かったわね、この身体で」

見た目通りの少女のように頬を膨らませ、ルヴィリスはレイに向かって不満を飛ばす。その様子に苦笑しつつ、クローセスはレイへ視線を向けた。

「彼女の特徴、戦闘スタイルは?」
「見ての通りだね。属性は炎、弓を利用した遠距離狙撃をしてるみたいだけど・・・・・・」
「私みたいに?」

首を傾げたのはなのはだった。その質問に、すぐ傍に座っていたルヴィリスが答える。

「資料見せてもらった限りじゃ、火砲支援型としては貴女の方が優秀よ。ただまぁ、炎使いってのはあんまり距離を選ばないから・・・・・・」
「不用意に近付いたら痛い目見る、ちゅーこっちゃな」
「そーゆーコト」

ずばり言い当てたはやてに満足して、ルヴィリスは彼女にウィンクを向けた。つくづく千年も生きているとは思えない人物である―――いや、まあ死んではいるのだが。

「炎って言うのは、発生するエネルギー量が最も高いの。しかもその温度に上限は無い。使い手が優秀であればあるほど、そのエネルギーは半端無いものになるわ。あたしが知ってる最も優秀な術者は、本気出せば二億度ぐらいまでは行ったんじゃないかしら」

とっくににプラズマ化し、核融合が起きかねない次元である。そもそも、放射熱を抑えなければ味方もろとも発生させただけで焼き払ってしまうだろう。
―――先ほどまでとは打って変わって理知的な様子のルヴィリスに、はやては感心して頷いた。

「まぁ、そちらはいいさ。魔力量は多いけど、単純にそれだけの相手だ。君たちでも正面から渡り合える」
「はあ・・・・・・」

いまいち信用できない様子でフェイトが呟くが、レイはあっさりとそれをスルーする。その瞳をルヴィリスに向け、彼女の眼前に一つのモニターを映し出した。

「ルヴィリス、君は記憶力良かったよね? これが何だか覚えてる?」
「何だかって・・・・・・」

モニターに映し出された物―――ディープスフィアを指差し、質問された当人は小さく嘆息して見せた。その反応にレイが眉根を寄せるより速く、彼女は呆れに満ちた声を上げる。

「レイ・・・・・・あんたこれ、自分で作ってた奴じゃない。八百五十年ぐらい前に」
「・・・・・・・・・・・・」

ルヴィリスの声に、その場のメンバーの視線が一斉にレイに集中した。レイはしばし首を捻った後―――

「・・・・・・・・・ああ」
「『・・・・・・・・・ああ』じゃねーよっ! 何でそんな大事な事忘れてんだ!?」
「これ、ヴィータ。落ち着き」

ぽんと手を打ったレイにヴィータが噛み付き、はやてがそれをたしなめる。クローセスはレイに向かって精一杯冷え切った視線を向けたが、生憎この人の姿をした黒犬が堪える事は無かった。

「いやぁ、すっかり忘れてた」
「君は・・・・・・いや、いいや。それで、そのマジックアイテムは一体―――」

刹那―――会議室の画面に、アラートの文字が浮かび上がった。鳴り響く警報に、クローセスとルヴィリス、そしてレイを除いた全員が立ち上がった。
血相を変えて、クロノがエイミィに詰め寄る。

「何が起こった!?」
「今まさに話してた古代魔導族の反応! 場所は・・・・・・クラナガン!」
「な―――っ」

クロノが絶句し、クローセスは眉根を寄せる。その反応に首を傾げたのはなのはだった。

「どうしたの?」
「・・・・・・高町。クラナガンは、地上本部の管轄になる―――これの意味が分かるか」
「え? えっと―――」

しばらく前から管理局に協力しているとは言っても、まだまだ魔導師としても局員としても見習いのようなものである。言葉に詰まるなのはに苦笑し、シグナムは続けた。

「端的に言えば、本局と地上本部の仲は悪い」
「だから、本局所属である私達がすぐに動くのは難しいのよ」
「それじゃあ・・・・・・」

シグナムとシャマルの説明を受けて、なのは―――そしてフェイトの顔色も変わる。そしてその説明の最後を、クロノが締めくくった。

「元々奴ら相手には後手に回らざるを得ないが・・・・・・今回は、致命的に遅くなりそうだ」

苛立ちの混じるクロノを中心に作戦会議が進んでゆく中―――
レイは、己の中から引き出した記憶に小さく目を細めていた。







あとがき?



「と、ゆー訳でぇ・・・・・・新たなキャラとしてこのあたし、ルヴィリスがやってきたわよ〜」

「あ、やっぱりあとがきまで出張してくるだね」

「とーぜんよ。ここなら誰にも邪魔されないしね〜♪」

「俺はいるけどな。まぁ、気にするな」

「おっけ、気にしないわ」

「気にしてよそこはっ! って、またそーやって服に手をかける・・・・・・」

「むぅ、いけずなんだから」

「そーゆー問題じゃなくて・・・・・・いや、いいや。ええと・・・・・・とりあえず前にしなかったレイと、ルヴィリスの紹介をしておきます」


レイムルド=L=クレスフィード

第一階梯古代魔導族。固有能力の中では最も特殊で希少な《原書》を有しており、全盛期の時代では古代魔導族のNo,2であった。属性を選ばぬ魔導だけでなく、その《原書》から放たれる無数の魔剣の数々は非常に強力。

ただし慢性的な魔力不足に悩まされており、普段は子犬の姿で魔力消費を抑えている。この姿になったのも、人間の姿では消費に耐えられず、魔力を吸う魔獣へと存在を変えた結果である。

非常に面倒臭がりな性格で、感情を露にする事は少ない。しかし人をからかう事は好きで、あまりそういった事に慣れていないなのは達や分かっていても反応してしまうクローセスの事は気に入っている。



ルヴィリス=リーシェレイティア

元、第二階梯古代魔導族。能力の扱いでは第一階梯にも劣らない実力を持っていたが、希少性や魔力量は取り立てるほど高くは無かったため、第二階梯止まりとなっている。

同じく第二階梯であったガルディアラスの従者であった。そのため、武具となった後も彼の一族にのみ扱われる事を望む。一族の者達を深く愛しており、クローセスは特にお気に入りとなっているようだ。

知識や思慮も深く、また高い戦術知識も持っているのだが、性格は小悪魔のように悪戯好き。クローセスには半分冗談、半分本気で詰め寄っていたりする。


「あたしの固有能力は一応伏せとくわね〜」

「驚かせたいのか?」

「あたしのは驚くほどのもんじゃないでしょ。レイみたいに、燃費はどうしようもなく悪いけど、性能は《王の財宝》と《無限の剣製》を合わせたような反則技は持ってないもん」

「構成速度は《無限の剣製》、出てくるのは劣化させないから《王の財宝》か。その代わり、そんな規模で展開したら魔力がフルにあってもほとんど持たないだろうが」

「どーしてそうあんた達はそうやって際どい発言ばっかりするんですか・・・・・・そういえば、その当人(犬)がいないけど」

「作者の奴が、『四人もいると声だけじゃ分かりにくい・・・・・・って言うか、クロスとレイが分かりにくい』って言ってたんでな」

「しばらくお休みよ」

「なるほど。さて次回は・・・(カンペ見る)・・・あれ、またユーノが巻き込まれるの?」

「あんたの不幸癖が感染ったんじゃないの?」

「不幸って伝染するんだ・・・・・・とりあえず、一度はユーノ単独戦闘になるという事なので、ユーノファンの方々はお楽しみに」






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