『クローセスを救う』―――それが、フェイトをはじめとするアースラメンバー達が掲げた目標らしい。その会議が本人を置いてけぼりで進んでゆく中、クローセスは背後にある気配に小さく嘆息した。 「・・・・・・レイ、ルヴィリス・・・・・・そろそろ入ってきたらどう?」 「あはは、バレてたかー」 悪びれる様子も無く、レイを頭に乗せたルヴィリスがミーティングルームに入室してくる。そちらに半眼を向けつつ、クローセスは小さく嘆息した。 「・・・・・・何か言う事は?」 「謝りはしないわよ。別に、感謝も求めはしないけど」 それは、スイッチが切り替わるように。彼女が持つおふざけの雰囲気は即座に消え、千年の時を経験した古代魔導族としての重みが言葉に宿る。それにフェイトたちが息を飲む中、クローセスはそれに対して小さく肩を竦めて見せた。 「・・・・・・『欠落』の性質上、僕は人の人格を見極めるのが苦手なんだ。下手をしたら、僕らが排除されてたかもしれないんだよ?」 「何? 一ヶ月以上一緒にいて、まだフェイトたちの事信じ切れないの?」 「分かってて言ってるでしょ、君は」 ルヴィリスの言葉に反応して悲しそうな表情を見せるフェイト―――彼女を横目に映し、視線を伏せる。 『欠落』するほどに『孤独』を知るが故、クローセスは基本的に他人と相容れる事が無い存在なのだ。三年来の騎士団の仲間ですら一歩距離を置くクローセスが、一ヶ月そこいらの協力者に心を許す事は、性質的に不可能である。 「そう簡単に人を信じられるようになれば、『欠落』も癒えた証拠になるんじゃないか?」 「一理あるけど・・・・・・」 「ふぅ・・・・・・ま、いいわ。ゆっくり治しなさい・・・・・・実際、今が一番不安定なんだから、アンタ」 ―――それは、『これ以上悪化する事はない』と言う意味だろうか? ルヴィリスの言葉を問いただそうと口を開ける―――だが、それを発する前に、レイが声を上げていた。 「ディープスフィア・・・・・・いや、あの名も無き宝玉の事、全部思い出したよ。正直、最初に睨んでた事態より厄介かもしれない」 「?」 「どういう事だ?」 クローセスが眉根をひそめ、同じような表情のクロノが問う。レイは小さく嘆息すると、ルヴィリスの頭の上から降りて人間の姿へと戻った。黒いローブ姿で机に近付き、モニターに向かって手をかざす。 「・・・・・・ルヴィリスが言った通り、これは僕が八百五十年前―――ちょうど、この魔獣の身体を作り上げた頃に生み出したものだ」 「どんな力があるんですか?」 「別段、これ自体には何の力もない。ただの置物程度さ」 ユーノの言葉に肩を竦める―――レイのその引っかかる言い方に、少年三人は似たように眉根を寄せた。それ自体に問題が無いのならば、一体何が厄介だと言うのだろうか。 「知っての通り、僕は魔力が常に不足している。それを改善するために、僕はこの魔獣の身体を作った訳だが―――生憎、魔獣よりも第一階梯の古代魔導族の方が存在概念が上だったらしくてね。上手く行かなかったのさ」 存在概念が大きすぎて、魔獣と言う器に収まりきらなかった。一リットルの器に五リットルの水を注ぎ込もうとするような物か。だが、今のレイは魔獣の身体を完成させている―――ならば。 「入り切らない物は削ればいい、って言う事ですか?」 「君は頭がいいね、ユーノ。その通りだ」 「どういう事だ?」 抽象的な会話に、クロノとクローセスを含めユーノとレイ以外の全員が首を傾げる。それに対しレイは簡単だ、と呟き――― 「つまり、魔獣としての器に収まりきるよう、古代魔導族としての力を削って別の入れ物に収めたのさ」 「・・・・・・! まさか、ディープスフィアは・・・・・・!」 「レイさんの第一階梯の古代魔導族の力、そのもの・・・・・・・・・!」 クロノとフェイトが、慄くように声を上げた。事態を理解し、クローセスもまた目を細める。第二階梯がそれを手に入れたからと言って、第一階梯に届くとは思わない。だが―――相手がそれに準ずる力を得れば、今度こそ倒せるかどうか分からなくなるだろう。 「弄られる事の無いように次元の彼方に放逐したんだけど、まさかこんな事になるとは思ってもみなかったよ」 「あの・・・・・・それって、他の古代魔導族さん達でも操れるものなんですか?」 首を傾げつつ、なのはが声を上げる。その言葉を受け、レイは眉間に指を当てて小さく嘆息して見せた。 「分からない。いかんせん、今までに事例が無いからね。ただ、成功しても失敗しても―――恐らく、ロクな事にはならないよ」 「・・・・・・・・・合計個数は?」 「九個。全部揃ったからどうって訳じゃないけど・・・・・・まあ、全て奪われるのは避けたい所だ」 敵に奪われた数は八個―――もう、ほとんどが敵の手中に収まっている。今までの戦績は、敗北こそ少ないものの、ほとんど敵の目的を阻止できた事は無い。これは未だ、相手の予想を上回る戦いを出来ていないと言う事だ。 「・・・・・・最後の一つの場所、分かる?」 「《原書》のデータから、次元世界全体で座標を割り出してる。そろそろ―――と、噂をすれば何とやらだ」 机の中心に、無限書庫から送られてきたデータが開く。そこに記されたデータを眺めてから、レイはリンディに視線を向けた。 「ピースは揃った。命令は?」 「すぐにロストロギアの回収に向かいます。エイミィ、準備を」 「了解です」 命令を受け、エイミィがオペレーティングルームに向かう。後は、現地へと向かうメンバー。 「クロス君、フェイトさん、ユーノ君、そしてなのはさん・・・・・・この四人で現地に向かいます。はやてさんと守護騎士の四名、そしてクロノは待機―――すぐに出られるように準備をしておいてください」 『了解!』 あまり人数が多くても機動力が下がる―――それとコンビネーションを考慮しての編成だろう。了解して頷き、アースラメンバー達はミーティングルームから去って行った。 ―――それを見送り、レイは小さく嘆息する。 「アレンと言いクロスと言い、相変わらず自分を大事にしない・・・・・・結局、あの事は話さずじまいって訳か」 やれやれと肩を竦め、レイもまた皆の後を追ってその場から歩き出した。 * * * * * 指定された次元世界へと赴き、その大地に降り立つ―――その時クローセスが感じたのは、僅かな違和感だった。 「・・・・・・冷気?」 僅かだが、気温が低く感じられる。活動に支障をきたすような温度変化ならばバリアジャケットのフィールドが働くが、それほどの物ではないらしい。怪訝そうな表情のクローセスに気付いたのか、ユーノはクレスフィードを起動した姿でクローセスの方に視線を向けた。 「クロス? どうかした?」 「いや・・・・・・少し、嫌な予感がしただけ」 いや―――少し所ではない。それを表情に出さず、胸中で呟く。肌が粟立つ感覚や、脳が鳴り響かせる警鐘―――そのどれもが、この空間が普通ではないと告げていた。 「・・・・・・とりあえず、進もう。長居は無用だ」 今いる場所は森に沿った荒野。この森の中に、目的のディープスフィアはあるらしい。敵も狙っている事だし、一刻も早く確保に向かった方が良いだろう。 「これから確保に向かうよ。準備はいい?」 「う、うんっ!」 「・・・・・・なのは?」 やたらめったら元気良く頷くなのはに、ユーノが首を傾げる。クローセスもまた同じように首を傾げたが―――数秒後、その答えに行き着いた。 (ユーノが加わってからはこれが最初の任務になる訳か。意識する程度には成長したって事、かな) なのはが己の本心を自覚してから、まだ数日しか経っていない。おまけにアースラにいるときはほとんど他のメンバーが一緒にいた―――と言うか、なのはが恥ずかしがってユーノと二人きりになるのを避けていたため、この少人数の状況に慣れていないのだろう。 『ほほえましい限り、だね。フェイト』 『自分の事もあるのに余裕だね、クロス・・・・・・』 『楽しめるものは楽しまなくちゃ損って事さ』 念話でフェイトと会話しつつ、クローセスはそこから宙に飛び上がった。最近マスターした飛行魔法を駆使し、目的地まで一直線に進み出す。無論、その途中も周囲の気配に気を配る事を忘れなかった。ただ、その後ろで――― 「なのは、大丈夫? 顔赤いけど・・・・・・」 「だ、大丈夫だよっ! ほら、元気元気!」 「う、うん。まぁ、有り余ってる感じではあるけど・・・・・・無茶しちゃダメだよ。なのはを護るのが僕の仕事なんだから」 「はにゃ!? う、うん、ありがとう・・・・・・」 ―――などと言う、およそそぐわないような空気を展開しているバカップル予備軍がいたが。 『既になってるんじゃないの?』 「? ルヴィリスさん?」 「・・・・・・人の心を勝手に読むのは止めてね、ルヴィリス」 短剣の姿でクローセスのベルトに装着されているルヴィリスが、楽しそうに声を上げる。パスを通して内心を読んだのか、それとも分かりやすかっただけか―――クローセスは嘆息して先へと視線を向けた。後にも先にも、ルヴィリスに勝てる気だけはしないのだ。 ―――刹那。 「―――ユーノ、防御!」 そう叫びながら、クローセスはフェイトを抱えて足場を作り、横へと跳んだ。状況は掴めていない様だったが、クローセスの言葉にユーノは反射的に従い、ラウンドシールドを発動させる。 そこに、地上から放たれた砲撃が突き刺さった。 「敵っ!?」 「気配からして傀儡兵だ。ユーノ、なのは、君達はこいつらの相手をして。僕とフェイトが先行する―――正直、その方が速い」 共に高速戦闘を得意とする魔導師だ。二人を連れているよりも、確実に速く到着できる自信がある。多少の不安はあったが、敵に逃げられては元も子もない。転送地点から近いこの位置なら、例えピンチに陥ったとしてもアースラからの救援はすぐに来るだろう。 その考え全てを理解していたかどうかは分からないが、ユーノとなのははその言葉に頷いて見せた。 「よし・・・・・・フェイト」 「うん。二人とも、気をつけて」 「そっちもね」 「こっちを片付けたら、すぐに助けに行くから」 二人に向かって頷き、クローセスとフェイトは先ほどのものを倍する速度で飛び出した。それを追うように地上から砲撃が放たれるが、二人の速度を捉えきれずに空を切る。 『クロス、相手は・・・・・・』 『分からない。ただ、覚悟はしないといけないだろうね』 凄まじい風圧で肉声は聞こえないので、念話で会話をする。目標地点へはあと数十メートル―――あと数秒で到達する。捉えきれない速さのためか、敵からの攻撃は無い。 『降りるよ』 『わかった』 速度を抑え、木々で塞がれた地面へと降りる。周囲に傀儡兵の気配は無く、少なくともクローセスの知覚能力では敵を発見する事はできなかった―――が。 ―――着地した地面、そこは一面の氷に覆われていた。 「―――ッ!! しまっ―――」 「きゃあっ!?」 足を付いた瞬間氷は一気に膨張し、二人の足を膝の上までを飲み込んだ。フェイトに至っては、バルディッシュも全て氷に封じられてしまっている。すぐさま《ルヴィリス》を抜いて氷を破壊しようとするが――― 「はい、そこまで」 ―――飛んで来た氷の飛礫が、クローセスの手から《ルヴィリス》を弾き飛ばしてしまった。三メートルほど離れた場所に落ちた《ルヴィリス》はすぐさま実体を現して刃を取るが、その身体もすぐさま氷に囚われる。 ほとんど一瞬の内に動きを封じられ、クローセスは忌々しげな視線を前方へと向けた―――その先の、蒼い女性へと。 「・・・・・・シアシスティーナ」 「―――っ!」 「久しぶりね、ガルディアラス」 《氷の山猫》シアシスティーナ―――しばらく前にしたくもない再会をした相手が、そこに立っていた。フェイトはその顔に以前に感じた恐怖を浮かべ、クローセスは絵に描いたような『最悪の状況』に思わず唇を噛む。 「・・・・・・・・・」 「そんなに睨まないでくれるかしら? ま、私が憎いのは分かるけど」 勝ち誇った笑みを浮かべるシアシスティーナに向かって、歯軋りをしながら烈火のごとき視線を向ける。だがそんな事で状況が変わるはずもない。そんな中――― 「ふふ・・・・・・良いわよ、どんどん憎みなさいガルディアラス・・・・・・・・・ほら、私を殺したいんでしょ? あの男を殺した私を」 「―――ッ!!」 目の前の古代魔導族は、躊躇う事無く禁句を口に出していた。 シアシスティーナの言葉に愕然とし―――次の瞬間、クローセスの殺気は先ほどとは比べ物にならないほどまで高まった。フェイトが思わず息を飲むほどのそれを、黙れとばかりにシアシスティーナに集中させる。だが、それを涼しい顔で受け流し、氷の女王は冷然と笑む。 「そう・・・・・・ジェイス=クワイヤードとリース=クワイヤードだったかしら? あの無様な兄妹は」 「貴様―――!!」 「クロ、ス?」 見た事がないほどに感情をむき出しにするクローセスに、フェイトは思わず目を見開いてその姿を見詰めていた。滅多に―――いや、これほどに怒りを露にした事など、今までに見たこともない。その様子ににやりと笑み、シアシスティーナは芝居がかった様子で声を上げる。 「あら、知らないのね。ガルディアラスがして来た事・・・・・・ふふ、今思い出しても笑っちゃうわ。何百人と殺して辿り着いた場所で、ただの一人も救えなかったんだから。ねぇ、ガルディアラス?」 「黙れッ!!」 「あはははっ!! 良いじゃない、教えてあげましょうよ! 無様な男の物語を!」 子供のように笑いながら、シアシスティーナは両手を広げた。上機嫌な彼女に対し、クローセスの憎悪は肌を粟立たせるほどにまで高まってゆく――― 「昔々、ある所に中の良い兄妹がいました。二人は有名な魔剣工の子供で、盗賊に奪われた父の魔剣を探すために旅に出ていたのです」 「シアシスティーナッ! 貴様―――」 「その兄妹は旅の途中、正義の味方を気取った騎士の一行と出会いました。目的を一致させた彼らは、共に敵と戦い始めたのです」 子供に紙芝居でも読み聞かせるような声音で、クローセスの反応を楽しみながら、シアシスティーナは尚も声を上げる。フェイトは何も言う事が出来ず、ただ呆然と沈黙するだけだった。 「しかし、悲劇は起こったのです! その兄は己の故郷を人質に取られ、騎士達を裏切ってしまいました。そんなはずはないと、妹は仲間の騎士を連れて兄の元へ向かいました。しかし、彼は説得には応じなかったのです。騎士は彼を止めるために戦い、ついに彼を倒しました―――」 ―――フラッシュバックするのは、黄昏の荒野に立つ墓標。 にんまりと、シアシスティーナは嗤う。その口元に、三日月の笑みを張り付かせて。 「しかしその直後、二人の故郷を人質に取っていた敵が現れ、全員に攻撃を放ちました―――ああ、何と言う事でしょう! 騎士の攻撃で傷ついていた兄はその攻撃を避けられず、その命を散らしてしまったのです!」 「黙れ・・・・・・」 ―――耳に焼き付いているのは、妹を頼むと言って事切れた彼の声。 怨嗟を込めて、呻く。しかし、それでも彼女は止まらない。 「ふふっ、あはははっ! それにしても、無様よねぇ・・・・・・」 「黙、れ・・・・・・!」 「故郷なんてとっくに滅ぼされてたのに、ずっと気付かなかったんだもの、あの男! 大した道化よ! ねぇガルディアラス、そう思わない!? あははははははははははははははははははははははっ!!!」 ―――この身に染み付くのは、己の手で傷つけた彼の焼けるように熱い血――― 耳障りな、笑い声が響く――― 「黙れ」 憎悪で目が血走る、視界が紅く染まる――― 「黙れ、ダマレ・・・・・・!」 殺戮衝動が広がる、『欠落』のヒビが深まる――― 「黙れッ、黙れ、黙れ黙レダマレダマれ黙れダマレ黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええッ!!!」 ―――ああ、もう限界だ。 血の色に染まる意識と共に、クローセスは己の衝動に身を任せた――― バキンッ! 「ッ、クロ―――」 「あああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」 足元の氷を衝撃波を叩きつけて砕き、ルヴィリスの制止も振り切り、クローセスは一直線にシアシスティーナへと飛び掛った。砲撃音のごとき響きを走らせ、一切の加減無しにシアシスティーナへと拳を叩きつける。 だがそれは、現れた氷の壁に防がれた。ほとんど制御していない衝撃波が暴発し、反転してクローセスの腕を傷つける。 「あははははははははははははっ!! いいわよガルディアラス! もっと憎みなさい、人間の心なんか棄ててしまいなさい!」 「ダメ、クロスッ! 抑えなささい! あんた、戻れなくなるわよ!?」 ―――■■■■■の声が聞こえる。 最早、誰が誰かの判別も付かない。ただ目の前の敵をコロセ―――本能だけが、そう叫ぶ。シ■シス■ィーナをコロセと。 「壊れたら持ち帰って私の人形にしてあげるわ! そしたら、ガルディアラスは私のモノ―――もう誰にも渡さない!」 「シアシスティーナ、あんた―――!」 ―――酷く、耳障りだ。 周りにいる人間が誰であるとか、もうそんな判別は付かない。目の前の敵すらも―――いや、敵は誰だ? 目の前にいる蒼い女か、向こうの方で凍っている浅葱色の女か、それとも――― 「づッ!?」 ―――頭痛。思考を破棄する。 構わず、彼は衝撃波を伴う踵を蒼い女へと振り下ろした。しかし現れた氷がそれを受け止め、フィードバックした衝撃波が足を斬り裂く。血が吹き出るが―――構わない。ただ敵を殺せれば――― 「やめて・・・・・・」 ―――声が、聞こえた。 再び、思考を破却。必要なのは、敵を殺す事のみ――― 「やめてよ・・・・・・」 ―――再び、声。 これは、フェイトの声だ―――何故、自分はそれを判別できた? フェイトは敵か? いや違う、彼女は敵じゃない。ならば、彼女は――― 「もう、やめて―――――――――ッ!!!」 「―――ッ! 五月蝿いわね、邪魔よッ!!」 ―――フェイトの叫びに、体が止まった。 蒼い女は氷の槍を生み出し、フェイトを殺すためにそれを撃ち放つ――― ―――ダメだ! フェイトを助けろ! ―――コノスキヲウテ! イマナラコロセル! 相反する二つの声がクローセスの足を一瞬鈍らせ――― ぞぶり ―――刃が肉に潜り込む音が、生々しく響き渡った。 あとがき? 「クロス『崩壊』―――となった訳だが」 「・・・・・・今日はいないのね、クロス」 「代わりに僕が来たんだけどね」 「おお、何か久しぶりだな。最近クロスの奴が休まなかったから中々出てこなかったが」 「まーね。二十三話以来かな」 「・・・・・・ゴメン、今日はあんまり話したくないわ。あたしも休んでる」 「おう」 「ゆっくりね」 「ん・・・・・・」 「行っちまったな。さて、どうする? 流石に今は下手な発言できないが」 「だねぇ。今までで最高レベルの急&シリアス展開だから」 「ああ。まあ今回は、余計な事は言わずに速めに終わらせておくか」 「久しぶりに出てきたんだけど・・・・・・まあ、しょうがないか。それじゃあ次回、一体何が起こったのか―――お楽しみに」 |