『Blue Blue Eternal Sky』




拝啓(ってこっちだと書くらしいけど、どういう意味だろう?)兄さんへ。

元気ですか・・・・・・って、兄さんなら言うまでもなく元気だよね。きっと、騎士団の皆といつも通り騒がしく暮らしてるんだと思います。
僕は、ちゃんと元気だよ。色々と問題も解決して、今まで以上に。

こっちに来てから、新しい掛け替えの無い仲間が出来ました。フェイト、ユーノ、なのは、はやて、クロノ・・・・・・数え切れないぐらいたくさんの、大切な仲間が。その中でも、フェイトとは特に仲がいいよ。僕が騎士の誓いをしたって言ったら、兄さんは驚くか、それとも納得するか・・・・・・何だか、今から反応が楽しみです。

とりあえず、近況報告を。僕は、《リインフォース》・・・・・・ガルディアラスを使えるようになりました。まあ、それに付属した問題も発生してるんだけど・・・・・・


 * * * * *


「・・・・・・せっかく大団円かと思ったのに、妙な事されてるね」
「レイさん、一体何が・・・・・・」

戦いの後、ウェルフィレアの最後の行動を調べるためにレイの元へと向かったのだが―――そこで返って来たのは、そんな反応だった。

「フェイト。クロスはね、以前魔力の使いすぎで寿命を削り過ぎた事があったんだ」
「!!」
「レイ、それは・・・・・・」
「まあ、それを元通りにするために、周囲の魔力を吸収して寿命魔力に変える術式をクロスの中に織り込んだんだけど・・・・・・ウェルフィレアは、どうもそれを永続化したらしい」

そのレイの言葉に、二人はきょとんと首を傾げた。それに、何か問題でもあるのだろうか、と。

「確かに、その術式に害は無い。さっきなのはとユーノにもかけてきたからね。でもまぁ、クロスの場合はちょっと勝手が違う」
「僕、だけ?」
「《リインフォース》は使えば使うほど、その使い手の存在は人間から離れてゆく。それ自体は大して問題ないけど・・・・・・普通なら、寿命だけあっても体の劣化を防ぐ事は出来ない。体の劣化を癒す術が合っても、寿命が無ければどうしようもない。だけどね、クロス・・・・・・今君は、その二つを揃えてしまってるんだ」
「―――!」

驚愕で、思わず息を詰まらせる。それは、まさしく古代魔導族たちが求めていた『永遠』と言う物。

「確かに、このまま一生《再生》を使わないで生きていけばいいかもしれないけど・・・・・・それなら、精々二百年ぐらい生きるだけで済むと思う」
「・・・・・・・・・術式は、解けないの?」
「精神崩壊を起こしてもいいなら剥がせるけど」
「それは勘弁」

レイの言葉を受け、深々と嘆息する。自分の性質上、戦わずに生きてゆく事など出来るはずもない。ならば、自殺でもしない限り死ぬ事は出来ない、と言う事か。

「・・・・・・はぁ」
「クロス・・・・・・大丈夫?」
「ああ、うん。まぁ・・・・・・別に、死ぬ訳じゃないし。もっと後になってから考えるよ」

少々引きつった笑顔で、そう呟く。恐らく、自分はある一定以上には老いる事がない―――いずれ、嫌でも認識させられる問題なのだ。ならば、しばらくはそんな事を考えないで生きていたい。
クローセスはそう胸中で呟き、小さく嘆息した。


 * * * * *


古代魔導族たちが求めていた物を、何でもない存在の僕が手に入れる―――また、何とも皮肉な話だよね。兄さんも、もしかして知ってたのかな? 人間から離れて行くって事に・・・・・・知ってても知らなくても、きっと兄さんは変わらないだろうけど。

とりあえず、そっちの問題はちょっと考えたくらいじゃ答えは出ないから・・・・・・後回し、って言う事で。他にあった事といえば・・・・・・うん、やっぱりユーノとなのはが両想いになった事だと思う。今までが今までだから、その反動が大きいのはまあ良く分かるんだけど・・・・・・いやもう、顔を合わせれば四六時中イチャイチャイチャイチャ。数日合わないだけでイライラし始めるわ誰か捕まえて惚気話を始めるわ。(ここで派手にインクが飛び散っている。ペンを握り潰したらしい)

そういえば、この間レイから聞いたんだけど―――


 * * * * *


「ユーノ。資料作成完了だけど、そっちの仕事をいくらか引き受けようか?」
「あ、ありがとうございます。じゃあ、これを」

レイの言葉を受け、ユーノは持っていた資料作成のリストの一部を渡した。それをざっと眺め、レイは小さく笑みを浮かべながら頷く。足元には緑の魔法陣を展開し、再び新たな本を集め始めた。

「ああ、そうだユーノ。《写本》の具合はどうだい?」
「問題無いですよ。レイさんがくれたこれのおかげで、僕の魔力が喰われる事もほとんど無いですし」

言いつつ、ユーノは装着した腕輪とチョーカーを示す。周囲の魔力を吸うその武装は、直接《写本》と繋がりそれの維持に努めている。《写本》の消費魔力量は《原書》よりも遥かに少ないため、それだけでも十分制御する事が出来ていた。

「ふむ・・・・・・それじゃあ、今度扱い方を教えよう。まあ、それほど扱いやすいものじゃないけど」
「そうなんですか?」
「まあね・・・・・・武装を呼び出せても、別段本来の使い手って訳でもないから・・・・・・まあ、それほど使い勝手のいい物じゃないさ。それに、君の魔力だと呼び出すだけでも一苦労だろうし。予備カートリッジをもうちょっと持たせた方がいいかな?」
「いや・・・・・・僕はそれほど前線に出る訳じゃないですし」

苦笑交じりに、ユーノは資料に目を戻す。その背中に、レイはにやりとした笑みを向けていた。

「いいの? なのはを護るんじゃなかったのかい?」
「護りますよ。なのはに危険があれば、例えこの仕事を捨ててでも。でも―――僕は、なのはを信じてますから」
「信じる、か」

ユーノの返答に、レイは小さく笑う。その背中はまさしく、今まで見てきた己が相棒の物とまったく同じだったから。

「まったく、バカになったねぇ・・・・・・ユーノ」
「褒め言葉として受け取っておきます」

そのレイの言葉を―――ユーノもまた、嬉しそうな笑みと共に受け取っていた。


 * * * * *


レイ曰く、ユーノは兄さんに似てきた、との事。それがいい事なのか悪い事なのか・・・・・・本人はきっとそれでいいと思ってるんだろうけど、真っ当に生きるのはきっと出来なくなると思う。
なのはを護り続ける事・・・・・・それがユーノにとっての生きる意味。兄さんにとって、姉さんを護る事だけが生きる意味であるように。それが正しいのか間違ってるのかは、正直僕には判別する事は出来ない―――いや、きっとそれも関係ないのかもしれないね。それの他に意味なんて無いなら・・・・・・

話は変わって、僕はフェイトたちと同じ小学校(そっちで言うジュニアスクールかな?)に通う事になりました。いや、僕は遠慮したんだけど・・・・・・リンディさんはいいって言うし、フェイトも何か無言でじーっと視線を向けてきたし。あの空気で断れるのはきっとクラインさんとレイヴァンさんぐらいだと思う。
そんなこんなで、結局僕ははやてと一緒に編入と言う事になりました。いやまあ、いいんだけどさ、別に・・・・・・


 * * * * *


「今日からこのクラスに入ります、八神はやてです。よろしゅうな」
「えーと・・・・・・同じく、クローセス=シェインです。どうぞよろしく」

何か虚しいものを堪えて浮かべているクローセスの虚ろな視線―――生憎、それに気付いたのは隣にいるはやてとクラスの中のフェイトだけだった。
そんな表情のままふらふらと席に座る。はやてはフェイトの隣、クローセスはその後ろだった。

「今日から一緒のクラスやな」
「うん。よろしく、はやて」

隣同士笑顔を交わし、共にVサインを送る。なのは、すずか、アリサにもその視線を送り、はやては再びその視線をフェイトに戻した。

「―――そや、フェイトちゃん。クロス君となんか進展あったん?」
「ふぇ!?」

突然の言葉に思わず声を上げかけ、慌ててフェイトは口を塞いだ。周囲に気付かれていないのを確認してから、小さく眦を吊り上げてはやてに向ける。

「はやて!」
「ええやないかそれぐらい聞いたって。それに、うかうかしてたら私が取ってまうよ?」
「むっ」

ぴくりと反応し、フェイトは眉根にしわを寄せた。その反応を愉快そうに眺めながら、はやてはなおも続ける。

「顔良し性格良しツッコミ良し。私としては文句なしなんやけどな〜」
「ダメ、そんないい加減な理由で―――」
「ほぅ? じゃあ本気だったらええんか?」
「―――それは」

ニヤニヤとした表情のはやてと、どこと無く不機嫌な表情のフェイト―――その二人の姿を後ろから眺めながら、嫌な予感にクローセスはぶるりと身を震わせていた。


 * * * * *


・・・・・・最近、あの二人が何を考えてるのか良く分からない・・・・・・変な事にならなきゃいいんだけどなぁ。何かこう、色々とロクでもない事になりそうな予感が・・・・・・何でだろう?

―――今の所、あったのはこんな感じかな。これからの事は・・・・・・そうだね、フェイトが執務官になるなら、僕は執務官補佐になろうと思う。これからもずっと、フェイトを助けてゆくために。とっくに忘れかけた存在意義を、彼女は見つけてくれたから。
僕は、元気だよ。これからずっと幸せに生きていく、って言う訳には行かないと思うけど―――それでも前を向いて、絶対に諦めないで・・・・・・後悔はナシで、生きていく。譲れない、大切なものをこの手から離さないように・・・・・・。




机にペンを転がし、背もたれに身体を預けながら大きく伸びをする。晴れ渡った空を見上げ、クローセスは小さく微笑んだ。

「意味も無いのに、ね」

元の世界の文字で書かれた、この世界に一人しか読める者のいない手紙。届くはずも無いそれを眺め、小さく苦笑する。元の世界に未練はあるのだろう。自覚の無い心に向かって、そう問い掛ける。

「・・・・・・だけど、もう選んだから」

自分は選んだ。新たな仲間と共に歩む道を。ならば―――その道を突き進む他に選択肢など無い。

「ようやく見つけたよ、兄さん。生きる意味を・・・・・・僕の、命の使い方を」

故に―――迷い無く、クローセスはそう呟いていた。


 * * * * *


海鳴の町の、小さな林の中。昼間でもあまり人は通らない、そんな場所―――そこに、レイは人間の姿で一人立っていた。静かに目を閉じ、周囲の音に耳を澄ます―――と、小さく嘆息。

「・・・・・・そろそろ出てきたらどうだい? いい加減、誤魔化せるなんて思ってないだろ?」
「―――やはり、お前には気付かれていたか。流石だな、レイムルド」

響く声―――同時に、その背後に一つの気配が生まれた。膨大な魔力を秘めた羽音を羽ばたかせ、その存在はそこに降り立つ。レイは、その存在を認めて小さく嘆息した。

「―――やっぱり君がいた訳か、クラグスレイン」
「いつから気付いていた?」
「ルヴィリスが君の魔力を漂わせてた時点で、大体は。それに―――そもそも、ユーノがあの『鍵』を回せる訳が無かったからね。例え魔力が全開でも、なのはの魔力も一切消耗していなかったとしても・・・・・・その程度の魔力で《写本》を押さえられる訳がない。奇跡なんて信じるほど、僕は信心深くないからね」

肩を竦め、半眼でその蒼い髪の男を見つめる。神官服にも似たその蒼い服は、彼が戦士である事を巧妙に隠していた。クラグスレインは、その口元に小さく笑みを浮かべる。

「流石だな、レイムルド。私も、お前には勝てる気がしない」
「よく言うよ。最初から、僕には気付かせる気だったんだろ? 君は、昔からそういうのが得意だったからね」
「フ・・・・・・・・・」

淡い笑みを浮かべるクラグスレインに向かって、レイはただ嘆息の混じったと息を吐き出す。珍しく、その口調の中には苛立ちが混じっていた。ジロリ、と鋭い目線を向け―――声を吐き出す。

「それで・・・・・・・・・いつまでその気持ちの悪い喋り方をする気だい? クラグスレイン・・・・・・いや、クライン=ゲイツマン」
「―――ククッ・・・・・・そうか? これでも結構気に入ってるんだが」

刹那―――滑るように、目の前の男の口調が変わった。蒼い服は光に変わり、その背中に集まって長い髪へと変わる。服は、赤を基調としたロングコートへと変わっていた。クラグスレイン―――否、天界騎士団四天王クライン=ゲイツマンはニヒルな笑みでそこに立つ。

「しかしまぁ、確かにあの喋り方は疲れるな。あんまりやるもんでもないか」
「・・・・・・どうでもいいよ。それで、どこまでが君の企みだった訳?」
「おいおい、酷い言い方だな。俺はクロスの『欠落』を癒したかっただけだぞ」
「確かに、目的はそれだったろうね。でも、そこまでに一体どれほど暗躍を繰り返したのかって聞いてるんだ」

イライラと声を発するレイに、クラインはどこまでも軽薄な表情で声を上げた。

「何もしてないさ。偶然、クロスにぴったりな環境を見つけたってだけだろ」
「―――作り出した、の間違いだろ。この状況はあまりにも出来過ぎてる。クロスの『欠落』を癒すための要員としてフェイトかはやて。クロスに似た境遇で、クロスを彼らに入れ込ませるための要員としてユーノ。フェイトとはやてがクロスに興味を持つようにするための要員としてシグナム。そこに古代魔導族が・・・・・・しかも、よりにもよってシアシスティーナが関われば、クロスの反応も周囲の反応も目に見えてる」
「・・・・・・・・・」

どれほど言葉を重ねても、クラインの不敵な表情は崩れない。既に死んだシアシスティーナを作り出すためにメルレリウス、その身体を完全なものにするためにウェルフィレア、そしてクラインの暗躍をルヴィリスに気付かれないようにするため、目を逸らすために加えたカルハリア。
しまいには嘆息を漏らし、レイは更に続ける。

「そもそも、メルレリウスが《写本》の存在を知ってるだけでもおかしい。アレを知って、尚且つ封印を解けるのは僕と君だけだ。君が舞台をセットしたなら、連中が何の影響も無くこちらの世界に渡れた理由も説明が付く。恐らく、封印したままこちらに送り込んだんだろ? そして奴らに魔法の技術を与え、《写本》の知識を与え、暗示をかけて疑問を抱かせなかった」
「やれやれ、お見通しって訳か」
「フン・・・・・・わざとらしいね。悟らせるのも作戦の内なんだろ? 考えてみれば、現れた古代魔導族はガルディアラスの関係のある奴ばかり・・・・・・明らかに作為的だ」

レイの言葉を受け、クラインはやれやれと首を振って見せた。その不敵な表情は崩さず、肩を竦めて声を上げる。全ての始まりを。

「流石に、ここを見つけたのは偶然だ。でかい魔力放出を感じて分け身で見に来てみれば、魔法少女がガチで撃ち合ってたんでな。興味があったんで見てたら、その二人が和解した。しかも片っぽはクロスと相性がいい。とりあえず保留にして、他の世界にもいい場所が無いか探しに行った」
「・・・・・・そして半年後、再び巨大な魔力反応が起こった」
「しばらくぶりに見に来てみれば、何やら更に事件が起こってる。それをまた眺めてたんだが・・・・・・いやはや愉快だったな。何もしないでも勝手に舞台が整ってく訳だし」
「『何もしない』ね」

ジロリ、とレイは視線を細める。殺気すらこもったそれを受けても、クラインは一切物怖じはしなかったが。頭痛すら感じ、レイは眉間に指を当てて声を上げる。

「はやても候補だったから、何もしなかった訳か。クロスの相手には、何かしらのトラウマが必要だ・・・・・・だから、リインフォースを見捨てた。《アーク・クリスタル》・・・・・・アレンの魔剣と僕が呼び出した魔剣があれば、救う事だって可能だったのに」
「ほう、どうかしたのか『原書の司書』。お前が人間に入れ込むとはな」
「む・・・・・・別に、リインフォースがいれば今の面倒な仕事を頼まれなかったってだけさ」

素直じゃないねぇ、と呟かれた言葉に、レイは再び殺気のこもった視線を向ける。しかしクラインは暖簾に腕押しとばかりに受け流し、更に続けた。

「その後は、大体お前の予想通りだろう。必要な駒を揃え、クロスをそこに放り込んだ」
「大方、次元転移の影響がああいう風になるのも狙ったんだろ? 不自然にプロテクトのかかった跡があった」
「大正解。晴れてクロスは『欠落』を癒す方法を手にし、自らの生きがいを見つけたって訳だ」

悪びれる様子は一切無い。無駄だと悟り、レイは視線の圧力を弱めた。嘆息し、天を仰ぎながら呟く。

「過ちから生まれた血の、その終焉を見届ける・・・・・・クロスが滅べば、その役目の終わりが近づくはずなのにね」
「簡単な事だろ、レイ。俺も、お前さんも・・・・・・千年の間に、いつの間にか人間に入れ込んでたってだけだ」
「なるほど、ね」

共に、小さく苦笑を吐き出す。例え何であろうと、目の前の男は永い時を共にした友人だ。苦笑を漏らし、レイはそこから背を向けた。

「―――この僕を利用したんだ。本来なら許さない所なんだけどね」
「おや、許してくれるのか?」
「しっかりクロスは救ったし・・・・・・それに」

振り返る。そこにあったのは、小さく淡い笑み。

「―――君の作った舞台は、中々に踊り心地が良いんだ。だから・・・・・・もうしばらく、君に踊らされてあげるよ」
「フ・・・・・・そうか。じゃあ、また後でな」
「ああ、そうだね。どうせ、もうすぐ会う訳なんだろうね」

笑みと共に踵を返し、レイはその場から背を向けた。その背中に、クラインの姿が消えた気配―――そして、小さな羽ばたきの音が響き、その魔力も完全に消え去った。見上げれば蒼い光が、それと全く同じ色の蒼天へと消えてゆく。
―――かつて西の空を支配した、蒼き隼の古代魔導族クラグスレイン。己が友の帰っていった空を、レイは笑みを浮かべながら見送った。

「はてさて、大変だね。まぁ、もうしばらく付き合うさ」


 * * * * *


「―――クロス、そろそろ行こう」
「あ、うん」

迎えに来たフェイトの声を受け、クローセスは傍に置いてあったカバンを手に取った。白い制服に身を包んだクローセスは、どことなく引きつった笑みを残しながらも、すぐにフェイトの後に続く。

机に置かれた読めない手紙は、風にさらわれて窓の外へと舞い上がる。


―――蒼い蒼い、どこまでも続く彼の瞳と同じ蒼天へと、白い手紙は消えていった―――









あとがき



どうも、ここに顔を出すのは初めてですね。作者のAllenです。
ついにこのシリーズも完結となりました。今までこの作品に付き合ってくださった皆様に、感謝の言葉を申し上げます。

さて、このシリーズですが・・・・・・様々な候補があった中、クロスを主人公として選びました。他にはアレンやレイヴァン、もしくはミリアなんていう選択肢もありましたが。そうなると、カップリング要素はユーなののみになっていたと思います。もっとも、レイヴァンなんぞ出した日にはどんなカオスになるか分かったものじゃありませんが。

さてと、最早ほとんどの設定が明かされていますが・・・・・・裏設定には、やはり事欠かないものです。ここで、メインキャラのそれをいくつか明かしておきましょう。



クローセス=シェイン/ガルディアラス:『孤独』

誰よりも『孤独』を知るが故に、『孤独』を感じる事の出来なくなった少年。彼は、自分が書いているオリジナル小説『Brave Knights』の原型となった未執筆小説『NINE BLADE』から存在していたキャラクターです。

主人公であるアレンの弟子、もしくは弟と言ったキャラクター。いつも一歩離れたところから皆の事を眺め、ツッコミを入れる役を任せていたのですが―――改めて設定を見直した時、彼が『孤独』な存在である事を気付きました。作者に気付かれた事が彼にとって幸せだったのかどうかは、分かりませんが(笑)。

自分が大きく影響を受けた『魔術士オーフェン』で言えば、マジク・リンの立ち位置にいるキャラクターであり、その存在はどこにも揺れ動く、不安定な存在。故に彼は、騎士と殺人鬼の間で揺れるキャラクターとなった訳です。最終的に答えを見つけ、今の立ち位置へと収まった訳ですが・・・・・・全てを断ち切ったかは、まだ分かりません。元の世界へと戻る術を見つけたとき、彼は一体どのような場所を選ぶのか―――それは、続編を書く機会があればその先をお伝えしましょう。



ルヴィリス=リーシェレイティア:『悲恋』

飄々とし、思うが侭に生きているように見える反面、どこまでも冷たく、哀しい面を持った少女。彼女は、自分が作り出したキャラクターの中では随分と新しい存在です。

遠い昔に存在した古代魔導族、その中でも異質なほどガルディアラスに入れ込み、彼に執着しながらも彼から身を引いた。そして、思いが通じないと知りつつも彼に己が身を捧げた。ただ誰かをからかう事が目的ならば、クロスはあそこまで彼女に気を許す事は無かったでしょう。『孤独』の中でもクロスがルヴィリスを信じたのは、その経験をその血が知るが故でした。

彼女のモチーフとなったのは、己が主に叶わぬ恋を抱いた使い魔の少女。とあるRPGのキャラクターなのですが、分かる人は少ないでしょう。決して叶わない恋と知りつつ、それでもガルディアラスを想い、そしてその一族を愛し続けた。今回出てきたキャラクターの中で、最も真っ当なのはもしかしたら彼女だったかもしれません。



レイムルド=L=クレスフィード:『記憶』

世界の記憶を内包した《原書》を所有する、全ての年代と深い関わりを持った存在。元々はアレンの相棒と言う位置付けで、『Brave Knights』でも『NINE BLADE』でも登場していたキャラクターです。

古代魔導族の中では最も顔が広く、その特殊な存在ゆえに多くに知られていた。長い時の中で己の命の意味を見失いつつも、それでも古代魔導族の直系たちを見守り続ける。そんなレイは、記憶を失っている間に深く人間と関わりすぎたために、人間に入れ込んでしまった存在です。感情的にアレンと接する姿は、このレイしか知らない人にとっては別人にも見えるかもしれません。

彼には明確なモチーフはありません。超越存在をイメージした結果として生まれた、極めて最強に近い位置にいる存在。けれどもその力に振り回され、普段は飄々とその力を使わないように生きている。今回三人の中で最も多く謎を残したのは、間違いなくレイでしょう。



クライン=ゲイツマン/クラグスレイン:『最強』

アレンの師であり、騎士団最強の騎士であり、未だにその力を完璧な形で残した古代魔導族。様々な作品に存在する、不敗の風格を持ったキャラクターです。

決して敗れる事のない最強を冠する彼の力は、その圧倒的な戦闘能力でも、古代魔導族としての固有能力でもなく、その狡猾さにあります。味方どころか敵すらも己の手駒として操り、絶対の勝利を収めてきた存在―――皆、彼の事を信用はしないながらも信頼はしています。今回も暗躍を続け、敵すらも操って今回の事件を起こしました。ある意味、最大の悪は彼だったでしょう。

今までにも何度か二次捜索小説を書いたりしていますが、クラインの正体を明かしたのは今回の作品が初めてでした。明かそうと決めてからの暗躍は凄かったですね。所々ヒントは散りばめていたのですが・・・・・・クリアの言っていたクライン=蒼き隼という言葉だったり、メルレリウスが《レーグナム》を見た時に言った『クラグスレインの翼』であったり。流石にこれに気付くのは難しかったでしょうが・・・・・・。



アレン=セーズ/ブレイズィアス:『戦士』

『Brave Knights』の主人公であり、クロスの兄。作者とはもう七年の付き合いになる古株。己の障害に対してただ戦い続ける事を選んだ、一人の騎士です。

その名の通り、作者の分身―――と言う訳ではなく、彼は作者の『こんな人間でありたい』という理想の体現です。自分のやりたい事と、自分のやらなければならない事・・・・・・理想と義務に全力を注ぐ男です。かつての戦いが終わった今でもまだ戦い続け、己の部下や弟子達を導こうとする。『Brave Knights』は、間違いなく彼の成長のストーリーだったはずです。

今作での彼の役目は、クロスの回想シーンなどで現れ、印象的な台詞を発するだけでした。クロスに鮮烈なイメージを刷り込んでいることは分かったかと思いますが、流石にあまりに出番が無さ過ぎたために少し寂しくも感じます。続編を書ければ、その時は彼をもっと前に出して行きたいと思います。



さて、何はともあれ、〜十字架の騎士〜と言うお話はこれで終わりです。続編を書けるかどうかは、これからの時間と作者のモチベーションと皆様のほんのささやかな応援にかかってくるでしょう。再び彼らの活躍を望む方は、是非そう仰って下さい。

そろそろ、お別れの時間がやってきました。続編は、書くとすれば恐らく騎士団と管理局が関わる事に、そしてクロスとフェイトの行く末を描く事になるでしょう。その構想に思いを馳せつつ、ここでお別れです。ここまでご愛読いただき、本当にありがとうございました。
それでは。
      Allen






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