―――それは、必要の無かった事なのかもしれない。


「そう、語られる必要は無かったかもしれない」


―――何も無ければ、平和な未来を紡いで行けたかも知れない。


「何者にも縛られない世界が広がっていたかもしれない」


けれど―――


「そこには―――」




「―――さぁ、もう一度舞台の幕を上げようか。今度は『俺達』を配役に加えて、な」


―――そして、再び物語は紡がれる。







魔法少女リリカルなのは〜十字架の騎士U〜

    ――HEAVEN's Knights――







「―――メルレリウスの、隠れ家が?」


かの事件から半年、終わったはずの物語に、新たなページが刻まれる。
新たな物語は―――かつての傷を癒す彼らを、更なる渦中へと引きずり込んでゆく。





「・・・・・・我が、名は・・・・・・《フィラクシアス》」


目を覚ます、かつての敵の忘れ形見。だが、それは発端に過ぎない。
なぜなら―――





「―――貴様が、俺の敵か」


姿を現すは、漆黒を纏うかの男。左腕に銀月の刃を携え、男は鋭利に宣言する。


「―――いいだろう。貴様は、俺の憎悪に値する」


―――そして、『混沌』が刻まれる。





「―――まったく、何で女って生き物は厄介事を運んで来るんだか」


皮肉気に笑むは、荒ぶる龍を連想させる青年。紅蓮を纏い、彼は猛々しく言い放つ。


「―――いいぜ、相手してやる。お前は俺を殺せるか?」


―――そして、『白焔』が放たれる。





「―――クーロースっ!!」


無垢な笑顔を振り撒くは、人形のような幼い少女。光を纏い、彼女は儚く手を広げる。


「―――だから、信じる。ずっと・・・・・・」


―――そして、『光翼』が広げられる。





張り巡らされる罠と罠、策略と策略。その中で、かの騎士たちはその力を振るい続ける。


「そもそも罪ってのはな、他者が評価するもんじゃねえんだ」


「貴様らの指図は受けん」


「私は自由で在りたい。どこにでも、好きな所に行きたい・・・・・・ね、それって素敵な事だと思わない?」


「父、様・・・・・・?」


「戦うのでしたら、ご自由に。貴方達がどうしようと構いません」


「成程・・・・・・裏方ってのは中々楽しいもんだね」


「私は・・・・・・一人の騎士に過ぎませんから。でも―――私にも、私の目的があるんですよ?」


「ここは居心地がいいんでな・・・・・・理由ならそれで十分」


「私の事・・・・・・忘れないでいてくれて、ありがとう」




それぞれの思惑が交錯する中、物語は更に加速してゆく―――


「―――もういいんだよ、クロス・・・・・・もう、いいんだ」


小さな囁きすら逃さず、物語はページに刻まれてゆく―――


「―――僕、は・・・・・・」






―――そして。


「―――舐めるな、だと? ならばこちらも言おう、時空管理局」


―――蒼き男は、不敵に笑む。


「―――『騎士団おれたち』を、舐めるな」









―――物語が、始まる。






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