―――高町なのははその日、少しだけ上機嫌だった。 ユーノが今現在外出しており、せっかくもらえた休みが合わせられなかったのは確かに残念だ。しかしそれ以上に、彼女の手の中にあるものが彼女を上機嫌にさせていた。 「ふんふんふ〜ん♪」 鼻歌すら交えて歩く彼女の手の中には、一個の鍵―――ユーノの部屋の合鍵だった。テレビで見たドラマで知識を得、実際にユーノにその話を持ち掛けてみた所、快く承諾してくれた次第である。まあ、自分の家の鍵は流石に渡せなかったが。 ―――ちなみに、ユーノの処遇を巡って現在高町家は冷戦状態だったりする。若干一名が孤立無援であるだけだが。 「ふふっ♪ とーちゃく」 ユーノの借りている部屋の前に立ち、認証画面に鍵を掲げる。ピーッ、と言う電子音と共に、扉が開錠する音が響いた。部屋を綺麗にして戻ってきたユーノを驚かせようと意気込み、なのはは扉を押し開ける。 ―――目に飛び込んでくるのは、本の山、山、山。思わず、嘆息を漏らす。 「ユーノ君ってば・・・・・・書庫の整理だけじゃなくて、自分の部屋の整理もしなくちゃダメなんだからね」 これは定期的に来なければならないか、と溜め息を―――嬉しそうな表情で吐き、なのはは早速本棚の整理を始めようと、手近な本に手を掛ける。と――― 「―――え?」 扉の隙間から視界に入る、寝室のベッド。そこは、まるで人が寝ているように盛り上がっていた。鍵は確かにかかっていた。ならば、ユーノが帰って来ているのか。それとも――― 「泥棒さん・・・・・・な訳ないよね、レイジングハート」 『・・・・・・Maybe.(恐らくは)』 「うう・・・・・・そこは絶対って言ってよぉ・・・・・・」 言いつつも、扉の隙間から寝室に入り、恐る恐るベッドへと近付く。胸には、先ほど拾い上げた本を強く抱き締めていた。ベッドの中に人物は布団に包まっており、その姿はまったく見えない。レイジングハートをいつでも起動できるよう手に握り、なのははゆっくりとその布団に手を掛ける。 ―――刹那、布団が弾け飛んだ。 「!?」 まさしく一瞬。吹き飛んだ布団の中から手が伸び、なのはの服の胸倉を掴み上げ、その身体をマットレスに引き倒す。現れた人物はそのまま残った腕を振り上げ―――硬直した。 「何だ・・・・・・ガキだと?」 下はくたびれたジーンズを穿き、上半身は裸。流れるハニーブロンドに近い色の髪は長く、なのはの顔に触れるか触れないかの所で揺れていた。その髪の中、ライトグリーンに輝く瞳がなのはの姿を見下ろす。その姿に、なのはは思わず言葉を失っていた。レイジングハートが手の中から零れ落ち、ベッドの下に転がる。 ―――なのはを引き倒したその青年は、周囲に視線を廻らせて眉根にしわを寄せた。 「どこだここは・・・・・・おいガキ、お前は誰だ」 「―――ゆ」 「ゆ?」 なのはの発した音に、青年は疑問符を浮かべる。瞬間――― 「―――ゆーのくんがおとなになってるうううううううっ!?」 ―――劈くようななのはの絶叫が、ユーノの部屋に響き渡っていた。 「落ち着いたか?」 「あ、はい」 普通なら立場が逆の気がするが―――と呟く青年に、なのはは思わず苦笑いを浮かべる。確かにそれはその通りなのだが―――この場合、驚いて然るべきだとなのはは思う。何せ、この青年は―――特徴と言う特徴が、ユーノにそっくりだったのだ。 「・・・・・・で、だ。質問に答えてもらっても構わないな?」 「はい、何ですか?」 「あー・・・・・・まず、お前は誰だ」 遠慮も何も無い率直な切り出しに、なのはは一瞬目を点にしかけるが―――気を取り直し、自己紹介を始める。 「私は高町なのはです。所属は―――」 「あー、いい。聞いてもたぶん分からん。次・・・・・・ここはどこだ?」 「時空管理局本局の、住宅エリアですけど・・・・・・」 「時空、管理局?」 眉根にしわを寄せ、青年は首を傾げる。聞き覚えが無い、と言う事だろうか。 「・・・・・・つまりあれか。色々時空を移動したりする組織って事か」 「何か大雑把過ぎる気がしますけど・・・・・・まあ、時空全体を取り締まる司法組織だと考えてもらえれば」 「警察みたいなもんか」 解釈の仕方があまりにも適当すぎる気がしたが、まああまり気にしない事にする。青年は腕を組み、虚空を見上げて何やら悩んでいるようだったが――― 「・・・・・・よし、殺そう」 「えええっ!?」 「ああ、お前じゃない。俺をこんな所に飛ばしてくれやがったウチのクソ師匠だ。あれだな。半分に裂いても二つになって復活する可能性もあるから、十グラム以上の肉片が無い様に念入りに切り裂いてから灰も残さぬほどの熱量で焼き尽くそう。流石にそこまでやれば大丈夫だろう」 何やら物騒な事を呟いている青年から若干距離を置きつつ、なのははふと、自分が彼の名前をまだ聞いていない事に気がついた。出来ればこのまま関わらないでいた方がいいような気もしたが―――いやまあ、既に関わってしまっているのだが。 「あのー・・・・・・すいません」 「あ? 何だ?」 「あの・・・・・・貴方のお名前は?」 「ん? ああ―――俺の名はアレン=セーズ。所属は・・・・・・って、言っても分からんな」 何やら、名前に聞き覚えがあったような気がしたが―――どうにも思い出せない。とりあえずそちらは気にしない事にして、元の世界の名前を聞きだそうと―――する前に、アレンがなのはに向かって声を上げた。 「なあ、高町」 「はい、何ですか?」 「悪いんだが、服・・・・・・シャツとジャケットと靴下、買って来てくれないか? サイズ大きめで。金は―――こんなもんしかないが」 そう言ってアレンがポケットから取り出したのは、金色に輝く大きめの硬貨が五枚。 「・・・・・・金貨?」 「純金製。三枚で馬一頭買えるが・・・・・・まあ、質屋か何かに入れればそれなりの値段になるんじゃないか?」 「って、こんなに貰えませんよ!」 「気にするな。元の世界に戻れば無駄に余ってる・・・・・・まあ、バカ女とクソ師匠が俺のいない間に使い込んでなければだが」 無表情―――と言うか、何かをどこかで堪えているような表情でアレンは頷く。その様子に、なのはは遠慮しつつもその硬貨を受け取った。見た目よりも重いと感じるのは、やはり高価な品物の成せる業か。 「え、えーと・・・・・・じゃあ、買ってきますね!」 幸い、無頓着な兄のために何度か成人男性の服を買った経験はある。体格は同じ程度なので、それを元に買って来よう、となのはは商業エリアへと足を運んでいった。 * * * * * 「買って来ましたよ〜」 普通のTシャツに、深緑のジャケット。後はセットの靴下を手に、なのははユーノの部屋に戻ってきた。ポケットの中には余りに余っているお金―――質に入れた金貨は、なのはが正式入局してから貰った給料を易々と超えていた。 「アレンさ〜ん?」 「ああ、こっちだこっち」 声のした方に歩く。そこには、何やら棚だの引き戸だのを漁っているアレンの姿があった。 「・・・・・・何してるんですか?」 「いや・・・・・・お、服買ってきたか」 なのはの手の中の物を見つけたアレンは、上機嫌で近付きそれを受け取る。さっさとそれを取り出し、ついていたタグを指先で切断した。 (・・・・・・あれ?) 一体、彼は今どうやってあのタグを切ったのか。手には刃物のような物は無かったのだが。そんな事を考えている内に、アレンは既に服を着終わっていた。 「ありがとうな。釣銭はやるぞ」 「い、いや・・・・・・こんなに貰えませんよ」 貰った金額は日本円で軽く百五十万ほど。あの金貨は一体どれほど貴重なものだったのか。とりあえずお釣りを彼の手の中に押し付け、なのはは深々と溜め息を吐き出した。 「それで・・・・・・一体、何を探してたんですか?」 「ああ。髪を縛る物をな・・・・・・普段は髪留めを使ってるんだが、無いとどうにも落ち着かなくてな」 腰まで伸びた薄茶色の髪を弄り、アレンは嘆息交じりに笑う。言われてみると、彼は中々綺麗な髪をしているのだ。それをじっと見つめ―――なのはは、小さく頷いた。 「うん。じゃあアレンさん、そこに座って下さい」 「ん? ああ、まあいいけど」 アレンを椅子に座らせ、その髪を背もたれの外に引きずり出す。ブラシに髪を通し、その真っ直ぐな糸を整えてゆく。そして―――その首の後ろの辺りで、なのははその髪を自分のリボンで縛った。 「お? 高町、これは―――」 「私のリボンです。似合ってますよ」 「いや、似合ってる言われてもな」 引きつった笑みと共に嘆息し、アレンが振り返る―――と、その表情が固まった。髪を解いたなのはを凝視し、硬直している。 「・・・・・・・・・? アレンさん?」 「いや・・・・・・何でもない。高町、ちょっと来い」 髪を結んだアレンは、今度はその椅子になのはを座らせた。ブラシと残ったリボンを引ったくり、その髪を弄り始める。 「あれ? 慣れてますね」 「ああ・・・・・・昔よくやらされてたもんでな。上手いもんだろ?」 「にゃはは・・・・・・」 苦笑を漏らしつつも、なのははその心地よさに目を閉じる。触覚のみの感覚の中で、己の髪が頭の後ろに束ねられてゆくのを感じた。髪が縛られる感覚と共に、ポンポンと軽く叩くように頭を撫でられる。 「ほれ、完成だ。たまには違う髪形って言うのもいいもんだろ?」 「ポニーテール・・・・・・ありがとうございます!」 「別に、礼を言うほどの事でもないだろ」 結び目はきっちり中心に来ており、非常に綺麗にまとまっている。鏡で見てみると、普段とは違う姿―――しかし、どこかで見た事のあるような姿の自分が映っていた。 「う〜ん・・・・・・どこでだろ・・・・・・」 「どうかしたか?」 「あ、いえ・・・・・・そうだアレンさん、靴買ってませんけど」 「あー、そうだったな。腹も減ったし・・・・・・食事ついでに買い物に行くか」 いつの間にか妙に仲良くなっている事に気付かず―――なのはは、アレンの提案に上機嫌で頷いていた。 * * * * * 「―――おりょ?」 ヴィータの付き添いで本局に足を運んでいたはやては、食堂で奇妙な光景に出くわした。頬を染めるなのはと、その反対側で話に付き合う一人の男性。 ―――あのなのはの表情には見覚えがある。あれは―――惚気話をしている時の顔だ。 戦慄と共に、はやては呟いた。 「まさか―――なのはちゃんの惚気話に正面から付き合える人間がおるなんて!?」 限りなく本気で呟かれた言葉だが、生憎それにツッコミを入れる人物はそこにはいなかった。物足りなさを感じ、はやては唇を尖らせる。 「やっぱダメやな。クロス君がおらんと締りがあらへん」 ついこの間入局祝いとして贈ったデバイス(ハリセン)も、まだその力をあまり振るっていない。今アースラは任務で外に出ているので、彼は本局にはいないのだ。 「さて・・・・・・しかし、誰なんやろな?」 薄茶色の髪を首の後ろで束ねた青年。どこか見覚えのあるような姿をしているが、誰か、と言われると分からない。なのはの惚気フィールドに入ってゆくのは勇気がいるが、それ以上にあの青年の事が気になっていた。 ―――覚悟を決め、はやてはなのはのいるテーブルへ近付いて行った。 「なーのはちゃん♪ 浮気とは感心せんなぁ」 「はやてちゃん? 言っていい事といけない事があるんだよ」 笑顔で威圧してくるなのはからすぐさま距離を置き、はやては同じテーブルに着く。そして紅茶を口に運んでいる青年へ視線を向け、はやてはにこやかに声を上げた。 「初めまして。私はなのはちゃんの友達の、八神はやてや」 「ああ。中々個性的な友達を持ってるな、お前」 「普通なら怒るとこなんやけど、今のなのはちゃん相手だと頷くしかあらへんなぁ」 「・・・・・・どーゆー意味?」 半眼を向けてくるなのはから二人は視線を逸らし、わざとらしく咳払いをする。初対面とは思えない息の合い方だった。 「それで、お兄さんの名前は何なんや?」 「アレン=セーズ。元々の世界だとそれだけで通じるんだがな・・・・・・」 「ほぉ、有名人なんか・・・・・・ってちょっと待ち。アレン=セーズやて?」 瞬間、はやての表情が引き締まる。その反応になのは羽目を見開き、逆にアレンはその視線を細めた。 「な、何で知ってるの?」 「そっちこそ何マジボケかましとるんやなのはちゃん! アレン=セーズ言うたら、あのクロス君のお兄さんの事やないか!」 「―――! お前ら、クロスの事を知ってるのか!?」 今まで落ち着いた喋り方をしていたアレンの口調が、唐突に荒げられる。その表情にあるのは驚愕と期待だった。その変化に驚きつつも、二人はその首を縦に振る。 「う、うん、そうやで」 「クロス君は私達の友達だよ」 「あいつは・・・・・・まだ、生きてるのか」 「も、もちろん」 「―――」 ―――次の瞬間、アレンの顔に広がったのは安堵の表情だった。深々と息を吐き出し、体重を背もたれに預ける。 「そう、か・・・・・・今回ばかりは、クラインの奴に礼を言わなきゃならんか・・・・・・それで、あいつは今どこに?」 「今は皆と一緒に任務に出てますけど・・・・・・」 「そうか。会うのが楽しみだ」 そこには今まで常にあった鋭いものはどこにも無く、ただ弟を案ずる兄の表情があった。その表情に、二人は思わず表情を綻ばせる。 (『龍眼の殺戮者』なんて物騒なあだ名つけられとるからどんな人かと思うたら、何や・・・・・・フツーに優しいお兄さんなんやないか) 少し不器用で、お人好しな兄の顔。クローセスの兄に対する評価も、厳しい人と言う物からも最終的にはお人好しな性格に繋がっていた。確かに、と胸中で頷き苦笑する。 「それで・・・・・・アレンさんはどうしてここに?」 「起きたらここにいた・・・・・・大方、ウチのクソ師匠の仕業だろうよ。クロスがこっちに飛ばされたのもそれが原因だからな」 「ああ、あのクラインさんっていう人・・・・・・」 話を聞いてもさっぱり正体が掴めない人物だったが、この人の師匠だったとは。クローセスの話している限りでは、若干何かを隠している感があったのだが――― 「実力は認めざるを得ないが・・・・・・人格は最低を通り越して最悪だからな。あの野郎は自分では何もしないで、人を操って目的を果たすのが大好きなんだよ」 「黒幕さん、なんですか?」 「ああ、言いえて妙だな。あいつはまさしく黒幕だろうよ・・・・・・今回も何を企んでる事やら」 うんざりと嘆息しながらそっぽを向くアレンに、なのはとはやては揃って苦笑を漏らした。信用は出来ないが信頼はされる―――そんな言葉の通りらしい。 ―――刹那、アレンの視線が唐突に入り口へと向けられた。 「・・・・・・?」 「あ、シグナムさん」 「・・・・・・知り合いか?」 視線を戻し―――若干厳しい物の含まれた視線でアレンが問う。それに驚きつつも、二人は首を縦に振った。 (―――成程、甘っちょろい奴らばかりかと思ってたが・・・・・・こういう連中もいるって事か) こちらへと歩いてくる女性の姿を視界に納め、内心で小さく笑う。炎の属性魔力と、剣を持つ者特有の筋肉のつき方―――間違いなく、熟練の剣士だ。その技量がどの程度かは知らないが、少なくともこの施設で見かけた人間の中では、この剣士が最も強いだろう。 「主はやて、こちらでしたか」 「うん、どないしたん?」 内心で、小さく目を見開く。が―――すぐに気を取り直した。壮年の騎士が子供を主にする事も、自分の世界では珍しい訳ではない。それと比べれば、この二人はまだ年が離れていると言う訳ではないだろう。 「いえ・・・・・・あの、こちらの方は?」 「ただのしがない騎士だよ。身内だけの話だって言うんなら、席を外すが?」 肩をすくめながらそう告げる―――だが剣士・・・・・・いや、シグナムと呼ばれたその騎士は、その言葉に小さく視線を細めた。 (ふむ、相手の技量を測れるほどには熟達してるか) 内心ではなく、今度は実際に小さく笑みを浮かべる。この騎士は、自分達の基準で言えば間違いなく上級騎士のランクだ。技量は自分の三人の部下に匹敵する―――相性の問題で、クローセスとは戦い難いかもしれないが。 「しがない騎士やなんて・・・・・・シグナム、この人な、あのクロス君のお兄さんなんよ」 「シェインの兄―――天界騎士団か!」 「―――!」 刹那、沸きあがった闘気にアレンは即座に身を翻した。椅子から立ち上がって距離を置き、いきなり戦闘体勢に入った騎士へ視線を向ける。 「何のつもりだコラ。こちとらこれでも結構いっぱいいっぱいなんだぞ」 「シグナム、何やっとるん!?」 「主はやて、お下がりください・・・・・・答えろ! お前たち、スクライアをどこへ連れ去った!」 「は?」 きょとんと、目を丸くして聞き返す。だが―――それに反応したのは、なのはだった。 「ユーノ君!? シグナムさん、ユーノ君がどうしたんですか!?」 「黒ずくめの男・・・・・・騎士団の人間に連れ去られた、とシャマル伝手に連絡があった。答えろ、お前たちの目的は何だ!」 「レイヴァンの野郎・・・・・・」 黒ずくめ、と聞いて思い浮かぶのはその人物だけ。しかし、誰かを誘拐するなどと言う理由であの男が動くとも思えない。情報が錯綜しているのだろうか――― 「―――とどのつまりが、原因はあのクソ師匠って事だろうが!」 「何を訳の分からない事を・・・・・・!」 レイヴァンが唯一指示を聞くのは契約を交わしているクラインのみ。そして、自分をここに送りつけたのも間違いなく彼だ。今度会ったら全力でぶん殴ると心に決め、臨戦体勢を取る。 ―――侵入者発生、と言う警報が鳴り響いたのは、その刹那だった。 「―――!」 「にゃあっ!?」 シグナムの注意が一瞬逸れたその瞬間、アレンは一番近くにいたなのはの襟首を掴み、そのままシグナムの脇を逸れて走り出した。怒号と罵声が背中に向けて飛んで来る中、道など分からない本局の廊下を全力で走る。 「だから碌な事がないってんだよ畜生めええええッ!!」 「襟首掴むの止めて下さいいいいいいッ!!」 二人の悲鳴と言うか心の叫びは、無数の声の中に虚しく消えて行った。 あとがき? 「さて、何か言い残す事はあるかクソ師匠」 「ああ、お前の葡萄ゼリー昨日食っといたぞ」 「死ね貴様あああああああああああッ!!」 「HAHAHAHA!」 「避けるなッ! つーか、笑うにしても普通に笑えテメエエエエッ! 腹が立つんだよこの野郎が!!」 「おお、そういえばお前宛に巨峰が届いてたが、それも食った」 「死ねッ! 今度こそ死ねクソ師匠! チリも残さず焼き尽くしてやるから前に出ろやコラッ!!」 「ならば後ろに下がる」 「ふざけんなああああああああああああッ!!」 「・・・・・・兄さん、クラインさん・・・・・・まともにやる気ないでしょ・・・・・・」 「まー、いいんじゃないの? あいつら、あれで結構楽しんでる節あるし」 「楽しんでるのはクラインさんだけのような・・・・・・仕方ない、ルヴィリス、僕らでやろうか」 「ま、そうね。つっても、次回どうなるかなんて分かりやすいと思うけど。どーせ、巻き込まれたアレンが逃げ回ったり戦ったりするんでしょ?」 「ちょっと間違った情報が流れてたよね・・・・・・まあ、伝手がシャマルさんって言うのが・・・・・・」 「またやったのかしらね。ま、アレンならこうなるでしょ。そんじゃなきゃ面白くないし」 「兄さん、相変わらず運悪いなぁ・・・・・・えっと、それではまた次回に」 「ばいば〜い」 |