すずかとアリサがエリオルの創った時の空間に入る十分前。
 ラングドリアン拘置所―――
「おい、今日じゃなかったか? 物資を積んだ巡航艦が来るのは?」 
 看守の一人が同僚に聞いた。
「そう言えば、そうだったな…… 後どのくらいで到着するんだ?」
「聞いたいない。 看守長なら知っているんじゃないか!」
「看守長は、何処にいらっしゃるんだろう?」
 看守長の所在を聞く看守達。
彼等は、まだ知らない。 やって来るのが管理局の船ではなくガトランチスの船だという事を……



 魔法少女リリカルなのは -RESERVoir CHRoNiCLE-
 ―第一部『ガトランチスの進撃』― 第六話『脱獄』


 戦艦メダルース―――
「そろそろ、ラングドリアン拘置所だな……」
「はい。 拘置所から通信!」
『此方、ラングドリアン拘置所看守長カヤ・ヤマサキ。 到着をお待ちしていましたユーキリス様』
「首尾は如何か?」
『首尾は上々、何時でも飛王フェイワン・リードを脱獄させられます』
「良し。 10分後に船を着ける。 其れまでに出せるだけ牢から出しておけ!」
『畏まりました』
 何と看守長は、ガトランチスの一員だった。



 ラングドリアン拘置所―――
「さて、仕事を始めるか……」
 そう言って、デバイスを起動するカヤ。
「看守長、どちらへ行かれて居たのですか?」
「デバインバスター」
 カヤは、答えずにデバインバスターで看守を吹き飛ばした。
床には、吹き飛ばされた看守が横たわってピクリとも動かない。
「おい、何があった……」
 駆けつけてきた看守が見たのは、全身血だらけで動かない同僚とデバイスを構えた上司の姿だった。
「消えろ!」
≪Divine Buster≫
 再びカヤは、看守を吹き飛ばした。
そして瓦礫と看守を踏みつけて牢を目指した。

「看守長! やめて下さい。 それ以上罪を…… うわぁー」
 出会うもの全てをなぎ払いながら進むカヤ。
「死にたくなかったら其処をどけ!」
「一体如何されたのですか? 看守長!」
≪Starlight Breaker≫
「其の魔法は……」
 その看守も吹き飛ばされた。
「だ、誰か、か、看守長を止めてくれ!」
 其処で、その看守は意識を失った。
デバイスから魔力の滓が排気される。




 飛王フェイワン・リードの独房―――
「騒がしいな……」
 物音は、飛王フェイワンの独房にまで聞こえてきていた。
「戦争でも始まったか?」
 そして、彼の牢の前を魔力の塊が通り過ぎた。
聞こえてくる足音。
「出ろ! 釈放だ」
 そう言って鍵を開けるカヤ。
「私を勝手に出しても良いのか? 私を出して罰せられるのはお前なのだぞ」
「関係ない。 管理局が無くなれば、犯罪履歴も無くなりやりたい放題だ!」
「其れは、良いな…… 之で、再び我が望みを求められる」
「望みとは、何だ?」
「次元の魔女への復讐と次元を超える力だ」
「次元の魔女…… フェルナンドが言っていた要注意人物か」
「そうか! お前は、ガトランチスの一員か?」
「貴様、何故その事を……」
「私は、クロウ・リードに次ぐ魔力の持ち主だからな」
「ならば、我等の指導者の所に来るか?」
 飛王フェイワンを誘うカヤ。
「良かろう。 落ち着いて腰を下ろして事を進める場所が欲しいからな……」


 戦艦メダルース――― 
「艦長、ラングドリアン拘置所です」
「良し、接舷しろ!」
「了解!」
 ラングドリアン拘置所に接舷する操舵手。
そして、静に接舷する戦艦メダルースとラングドリアン拘置所。
「艦長、接舷かんりょうしました。 機密ハッチ開きます」
 接舷作業を着々と遂行する作業員。
「連絡通路へ酸素注入」
 同時に拘置所側でも作業が行われていた。
「全接続作業完了! 通路を開きます」
 連絡通路を通って入ってくる犯罪者達。
そして、カヤに連れられた飛王フェイワンも移乗する。
「カヤ、ご苦労だった。 所で後ろは?」
飛王フェイワン・リードと言う方だ」
「ようこそ戦艦メダルースへ…… 私は、此の艦の艦長の……」
「ユーキリス・アタナシア・フェルペウス」
「何故、分かった! 私は、まだ名のっていないのに」
 飛王フェイワンの能力に驚くユーキリス。

「艦長、乗艦総員完了です」
「よし。 拘置所に時限爆弾を仕掛け爆破せよ!」
 ユーキリスの命で急ぎ拘置所の各所に爆弾を仕掛ける。
「拘置所に爆弾セット完了!」
「良し。 本艦は根拠地に撤退する。 通路切り離せ!」
 連絡通路を切り離してラングドリアン拘置所から離れる戦艦メダルース。
安全空域まで離れた所で爆破スイッチを押すユーキリス。
「ラングドリアン拘置所、爆破成功!」
 モニターチェックをしていた兵が報告した。
ラングドリアン拘置所から炎と煙が噴出し爆発が続いている。 
 同じような事が他の部隊でも引き起こされていた。
「管理局の次元航行部隊が来る前に撤退だ!」
 戦艦メダルースは、拠点世界へ進路をとった。



 時間は、元に戻って……
 艦船アースラ―――
「そろそろ、30分経つけど」
「そうだな、柊沢と木之本は局でも最強の魔導師。 強いて言えば『白い悪魔』以上……」
 クロノは、その直後しまったと思ったが後の祭りだった。
「覚悟は宜しいですか?」
「殺気……」
 クロノは、背後から発せられる殺気に冷や汗が流れた。
「(此の殺気、魔力値にしたらSSランク)」
「一寸待ってくれ!」
「二度とその口を開けないようにしても良いですか?」
「頼む、許してく! なのは、フェイト、何とかしてくれ!」
「ごめん、クロノくん。 私じゃ助けられない」
「クロノがんばって」
「なのは、フェイト! エイミィも助けてくれ」
「クロノくん、助けられそうにないから」
 なのは、フェイト、エイミィまでに助けを断られるクロノ。
「う、うわぁー」
 アースラに響き渡るクロノの悲鳴。
そして、その場には生気の抜けたクロノがへたり込んでいた。




 時の空間―――
「すずか!」
「うん。 『ヴァンッアームーン』カートリッジロード」
≪了解。 カートリッジをロードします≫
 すずかのデバイスから魔力が溢れ出る。
「青龍一刃」
 すずかは、青い龍のような刀身の刀でエリオルに斬りかかった。 
「その程度じゃ、何時まで経っても私達を倒してエリオルに辿り着けないよ」
 まだまだ、駄目だというルビー・ムーン。
「また、駄目なの?」
「そんなことありませんよ、すずかさん。 ルビーにダメージを与えられるようなったじゃありませんか」 
「えっ、そうなの?」
「初めのころは、手加減しても相手になっていませんでした。 今では、全力のルビーにダメージが通
るようになったではありませんか」
「すずかにばかり美味しい所持って行かせないわよ!」
 アリサがすずかに美味しい所を持って行かせないと言う。
此の美味しい所とは、料理ではなく手柄とかの事だ。
「今度は、アリサさんのお相手をしてあげましょう」
「早いとこ始めて! 残り日数も少ないんだから」
「いいでしょう……」
「とっとと始めましょう」
「ですが、アリサさんには、すずかさんと一緒にさくらさんを相手に戦ってもらいます」
「二人がかりでも貴方に勝てないのに、木之本さん勝てるわけ無いでしょ。 管理局最強の魔力と最凶の
魔法を如何相手にしろっというのよ!」
「其れは、自分で考えてください。 実戦では、誰も助けてくれませんよ」
 実戦では、助けが無い一人での任務もあるからだ。

「彼の者達を嵐に巻き込め! 『ストーム』」
「ちょ、きゃあああ!」
「アリサちゃん……」
 イキナリ嵐に巻き込まれるアリサとすずか。
其れは、さくらの魔法。 さくらカードの『ストーム』による効果だ。
「上手く飛行魔法の制御が出来ない」
 嵐のため飛行魔法が制御できずその場に留まるのが精一杯の二人。
「彼のものに雷を落とせ! 『サンダー』」
 『ストーム』で上手く飛行制御できない二人に今度は、雷が降り注ぐ。
「今度は、雷?」
 無数の稲妻が暴風に混じって、すずかとアリサを襲う。
そうこうしているうちに今度は、矢までが降ってきた。
「嘘でしょ! 矢が……」
 『アロー』 から矢が雨のように降り注ぐ。
何とか耐えるアリサとすずか。
≪大丈夫ですか? マスター≫
「な、何とか……」
 言葉とは裏腹にグロッキー状態のアリサ。
≪いいえ、既に精神的にも体力的にも限界を超えています≫
「まだ、戦えるわよ」
≪貴方のご友人と同じ目に遭いたいのですか?≫
 グロフォードの言葉に静まり返るアリサ。
すずかも心身ともに疲労困憊していた。
「今日は、此処までのようですね」
 模擬戦を見ていたエリオルが今日の戦闘を止めた。
「何で止めるのよ!」
「無茶をして、なのはさんと同じ辛い思いをしたいのですか? 若し何かあって、なのはさん達に
迷惑を掛けるのですか? 其れでも続けるというのならデバイスを破壊します」
 エリオルの目は、本気だった。
「分かったわよ」
「今日は、十分に休んで明日に備えてください」
 すがかとアリサは、疲れきった表情で建物の中に入っていった。





 設定資料

 戦艦メダルース
 ラングドリアン拘置所を襲撃、収監中の飛王フェイワン・リードを脱獄させた。


 ユーキリス・アタナシア・フェルペウス
 戦艦メダルースの艦長。
 ラングドリアン拘置所の爆破を命じた。


 カヤ・ヤマサキ
 ラングドリアン拘置所の看守長。
 拘置所に居るガトランチスの同胞と武装蜂起し収監中の犯罪者達を脱獄させた。
 魔法は、ミッド式を操る。 
 魔道師ランクはSSクラス。






 あとがき
 今回は、ツバサの黒幕、飛王フェイワン・リードをさせました。
 管理局内部にもガトランチスの一員の影が……
 まだまだ、管理局からの裏切り者が出てきますよ。

 次回は、時の空間での特訓を終えたすずかとアリサがなのは達と模擬戦をします。
 ご意見感想、お待ちしています。





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