艦船アースラ―――
 アースラは、セフィロートのある世界を離れて次元空間を航行していた。
「本局からの指示は?」
 クロノが聞いた。
「情報が、情報ですから上も時間が掛かっているんでしょう」
「早くしてくれないと食料が底を付いてしまう……」
 アースラに積載されている食料にも限りがあるのだ。
「クロノ君、一度私は本局に戻ります」
「お前のことだから、直ぐに戻ってくるのだろう?」
「良くお分かりで……」
「まさか、またアレを使うんじゃないだろうな」
「使いますよ! 使えるときに使って鍛えないといけません。 之からの戦いには、
Sクラスの使い手がわんさか出てきますから……」
「Sクラスって、管理局でも数%も居ないんだぞ! 其れがゴキブリみたいに出てくるだと」
「クロノ君、私は、ゴキブリみたいにとは言ってません」
「でも、わんさかっと言ったではないか!」
「言い方が悪かったですか?」
「悪い! 俺は、お前みたいに未来が分かるわけないからな……」
「クロノ君、対価が払えるのなら教えてあげますよ?」
 当然、クロノは対価を払えないので聞くのを諦めた。



 魔法少女リリカルなのは -RESERVoir CHRoNiCLE-
 ―第一部『ガトランチスの進撃』― 第八話『飛王フェイワン・リードの一手!』


 

 第1039管理外世界―――
「フェルナンド様、ユーキリスが帰還しました」
 報告するサーモサモン。
「出迎えよう…… 其れから、宴の用意をしろ!」
「かしこまりました」
 執務室を出て行くサーモサモン。

「フェルナンド様、ユーキリスただ今帰還しました」
「ユーキリス、其方の御仁は?」
「次元の魔女と敵対していた飛王フェイワン・リード殿です」
「次元の魔女と敵対か……」
 フェルナンドは、不適な笑みを浮かべる。
「ユーキリス! 飛王フェイワン・リード殿を脱獄させたのは誰か?」
「此の者でございます」
 ユーキリスは、カヤに前へ出るよう促した。
「その方、名はなんと言う?」
「カヤ・ヤマサキで御座います」
 カヤは、頭を垂れたまま言った。
「面を上げよ!」
「はっはい」
 言われて面を上げるカヤ。
「カヤ、礼を言う。 ジュリアスのバカが手勢諸共、管理局に捕まって難儀していた所にその方が
手土産を持ってきてくれたおかげで問題は、解決した。 皆が皆、管理局に怨みを持ってるから
話を持ちかけたら我等と戦ってくれる事になった」
 室内に入ってくる元犯罪者達。
その数、約50名あまり。
「君達は、此の飛王フェイワン・リードの手駒として動いてもらう」
「こんな、得体の知れないヤツの手下になれるか!」
「そうだ、そうだ!」
 反発する元犯罪者達。
「なら、どこか分からない世界でまた管理局に捕まりたいか?」
 フェルナンドの捕まりたいかの言葉に静まり返る元犯罪者達。

飛王フェイワン・リード! 此の者達を手駒として好きに使うといい」
 フェルナンドは、飛王フェイワンに脱獄させた者達を手駒として渡した。
「あり難く使わせてもらう」
 手駒を得た飛王フェイワンは、策略をめぐらせ始めた。
自ら望む未来を歩ませる為に……
「次元の魔女、今度は、邪魔はさせんぞ!」
 飛王フェイワンから溢れる巨大な魔力。



 第97管理外世界―――
飛王フェイワン。 貴方がどんな手を打ってもネガイは叶わないわ。
何故なら、私やエリオル、さくらちゃんが貴方の上をいっているから……」
「ねぇ、侑子(ゆうこ)! 之からどうなるの?」
 心配そうにソエルが聞いた。
飛王フェイワンは、背負いきれない対価を払う事になるでしょうね」
「其れよりも飲もうぜ!」
 ラーグが、宝物庫から持ってきた酒瓶を侑子(ゆうこ)に渡した。
「良いわねぇ。 今日は、トコトン飲みましょう」
 そう言って、ビンの蓋を開けて飲み始める侑子(ゆうこ)とモコナ達。

※お酒は、二十歳になってから飲みましょう。





 第1039管理外世界―――
「今宵は、諸君を私の晩餐に招待する。 その場で、我等の目的をお教えする」
 フェルナンドは、この場に居るものを晩餐に招待し新たに加わった者に目的を話すと言った。

 そしてフェルナンドが開いた宴の席上で目的が話された。
「我等は、之から管理局に全面戦争を仕掛ける。 無論質量兵器もつぎ込んでな……」
 立体スクリーンに作戦概要が映し出される。
その中には、スカリエティの兵器の名が幾つか記されていた。
「あの男を歴史の表に引っ張り出すのが早かったのではないか?」
飛王フェイワン、何か言いたそうだな……」
「今、接触せずとも、スカリエッティは数年後、管理局に戦争を仕掛ける。 戦闘機人を用いてな」
 クロウに次ぐ魔力の持ち主である飛王フェイワンにも未来が見えるのだ。
「戦闘機人だと! アレは、まだ技術が確立されてない筈だが……」
「だが、スカリエッティは、既に数年前から技術を確立させ運用している」
 飛王フェイワンは、知っている事を話す。
「そんなこと聞いたことないぞ!」
「技術者が、未完成の技術を発表するかね? 役者が揃ったとき発表するだろ……」
「スカリエッティは、取引相手だ! 我等は、彼の研究資金の捻出もしている」
「スカリエッティは、放っておいても問題ない。 だが『次元の魔女』だけは放っておく訳にはいかん!
ヤツは、私の野望を打ち砕いてくれたのだからな……」
「野望?」
「『時間と空間を超える術を手に入れる』事をだ! 『夢は終わられなければならない』と言って、クロウ・リード
と結託して邪魔してくれたのだ!」
「『次元の魔女』は、全て任せた。 預けた手駒は、好きに使うがいい!」





 艦船アースラ―――
「クロノくん、本局から正式な命令が来たよ」
 命令が来たと言うエイミィ。
「『時空管理局本局次元航行部隊所属巡航艦L級8番艦アースラは、逮捕した犯罪者を本局へ護送し補給、整備の後、
次元犯罪組織『ガトランチス』のメンバー逮捕及び組織解体任務に従事せよ。 尚、任務にあったってL級艦船を全艦
投入する。 旗艦は、事件の第一報告であるアースラとする。 L級艦船の穴は、新鋭艦がテストを兼ねて巡航任務に
あたる。 事件の総指揮は、本局所属柊沢エリオル提督とす…… 以上』」
「はぁ、何故此の艦アースラばかりに厄介ごとが舞い込むんだ!」
『其れが、必然ヒツゼンだからですよ』
必然ヒツゼンだと!」
『之までの事も、之からの出来事も全て貴方の縁が呼び寄せた事です』
「この事件は、俺の縁に関係があるとでも言いたいのか?」
『其れは、まだ言えません。 時が来るまで待ってください』
「之から、お前は戦力をかき集めるのか?」
『必要な戦力と人材は、既に確保しています』
「確保って、武装隊を借りたのか?」
『いいえ。 武装隊は、借りません』
「武装隊を借りないだと! 最低でも一個大隊欲しいくらいなんだ」
『私が選んだ人だけで最低でも一個師団の戦闘力があります』
「一個師団って…… おい、柊沢! 統計規模は如何なる?」
『だから統計規模を無視して少数精鋭で事件に当たることを選んだのです』
「少数精鋭でも統計規模は、超えるだろう? お前や木之本は……」
『クロノ君の言うとおり私やさくらさんは、巨大な魔力を持っています。 その魔力は、部隊ごとに保有できる統計規模を
リミッターをしたとしても軽く超えてしまいます。 其処で上が如何いう判断をしたか分かりますか?』
 エリオルは、クロノに聞いた。
「聞かなくても分かる。 リミッターを掛けてないのだろう」






 第1039管理外世界―――
 飛王フェイワン・リードに割り当てられた個室で飛王フェイワンは、目に見えない敵と対局していた。
その相手とは、次元の魔女、柊沢エリオル、木之本さくらだ。
「以前は、次元の魔女だけだったが、今度はクロウの生まれ変わりに後嗣もいる。 一筋縄で勝てる相手ではない」
 飛王フェイワンは、望む未来を手にする為に策を練る。
「私が脱獄した事で、お前達はもう二度と私の邪魔をすることは出来んのだからな……」
「お考えは、おまとまりですか?」
「お前か…… 浩瀚」
「勝てますか? 此の対局!」
「絶対に勝つ! 夢を此の手に治めるまで諦めはせん。 どれだけの血が流れようが犠牲が出ようと関係ない」
「最初の一手は、何になさいます?」
 旧来からの飛王フェイワンの部下が聞いた。
「初めの一手は…… 第95管理外世界だ!」
「第95管理外世界と申されますと…… 阪神共和国がある世界ですね。 早速、差し向ける人選を……」
「する必要は無い! 全て差し向ける」
「はっ。 手勢を広間に集めます」
 そう言って、得たばかりの駒を呼びに行った浩瀚。


「之から、阪神共和国に渡す。 其処で『タイガークリスタル』を手に入れろ! 邪魔する者が居れば、遠慮なく殺せ!」
 広間に集められた手駒に飛王フェイワンは、命令した。
目的の為ならヒトを殺してもいいと言う飛王フェイワン・リード。
「さあ、行ってくるが良い!」
 そう言って、阪神共和国へ侵入する空間を開いた。
開いた空間へ飛王フェイワンの手駒が雪崩れこんだ。





 設定資料

 乍浩瀚
 飛王フェイワン・リードの部下。
 外見は、20代だが実年齢は100歳以上。
 飛王フェイワンと同じ施設で刑を受けていた。





 あとがき
 今回のお話は、如何でしたか?
 今の所、クロノを巻き込まれ体質に描いていますが如何でしょう。
 今回、作中である人物達で武装隊一個師団の戦闘力があるとしていますが、強く設定しすぎたかな〜
 


 飛王フェイワンの目的の為なら人殺しもいとわないって台詞怖くしすぎたか?
 飛王フェイワンの野望、デカすぎ。

 次回より飛王フェイワンの手下が暴れに暴れまくって次元世界を混乱に陥れていきます。


 ご意見、感想お待ちしています。





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