次元空間内―――
「まもなく第808管理世界です」
 副官は、言った。
「全艦、降下準備!」
 アルバリッシュは、第808管理世界に下りる準備を命じた。
「艦隊後方、1000に管理局の艦船を確認!」
「全艦反転! 管理局の艦船を撃沈せよ」
 アルバリッシュは、管理局の艦船に攻撃を命じた。


 

 時空管理局CX級艦船『シュメリー』―――
「S級犯罪結社『ガトランチス』の艦隊を補足!」
 索敵手は、艦長に報告した。
「全艦戦闘配備! 敵は、質量兵器の使用をいとわん連中だ! 心して任務を遂行しろ」
 此の次元世界周辺の警戒に当たっていた艦隊旗艦から各艦に命令が伝えられる。
「リゼッタ提督! 本局に報告しなくてもいのですか?」
「そんな余裕は無い」
「しかし、時空管理局長官名の命令ですが……」
「ちっ、報告したら戦闘開始だ!」
 そう言っている間に、敵は攻撃を始めてきている。
「見方、同型8番艦、駆動部に被弾! 戦線を離脱していきます」
 反管理局勢力『ガトランチス』の部隊と交戦に入ったリゼッタ提督の部隊。
『ガトランチス』の圧倒的な質量兵器の前に次々と戦力を失って行く管理局。



 第808管理世界―――
「隊長! 次元空間内の艦隊が苦戦、壊滅寸前とのことです」
 地上部隊の局員は、隊長に報告した。
「此の世界が、奴等の手に落ちるのも時間の問題か……」
 此の部隊は、地上戦を繰り広げている。
そして、自分の部隊も壊滅寸前だった。
「うわぁぁぁっ!!」
「防衛線を突破させるな」
「防御を強化しろ!!」
「た、隊長! 駄目です防御を強化するだけの魔力がありません!」
「何とか死守しろ! 応援が来てくれるはず」
 其の隊長の願いも空しく防御結界が崩れ落ちた。



 魔法少女リリカルなのは -RESERVoir CHRoNiCLE-
 ―第一部『ガトランチスの進撃』― 第十三話『落ち続ける次元世界』





 第1039管理外世界―――
「フェルナンド様、第97管理外世界に我等の求めるものがあることが判明しました」
 側近は、神聖皇帝に報告した。
「ついに見つかったのか!」
「はい。 『核』です」
「『核』?」
「放射能を帯びた兵器のことです」
 皇帝に説明するサーモサモン。
「よし。 一部隊を出し『核』とやらを強奪して来い!」
「では、科学に詳しい者も同行させます。 もしもの事があればいけませんので……」
「うむ。 其の方の進言通りに専門かも同行させよう」
「準備が出来次第、第97管理外世界に向かわせます」
 第97管理外世界の各施設が狙われていることを管理局も知らない。



 次元の魔女の店―――
「ただいま、戻りました」
 四月一日ワタヌキが客を連れて戻ってきた。
「おっそ〜い。 せっかくの狐のおでんが冷めちゃったじゃない!」
 どうやら侑子は、食べずに待っていたようだ。
「すみません。 探すのに時間がかかってしまいました」
「じゃあ、四月一日ワタヌキ、お酒よろしく」
 侑子は、四月一日ワタヌキにお酒の注文をする。
「侑子さん。 体ぶっ壊しても知りませんよ?」
 そんな四月一日ワタヌキの言葉を無視して話し始める侑子。
「貴女が、アトラスの錬金術師、シオン・エルトナム・アトラシアね」
 侑子は、シオンのほうを見て言った。
「はじめまして、“次元の魔女”…… こっちが、私の友達の……」
「弓塚さつきちゃんね」
 突然の事に驚くシオンとさつき。
「まだ私、名前言っていないのに」
「わかるのよ。 読み解く者には……」
 嘗て四月一日ワタヌキに言った言葉を言う侑子。
「おなかすいたわ。 侑子、面倒くさい話は、後回しにしよう」
 話を強引に止めたアルクェイド。 



 第97管理外世界某所―――
「此処から例の物を強奪する。 絶対に手がかりになる様な物を残すな!」
 襲撃のリーダーは、部下たちに命じた。
「私からも一言言わせて貰います。 絶対に核物質を軽率に扱わないでください」
 同行の科学者が、何度も注意を促す。
科学者が説明し終えると隊長は、突入を命じた。
「総員光学迷彩発動の上、突入!」
 少数精鋭に選る核関連施設への強襲作戦が開始された。



 次元の魔女の店―――
 侑子の店では、何も知らずにおでんを食べているすずか達がいた。
「所で、何なんですか?」
 おでんのことを知らないシオンが聞いた。
「あら? おでんを食べた事ないの?」
 不思議そうに皿の中を見つめるシオン。
「シオン、食べないと損するよ」
 美味しそうにおでんをたべるさつき。
侑子は、酒をあおるように飲んで次々、瓶を開けていった。
「侑子さん、胃をぶっ壊しても知りませんよ!」
 いつもの台詞を言う四月一日ワタヌキ
「何時もの酔い覚ましを用意しておきますよ」
 そして翌日、二日酔いに悩まされる侑子の姿があった。



 海鳴市月村邸―――
『おはようございます。 今朝のニュースをお伝えします』
 月村邸のテレビからニュースが流れた。
『昨夜から今朝にかけて、○○県の放射性物質研究施設から放射性物質が強奪される事件
が発生しました。  巡回中の警備員が異変に気づき通報で駆けつけた警察の……』
 ニュース映像が途中で切り替わった。
どうやら、重要な事が含まれたらしい。
『失礼しました。 次のニュースをお伝えします』
 其処へすずかの携帯に電話がかかって来た。
「はい。 すずかです」
『すずか! ニュース見た?』
 電話は、アリサからだった。
「こっちのニュース?」
『管理局のニュース!』
「局のニュース?」
『そうよ。 向こうじゃ、大騒ぎよ』
 すずかは、直ぐに局の端末でニュースを見た。
『第97管理外世界で起きた放射性物質強奪事件ですが未だ犯人につながる手がかりは、発見
されていません。 時空管理局の報道官は、『ガトランチスが関与している』との見解を表明して
います』
 ニュースキャスターは、管理局から公表されている情報を読み上げていった。
『また、捜査官は次のことを危惧しています。 強奪された放射性物質が時空管理局が使用を
禁止している質量兵器として使われた場合、多大な被害が予想されるとのことです』



 第1039管理外世界―――
「フェルナンド様、第97管理外世界より襲撃部隊が帰還しました」
「アレが、手に入ったのだな……」
「はい。 アレを我等の技術で加工すれば、一発で数千万人を葬る事が出来ます」
「よし。 早速、作業に入れ! 完成次第、実戦に投入せよ」
 フェルナンドは、大量破壊兵器の制作を命じた。




 戦艦『スケルッオ』―――
「アルフレッド様、各部隊より報告が来ております」
「報告しろ!」
 アルフレッドは、命じた。
「先ほど、根拠地から連絡が入り近日中に核を投入できるとの事です」
「そうか…… 其れで、各戦線の状況は?」
「苦戦していた第808管理世界もやっとの事で制圧完了との事です」
「よし。 本艦隊は、一時根拠地に帰還する。 物資補給後、侵略ペースを現在の5倍に上げる」
 アルフレッドは、根拠地への帰還を命じた。



 時空管理局本局―――
「終に核に手を出しましたか……」
「之から如何するのかね?」
「質量兵器になる前に取り戻せるのか!」
 エリオルは、伝説の三提督と話していた。
「取り戻す事は、不可能でしょう……」
「先見が出来る貴方でも予想できない事があるのですね」
「いいえ。 予想していました」
「予想していたのに防げなかったのか!」
「犯人は、同時複数個所で事件を起こしています。 其の対処に人員を咲いている状況です」
「あの娘達を使えば、良かったのでは?」
「管理局の管理外世界で騒ぎを起こすわけには行きません。 最悪、近隣が大騒ぎになってし
まいます」
「人員不足を解消する手が在るとは、本当なのか!」
「知り合いにヒトをよこして貰うよう頼んであります」
「次元の魔女かね。 これまた、高くつきそうだの」
 三提督も次元の魔女の存在は、知っていたのだ。
「渡す対価は、既に用意してあります」
 対価を用意しているというエリオル。
「其れで、何を渡すというのかね?」
 ミゼット提督は、エリオルに聞いた。
「其れは、違法なものではないだろう?」
 レオーネは、エリオルを問いただした。
「次元の魔女に渡すものは、“クロウ・リード秘蔵の酒”です」
「“クロウ・リード秘蔵の酒”?」
「今は、元管理局提督ギル・ゲレアム氏に預かってもらっています」 
「ギル・グレアムか…… 懐かしい名だな」
「彼は、元気なのか?」
「其の事は、直接彼女に聞いてください」
「この話は、此処までじゃ!」
 ラルゴが話を止めて本来の話に戻した。
「今も、日に2〜3のペースでガトランチスの手に落ちているそうじゃの」
「其れを食い止めるだけの戦力と人員は、管理局にありません」
「戦力が無い? お前さんの後継者が、居るでは無いのか!」
「確かに、さくらさんはクロウの後嗣です。 更に全次元最強の魔力の持ち主です」
「何故、最前線に送り込まない! 送り込めば、一気に片がつくだろう?」
「其れが、出来ればしています」
「其れが出来ない理由があるようだな……」
「脱獄させられた飛王フェイワン・リードが、彼等と共にいるからです」
 エリオルが、投入に踏み切れないのは、飛王フェイワンにも先見の力があるからだ。
彼は、少し前まで玖楼(クロウ)国の『切り取られた時間』の中にいたのだ。 己の願いを叶えるために……



 第59管理世界―――
「此方、第59管理世界。 敵の襲撃を……」
 ズズーンと重い爆発音と共に其の魔導師は、吹き飛ばされた。
『如何した! 第59管理世界』
 通信相手に、声が届く事は無かった。

「ふんっ! 他愛も無い……」
 通信をしていた魔導師を踏みつけるガトランチスの兵。
「次の世界を落としに行くか……」
 ガトランチスの兵たちは、管理局の施設のみを破壊して去っていった。



 第75管理世界―――
「ひゃっはぁぁぁぁぁぁぁ」
「おい、派手に暴れすぎるなよ」
 暴れすぎる同胞を宥めるガトランチスの兵。
「うるせぇ! 暴れたいから暴れるんだ」
「隊長! 其のエネルギーを管理局本局攻めの為にとっておいてください」
「俺は、誰の指図も受けねぇつうの」
 そう言って意見した者を殴り飛ばした。
再び其の世界を懐柔していく隊長。
「壊れろ! 壊れてしまえー」
 彼等は、知らない。
この隊長が元で、後に組織崩壊の引き金になることを…… 当然、当の本人も気づいていない。




 設定資料

 リゼッタ・ガルマリー
 時空管理局CX級艦船『シュメリー』艦長。
 階級は、提督で執務官資格を保有。



 ギル・グレアム
 時空管理局の元提督。
 闇の書事件後、依願退職しイギリスにて隠居中。





 あとがき
 今回のお話はいかがでしたか?
 次々とガトランチスの手に落ちていく次元世界の緊迫感が上手く伝わるかどうか……
 ガトランチスは、終に禁断の物質を手にしてしまいました。
 シナリオ中では、管理局の管理世界では核物質の扱いは禁止という設定です。

 そして、伝説の三提督までも出しちゃいました。 
 StrikerS本編でも喋っているシーが無いから台詞の選択が難しいわ。

 ご意見、感想お待ちしています。





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