第1039管理外世界―――
「次の手は、如何されます?」
 乍浩瀚は、聞いた。
「“死徒二十七祖”を数名捕らえ写し身を創る。 但し、真祖の姫や管理局、魔女を快く思わん
連中に限る」
「では、“死徒二十七祖”に顔の聞く配下の者を送り込みましょう」
「夢を叶えるためならどれだけの犠牲が出ようが構わん……」
 飛王フェイワンは、“死徒二十七祖”の写し身を創って何かをしようとしている。
飛王フェイワン、貴方は、第六法に挑まれるおつもりですか! 未だ、誰も見たことの無い魔術を手に
しようというのですか!」
 飛王フェイワンは、第六法に“死徒二十七祖の写し身”を挑ませるようだ。



 魔法少女リリカルなのは -RESERVoir CHRoNiCLE-
 ―第一部『ガトランチスの進撃』― 第十四話『飛王フェイワンと死徒二十七祖』





 第97管理外世界―――
飛王フェイワン、“死徒二十七祖”の写し身を創っても無駄よ。 何故なら写し身も吸血鬼だから血を
吸わないといけなくなるから……」
「“死徒二十七祖”を手なずけようという馬鹿がいるんだ」
 飛王フェイワンの事を蔑むアルクェイド。
「アルクェイド。 飛王フェイワンの事を馬鹿にしない方が良いわよ」
「馬鹿になんてしていないわ。 命知らずがいたんだと言っただけよ」
「貴女には、言っていなかったけど、彼、飛王フェイワン・リードは、クロウ・リードに次ぐ力の持ち主よ」
「クロウは、死んだんでしょ?」
「えぇ。 クロウは、死ぬ前に魂を二つに分けているわ。 この事は、飛王フェイワンも知らない事だけど……」
「ふぅ〜ん。 飛王フェイワンは、“死徒二十七祖”を使って何をしようと言うの?」
「誰も至っていない、第六法を目指すための手ごまにするのでしょう」
「侑子もクロウも諦めたんでしょ」
「普通は、目指すでしょ。 魔術師なら……」
 シオンが、話に割ってはいる。
「侑子は、あることの為に目指すのを止めたのよ」
「貴女は、幾つ魔法が使えるのですか?」
「簡単に言うと思う?」
 まるで、聞きたければ対価を払えといわんばかりの口調だ。
「そう言うだろうと思いました」
 シオンは、予想していたと言った。
「侑子は、第二魔法が使えるんでしょ」
「第二魔法は、魔導元帥が使い手では無いのですか!」
「侑子は、対価と引き換えに異世界へ渡らせる事が出来るのよ」
「モコナが、口の中に吸い込んで……」
「このモコナを使えば異世界に渡れるのですね」
「えぇ、でも、モコナは魔法騎士マジックナイトに必要だから……」
魔法騎士マジックナイトは、この世界のヒトですよね」
「彼女たちは、其の世界限定だけど自由に行き来できるわ」
「協会が知ったら捕縛対象になるかもね」
「其のときは、ゼルレッチに抑えてもらいましょう」
「また、ワシに面倒ごとを押し付けるのか……」
 何処へ行ってのか魔道元帥が戻ってきた。
「所で、お嬢ちゃんたちは、来ておらんのか?」
「今は、学校よ」
「学生とは、不便なものよのう」



 トラフィムの城―――
「我の城に何のようだ!!」
 トラフィムが言い放つ。
「我等が主が其の方に用がある」
「たかが、人間の分際で死徒の王である我に命令する気か?」
 トラフィムは、威圧的に言う。
トラフィムを守るように厚い壁を作る死者や配下の死徒。
「貴方がたには、我等が主の願いを叶えるための手ごまになってもらいます」
 其の男が言った瞬間、空間が割け飛王フェイワンの腕が出てきた。
飛王フェイワンは、避けた空間越しにトラフィムを捕らえ写し身を創ろうと呪文を唱えている。
「ヒトの分際で我に術を掛けようとは、愚かな」
 彼は、知らない。 飛王フェイワンは、数百年も生きている魔術師だという事を……
トラフィムの考えとは、裏腹に飛王フェイワンの術が絡み付いていく。
「まさか、このワシに術を掛けた魔術師は、初めてだ。 この程度で、我に勝てると思ったか?」
「……」
 飛王フェイワンは、無言で儀式を続ける。 トラフィムの写し身を創るために。
謎の鏡越しにトラフィムの写し身が作られて行く。 本体と同等の力を持ったもう一人のトラフィムが……
「なんなんだ!! あの術は……」
「トラフィム様が、二人に」
 トラフィム配下の死徒は、混乱する。
どっちが、本物のトラフィムか分からないからだ。


 侑子の店―――
「ヤハリ、はじめたようね……」
 侑子は、飛王フェイワンの気配を感じて言った。
「ふ〜ん。 始めたんだ! トラフィムに殺されるのがおちよ」
飛王フェイワンは、目的のためなら手段を選ばない男よ。 黙って殺されたりはしないはず」
 侑子の言うとおり、飛王フェイワンは、目的のためならどれだけ犠牲が出ようが気にしないのだ。
「うぅぅっ。 ついていけないようぅ」
 さつきは、話にまったくついてこれないで入る。
「さつきには、いろいろ勉強していただく必要があるようですね」
 シンオンは、さつきに勉強の必要性を説いた。
さつきは、ウラのことは無知なのだ。
「之から、日中は、太陽に慣れる訓練をし夜にウラの事を勉強してもらいます」
「シオン! 何時寝ればいいの?」
「無論、寝る時間を設けます。 さつきの勉強次第ですけど……」
 今の状況じゃ寝る時間は、無いというシオン。
「ちゃんと睡眠とらないとお肌が……」
「文句言う時間があったら早く太陽に慣れる訓練を始めなさい!!」
「はぁい」
 さつきは、だるそうに日の光の下に歩を進めた。
「志貴とデートしたくないのですか?」
 シオンは、さつきのやる気にさせるために志貴の名前を出した。
「志貴君の為にがんばる」
「汚い手を使うわね」
「“真祖”! 貴女だって使うでしょう?」
「志貴のためなら使うかもね」



 三咲町―――
「之だけ探して見つけられないとは、何処へ行ったんでしょう?」
 誰かを探している女性は、言った。
「確かに、数日前まで此処にいたのですが……」
 女性は、路地裏で生活していたであろう者達の痕跡を見ていた。
「此の場で、“真祖”と接触したのは、間違いないはず」
 どうやら、彼女は、異端の処理を行う代行者のようだ。
「しかし、何処へ行ってしまったんでしょうね。 残り香を残さずに消える事は……」
 代行者は、何かを思い出したように言った。
「若しかしたら“次元の魔女”が絡んでいると厄介ですね」
 彼女の予感は、当たっていた。
此の件に、次元の魔女は、絡んでいた。
『何か言った!?』
 突如聞こえた声にビックリする代行者。
「隠れていないで出ていなさい!!」
『私の居場所を知らない貴女に言われたくないわ。 エレイシア』
 代行者の名は、エレイシアというらしい。
『願いが在るのなら、私の店の姿が見え、入れるから』
 侑子は、それだけ言うと念話を止めた。

「はぁ。 気配の薄い昼じゃなく夜になるのを待ちましょうか」
 不意に代行者は、別の気配を感じた。
「此の気配は、吸血鬼! 処理しなくては……」
 だが、疑問に引っかかる。
何故なら、昼間から活動できる吸血鬼は、“真祖”だけだからだ。
「気づかれないように追跡して見ますか」
 代行者は、気づかれないように追跡を始めた。



 バニングス家の車―――
「(すずか! 気づいた?)」
 アリサは、追跡者の事をすずかに念話で聞いた。
「(一人、私たちをつけてくるわね)」
「(私たちを付けねらった事、後悔させてやるわ)」
「(此処で戦うのは、まずくない?)」
「(其れもそうね)」
「鮫島! 何時もと所に急いで」
 アリサは、執事の鮫島に命じた。
車の速度を上げる鮫島。



 トラフィムの城―――
 トラフィムの城では、飛王フェイワンによって多数の写し身が作られていた。
「必要な数の写し身は出来上がった…… 此処に用は無い」
 そう言って、写し身が不可視の穴を通り終えると空間を閉じた。

「あ奴を殺しに行きますか?」
 死徒の手下は聞いた。
「ムカつく! 何が何でも此の屈辱を晴らしてくれる。 其れだけでは、腹の虫が収まらん!!」
「では、戦争をされますか?」
「城にいる死者や死徒を全て集めろ!! アルトルージュ達で憂さを晴らしやる」
「御意!!」
 飛王フェイワンのせいで一つの戦争が起きようとしていた。




 侑子の店―――
「侑子さん、こんにちわ」
「こんにちわ」
「二人とも此処へ来る途中で埋葬機関の代行者の追跡を受けたでしょ」
「確かに追跡を受けたけど、逃げてきたわ。 何故、急に襲われなければいけないのよ」
 アリサは、激怒している。

「やっと、見つけました。 吸血鬼!!」
 すずかたちを追跡していた代行者が現れた。
「其の吸血鬼をおとなしく此方に渡しなさい!!」
「すずかの何処が吸血鬼なのよ」
「吸血鬼は、居るだけで邪悪なのです。 吸血鬼は、全て滅しなければならないのです」

「之から、其の嬢ちゃんたちの指導をしようと思っておったろこれなのに……」
「キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが、何故此処にいるのですか?」
「ばかシェル。 殺してあげようか」
「な、アーパー吸血鬼まで、此処に……」
 如何やら、アルクェイドと代行者には深い関係があるようだ。

「あなたの言う通り、私は“夜の一族”と呼ばれる吸血鬼です」
 すずかは、代行者に言う。
「“夜の一族”であろうと吸血鬼は、吸血鬼です。 吸血鬼は、必ず浄化します」
 代行者は、すずかを殺そうとする。
「其の娘が血を吸えない吸血鬼だといっても滅ぼすのか?」
「血を吸えない? 血をすえないってどういう事なんですか!!」
「貴女は、知らないと思うけど“夜の一族”の吸血鬼は、血を吸う必要が無いの。 貴女の知っている
吸血鬼たちと違って、たとえ血を吸っても“死者”や“死徒”にすることは出来ないわ」
「それでも、吸血鬼は殲滅します。 其れが、埋葬機関の仕事です」
「彼女が、“真祖”と同じ遺伝子障害だとしても」
「遺伝子障害?」
「“夜の一族”のもの達は、優れた知能とヒトより老化が遅く寿命が長い代わりに一つだけ欠点があ
るの。 わかる?」
 侑子は、代行者に聞いた。
「若しかして、吸血と関係があるようですね」
「シオンの言う通り、“夜の一族”の者は、何故か鉄分が欠乏しやすいの。 後、子孫が残しにくいとか……
誰かと似ていない? “弓”のシエル」
「其処の、アーパー吸血鬼ですか……」
 アルクェイドの事をアーパー吸血鬼と言うシエル。
「誰が、アーパーですって!!」
 シエルの発言が原因で口げんかを始めるアルクェイド。
火花を散らす二人に侑子が釘を刺した。
「店を壊したら修理代を請求するわよ」
「次、逢ったら必ず退治します」
 そう言って、店を出ようとするシエルは、何かを思い出したように言った。
「退治しないといけない吸血鬼が居ましたね」
 シエルは、すずかに詰め寄る。
「言っていなかったけど、すずかちゃんたちに手を出したら時空管理局から追われることになるわよ」
「時空管理局…… また、厄介なところに逃げ込んでくれましたね。 之では、手がだせませんね」
「もし、管理局の人間に手を上げたら管理局に追われることになるわよ」
 そう言われては、シエルも諦めざるを得なかった。
「今回は、引き上げます。 次は、容赦なく殲滅します」
 それだけ言って、シエルは去って行った。

「埋葬機関の者も去ったし、魔術の指導をさいかいするかの……」





 あとがき

 今回のお話は、如何でしたか?
 飛王フェイワンが、死徒の写し身を創ってましたが創らせすぎたかな。
 資料が揃わないとなかなか、執筆速度が上がらないな〜
 もう、これ以上クロス作品が増える事は、無いはず?……
 あまり増えすぎると、伽羅整理や管理が大変やからな〜

 と、言うわけで、次回は、すずかとアリサの魔法勉強の模様をメインにお送りする予定です。
 ご期待を…… ご意見、感想お待ちしています。





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