第1039管理外世界―――
「フェルナンド様。 “ミッドチルダ”、“セフィーロ”、“第97管理外世界”以外の制圧は完了しました」
 サーモサモンが言う。
「まあ、よい。 全次元世界の98%を手中に収めておるからな……」
「ですが、管理局には強力な魔導師が残っています」
飛王フェイワンが創った“死徒二十七祖”の写身が在れど確かに、あの戦力は侮れん」
「では、あの変態Drに例の機械を大量に作らせ管理局の戦力を分断させましょう」
「よし。 Drに通信を送れ!!」
 フェルナンドは、サーモサモンに命じた。


 スカリエッティのラボ―――
「おや。 “ガトランチス”の皇帝が自ら私に連絡とは、珍しいね」
『Dr、例の機械は出来ているかね?』
「例の機械? あのガラクタかね」
『出来ているのか!?』
「注文の数は、出来上がっているよ」
 スカリエッティは、フェルナンドに言う。
『じゃあ、直ぐにばら撒いてくれ。 管理局の戦力を分断させたいのでね』
「わかった。 希望通り、直ぐにばら撒いてやる」




 魔法少女リリカルなのは -RESERVoir CHRoNiCLE-
 ―第一部『ガトランチスの進撃』― 第十六話『異界に現るワラキア』





 ヨーロッパで起こった“死徒”同士の戦争でアルトルージュ派が勝利を収めて数日後……


 第1039管理外世界―――
飛王フェイワン・リード、死徒同士の戦争は、アルトルージュ派が勝利を収めました」
 乍浩瀚が、言った。
「まぁ、どっちが勝とうが関係ない。 既に写し身は、我が元にある」
「次の手は、如何されますか?」
 飛王フェイワンは、少し考えてから言う。
「良し。 次の駒は……」


 ミッドチルダ―――
「此処は……」
 男は、呟いた。
「今回は、異界で形を為したようだ」
 飛王フェイワンによって蘇ったマントを羽織った男は、夜のミッドチルダに立っていた。
後に、ミッドチルダを震撼させる元凶になることをミッドに住まう人は、まだ知らない。



 時空管理局本局―――
「彼が、ミッドチルダに現れてしまったようです」
『彼って、誰なんや!?』
 八神はやては、エリオルに聞いた。
「“ワラキアの夜”や“タタリ”と呼ばれる吸血鬼です」
『吸血鬼って、あの血を吸う奴か?』
「はい。 彼は、“死徒二十七祖”第13位で本名は、“ズェピア・エルトナム・オベローン”と言います」
『そいつが、如何かしたん?』
「ミッドチルダに侵入しました」
『侵入って、如何対処すればええんや!! エリオル提督』
「決して不安を抱かない事です。 僅かでも不安を抱けば、実体化してしまいます」
 エリオルは、はやてに“ワラキアの夜” と対峙する時の注意点を言う。
「其の問題が解決次第、八神さんには、私の指揮下に入ってもらい特SSS級事件に当たってもらいます」
『特SSS級って、あの事件か?』
「そうです。 研修先でも、内密にお願いします」
『了解や』


「八神さん、お願いしますよ。 “真祖の姫君”にも応援に来てもらいましょう……」
 エリオルは、“次元の魔女”のところに居るであろうアルクエィドの事を考えた。
「今は、本来の力を取り戻しているでしょう」


 第97管理外世界―――
「シオン」
 侑子がシオンを呼んだ。
「なんでしょうか、魔女……」
「異世界に、“ワラキア”が現れたそうよ」
「えっ。 “タタリ”が」
「えぇ。 エリオルから連絡があったわ」
「それで、現れたと言う場所は……」
「“ミッドチルダ”と言う魔法文化が発達した世界よ」
「“ミッドチルダ”?」
「ほう。 “ミッドチルダ”か、懐かしいのう」
 ゼルレッチは、懐かしいと言う。
「魔女!! 何故、“ミッドチルダ”なのですか?」
「それは、自分で考えなさい」
 侑子は、自分で考えるように言った。
「(でも、“タタリ”は、向こう二百年は発生しないはず……)」
 シオンは、思考を巡らせる。
「(しかも、何故、異世界に……)」
「悪意を持った力ある者が、やったことよ」
「!!」
 シオンは、驚いた。 侑子に思考を読まれたからだ。
「貴女には、時が来たらアルクェイドと共に“ミッドチルダ”に渡ってもらうわ」
「“対価”は、イイのですか?」
「“対価”は、“アトラスの院”から貰っているわ」
「そうですか」
「今頃、“協会”と“教会”は、大騒ぎでしょうね」



 魔術協会―――
「“タタリ”が異界に現れただと!! 其れは、本当か!?」
 何処かの誰かが聞いた。
「確かな情報です」
「情報源は、何処だ!!」
「“魔道元帥”です」
「“魔道元帥”だと、なると嘘ではないな…… 主要メンバーに非常呼集だ!!」
「はい」
「(戦争が終わったと思ったら、異界で“タタリ”だと!! これ以上、我等の仕事を増やすな!!)」



 聖堂教会―――
「私も忙しいんです」
 シエルが、誰かに言った。
「“次元の魔女”から得た情報だが、異界で“タタリ”が発生した」
「“タタリ”は、向こう数百年、発生しないはずでは?」
「発生時期を速めた者が居るらしい」
「其れは、誰なのですか?」
「其れは、言えぬ。 許された干渉値を超えるそうだ」
「私が、乗り込んで吐かせてやります」
 シエルは、部屋を出て行こうとした。
「埋葬機関が第七位“弓”のシエル。 戦争の後始末に当たれ!!」
 誰か分からない人が、シエルに命じた。
如何やらシエルより地位の高い人物のようだ。




 アルトルージュの城―――
「それにしても貴女、何者なの? “空想具現化マーブルファタズム”は使うわ、見たことない魔術を使うわ」
 黒髪の少女が聞いた。
「いえません。 無闇に話すなとゼルレッチさんが……」
「爺やが…… そなたら、爺やの弟子か?」
「(どうりで高度な魔術が使えるわけね。 私の配下に欲しいわ)」
 納得したように思う少女。
「姫様、トラフィムがアレで引き下がるとは思えません」
「そうね、今回は、彼女たちのお陰で勝ったけど……」



 トラフィムの城―――
「許さんぞ、アルトルージュ!! 人間の力を借りて戦うとは……」
 トラフィムは、玉座で飲んでいたワインのグラスを床にたたきつけた。
「ですが、あんな魔術は、知りません」
 すずかが、使った魔術について論議するトラフィム。
「“空想具現化マーブルファタズム”を使っていた事は、如何判断されるのですか?」
「“真祖”しか使えぬ“空想具現化マーブルファタズム”を使った小娘は、ボロ雑巾になるまで血を吸ってやる」
「アルトルージュ派との戦闘で、我等の戦力は全盛期の半分以下に落ちております」
「戦力が落ちているのは、アルトルージュも一緒だ!!」
「何時、攻撃を再開しますか?」
「早ければ、早い方がいい。 教会とアルトルージュに気づかれぬように人間を襲い、手勢を増やせ!! 
犯行は、アルトルージュ派の仕業に見せかけることを忘れるな!!」
「御意」



 アルトルージュの城―――
「そなたは、“夜の一族”であったか」
「はい。 黙っていてすみません」 
「よい。 誰でもヒトに言えぬ秘密がある」

「貴様、此処を何処だと心得る!!」
「知っていますよ」
「知っているのなら、其処になおれ!!」
 誰かが、城に侵入したらしい。

「騒がしい。 何事じゃリィゾ!!」
「姫様、城に使い魔、二体を従えさせた魔術師が侵入したようです」
「(使い魔? 二体? 彼は、死んだと聞いているけど……)」
 アルトルージュは、遠い昔、逢った大魔術師クロウ・リードの事を思い返す。
「お久しぶりですね、アルトルージュ・ブリュンスタッド」
「誰じゃ!?」
「柊沢エリオルと言います」
 現れたエリオルに警戒をするアルトルージュ。
「仕方ないですね……」 
エリオルは、ポケットから魔法の鍵を出した。
「闇の力を秘めし鍵よ、真の姿を我の前に示せ、契約の元エリオルが命じる“封印解除レリーズ”!!」」
 すると太陽をモチーフにした杖に変わった。
「そなた、其の杖は、クロウ・リードの……」
 アルトルージュも杖を見てやっと気づいた。
「やっと気づきましたか、アルトルージュ」
「其の杖を持っているということは、クロウ・リードは……」
「はい。 かなり前にクロウ・リードは亡くなっています」
「そうであったか。 クロウが……」
 アルトルージュが一つの疑問を抱いた。
「(あの男から感じた気配は、クロウ・リードと同じ…… でも、クロウは、死んだはずなのに何故?)」
「其れは、私がクロウ・リードの生まれ変わりだからですよ」
「(!! 心の中を読まれた)」
「クロウ・リードの生まれ変わりとは、如何いうことじゃ。 其れに、クロウ・リードは死んだのだろ!?」
「確かに、クロウ・リードは死にました」
「ヤハリ、あの噂は本当だったのか」
「私は…… いえ、クロウ・リードは、クロウ・リードとして死ぬときに魂を二つに分けました」
「魂を二つに?」
「はい。 一つは、私に…… もう一つは……」
「もう一つは、誰なのじゃ」
「其れは、言えません。 彼には、知識がないため対処が出来ないからです。 クロウ・リードの
記憶は、私が引き継いだからです」
 エリオルは、もう一人の自分、木之本藤隆を想像する。
「そなた……」
「お気づきになられましたか?」
「気づかぬと思うたか!? 接を誰と思うておる。 何故、そなたからクロウ・リード程の力が感じられぬ
のは何故じゃ?」
「其の事ですか。 其れは、クロウ・リードがネガイを叶えて貰ったからです」
「クロウ・リードにも出来ない事があったのか!?」
「私は、クロウ・リードであった時、とある力を持て余していました。 わかりますか?」
「クロウが、持て余した力とは何じゃ!!」
「“未来視”です」
「“未来視”? “アトラス院”の錬金術師みたいな事が出来たのか、クロウ・リードは」
「クロウ・リードの予想範囲は桁違いで、シオン・エルトナム・アトラシアが赤子と思えるほどでした」
「“アトラス院”の次期院長って娘ね。 確か、数年前に“タタリ”に吸血鬼にされたと聞いたけど……」
「彼女は、“枯渇の姫”と一緒に魔女の店に居ますよ」
「“枯渇の姫”!? 今、二十七祖に最も近いと言う娘ね」
「そしてこの世で唯一の真祖の眷属です」
 さつきは、ロアが滅んだ今、アルクエィドの唯一の眷属だ。
「私にとっても、数少ない血縁って事になるわね」



 トラフィムの城―――
「トラフィム様!!」
「何だ!?」
「アルトルージュの城に差し向けた死者共が全滅しました」
「全滅だと!! 誰に殺れたんだ」
「使い魔を連れた“魔術師”です」
「“魔術師”だと!? 協会のか?」
「いいえ。 フリーのようです」
「えぇい!! 何処のどいつだ!! 私を怒らせたのは……」
「申し訳ありません。 今まで見たことのない魔術でしたので…… 確か、太陽の杖を持っていました」
「太陽の杖だと!! 奴が生きていたのか? クロウ・リード」
「クロウ・リード!? 伝説の大魔術師じゃありませんか」
 トラフィムの側近が言う。
「奴なら、数百人の死者や死徒を一瞬で倒せよう」
「其のものから感じた気配は、クロウ・リードと同じでしたが、力はクロウほどではありませんでした」
「そんな奴に我が兵は倒されたのか!?」
「はい」
「許さん。 クロウ・リードと其れに連なる血縁の全てを殺しくれる。 そして我が、配下においてこき使ってやる。
首を洗って待っておれ!! クロウの血縁どもよ
 トラフィムは、クロウ・リードの血縁抹殺を決めた。



 アルトルージュの城―――
「その子達、協会にバレたら封印指定になるわよ。 特に“夜の一族”の娘は……」
「其の事なら、先手を打っています」
「先手って、協会に圧力かけられる分け……」
 ふと、アルトルージュは気づいた。
「爺か…… 貴方、ゼルレッチに頼んだのね」
「そうです。 ゼルレッチに圧力をかけてもらいました」
「確か、姫様の後見人ですな」
「えぇ。 爺なら協会に圧力を掛けれるでしょうね」
 ゼルレッチは、魔術協会に強い影響力を持っていた。
エリオルは、少し前にゼルレッチに魔術協会に圧力をかけてもらっていた。
「其れで、ゼル爺は?」
「彼なら、魔女と一緒に飲んでいると思いますよ」



 侑子の店―――
「今頃、アルトルージュと語っている頃じゃろう」
「そうね。 彼女たちなら受け入れられるでしょうね」
「アレを見たら敵に回すより見方にした方がイイと言う事は分かるじゃろうからの」
 ゼルレッチは、侑子と呑み語っていた。
「あの娘達とアルトルージュの未来を信じましょう」





 設定資料

 アルトルージュ・ブリュンスタッド
 真祖と死徒の混血。
 「血と契約の支配者」で「黒の吸血姫」と呼ばれている。


 フィナ=ヴラド・スヴェルテン
 アルトルージュの護衛の一人で、「白騎士」や「吸血伯爵」「ストラトバリスの悪魔」とも呼ばれる。


 リィゾ=バール・シュトラウト
 アルトルージュの護衛の一人で「黒騎士」と呼ばれる。


 タタリ/ワラキアの夜
 本名は、ズェピア・エルトナム・オベローン。
 名前の通りシオン・エルトナム・アトラシアの祖先。
 飛王フェイワンによってミッドチルダで形を成す。





 あとがき

 TYPE-MOONが同人ゲーム(18禁)の商業化リメイクを発表しましたね。
 其処で、架空の予告編月姫2で登場予定だった伽羅、アルトルージュ、リィゾ、フィナを出しちゃいました。
 喋り方は、自分が持つイメージです。
 15話と本16話の間の出来事、トラフィム派とアルトルージュ派の戦争の模様は、外伝として書く予定です。
 気長にお待ちください。

 次回も月姫の伽羅たちがなのはワールドで大暴れ!? する予定です

 ご意見感想、お待ちしています。





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