アルトルージュの城
「アルトルージュ。 言い忘れるところでした」
「何よ。 言い忘れた事って」
「此処へ来る前に外をうろついていた、トラフィムの死者たちを消しておきました」
 トラフィムの手勢を消したと言うエリオル。
魔力がクロウ・リード程なくてもエリオルなら造作もないことだった。
「私が原因で、クロウ・リードの血縁が標的にされるでしょうけど……」
「如何してそんなことしたの?」
「其れが、“必然ヒツゼン”だったからです」
「“必然ヒツゼン”? “偶然グウゼン”じゃなくて」
「はい。 この世に、“偶然グウゼン”はありません。 在るのは、“必然ヒツゼン”です」
 エリオルは、自説を、この世の理を言う。
「じゃあ、貴方は、“根源”に到達したの? 世界移動出来るみたいだし」
「この世界で、自力で世界移動できるヒトは、“魔道元帥”、“次元の魔女”と私ともう一人だけです」
「もう一人は、誰なのよ」
「この世を含め最強の魔力の持ち主とだけ言っておきましょう」
「その人に逢ってみたわ」
「何れ逢えますよ。 何れ……」
「其れより、此の娘達も異世界に渡れるんでしょ」
 アルトルージュは、すずかたちのことを聞く。
「彼女たちは、時空管理局の人間だから渡れますよ」
「“時空管理局”?」
「ゼルレッチから聞いているでしょう」
「話を聞いたのは、つい最近よ」
「私でもヒト探しの術を使わないと捕まえられません」
「じいは、神出鬼没だから」
「何か言ったか!?」
「爺、何時の間に」
「其れは、動でもよい」
 アルトルージュの城にゼルレッチが現れた。
「エリオルよ。 ミッドチルダに“タタリ”が現れたそうじゃな」
「はい。 私の…… いえ、クロウ・リードの血筋のある男の仕業です」
「あの男か、懲りん奴よ…… 大六法の準備をしているかと思えば、“タタリ”をも手ごまにするとはの」
「其れで、異世界で準備をし時間を稼ぐために“タタリ”を利用するのでしょう」
 エリオルは、飛王フェイワンの野望を危惧する。
何故なら、彼は命を弄ぶからだ。
「アルトルージュさんにもミッドチルダに渡ってもらいます。 其の前にトラフィム一派を行動不能状態にしておきましょう」
 エリオルは、トラフィムの勢力を極限まで削ると言った。
そして、エリオルは、其れを実行しトラフィム一派を行動不能状態にまで弱体化させた。




 魔法少女リリカルなのは -RESERVoir CHRoNiCLE-
 ―第一部『ガトランチスの進撃』― 第十七話『虚言の夜、ミッドチルダで開幕!!』





 アルトルージュの城
「じゃあ、トラフィムの力を大幅に殺いだことだし、異界に渡る前に紹介しておくわ」
 そう言うとアルトルージュの足元に白い魔犬が現れた。
「このこが、死徒二十七祖第一位“プライミッツ・マーダー”よ」
「“霊長の殺人者”ですね」
「そうよ。 私が、命じない限り人を襲うことはないわ。 だから、安心して頂戴」
「メンバーが揃い次第、“タタリ”討滅のためミッドに向かいます」
「エリオルよ、アルクェイドたちは、如何するのじゃ」
「アルクェイド? 私は、嫌よ」
「彼女にも来てもらわないと困るんです。 貴女が“タタリ”に与えた能力のためです」
 アルトルージュは、昔“タタリ”に力を与えていた。
「私が、悪いと言うわけ?」
「いいえ。 貴女は、悪くありませんよ」
「アルトよ、今は、“タタリ”討滅が先じゃ!!」
「フィナ、リィゾ。 準備は、出来た?」
「姫様、準備は出来ておりますぞ」
 リィゾがアルトルージュに言う。
「では、皆さん。 私の近くに来て下さい。 次元を超える魔法を使います」
 エリオルの近くにアルトルージュ、プライミッツ・マーダー、リィゾ、フィナ、ゼルレッチが集まる。
エリオルは、次元を超える魔法を使った。





 聖王教会
「騎士カリム。 本局のエリオル提督がお見えです」
 シャッハが言った。
「お通しして頂戴」
 執務中のカリムがシャッハに言った。
そして、シャッハの案内でエリオル一行がカリムの部屋に通された。
「お久しぶりですね、カリム」
「お久しぶりです。 エリオル提督。 ところで、其の方たちは……」
「この人たちですか? この人たちは、私の知り合いと、クロウ・リードと知り合いだった人たちです」
「そうですか、では、皆さんが揃ったらお茶にしましょう」

「騎士カリム、騎士さくらがお見えです」
「此処へ通してください」
 遅れてやってきたさくらもカリムの部屋に通された。
「お久しぶりです。 カリム」
「お久しぶり、さくら」
「何で、アルクエィドも来るのよ」
 アルトルージュが文句を言う。
「遣るっていうの?」
「アルクエィド、喧嘩は止めてくれ!!」」
「志貴、止めないでよ」
「姉妹げんかは、元の世界に帰ってからにしろ!!」
 ゼルレッチが、アルクェイドとアルトルージュに言った。
「はぁい」
 アルクエィドがダルそうに返事をする。
「何で、俺まで付き合わないといけないんだ!!」
 志貴は、問答無用で此処へ連れて来られたのだ。
「カリム、騎士はやてがまだお見えになりません」
「八神さんには、既に動いてもらっています」
 姿を現さないはやては、既に対策に走っていた。
「其れでは、はじめましょう……」
 エリオルは、話を始めた。
「既に知っている人もいるでしょう。 この世界に“タタリ”が現れました。
此の事は、カリムの予言にも現れています」
「“タタリ”って、異界に渡れる魔法って使えたっけ?」
「彼には、自力で次元を渡る事はできません」
「魔女曰く、手引きをした者がおるそうじゃ」
「魔女って“次元の魔女”の事!?」
 アルトルージュが聞いた。
「其の通りですよ、アルトルージュ」
「対価さえ払えば、どんなネガイでも叶えてくれると言う」
「志貴も其のメガネ強化してもらってたもんね」
 志貴は、対価としてこの事件が解決次第、魔女の店でこき使われる事が決まっている。
「其れより、“タタリ”をこの世界に呼んだのは誰なのですか?」
「“タタリ”…… ズェピア・エルトナム・オベローンを召喚したのは、飛王フェイワン・リードという男です」
飛王フェイワンって誰!?」
飛王フェイワンは、クロウ・リードの血筋の者で、クロウ・リードに次ぐ魔力の持ち主です。
そして、之から起きる出来事の張本人です」
 エリオルは、“タタリ”対策を集まったメンバーに語った。
“タタリ”対策の話が終わった後、部屋に残ったのは、すずかとアリサ、エリオルにさくら、そして騎士カリムだった。
「貴女達ね、元始ベルカの継承者というのは……」
 カリムが、すずかとアリサに言った。
「はい」
「私も、エリオル提督からお聞きしたときは耳を疑いました」
 其れもそのはず、歴史のかなたに消え去った魔法体系だったからだ。
古の都、“アルハザート”と同様だ。
「アレは、その昔、異世界を旅していたクロウ・リードが第97管理外世界へ持ち帰ったものです。
後に必要になることは、彼には見えていましらか……」
「私の予言にも、数ヶ月前に在る詩が現れました。
異世界よりベルカの礎を築きしアルハザートの遺産現れしとき世界は、戦いに巻き込まれるだろう」
「私は、いいえ。 クロウ・リードは、数百年も前に此の事が見えていました」
「あんた、どういう化け物なのよ!! 何百年も前に知っているなんて」
「貴女が、アリサさんね」
「そうよ!!」
「そして、貴女がすずか。 お二人の事は、はやてから聞いています」
「はやてが?」
「お二人には、話していませんでしたね。 カリムと八神さんは、ある任務で知り合っているのいです。
そして、数年後に起きる事件にも関係ある古代遺物ロストロギア回収もしています」
「其の古代遺物ロストロギアって、何なのよ!?」
「貴女達には、話しておかないといけないようですね。 其の古代遺物ロストロギアの名前は、“レリック”と言います。
未確認ですが、古代遺物ロストロギアを狙う機械兵器も確認されています」

 エリオルとカリムによる話が続く。
「最後に言いますが、貴女達のデバイスが、次元世界の支配を目論む“ガトランチス”の
野望を打ち砕く鍵となることを忘れないでください」


 そしてその夜……
「さて、そろそろ開幕と行こう……」
 “タタリ”が言った。
彼が、そう言うとミッドチルダ各所で怪異が起こり始めた。

 聖王教会
「騎士カリム!! ミッドで怪異が起こり始めました」
「始まったのね。 エリオル提督、指揮をお願いします」
「では、手はずどおりに散ってください」
「ミッド郊外に“プレシア・テスタロッサ”が出現!!」
 なんと“タタリ”によって“プレシア”が姿を現した。
「よほど、彼女の事を不安に思う人がいるようですね。 彼女を陥れた人たちは、不安だったでしょうね」


 ミッド郊外
「此処は? 私は、生き返ったのか!?」 
 プレシアは、呟いた。
「こうして再び此の地に帰ってきたからには……」



 ミッド郊外魔導研究所
「貴様!! 此処は、関係者以外立ち入り禁止だぞ」
 研究所の魔導師が言う。
「止まれと言っているのが聞こえなかったのか!!」
「五月蝿い!!」
 其の一言でプレシアは、其の魔導師を殺した。
プレシアは、立ちはだかる魔導師たちをなぎ倒しながら歩を進める。


 魔導研究所所長室
「何事だ!?」
「侵入者が研究委員たちを無差別に殺害しいます」 
「其の侵入者は!?」
「其れが、似ているんです」
「似ているだと!? 誰に似ているんだ!!」
「死んだはずの“プレシア・テスタロッサ”にです」
 其の名を聞いた所長は、背筋に悪寒が走った。
「副社長!! 貴方は、会社に無くてはならないお方…… 急いで脱出してください」
 副社長の秘書が言った。
「急いで車の用意だ!!」
「はい」
 だが、時既に遅かった。

 ドゴーンと爆発音が轟いた。
土煙が晴れると目の前にプレシアが立っていた。
「久しぶりね、主任補佐……」
「プレシアか…… 生きていたのか」 
 之が、因縁の再開だった。
「私は、忙しいのだよ。 何処かの落ちぶれと違ってね……」
 副社長は、言う。
「分かったら、其処を開けてくれ!!」
「アリシアの恨み……」
「そうだ。 死ぬ前に教えておいてあげるよ。 私の名前を……」
「興味ない」
「私を殺せば、如何なっても知らないぞ」
「貴方のせいで、アリシアは……」
 プレシアの魔力が膨れ上がる。
「アレは、私のせいではない。 当時の上層部の指示だった。 だから……」
「言い訳は、聞きたくない。 死ね!!」
「うぎゃアあああっ!!」
 副社長は、死んだ。
「さようなら、主任補佐」
 プレシアは、研究所を後にした。




 ミッド市内
「此処は……」
 ネロは、形を成した。
「真祖の姫君と我を殺した人間も此の世界に来ているようだな……
今度こそ、葬ってやる」
「おや、君も此の世界に来ていたのか?」
「“蛇”か」
「君は、死んだんじゃなかったのかい」
「我にも分からぬ。 気づいたら此処にいた」
「私もだ!! 之から如何するのかい?」
「知れたこと。 “真祖の姫”を喰らう」
「彼女。 来ているのか、此の世界に……」
 ネロ・カオスとミハイル・ロア・バルダムヨォンは、話す。
「私は、ここで力を蓄える。 復活したばかりか分からないが、少々力が足りないのでね……」
「我も、“真祖の姫君”と戦うには、力が足りぬ」
「力の蓄えが出来るまで共に行動しよう」
「良かろう。 貴様の提案に乗ろう……」
 “混沌”と“蛇”は、同盟を組んだ。




 一夜明けた翌朝……
『おはようございます。 ミッドチルダの皆様に朝のニュースをお伝えします』
 朝のニュースが流れた。
『昨夜、ミッド郊外の魔導研究所が襲撃され同社の副社長が殺害される事件が発生しました。
殺害されたのは、“グレイツカンパニー”のグレイル・グランバート副社長で、事件当時、視察を
追え帰る直前だったそうです。 同氏は、同社で数々の功績を残し此の春に副社長に就任した
ばかりだったそうです』
 アナウンサーがニュースを読み上げる。
『襲撃されたのは、“グレイツカンパニー”の研究所で、ミッドチルダでもっとも有名な企業の一つです。 
同社は、魔導研究の最先端を行く企業で以前から度々、スパイが進入する事件が発生
している事で有名でした。  しかし、夜勤交代の社員が同社の副社長が帰社された形跡が無い事を
不振に思い様子を見に行ったところ殺害されているのを発見。 時空管理局に通報し、捜査が開始
されました。 目撃者の証言に“プレシア・テスタロッサ” に似ていたと言う情報があり現在、地上本部
の魔導師が捜査に当たっています。 詳細は、情報が入り次第お伝えします』

『次のニュースです。 先ほどのニュース出お伝えした事件と同時刻、ミッド中心街で失踪事件が派生しました。
失踪したのは、以下のかたがたです。 クリューブ・ザラさん……』
 失踪者の名前が読み上げられる。
『サトミ・アイザワさん、以上が昨夜失踪したかたがたです。 ミッド警察が失踪事件として捜査を開始しました。
目撃者は、最寄の警察署又は、時空管理局まで一報してください』



 聖王教会
「ヤハリ、起こって今いましたか……」
 エリオルが言う。
「柊沢、お前に呼ばれて来てニュースを見てビックリしたぞ」
 クロノがエリオルに言った。
「お前のことだ、予測していたんだろう?」
「はい。 “タタリ”によって、“プレシア・テスタロッサ”が形を成すことは分かっていました。
クロノ君。 此の事は、フェイトさんには内密に願います」
「あぁ。 フェイトには、内緒にしておく」
「“タタリ”!! 何処にいる!?」
 シオンが言う。
「あせりは、禁物ですよ。 其れに土地勘の無い場所では……」
 シオンたちは、不慣れなミッドチルダで“タタリ”の捜索に苦戦していた。
「其れに、アルクエィドや殺人貴にも関係ある死徒が顕現しています」
「私に関係ある死徒?」
「其の死徒の名は、ロアとネロ・カオスです」
「ロアとカオスが? 其の二人は、志貴が倒したはずよ」
「此処にいる誰かがイメージしたんでしょう…… 其のせいで、此の世界で形を成しました。
今頃、路地裏で人を襲い力をつけているでしょう」
「志貴!! 貴方ですか!? ネロとロアが形を成したのは……」
「俺が!? アルクエィドじゃないのか?」
「私って言うの?」
「言い争いを止めんか!! 顕現したものはしょうがないだろ」
 ゼルレッチが雷を落とす。
「エリオルよ如何するのじゃ!?」
「今夜、網を張って捕まえます。 いいえ、消滅させます」
 之が、数日間に渡ってミッドを恐怖に陥れる『“タタリ”事件』の幕開けだった。










 設定資料

 プライミッツ・マーダー
 白い魔犬で“霊長の殺人者”や“ガイアの怪物”と呼ばれている。
 アルトルージュに付き従っている。


 カリム・グラシア
 聖王教会 教会騎士団 騎士。
 時空管理局理事官


 シャッハ・ヌエラ
 聖王教会修道女


 プレシア・テスタロッサ
 “タタリ”によってミッドチルダで形を成す。
 ミッドの魔導師達を恐怖に陥れる。



 ネロ・カオス
 “タタリ”によってミッドチルダで形を成す。
 “混沌”と呼ばれる“死徒二十七祖”第10位。  


 ミハイル・ロア・バルダムヨォン
 “タタリ”によってミッドチルダで形を成す。
 ミッドチルダで連続失踪事件を巻き起こす。



 グレイル・グランバート
 ミッド最大の魔導研究会社の副社長兼研究所所長。
 “タタリ”によって形を成したプレシアに殺害される。



 あとがき

 今回は、プレシアの憎きアリシアの敵を登場させちゃいました。
 誰だかわかるかな? あの主任補佐です。 
 後、月姫から“ロア”と“カオス”をタタリという形で出してみました。


 あの化け物たちを相手にミッドの魔導師たちは、如何戦うのか?
 『虚言の夜、第二夜』 をお楽しみに……

 ご意見、感想、お待ちしています。





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