時空管理局地上本部長官室―――
「失礼します」
 局員がお偉いさんの部屋に入ってきた。
「何か用か?」
「はい。 昨夜から未明に連続殺人事件が発生しました」
「何処の愚か者だ!! ワシのお膝元で事件を起こしたのは……」
「犯人は、不明。 例の研究所については、有力情報が入ってます」
「“プレシア・テスタロッサ”だろ……」
「ご存知でしたか、中将」
 お偉いさんは、中将の位にいる人物らしい。

 コンコンっとドアがノックされる。
「入れ!!」
 少ししてドアが開いて別の局員が入ってきた。
「レジアス中将、各部隊の配置完了しました」
「ご苦労」
「何を話されているのですか? 中将!!」
「“プレシア・テスタロッサ”についてだ」
「プ、プレシア・テスタロッサぁ……」
 後から入ってきた局員は驚いた。
「中将。 “プレシア・テスタロッサ”は、彼の事件で死亡扱いになっているのでは?」
 彼の事件とは、“プレシア・テスタロッサ事件”の事だ。
当の“プレシア・テスタロッサ”は、死亡扱いになっている。
「確かなのか!!」
「間違いありません。 目撃者の証言と一致しています。 魔導研究所を襲撃したのは、“プレシア・テス
タロッサ”です」
「直ぐに“プレシア・テスタロッサ”を捕縛しろ!!」
「はい」
 レジアスの命で指名手配された“プレシア・テスタロッサ”。
レジアスは、知らない。 “プレシア・テスタロッサ”が“タタリ”による現象だということに……




 魔法少女リリカルなのは -RESERVoir CHRoNiCLE-
 ―第一部『ガトランチスの進撃』― 第十八話『虚言の夜第二夜!!』





 第1039管理外世界―――
「フェルナンド様、飛王フェイワン殿が、ミッド地上で騒ぎを起こしました」
飛王フェイワンが騒ぎをか…… どんな騒ぎだ!!」
「はい。 “タタリ”とか言う吸血鬼を使って“プレシア・テスタロッサ”を呼び出したようです」
「我にも、あの男が何を考えているかわからぬ」
 フェルナンドにも読めないと言う飛王フェイワン・リードの考え。
「“プレシア・テスタロッサ”は、死んだと聞いているが……」
「管理局の公式記録では、“プレシア・テスタロッサ”は死亡とされています」
「“飛王フェイワン”が騒ぎを起こしている内に、戦力を整え管理局を一気に叩く!!」
「フェルナンド様、たった今、第333特別管理外世界を落としたと連絡がありました」
「そうか、これで残る世界は、十数だな…… 管理局を後手後手にしてくれる」
 “ガトランチス”は、この騒ぎを機に戦力を増強しようとしている。
「ご命令とあらば、地上本部へ攻撃を仕掛けます」
「攻撃は、地上本部が手薄になってからだ!!」
「襲撃は、何時なさいますか?」
「時を待て!! “レジアス”の動きを見る」
 フェルナンドは、レジアスの動向を見守ると決めた。


 聖王教会―――
「“タタリ”を倒すために此方の戦力を上げます」
 戦力を上げるというエリオル。
「戦力をあげるったって高が知れるわよ」
 高が知れるというアルクェイド。
「私や、アルトルージュは、強くできないわよ」
「たった一人だけ、可能性を秘めた人が居ますよ」
「誰なのよ!?」
「誰ですか? まさか、さつきと言うんじゃ……」
「良くお分かりですね。 シオン」
「さつきに変なことをしたら私が貴方を殺します」
「殺すのは、貴女の勝手です。 貴女は、命の代償、対価を払えますか? 此のままでは、“飛王フェイワン”の術で
パワーUPした“ネロ”や“ロア”に勝つのは至難の技です」
 エリオルは、“ネロ”と“ロア”がパワーUPしていると言った。
「ちょ、“ネロ”と“ロア”がパワーUPって如何いうことよ」
「言った其のままですよアルクェイド」
「“ネロ”と“ロア”を倒すのだって一苦労だったのよ」
「“殺人貴”の力を借りてですね」
 エリオルは、“殺人貴”を知っていた。
「何であんたが俺の名を知っている!!」
「知っていますよ。 貴方が生まれる前から…… そして未来も」 
「じゃあ、志貴の本当の名も知っているんだ」
「本当の名は、遠野志貴ではなく“七夜”ですね」
「どうやら、殺されたいらしいな」
 そう言って志貴は、メガネを外して言った。
「其のメガネ、無闇に外さないほうが貴方のためですよ」

「魔術師、戦力を上げる手立ては……」
 シオンは、エーテライトでエリオルの考えを読んだ。
「まさか、さつきを真祖にするつもりなのですか!?」
「良くお分かりになりましたね。 エーテライトを使ったのなら当然ですね」
「わたしは、弓塚さつきさんを“真祖”にします」
「さっちんを“真祖”にするですってぇ!! “死徒”を人間に戻すこともできないのに、“真祖”にする方法がある
わけ……」
「ありますよ。 “死徒”を“真祖”にする方法なら…… さすがに人を“真祖”にする方法は、ありませんが」
「わたしは、聞いたことない」
「我わも聞いたことがない」
 アルクェイドとアルトルージュも知らないという。
「貴女達が知らないのも無理ありません。 其の術は、クロウ・リードが創り、クロウ自身も使ったことのない術です」
 クロウ・リードも使ったことがない術というエリオル。
「丁度此処にブリュンスタッドの性を持つものが二人も居ますし……」
 エリオルは、アルクェイドとアルトルージュを見て言う。
「其の術は、どのくらい掛かるのですか?」
「ブリュンスタッドが二人も居ます。 直ぐに終わりますよ」
 直ぐに済むというエリオル。
「これから儀式をはじめます。 アルトルージュの従者は、周囲の警戒をお願いします。 これから使う魔術は、私一人の
魔力だけでは足りません。 術は、“クロウの後嗣”にやってもらいます」
 “クロウの後嗣”……
其れすなわち最高の魔術師を意味する。 もしかしたら魔法使いを含めてかも知れない。



 飛王フェイワンの間―――
「クロウの生まれ変わりが何をしようと無駄だ!! わしが力を与えた者たちは簡単には倒せんぞ!!」
 飛王フェイワンが言う。
「“ネロ”と“ロア”は、オリジナルの3倍も強いのだからな」
 飛王フェイワンは、杯を煽りながら言う。
「クロウよ、倒せるものなら倒すがよい。 力の衰えた貴様では、無理だろうがな……」
飛王フェイワン様、“クロウの後嗣”は、如何なさいます?」
「知識の持たぬ“クロウの後嗣”等、敵ではない!! とはいえ、邪魔な芽は摘んでおかないとならぬ。
どんな手を使ってでも“クロウの後嗣”を殺せ!!
「かしこまりました。 “クロウの後嗣”の抹殺指令を発します」
「どんな事をしてもワシは、望みをかなえる。 どれだけの犠牲が出ようとも……」


 聖王教会―――
「さくらさんも来ましたし、儀式を始めましょうか」
 儀式を始めるというエリオル。
「では、アルクェイドさんとアルトルージュさん、弓塚さんにお二人の血を飲ませてください」
「何で、ロアの“死徒”だった子に血をあげないといけないのよ」
 反発するアルクェイド。
「文句は、後にしてください。 今は、儀式に集中してください」
 既にアルトルージュは、手首を裂いて杯に血を注いでいた。
「あぁっ、もう……」
 アルクェイドも渋々、杯に血を注いだ。
「注いだわよ」
「では、“空想具現化”の用意をお願いします」
「“空想具現化”何て必要ないんじゃないの」
「甘いですよ。 彼女は、成りたてで“死徒二十七祖”と同等かそれ以上のポテンシャルの持ち主です。 
“空想具現化”で出した鎖で縛るなどしないと儀式中に暴れる可能性もあります」
「暴れたらどうなるの?」
「恐らく“ベルカ自治区”が廃墟と化すでしょう」
 其れを聞いたカリムが凍りついた。
「ベルカが廃墟にですか?」
「だから、アルクェイドさんに“空想具現化”で縛ってもらわないと困るのです」
 エリオルが恐怖のシナリオを言う。


 時空管理局地上本部長官室―――
「中将、彼の部隊は使わないのですか?」
「アレは、本局も知らない秘密部隊だ!! 簡単に表に出せん」
 簡単に表に出せないという部隊。
「アレは、統計規模の適用されない部隊でしたね」
「そうだ、ワシが苦労して創った最高の部隊だ。 ほいほいと表に出せる部隊ではない」
 其処へ、慌しく魔導師が入ってきた。
「中将!! 捜査中の第105部隊の魔導師との連絡が途絶えました。 例の犯人に襲われたものと思います」
「何!! 連絡が途絶えただと」
「はい。 連続失踪事件に巻き込まれたものかと……」
「役立たず共が!!」
 レジアスは、怒った。
「おいっ!! “レジー・ランス”を呼べ!!」
「中将、本気ですか!?」
「いいから呼べ!!」
 レジアスは、“レジー・ランス”を呼ぶよう命じた。
「はっ、はいっ!!」


 そして、呼ばれた“レジー・ランス”がやって来た。
「お呼びですか!? レジアス中将!!」
 “レジー・ランス”が言った。
「来たか?」
「お呼びにより“レジアスター”隊長“レジー・ランス”参上いたしました」
「君に来てもらったのは、他でもない。 昨夜突如発生した連続失踪事件についてだ」 
「連続失踪事件ですか?」
「既に幾つかの部隊に犠牲者が出ておる」
「昨日の今日でそんなにも被害が出ているのですか!?」
「民間人は、もっと多い」
 民間人の犠牲者は、局員よりはるかに多いらしい。
「“レジー・ランス”!! “レジアスター”で連続失踪事件の犯人の抹殺を命じる。 犯人の生死は問わん」
「では、即効で片付けてまいりましょう」



 聖王教会―――
「……させしめん」
 聖王教会では、さくらも加わって儀式が行われていた。
「ぐわああああああっ!!」
 さつきは、理性を失いかけていた。
アルクェイドの血は、強力だった。
「さつきさん、後もう少しの辛抱ですよ」
 エリオルが言う。
「彼の者を“真祖”とし吸血衝動を消し去り、抑止力とせん」
 長い長い詠唱が終わって儀式が終わった。
アレだけ立ち昇っていた禍々しい気配が跡形もなく消えていた。
「儀式は、終わりました。 皆さんお疲れ様でした」
「一時は、どうなるかと思いました」
 カリムが本音を言った。
「今夜は、“タタリ”を倒すのですか?」
「今夜は、彼らに舞台の主役になってもらいましょう……」
「彼らとは、誰なんです」
「レジアス中将の私設部隊、“レジアスター”です」
 


 ミッド湾岸地区―――
「“蛇”よ可也の人を襲って血をすったな……」 
「わかったか!? “混沌”」
「我と貴様の仲では、ないか」
「お前も、可也の人を食らったな!? 其れも上質なのを」
「魔導師とか言っていたが目障りだから食ろうてやった」
 この二人、可也の人を襲ったみたいだ。
「ところで感じたか?」
「あぁ、巨大な魔力反応か!! どうやら、“真祖の姫君”も居るようだ」
「“真祖の姫君”か…… 今度こそ殺してやる」
「“真祖の姫君”は、私が取り込む!!」
「私が、殺す!!」
「おやおや、醜い争いかね?」
 “タタリ”が言う。
「ふっふっふっ、“タタリ”何のようだ!!」
「何のようだとは、ご挨拶だな…… この世界に呼び出した者に向かって」
「貴様のお陰で再び“真祖の姫”と会いまみえることができるのだ!! 例を言おう」
「其れは、どうも」
 “タタリ”は、日の暮れはじめたミッド湾岸地区で“ネロ”と“ロア”と話した。
「二人には、私の舞台に上がってもらわねばならないなぁ」
「我に貴様の舞台にあがれと言うのか!?」
「嫌でもあがって貰わねばならないのだよ」
 舞台にあがるよう言う“タタリ”。
「さぁ、第二幕の開演だ!!」
 ミッドチルダに恐怖の夜がやって来た。
“タタリ”劇場の第二幕が始まった。



 ミッド中心地区―――
「隊長、此の周辺に犯人の手がかりはありません」
 隊員が隊長に言う。
「探せ!! 絶対、我ら“レジアスター”の手で捕まえるのだ」
「はっ!! レジアス中将の為に……」
 隊員達は、レジアス中将を称える言葉を口にし捜索を開始した。

「ようこそ。 此の素晴らしき惨殺空間へ」
 “タタリ”が言う。
「誰だ!! 出て来い!!」
「カットカット!! 感情が篭ってなぁい」
「隠れてないで、姿を現せ!! 殺人鬼!!」
「此の劇の主催者に向かって殺人鬼とは、言ってくれたものだ…… では、第二幕は『殺人鬼』としよう」
「劇だとふざけるな!! 貴様みたいな犯罪者に構ってばかりおれん。 素直にお縄を頂戴しろ!!」
「其れは、出来ない相談だ!! 君たちには、舞台で踊って貰わないと困るのでね」
「誰が舞台にあがるか!! 今すぐに終わらせてくれる」
 第二分隊隊長が“タタリ”に言う。
「残念だが、君たちには、此の二人と踊ってもらうよ」
 “タタリ”が言うと“ネロ・カオス”と“アカシャの蛇”が現れた。
「我の食事はこいつ等か?」
「やつ等を食うのは、私が先だ!! 君は、丸呑みするだろう?」
「いいだろう。 貴様から食せ!! 私が食う分を残せよ」
「言われずとも分かっている。 我が盟友“フォアブロ・ロワイン”!!」
 “ロア”は、そう言うと魔導師たちを襲った。
「ぐわぁぁぁぁっ!!」
「さぁ、最高の血潮を提供してくれよ!!」
 “ロア”は、次々と魔導師を襲って血を吸った。
恐怖した魔導師が逃げようとした。
「化物のだぁ!!」
「逃がすか!! 喰らえ!!」
 “ネロ”から現れた獣が逃げようとした魔導師を一飲みにした。
「食事も済んだ、そろそろ姫君に相手をして貰おう」
「では、行こう!!」
 “ネロ”と“ロア”は、“レジアスター”の隊員の喰い滓を残して去っていた。
恐怖の第二夜は、始まったばかりなのだ。





 設定資料

 レジアスター
 レジアス中将の私設部隊。
 部隊毎の統計規模が適用されていない。
 全5分隊からなる部隊。
 1分隊の人数は、30人程。


 レジー・ランス
 レジアスター隊長
 魔導師ランクは、S+





 あとがき

  今話の執筆中にトラブルでデーターが消え書き換える羽目に……
 ともあれ、こうして無事お送りすることが出来ます。
  今回、オリジナル部隊を出しましたが如何ですか?
 “ネロ”と“ロア”を一寸凶悪ぽくしてみましたが凶悪ぽかったかな〜。 

 予定では、此の“タタリ事件”解決で第一部は終了予定です。
 
 ご意見感想、お待ちしています。




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