ミッドが夜の闇に包まれ作戦開始の時刻が来た。
『其れでは、予定通りお願いします』
「言われなくても分かっているわよ」
『月村!! 無茶だけはするな!!』
 クロノが、すずかに言う。
『もう一度だけ言っておきます。 此れから戦う吸血鬼は、オリジナルより数倍強いです』
 此の世界に居る“ネロ”、“ロア”、“タタリ”は、オリジナルより数倍強いと言うエリオル。
『アレより強いと言うのですか!?』
「そう言いました」
「あの時、タタリを倒すの苦労したんですよ」
「今度は、志貴も死んじゃうかも」
 其処へ巨大な気配が現れた。
「真祖の姫よ、あの時のようには行かんぞ!!」
「現れたわね、ネロ!!」
「黒き吸血姫も居たのか…… ん? 何故だ!! 真祖の気配がもう一つある」
 ネロは、気配に気がついた。
「我は、ついているようだ。 ブリュンスタッドの名をも持つものを二人も取り込むことが出来
るのだからな」




 魔法少女リリカルなのは -RESERVoir CHRoNiCLE-
 ―第一部『ガトランチスの進撃』― 第二十話『決戦!! 虚言の夜 1』





 巡航艦アースラ
「クロノくん、標的の一人と接触!!」
「柊沢の言ったとおりだな……」
 モニターを見ながら言うクロノ。
モニターに“ネロ”と接触するアルクェイド達が映し出される。


 ネロとの遭遇場所
「“蛇の娘”!! 何故、貴様が真祖の気配を放っている!?」 
 ネロがさつきに聞いた。
「何故って言われても……」
 さつきは、説明に困る。
「まあ、如何でもいい。 真祖の姫君共々取り込んでやる。」
「話しは、其処までして始めましょう」
 話しを終えて戦おうと言うアルクェイド。
「シオンとさっちゃんは、レンとすずかちゃんと下がっていて」
 後ろに下がるよう言うアルトルージュ。
「喰らえ!!」
 ネロから獣が現れシオン達を襲う。
「させるか!!」
 と言って、志貴がネロの出した獣を斬る。
斬られた獣は、直ぐにネロの体に戻った。
「斬っても無駄だ!!」
「何故、元に……」
「我は、貴様が知っているネロ・カオスではない」
 そう言って、志貴を襲うネロ。
「ぐわっ」
 志貴を攻撃するネロ。
「このっ」
「当たらぬ!!」
 余裕で交わすネロ。
「如何した? 貴様の力は、其の程度か!?」
「志貴だけが相手じゃないわよ」
 そう言って、ネロへ爪を振るうアルクェイド。
「皆まとめて我の養分としてくれる」
 自分の体から無数の獣を出すネロ。
「そう簡単にあんたの養分になってやらないわよ。というか、ならないから……」
 志貴、アルクェイド、アルトルージュは、ネロと戦う。
ネロが出した獣達をかわしながら。
 三人で戦っているのに、押しているのは、ネロのほうだった。
其れを見たシオンが、参戦する。
「さつき!! 戦いに加わります。 一緒に来てください」
「でも、此の子達は?」
「レンが、守ってくれます」
「レンちゃん。 一人で大丈夫?」
 さつきがレンに聞くとコクッと頷いた。
「真祖!! 加勢します」
「何故、出てくるのよ!! すずかちゃんたちを守ってなさいって言ったでしょ」
「真祖、おかしいと思わないのですか?」
「おかしいって、何よ」
「志貴が、死の点を突いたのに獣達が消滅しません」
「言っただろう。 我の死の点を突いても無駄だと」
「確かに、死の点を突くのは無理ですが、貴方を倒す事は出来ます」
「言ったな!! 小娘風情が……」
「私達を貴方に差し向けたの誰か分かる?」
 アルクェイドがネロに聞く。
「誰が差し向けようが貴様らが我の養分にはかわらん」
「此の名前を聞いても余裕で居られるかな?」
「どうせ、ゼルレッチだろう?」
 ゼルレッチかと聞くネロ。
「今回、爺は関わってないわよ」
「では、誰だ!?」
「クロウ……」
「まさか、クロウ・リードと言うのじゃないだろうな!!」
 明らかに様子が変わるネロ。
クロウ・リードの名は、死徒二十七祖をも震え上がらせるようだ。
「クロウ・リード。 奴が裏で意図を引いているのなら全力で戦うまで」
 ネロの様子が一変する。
さっきまでの余裕の表情が消え全力モードに入っていた。

「(あの。 クロノ提督?)」
『すずかか、如何した!?)』
「(アルクェイドさんが、クロウとか言う人の名前を喋っちゃって相手を本気にさせました)」
『(喋ったのか?)』
「(はい)」
『(彼女が話す事は、分かっていました。 其のまま、作戦を継続してください)』
 念話で、連絡を取るすずか。
「(はい)」
『(月村さん。 アレの使用を許可します。 それで、ネロを倒してください)』
 ある物の使用を許すと言ったエリオル。
ある物とは、彼女の固有スキル、夜の一族の魔法だ。

「全員、我の養分となれ!!」
 強度を上げた獣を放つネロ。
「一寸、戯れようか?」
 そう言って、空想具現化マーブルファンタズムを発動させるアルクェイド。
空想具現化マーブルファンタズムでネロ・カオスを切り刻むアルクェイド。
「無駄だと言っただろう」
 其処には、何事もなかったように立つネロの姿があった。
「そんなぁ」
「幾ら、空想具現化マーブルファンタズムを使おうが無駄だ!! 私は、貴様が知っているネロ・カオスではない」
「そんな事、言われなくても分かっているわよ」
「なら、大人しく我が一部となれ!!」
「あんたの一部になる気なんかないわよ」
「嫌でも、我が一部となってもらうぞ!! ブリュンスタッド姉妹」
 ネロ・カオスは、そう言って獣達を放つ。
放たれた獣がブリュンスタッド姉妹を襲う。
「貴様の相手は、俺だ!!」
「慌てずとも貴様は、時間を掛けて料理してやる。 だが、障害は、先に取り除いておこう」
「では、殺しあおう。 ネロ・カオス。 いや、ネロ・カオスもどき」
 志貴は、七夜を構えてネロに対峙する。
其の時、魔力の高まりを感じたネロ。
「誰だ!? 知らない気配だ」
 ネロが、気配を探る。

 少し離れた場所では、すずかが呪文を唱えている。
詠唱の長さから大規模な術のようだ。
「……月夜の光……」
「魔力の主は、貴様か?」
 ネロが、すずかに聞く。
だが、すずかは気に留めず詠唱を続ける。
「其の詠唱を止めろ!! さもなくば、殺す」
「すずかの邪魔は、させないわよ」
「ひ弱なくせに何を言う!! 一気にくびり殺してやる」
「言ったわね。 其の言葉、撤回させてやるから」
 アリサが、ネロ・カオスに言い返す。
「出来るものなら、やって見ろ!!」
「燃え尽きなさい!!」
 そう言って、アリサは炎をネロに放つ。
「唯の炎では効かぬわ」
 其の一言でネロは、アリサの放った炎を払いのける。
「唯の小娘と思っていたが、詠唱破棄で魔術を使うとは驚いた」
「あの程度じゃ、効かないか…… あの人が言った通りね」 



 巡航艦アースラ
「クロノくん、すずかちゃんの魔力の上昇を確認」
 エイミィが、クロノに言う。
「アレを使うか……」
 突如、聞こえた声に驚くクロノ。
「エリオルよ状況は、如何なっておる」
 状況をエリオルに聞くゼルレッチ。
「現在、ネロ・カオスと戦闘中ですよ」
「混沌とか……」
 モニターを見ながらゼルレッチが言う。
「今日中に、混沌、蛇、タタリを倒すつもりか?」
「其のつもりです。 これ以上、この事件に時間を割くわけにはいきません」
 エリオルは、吸血鬼事件を今日中に片付けるつもりだ。
「エリオルよ、お主は戦わんのか?」
「戦いますよ。 唯、今は其の時ではありません」
「そうか…… ワシは、前線に行くかの」



「それ以上、詠唱させるか!!」
 ネロが、獣の塊を放つ。
すずかは、詠唱の為、防御の魔術を使う事ができない。
「すずか!!」
 アリサが叫ぶ。
だが、アリサが目にしたのは、信じられない出来事だった。
「何故、我の一部が触れただけ消えるのだ!?」
「まだ、気づかぬか? ネロ・カオス」
「誰かと思えば、シュバインオーグか…… アレは、何だ!?」
「アレか? アレは、夜の一族の魔法じゃ」
「戯言を…… 夜の一族の魔法は存在しない。 既に失われておる」
「じゃが、失われずに残っていたら如何じゃ」
「笑止、残っているはずが無い。 教会連中が使える奴らを抹殺したはず」
「其れを見越して、預けて居ったのじゃよ。 次元の魔女に」
「次元の魔女…… またしても、あの女か…… クロウ・リードと一緒に邪魔をしてくれる」
 ネロは、怒りをゼルレッチにぶつける。
「貴様が、魔女とつるんで其の小娘に教えたのか!!」
「ワシは、魔術の基礎しか教えておらん」
「魔術の基礎だけだと。 アレは、基礎だけで使えるような術では無いのだろ」
「確かに、基礎だけでは使える術ではない」
 ゼルレッチも基礎だけで使える術ではないと言う。
「さて、お主は志貴と戦ってもらおうかの」
「時間が掛かったが殺しあおう。 ネロ・カオスもどき」
「言ったな小僧。 我の糧としてくれよう」
「出来るものならやってみな!! 出来ればの話だが……」
「では、死ね!!」
 ネロが、戦闘再開と同時に志貴へ獣を放った。
其処に横槍が入った。
「楽しそうだなネロ・カオス。 私も混ぜてもらおうか」
 新たな敵が現れた。
「貴様は……」
「ミハエル・ロア・バルダムヨォン!!」
 現れたのは、ロアだった。



 巡航艦アースラ
「如何した? 柊沢!!」
「一寸、厄介な事になってしまいました」
「厄介な事?」
「蛇が、戦闘に加わってしまいました」
「蛇って、アカシャの蛇か?」
「はい」
「じゃあ、すずかたちには、重荷だな……」
「いいえ。 心配要りません」
「必要ないだと!! どういう奴か知っているのだろう」
「知っています。 ですが、手助けの必要はないと言うのです」
「お前が言うのなら確かなのだろう」
「ネロとロアは、数刻のうちに倒されます」
「数刻だと!! 相手は、化け物なのだろう」
「はい。 化け物です」
「だったら、なのは達を投入すべきだ」
「なるべく、手の内を隠しておきたいのです」
 手の内を隠したいと言うエリオル。
其れには、次元犯罪組織『ガトランチス』の存在があるからだ。
「それなら、お前が出て行けば良いだろう」
「そうしたいのですが、私が出て行けば、飛王フェイワン・リードに情報を与える事になってしまいます」
「なら、お前の後継者を出せば良いだろう」
「其れも、出来ません。 さくらさんの魔導師ランクの事を忘れたわけではないでしょう。 クロノくん」
「そうだった。 管理局最強の魔力保持者だった」
「管理局最強ではありませんよ。 全次元最強ですよ」


 ミッド某所
「貴様も居たか!? 志貴!!」
 そう言って志貴へ襲い掛かるロア。
「後から来て私の獲物を盗るつもりか!! 蛇」
「唯の挨拶だよ。 混沌」
「唯の挨拶だと!! 挨拶のわりに殺気が篭っていたぞ」
「で、如何するのだ?」
「如何するも無い。 奴ら全員を殺すまでだ」
「だったら俺に志貴を殺らせろ」
「いいだろう。 其の小僧は、貴様にくれてたろう。 だが、残りの六人は私が貰う」
「六人だと!! 貴様、六人も食わんと気が済まんのか!?」
 だが二人は、失念していた。
すずかが、詠唱中だと言う事を……

「久遠葬送!!」
「お前が……」
「何だ!?」
 ネロが、異変に気づいた。
既にネロと、ロアの周囲の空間が歪んでいる。
「小娘、何をした!!」
「如何、足掻こうと無駄じゃ」
「シュバインオーグ。 貴様の入り知恵か?」
「ワシは、教えておらん」
「教えておらんだと!! 何なんだ!? 之は……」
「其れは、夜の一族の秘術。 『久遠葬送』じゃ」
「『久遠葬送』だと。 使えるものは、居なかったのではないのか?」
 そう言いつつ、ネロとロアは、消滅した。
いや、不帰の久遠へ葬られたのだ。



 巡航艦アースラ
「ネロとロアの魔力反応消失!!」
 エイミィが報告した。
「やったか!!」
「ですが、まだタタリとプレシアが残っています」
 そう、倒したのは、ロアとネロ・カオスだけなのだ。
まだ、二人を生み出した張本人が残っているのだ。
 夜は、まだ半分残っている。




 あとがき
 今回は、ネロとの戦いを描いてみましたが如何でしたか?
 次回は、いよいよタタリとの決戦です。 
 あぁ、Xネタを使ったシーンまで持っていきてぇ

 ご意見感想お待ちしています




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