ミッドチルダ地上本部
「レジアス中将、手配中の容疑者がミッド郊外に出現」
「直ちに、局員を出し捕縛しろ!!」
「はいっ」
「中将!!」
「何だ!?」
 別の局員が報告に来る。
「ミッド郊外で戦闘中と情報が入りました」
「急げ!! 本局の奴らに手柄を遣るな」
 如何やら手柄を本局に取られたくないようだ。
「邪魔なら、本局の奴らごと吹き飛ばせ!!」
 中央本部は、人の出入りが慌しい。
其のせいか、情報も錯綜する。
「大変です。 被疑者、二名が突如、消滅しました」
「何が、消滅したって!!」
「ですから、手配中の容疑者がです」
「取り逃がしたのか!?」
「いいえ。 本局の奴らが事情を知っているようです」
「よし。 現場に居たやつらを連行して来い」
「無理です」
「無理だとぉ!! ワシがつれて来いと言ったらつれて来い!!」
「戦闘を監視していた時のデーターです」
 そう言って、魔力値などのデーターを見せる局員。
「なんだぁ。 此の数値は……」
「此の6人、魔力値が基本で1000万ノンを超えています」
「そんな奴らがゴロゴロ居てたまるか」
 だが、彼は知らない。
そんな化け物じみた数値を遥かに超える者が居ると言う事を知らない。




 魔法少女リリカルなのは -RESERVoir CHRoNiCLE-
 ―第一部『ガトランチスの進撃』― 第二十一話『決戦!! 虚言の夜 2』




 ミッド某所
「カットカットカットカットカットォ!!」
「此の声は、タタリ!!」 
「其のシーンは、違うだろう」
 ついに此の劇の主催者が現れた。
「私が登場する前にネロとロアを倒したら駄目だろう」
 如何やら、シナリオ、演出、演技指導も全部自分だと言っているようだ。
「おやおや。 ブリュンスタッド姉妹に、シュバインオーグまで居るとは、今宵は最高の舞台になりそうだ」
「あんたの、芝居に付き合うつもりは無いわよ」
 アルクェイドは、拒否する。
「嫌でも、私の芝居に付き合ってもらう」
「何度も言うけど、あんたの芝居には付き合わないわよ」
「さあ、恐怖に満ちた第二幕の開演と行こう」
 タタリは、第二幕の開演を宣言した。



 聖王教会
「騎士カリム。 エリオル提督から連絡でタタリとの戦いが始まったそうです」
 シャッハがカリムに報告する。
「そう。 ロアとネロは、倒されたのね」
「はい」
「シャッハ!! 教会騎士団に出動準備をさせて置いてください」
「騎士団を出す必要は無いのではないですか? 仮にも二人は、ベルカの騎士ですよ」
 二人と言うのは、すずかとアリサの事だ。
「騎士と言っても、見習いレベルでしょう。 万全を期すにこっした事は無いでしょう」
「ですが……」
「シャッハ!!」
「直ちに召集します」
(すずかが使ったあの魔法。 ミッドとも古代ベルカとも違う…… エリオル提督に聞いておいたほうがよさそうですね)



 巡航艦アースラ
「クロノくん宛に通信だよ」
 エイミィがクロノに言う。
「分かった」
 そう言って、通信に出るクロノ。
「騎士カリム。 何か御用ですか?」
『クロノ提督。 先程、教会騎士団に出動準備を命じました』
「騎士団の精鋭を召集する事もないだろう」
『之は、予言に基づく準備です。 エリオル提督ぐらいの精度があれば対応も変わるのですが……』
「柊沢なら居るぞ」
『では、代わってください』
「あぁ、柊沢に代わる」
 クロノは、エリオルと通信を代わった。
『エリオル提督は、すずかが使った魔法を知っているのですか?』
「はい。 知っています」
『すずかが使ったアレ、ミッドでもベルカでもないようですが』
「アレは、すずかさんの一族に伝わる古の魔法です」
『ヤハリ、そうですか』
「詠唱に時間が掛かる為、何度も使えません」
『エリオル提督、先程、教会騎士団に出動待機をかけました』
「騎士カリム。 騎士団の出動は、結界の強化に留めてください」
『教会主力を出したほうが早く片付くのでは?』
「其れは、逆効果です。 前にもお話ししましたがタタリは、人々の不安を具現化します。
まして、大人数が不安を抱けばそれだけで戦闘が長引きます」
 エリオルとカリムの話しは、続く。
「其れに、彼が黙っているはずがありません」
『彼?』
「レジアス中将です。 彼は、自分が支配する庭先が本局の人間に荒らされるのが嫌いですから」
『分かりました。 騎士の派遣は、結界の強化だけにしておきます』
(アレだけ使う事態にならなければいいのですが……)



 ミッド某所
「役者は台本どおり動かないと駄目じゃないか、シオン!! 」
 タタリが駄目だしを言う。
「今のシーンやり直しだ」
「何で、今のがやり直しなんだ!! タタリ」 
「君が死ななかったからやり直しなんだよ。 シオン」
「ぐだぐだ、喋っているんじゃないわよ」 
 そう言って、アリサはタタリを斬りつける。
「ぐひゃぁっ!!」
 タタリが、悲鳴を上げる。
「カットカットカット!! 君の出番は、まだ後だろう。 君の登場シーンは、服を剥ぎ取られ逃げ回る所だ」
「何ですってぇ!!」
 タタリは、言ってはいけない事を言ってしまったようだ。
「私に何をさせるですって!!」
「ぐぎゃぁ!!」
 アリサは、グロフォードを鞭に変形させタタリをぶち続ける。
「誰を脱がすか言って見なさい!!」
「ふぎゃっ!!」

「アリサちゃんも過激だね」
「志貴もあんな目に遭いたくなかったら言葉に気お付けることです」
「あっ、う、うん」
 曖昧な返事をする志貴。
「あの娘、タタリにすごい事、するわね」
 感心するアルクェイド。
「ぐひゃっひゃっ!!」
「さっさと言いなさい!! 誰を裸にするかを」
 アリサは、怒りにまかせてタタリを何度もぶち続ける。
タタリは、アリサからダメージを受け付ける。
「グロフォード!! カートリッジロード」
≪了解!!≫
 ガコォンっと使用済みのカートリッジが廃棄され新たなカートリッジを装てんした。
≪シュバリッツモード≫
 今度は、日本刀のような形状にデバイスの形が変わった。
其の形は、物干し竿のように長い刃先の刀だ。
「覚悟しなさい!! 誰を怒らせたか、其の体に教えてあげる」
 アリサの怒りは、まだ収まっていないようだ。
「うぎゃぁっ!!」
「タタリ…… 哀れ」
 タタリが開放されたのは、約1時間後の事だった。
「ぐひっひっ!!」
 長時間、打たれ続けたせいか、タタリは壊れていた。
「ぐっひゃあぁはっはっはっ」



 巡航艦アースラ
「うわぁ。 アリサちゃん怖いくらいだよ」
 モニターで見ていたエイミィも恐怖を感じた。
「エイミィ!! 気づいたか?」
 クロノが、エイミィに聞いた。
「何が!?」
「アリサが、戦っている最中、ミッドともベルカとも違う術式が発動していた」
「クロノくんも気づきましたか?」
「と、言うと柊沢、知っていたのだな」
「はい」
「エイミィ。 記録映像を巻き戻してくれ」
「はいはぁい」
 そう言って、記録映像を巻き戻す。
記録映像を順に確認していき、問題の箇所で止めた。
「之って、ミッドでもベルカでも無いよね」
「あぁっ。 元始ベルカでもない」
「じゃあ、何処の術式なんだろう」
「其れは、アルハザード式ですよ」
「アルハザードだと。 アルハードは、虚数空間に落ちて存在しないんだぞ」
「其れは、しっています。 ですが、アルハザードは、今も存在しています」
「じゃあ、あの時、プレシアが言っていた事は、本当だったの?」
 *詳しくは、DVDで確認を……

「其の、アルハザードの魔法が、何故、出てきたんだろう」
 エイミィが、疑問に思った。
「僕に聞かれても困る」



 ミッド某所
「うっひっひっひっ」
 タタリは、まだ壊れていた。
「タタリ!! 何時まで壊れているの?」
「ぐひっひっひっ……」
「すずか、カートリッジを頂戴」
 アリサが、すずかにカートリッジを要求する。
「何個要るの?」
「とりあえず1ダースほど」
「一寸待ってて、直ぐに用意するから」
 そう言って、すずかは空のカートリッジをデバイスにセットする。
「丁度、いい蒐集相手もいるし。」
 其の言葉に、タタリが恐怖する。
「パンツァームーン。 魔力蒐集!!」
≪了解。 蒐集開始します≫
「ぐわぁっ。 ヤメロォ。 私の魔力を盗るな!!」



 蒐集完了まで暫くお待ちください。



「はい。 アリサちゃん」
 蒐集し終えたカートリッジをアリサに渡すすずか。
「ありがとう、すずか」
 すずかからカートリッジを受け取るアリサ。
「志貴、早くタタリに止めを刺してください。 魔力を奪ったくらいでは、死にません」
「気づくのが遅かったな、シオン」
 ザクッとタタリの爪に貫かれるシオン。
ゴポッと血を吐くシオン。
「いい表情だよシオン」
 アレだけ、ボロボロだったタタリが生きを吹き返す。
「し、シオン。 大丈夫か?」
「私は、大丈夫です。 其れより、早くタタリを」
 再び血を吐くシオン。
「おっと、動くな!! 動けば、シオンを細切れにするぞ」
 タタリは、シオンを盾に志貴をけん制する。
「そうだ、其のまま大人しく次の幕があがるまで待ってい給え」
 タタリが、一同をけん制し次の幕の上演場所へシオンを連れ消えていった。

「さて、此れから如何するのじゃ?」
「シオンを取り戻して、タタリを殺す」
「シオンを人質に取られた状況で如何するつもりじゃ」
 志貴は、ゼルレッチの言葉に反論できない。
そう、こっちは人質をとられ動きを封じられているのだ。
(エリオルよ、お前さんは、此れから如何するのかの?)



 巡航艦アースラ
「柊沢、如何するのだ!?」
「何がですか?」
「人質がとられた事だよ」
「人質ですか? 問題ありません。 全て予想していた事です」
 タタリがシオンを人質にする事も計算のうちと言うエリオル。
「此れから如何するのだ?」
「次の幕で終わらせます」
「じゃあ、なのは達に出動を……」
「なのはさん達の出動は最後の最後です」
「最後って」
「人質の救出が難交しそうな場合、遠距離からスターライトを撃ってもらいます」
「スターライトっておい」
 クロノは、スターライトの名を聞いて慌てる。
「人質ごと撃たせるつもりじゃないだろうな」
「よくお分かりになりましたね」
「民間人を攻撃したらどうなるか分かっているんだろう」
「無論、日殺傷設定で打たせます。 怪我をしても死ぬ事は、ありません。 ターゲットは、
吸血鬼ですから」
 話しながらもタタリの居場所を探るエリオル。
「見つけました」
「エリオル、何処だ?」
「ミッド極北部、ベルカ自治区です」
「エイミィ、直ぐに騎士カリムとなのは達、すずかに連絡だ」
「はいはい。 既にしよるよ」



 ミッド某所
「さてと、如何するかの」
「はい。 わかりました」
 すずかは、念話でアースラからの指示を受けた。
「タタリの居場所が分かったから一旦、皆を回収するって」
「流石は、クロウの生まれ変わり。 もう、見つけたか……」
 彼らの足元に転送ポートが現れアースラに回収される、一同。

 地上本部の局員が駆けつけたときには、誰一人居なかった。
彼らが見たのは、生々しい血の後とアスファルトがめくれ上がったりへこんだりした光景だった。
 地上本部の魔導師は、知らない。
数年後、之を凌ぐ大事件が起きる事を……





 あとがき
 今回、アリサにキレて貰いました。
 キレたアリサもアレか?
 次回、ベルか自治区でタタリとの決戦を行います。
 第一部最大の戦闘になるはずです。
 お楽しみに……

 ご意見、感想、お待ちしています。




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