二月初頭、アリサ・バニングス、15歳。
彼氏募集中かと言えばそうでもない。
まだ、友達と馬鹿やってるほうが楽しいです。
などと言えるような現状が少しだけ悲しい、今日この頃。
尤もたる理由は。

「ほら、イージス、こぼれてるよ。」
「ユーノ君も、イージスばっかりかまってないで、自分の分食べてよ。」
「ユーノパパ、あ〜ん。」

この目の前の、幸せ家族を体現したような奴らのせいだろうか。
実はそこの旦那的役割の人間は、二股かけている、と言われても仕方ない現状なのだが。

「とは言え、イージス、すずかにも懐いてるしね。」

なのはは何となく、自分よりもイージス、すずかに懐いている、と感じていたり。
アリサの目算からすると、そんな事はないと思うのだが、隣の芝生は青いのだ。
すずかはすずかで、イージスが可愛くて仕方がないようだ。
月末になってくると、ユーノもイージスをつれて月村家にやってくるので、よくイージスはすずかとも会話していた。
それこそ、実体化してからは、猫かわいがり状態となっていたが。

「…不思議よね。」

何で、ドロドロしないのかしら、とアリサは首を傾げる。
ユーノがもっと、欲望丸出しならそうなっていたかしら、とアリサは考えてみる。
欲望丸出しなユーノ…?
最近、更に色々達観しつつあるこの知り合いが、素直に胸に秘めた欲望を見せるとは思えないし、更には、欲望が存在するのかさえ謎だ。
まあ、欲がなければ二股云々はありえない事なのであるが。

「と言うか、あたしは何でこんなとこでこいつらの食事風景を眺めているのかしら…」

ちょっと虚しくなってしまったのは、仕方がない、と思っていただきたい。
何せ、こちら独り身なのだ。
何が悲しくて人様の幸せな光景を拝んでいなければならないのか。
まあ、待ち合わせしているのだから仕方がないのだけれど。

「アリサ、どうかしたの?」
「アリサさん?」

同じ髪の色をした二人が一緒に話しかけてきた。

「何でもない、何でもないわ。」

そう言っていられるのは、一体何時までだろう。
アリサはちょっと自問してしまった。
そのうち、愚痴が肺の奥から上がってきそうな気がした。

「アリサさん、あ〜ん。」

そう言って、無邪気に生クリームが乗ったスプーンを突然、前に突き出された。
苦笑して見ているユーノに、微笑ましそうに見ているなのは。
無言でアリサはイージスが突き出したスプーンをくわえると、生クリームを嚥下した。
それを見て、パーと輝いたように笑うイージス。

「…可愛いわね。」

思わず、和んだ気分でそう言ってしまっても、皆、納得してくれるのではないだろうか。
アリサはそんな事を思っていた。
先ほど吐きそうになった愚痴は、どこか肺の奥にでも消えたらしい。

「可愛いでしょ〜♪」

そう言っているなのはを殴りたい気分になったりもしたが、まあ、些細なことだろう。
しかし、イージスをこんな姿にして実体化させた奴は、いい趣味をしている、と思った。
基本的になのはもユーノを綺麗な容姿をしている。
その正に子供、と言わんばかりの姿に、もしかして、将来このまんまの姿の子がもう一人、なんてことにならないかしらね、とアリサは心配してしまったりもする。
まあ、そうなったらそうなってしまった時のことであるが。

「ユーノパパ〜」
「…何か、最近イージス、どんどん甘えん坊になんて来たね。」

そういいつつも、顔が崩れているなぁ、とアリサはユーノを眺める。
今、自分の顔を見たら、ユーノもどれだけイージスを甘やかしているか、自分でも理解できるのではないだろうか。
頭を撫でられて嬉しそうにしているイージス。
穏やかな顔でイージスを撫でているユーノ。
それを微笑ましそうに見ているなのは。

「元気爆発、絶対無敵の光景よね。」

フェイト達、早く来ないかな、アリサは切実にそう思った。





シリーズ:「陽だまりの穏やかな光の中で」

リリカルなのは 「家族の繋がり」





本日は、特に何がどう、と言うわけでもない。
最近は、緊急でもない限りのんびりできる事が増えたので、ユーノとなのはが同じ時に休暇をとる事が増え、それに合わせて皆も休暇を取る、と言った感じに進んでいる。
だから、遊ぼうと、思えば最初に言っておけば大丈夫なのだ。
まあ、いつ緊急呼び出しがかかるか分からないのが何ともだが。

「だから、翠屋で皆集まったと言うわけなの。」
「分かりました〜」

イージスが快活に頷くのを見て、アリサは満足そうに頷いた。
状況説明ご苦労様、と言ったところだろうか。

「イージスちゃん、はい、ケーキ。」
「わあ、桃子お祖母ちゃんありがとう。」
「ああ…お祖母ちゃんの響きがこんなによく聞こえるなんて…」

桃子のどこか陶酔したような顔に、アリサはちょっと顔をひきつらせた。
まあ、桃子がやっている分には特にどうと思う事もないのだが、士郎の顔が崩れ始めると見れたものではないのだ。
世間一般、孫には甘いとは言え、さすがに崩れすぎだとも思う。

「はい、あ〜ん。」
「あ〜ん。」

パク、と食べるイージスを見ながら、桃子は嬉しそうにニコニコしている。
代わりになのははちょっと不機嫌そうだ。

「お母さん、イージスをあんまり甘やかしすぎちゃ駄目だよ。」
「大丈夫、歯磨きはさせるから。」

振り向きもしないでそう言う桃子に、なのはは溜息をつき、苦笑するユーノと目を合わせた。
そして、二人して苦笑する様子を見ながら、アリサは仲が良いって、言いことよね、とボヤッ、と思った。

「こんにちわ〜」
「あら、すずかちゃん、いらっしゃい。」
「すずかママ〜」

ワ〜、とすずかに向かって走っていくイージスの姿を見ながら、アリサは考える。
まあ、確かにこの姿を見ていると、なのはの気持も分からないでもないかしらね…
すずかに抱きついているイージスの姿を眺めながら、そう思った。
あらあら、と笑っている桃子や、穏やかな顔で見守っているユーノはともかく、拗ねた顔をしているなのはが少しおかしかった。

「…すずかママの呼称は結局、そのままなのよね。」

誰一人、最近は違和感なくなった呼び方なのよね、とアリサは思う。
慣れと言うのは、こういうことなのだろう。

「イージスちゃん、今日も元気?」
「はい、元気です。」

イージスの頭を撫でながら会話していたすずかを見ながら、アリサは紅茶を一口飲む。
紅茶は美味しい。
何となく、脱力していた心に活が入った気がした。

「しかし…あんた達って世間的に見たら異常よね?」
「ほへ?」
「私達?」
「…まあ、そうだよね。」

あんまり自覚症状のないなのはとすずか。
自分が元凶な分、そのあたりはよくわかっているユーノ。

「あ、いやいや、そう言う意味じゃないわよ。」

しかし、アリサはそれを否定して見せた。
それもそうだが、今回言いたいのはそっちの方ではないのだ。

「だってねぇ…あんた達、まあ、15歳、年相応の格好よね。」
「それは…」
「そうだね。」

確かに、そうだ。
なのはもユーノもすずかも、大人びている、とは言っても、15歳だ。
それほど、老けて見えるわけでもない。

「イージスの親です、って言ってるのが、凄い話だな、と思って。」

イージスの外見年齢は3歳ほどだ。
15歳のユーノが親です、と言っていたら、世間はそれはそれは凄い目で見ることだろう。
単純な話、12歳の時の子供、とかそんな話になるからだ。
と、言ってみたら、ユーノは苦笑した。

「まあ、そうなんだけど…結構、言われなれたなぁ。」
「え、そうなの!?」

ユーノの言葉に、なのはは驚いた声を上げる。
そう言うのは、初耳だったのだろう。

「まあ、イージス連れて公園散歩してたら、この前も…」

そう言って、ユーノは少し前に海鳴の公園を散歩していた時の事を話し出した。





「イージス、リイン、あんまり遠くに行っちゃ駄目だよ。」
「は〜い。」
「はいです〜。」

二人の子守状態になっていたユーノは疲れたのでベンチで休憩だ。
その間に、二人の子供は砂場に走っていく。
この辺り、実は非実体化もできる二人は、汚れてもよろしいのだ。
何せ、その場で消えれば汚れも霧散する。

「あ〜、いい天気。」

休暇にこんな事をしていると、いかにもお父さんだなぁ、と自分でもユーノは自覚を持っていた。
とは言え、悪い気はしないのは、根源的に持っていた、家族への欲求からだろうか。
二人を見ていると、とても微笑ましい気分になってくる。
とは言え、二人とも精神年齢は低く見えても、知識レベルなどは大人相応なのだから、難しい所だろ。
それでも、普通の子育ての方が大変なのは、部族で子守をよくしていたユーノもよく分かっていた。

「お疲れのようですね。」

と、だらけきっていると、突然隣から声をかけられた。
驚いて隣を見ると、綺麗な女の人が一人、座っていた。
落ち着いた顔が、いかにも年を分かりにくくさせていた。
とは言え、ユーノはどこかで見たような気がしたのだが。
どこか、レティ提督に通じそうな…そんな雰囲気の女性だ。

「ええ…子供はパワフルですからね。」
「あなたもまだまだ子供だと思うのですが。」

言われてみれば、確かに。
まだ15歳の身の上だ。
この世界の一般常識では普通に子供だろう。

「そうなんですけど…あの二人を見ていると、とてもそんな気分ではないので。」
「…それは、分かりますね。」

女性も、二人でパワフルに砂を集めている光景を見て、クスクス笑いながら肯定した。

「貴方も、年の割には落ち着いてらっしゃいますね。」
「まあ…人に言いたくないような経験を沢山してきましたので。」

苦笑しながら言っていることは、ユーノの本心だ。
それでも、まだ、ユーノは自分が恵まれている、と思っている。
フェイトのように、大切なものに裏切られた事もない。
はやてのように、生まれた時から重たいものを背負わされたわけでもない。

「それにまあ、いつも年上の人の相手ばかりしてますし。」

実際、クロノのように年の近い依頼者など、本当に稀だ。
大体の場合、ユーノより一回り、二周りは年が違う。
そんな人たちの中には、無限書庫の大変さも分からずに、ケチつけている人たちも当然いるのだ。
まあ、仕事の大変さなど、実際に体験した事がなければ分からないのも当然なので、その点では特に意見はない。
常時、最後にお鉢が回ってくるのが、『責任者を出せ』の言葉なので、ユーノはそう言う人たちに相手をよくする。
いい加減、やり方も覚えてくるというものだ。

「…お若いのに、随分苦労してらっしゃるようですね。」
「はぁ…まあ、知り合いは皆そうですし、一人で泣き言言えるわけでもないですから。」

ユーノは言いながら、そう言えば、特殊な15歳だなぁ、と今更ながらに思った。
既に15歳にして勤続6年。
魔法学校を出てからも結構経つ。
そのくせ、こちらではまだなのは達は中学生。
本来なら、こちらの世界の人間は、この後高校へと進学するのが普通らしい。
中学を出て就職する人間は滅多にいない、と。

「それにしても、可愛い妹さん達ですね。」

空気を変えようとしたのか、女性はそう言った。
これが爆弾なのだが、ユーノは言いなれた口調で言った。

「妹じゃないですよ。」
「はぁ、そうなんですか?」

不思議そうな目で見ているのは分かったが、ユーノは何も言わない。
女性はウ〜ン、と考えてから言った。

「それじゃ、知り合いの娘さん、ですか。」
「大きい方の子は、そうですよ?」

身長に比すると、リインは8歳相当だ。
イージスは3歳なので、それは結構な身長差なのだが。
二人して遊んでいるのを見ていると、その点が気にかからないのが、少し不思議だ。

「…それじゃ、小さいほうの子は?」
「娘です。」

キッパリと言い切ったら、やっぱり、女性は目を丸くしていた。
その反応は、ユーノも慣れていたので、苦笑するのみだ。

「ええと…あんな大きな子供ですよ?」
「3歳ですから。」
「…貴方は、何歳なんですか?」
「15歳です。」

色々と事実を素直にぶちまけてみる。
まあ、ユーノも別に隠す気などない。
これが、翠屋の常連さんとかだったら、さすがにお茶を濁すが。

「…素直に、凄いと思ってますよ?」

女性は、そんな風に言ってきた。
いや、凄いと思われても、一体どうすればいいのか。

「…奥さん、いえ、あの子の親はいくつなんですか?」
「同い年です。」

今度こそ、正に驚愕、と言った感じだった。
まあ、それも当たり前。
思わず、溜息をついてしまった。

「あ〜、あんまり、その辺りは気にしないでくれるとありがたいです。」
「…改めて、凄いなぁ、と思いました。」

まあ、言われてもまた仕方がない。
フェイトとエリオのように、親子と言っても似ていないのならともかく。
イージスはあまりにもなのはとユーノに似すぎているのだ。
この状況下ではいかなる言い訳も通らないだろう。
それに、まあ、言い訳などしたくない、と言う心理もあるのだ。
愛し合って生まれた、とかそんなわけではない。
普通に生まれたわけでは決してなくとも、やっぱりイージスは自分達の子供なわけで。

「当然の事かと、思ってます。」
「…ご立派ですね。」

そう言うと、女性はフーと溜息をついた。

「私はですね、16歳で家出同然でお嫁に出たんですよ。その時には身篭っていました。」
「…そちらも結構凄いじゃないですか。」

身篭った云々は、まだユーノには実感がない。
なのはが身篭った事はないのだから当たり前なのだが。

「いえ、親に反対されて、静止を振り切って出たんです。 今思えば、何とも早計でした…」
「…後悔、してるんですか?」

昼の公園で、何とも言えない会話をしているな、と思ったが、そんな事は今更でもある。

「いえ、後悔はしてないんです。 結婚した後も、幸せなんです。」
「それじゃ、何か?」
「私の夫は、事業家でして。 外国を一緒に飛びまわっている事が多いんです。 だから、娘はいつも小さい頃から一人ぼっちでして…」
「…それは。」

ユーノにもその子の気持ちはなんとなく分かった。
しかし、ユーノは期待すらできなかった。
期待できるのと、期待すらもてないの、一体どちらがいいのだろう。
期待できなければ、諦めれるのだ。
でも期待できれば、寂しさは募るだろう。

「寂しい思いをさせているのではないかと…」
「多分…寂しいとは思っているでしょうね。」
「はい…」
「でも…辛いかどうかは分かりません。」
「え…?」

ユーノは空を見上げて、目を細める。
それは、持っていないものの、郷愁だろうか。

「僕は、物心ついた時には親がいませんでした。」
「え…?」
「育ててくれた人たちは良い人たちでしたけど、やっぱり、親はいないって言われると、非常に寂しかったです。」

女性は、ユーノの話をジッと聞いている。
ユーノはそれを確認してから、話を続ける。

「でもですね、帰ってくるって分かってるなら、寂しくても、辛くはないのかもしれません。」

遺跡発掘から親が帰ってきたときの部族の子供達の弾けるような笑顔を思い出す。
それは本当に嬉しそうで。
大人であるしかなかった(と思い込んでいた)ユーノには、本当に羨ましかったものだ。

「だから、お土産でも持って、素直に嬉しそうに会ってあげれれば、一番いい、と思います。」
「…そうね、ごめんなさいね、変な話して。」
「いいえ、お役に立てたら、嬉しいです。」

会話が一段落見せると、丁度、リインとイージスが戻ってくる所だった。
所々に泥をつけているその姿だが、さすがに一般人の前で消えるわけにいかないので、当分はこのままだ。
戻ったら、なのはとはやてに何か言われそうだなぁ、とのんびり思った。

「ありがとう。こんなおばさんの話を聞いてくれて。」
「…おばさん?」

見た目にも、金髪がたおやかで、顔にはしわは見えない。
おばさん呼ばわりにはまだ早いのではないだろうか。

「あら、私の娘と同い年の貴方からしてみれば、私はおばさんだわ。」
「同い年…ですか。」

とてもそうは見えないのだが、まあ、産んだという年を考えれば仕方のない事か。

「お姉さんは誰ですか?」
「ユーノパパ、この人は?」

いつのまにか、リインとイージスに質問されていた。
そして、女性はニッコリと笑うと、朗らかに答えた。

「ただの通りすがりなの、別にパパを取ろうとか思ってないわよ?」
「そんなの当たり前ですよ。」

プン、と膨れたイージスに、女性はアラアラ、と苦笑する。

「ユーノパパ、そんな事したら、殺されます。」

物騒な事を言うイージスに、女性は顔をひきつらせた。
とは言え、事実に程近いので、ユーノも苦笑するしかない。

「貴方の伴侶は…嫉妬深いって事かしら?」
「…色々あるんです。」

主に、なのはもそうだが、どちらかと言うと、周りのファクターが大きい。
もし、ユーノがなのはとすずかとの決着をつけずに、他の女性に走った、などと言う事になったとしよう。
限りなくない可能性ではあるが。
なのはとすずかよりも、まず、フェイトやはやてにどうにかされる可能性が高い。
まあ、ユーノも、そんな事になったら、自分は最低だな、と思っているし。

「あら、もう、こんな時間。」

女性がそんな事を言うので、何気なく時計を見れば、30分ほど時間が経過していた。

「これから、久しぶりに娘に会うのよ、お土産は何がいいかしら?」
「それは、貴女がいい、と思ったものなら何でもいいと思いますよ?」

少なくとも、ユーノは本心からそう思っていた。
きっと、母に会えるだけでも、嬉しいだろうし。

「うん…それじゃ、色々ありがとう。」
「いえ、こちらこそ。」

女性は、慌てて走っていく。
ほんのりと心が温かくなって、ユーノは泥まみれのイージスとリインを抱え上げる。

「ユーノパパ、汚れます。」
「いいよ、別に。」
「はやてちゃん達に怒られますよ?」
「うん、今日は、いい。」

暖かなぬくもりは、人間じゃないはずの彼女達からも、しっかりと感じられて。
ユーノは、家族、と言うものを、今更ながらに、愛おしく思った。




「そんな話。」

ユーノが話し終わると、アリサは何だか難しい顔をする。
ブツブツと言っているのは、何か思う所でもあるのだろうか。

「とは言え、やっぱり、世間はそう言うのよね。」
「そればっかりはね…」

苦笑するユーノも仕方がない、と言う。
まあ、年若いのは確かなので、反論のしようもないのだ。

「ま、私は、特に気にしないけどね。」

面白そうに言うアリサに、すずかもなのはも苦笑する。
まあ、事情を知っているアリサなのだから、それほど気にもしないだろう。
とは言え、別の方向には気にしているわけだが。
彼氏欲しいなぁ、とか溜息混じりにブツブツ言っている。
まあ、年頃の女の子としては当然だろう。

「あ、ここです。」

外から、そんなフェイトの声がした。
やっと来たのか、とアリサが入り口の方を向いた。
この甘い家族達から解放されるのか、とアリサはフェイトに救いの女神を見る。
一人でいるのは大層辛い空間なのだ。

しかし、入ってきたフェイトは、一人ではなかった。
一人、女性が一緒だったのだが、アリサにしてみれば、それは驚きの人であった。

「マ、ママ!?」
「アリサ。」

自身の母親の登場に、アリサは混乱する。
連れてきたフェイトは、色々と聞いていたのか、特に驚いた様子もない。

「何で、ここに?」
「ええ、ちょっとそこでフェイトちゃんに会ってね。写真と同じで、人目で分かったわ。 皆で会うからって聞いて、ならご挨拶でも、と。」
「ご挨拶って、何を?」
「そんなの『うちのアリサがいつもお世話になってます』に決まってるじゃないの。」
「どっちかって言うと、私がお世話してるの!」

う、となのはとフェイトはたじろぐ。
仕事で欠席する時のノートなどを取ってもらっている身としては、それはどうしようもない事実。

「いいわ、本音を言うと、アリサがいつも楽しそうに話してくれる友達さんと、会いたかっただけなの。」
「何いきなり、人のプライベートを暴露してるの!?」

アリサとしては、そう言う面を見せるのは、なんとなく恥ずかしいのだ。
何となく、周りからの微笑ましい目線を受けて、たじろぐ。

「あ、この前の女の人です。」

そんな事を言っていると、イージスがポツリとそんな事を言った。
アリサの母は、アラ、と口を抑えて驚きの表情をする。
ユーノも苦笑するしかない。
どんな良いタイミングだろうか。

「丁度今、この前の話をしてたんですよ…」

ただ、のんびりと穏やかな雰囲気で話が進む中。
アリサは非常に居心地が悪い。
何せ、母親が話していることは、アリサの話。
非常に楽しそうに話しているので、何も言えないのだが…なのはたちがニヤニヤと笑っているのが恥ずかしいし、むかついた。
年相応のなのはたちを見ながら、イージスを抱き上げて母と話しているユーノを見ると、不思議と違和感がなかった。
母に勝てないアリサは思う。
もしかして、ユーノも自身の母親みたいになるのではないだろうか、と。
まあ、とりあえず…

「アリサは可愛いでしょう?」
「イージスも可愛いでしょう?」

親ばか二人を発見した。
ハハハ、と思わず乾いた笑いを紡いでしまったアリサだった。

ー終わりー

それほど、意味のない話。
少し、スポットの宛所を変えてみたんですけど…
どうも中途半端ですね。



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