空を見上げれば、分厚い雲がかかっていて。
地面を見れば、まるで川のように流れていく水の流れ。

「秋空かぁ。」

なのは達は、学校に行っている。
空を見上げながら、ユーノは、さて、どうしたものか、と考えていた。
何せ、外に出て行こうにもこの雨だ。
屋上にいくにはさすがに無理な天気だ。
今頃水浸しは間違いないだろう。
だから、今日は一日、色々とこちらの書籍などを読みつつ、のんびりと部屋の中で過ごしている。
時に空を見上げ、11時頃より突如曇りだした空を眺めてみる。
本当に、それはきまぐれで。
どれだけ、こちらを困らせるのか、と言った思考が一瞬現れ、思わず苦笑した。

「女心と秋の空、か。」

今、読んでいた本の一文を読みながら、ユーノは苦笑する。
と言うか、苦笑するしかできなかった。
この空のように、時折こんな風に泣き出し、そして、カラッと晴れるように笑い出す。
なのはもそんな感じだよね、とユーノは思いながら、目を本から離し、閉じる。
眼を閉じれば、聞こえてくるのは、雨音ばかり。

謹慎も9日目。
穏やかに穏やかに過ごしてくると、何が起こるか分からないと言った類の強迫観念に襲われる。
既に、クロノを仕事馬鹿だ、となどと言える立場ではない、とユーノは自覚していた。
何故なら自分も仕事をしていないと、少々落ち着かない。
一人でいる時等は、尚更でもあった。

「責任者って言う立場のせいなのか、それとも性格?」

どうも、後者のような気がするユーノであった。
ユーノもクロノも基本的に真面目だ。
女衆のように、適度な手の抜き方と言うものができないのは明白。
それにつけて、仕事を一人で終わらそうとする悪癖がある。

「本当、クロノに全部押し付けてきたままだもんな。」

好意に甘えておいて今更なんだ、と言うような気もするのだが。
とりあえず、何かお詫びを用意しておこう、とユーノはそこで思考を打ち切った。

雨を見つめながら、ユーノは傍、と一つの事柄を思い出す。
そう言えば、なのはは傘を持って行っただろうか。
思ったが吉日、と、ユーノは玄関まで歩いていく。
そこには、しっかりとなのはの物であろう傘があった。
ここでは、さてどうしたものか、とユーノは考える。
別に、傘がなくとも、アリサかすずかの家の車で帰るであろう、とは思う。
でも、何となく、持って行ったほうがいいかもしれない。
本当は、念話で聞いてみるのが一番なのだろうけど、それはそれで謹慎中の身の上。
下手に魔法を使って、クロノに嫌味を言われるのも何だったので、ユーノはとりあえず、傘を持って出かける事にする。

外に出て、傘を差しながら、2本の傘を持って歩き出す。
まあ、ただの保険なのだが、必要ないのならそれに越した事はない。




リリカルなのは「雨が降る中で、色んなことを思います」



「そういえば…」

ユーノはなのはと歩いた、雪の日を思い出す。
闇の書の事件もようやくひとまずの終わりを見せた、クリスマスの前の事。
もう、あれから6年も経った、とユーノは空を見上げる。
ザー、と降り注ぐ雨に、あの日の雪のような柔らかさは、ユーノは感じられない。
冷たく打ち据えるような雨は、まるで、こちらを責めているかのようにも思えた。
一体、何を責められると言うのだろうか。
ユーノにも全く覚えはなかったし、ただ、そんな風に頭によぎっただけなのだが。

「リインフォースさんは、はやてのために消える事を、受け入れた。」

あれだけの思いが、自分にあるのだろうか、と問う。
そんな事も分からない。
自分の気持ちなのに、さっぱり分からないな、とユーノは首を振る。

「あれ…?」

首を振って、見上げてみれば、そこはもう、目的地の学校だ。
いつのまに、こんなに歩いてきたのか、と少々苦笑した。

「まだ、早いな。」

時計を見ても、まだ終了時刻には少し早かった。
校門にもたれて、ユーノはそっと眼を閉じた。



「あ、ユーノ。」

アリサがジッと外を眺めながら、そんな事を言う。
ユーノ、の単語に、なのはがそちらを向けば、そこには特に姿はなかった。
にやり、と意地悪そうに笑うアリサに、なのはは恨めしそうな目線を向ける。

「なのはちゃんも、引っかかりすぎやろ。」

苦笑して言うはやての言葉も確かに。
今日一日、雨のせいで朝以来会っていないのだ。
ただそれだけなのに、妙に寂しい気分になってしまった、となのはは自覚があった。
それを考えながら、なのはは溜息をつく。
全く、これで仕事に戻ったら、耐えれるのだろうか、と思うと、ちょっと憂鬱だった。
日に日にユーノへの思いが膨れている気がして、ちょっとなのはは自分に驚いている。
自分は結構寂しがりやだと、なのはは理解していたが、それでも、これはちょっと異常かな、と思っている。
同時に、独占と言う言葉が脳裏に浮かんで、ちょっとだけ喜んでみる。
何せ、普段仕事をしていれば、二人で会うことがまずない。
執務官や捜査官と言う仕事は、無限書庫に依頼を頼む事もそれなりに多々あり、会うこともある。
しかし、教導官という仕事は、軌道に乗ってしまうと、相談するような事が主に人間関係以外のことがない。
それに、なのはもまた、ユーノと同じように基本的に自分の手で解決できる事はするタイプなのだ。
意味があっても、ギリギリまで人に頼る事をよしとしないのだ。
これでは、確かに今は独占したく思っても仕方がないのかもしれない。
きっと、反動のようなものだろう、となのはは冷静に分析して、先ほどからのからかいでちょっと興奮していた心を落ち着けた。

「…あれ?」

フェイトの声が聞こえて、なのははそちらを振り返ってみる。
HRが始まるまでの短い時間の事である。
何か今日はあったかな、となのはは思い出しながら、フェイトに話しかける。

「どうしたの、フェイトちゃん?」
「なのはの傘じゃない、あれ?」
「え?」

言われて、そちらを見てみれば、校門の向こうに見える、ピンク色の傘。
ほとんど影になっていて見えないのだが、それでもその色は確かに見慣れた自分の傘、となのはは判断する。

「フェイトちゃん、ようあんなん見えたな。」
「眼はいいからね。」

ふふん、と自慢そうに言うフェイト。
はやてもおお〜、と軽く拍手をしている。
そして、アリサは首を傾げていた。

「で、何であんな所になのはの傘があんのよ?」

なのは、フェイト、はやては、あ、と頭に疑問符を浮かべて、ジーとその傘を見つめる。
その傘の穂先はピクリとも動かず、中空で止まっている。
つまり、誰かが持っている、と言う事だろう。

「ユーノ君がなのはちゃんを迎えに来たんだよ。」

と、突然そう言ったのは、すずかであった。
え、となのははすずかを一度見てから、その傘をもう一度見る。

『ユーノ君?』
『ん、なのは?』

念話を飛ばしてみれば、確かに帰ってくる答え。
ユーノが動いたのか、その傘の穂先は少し動いていた。

「ほ、本当に、ユーノ君だ。」
「そりゃ、今はユーノ君以外なのはちゃんのお家にいないんだから、ユーノ君以外、傘持ってくる人なんていないよ。」

ニコニコと笑いながら言うすずか。
それは、推理したのか、それとも別の何かがあるのか。
こうして、ユーノと恋人同士になってみて、初めてなのははすずかとユーノの間にある異常ともとれる何かに気づいた。
まあ、周りの皆もそれは似たようなものであるのだが。
一方的に、すずかが凄いだけだという話もある。

『………』
「? 何、皆?」

友達4人からの視線に、すずかは不思議そうにしている。
何と言っていいのか分からなかったので、結局なのはは、ユーノと念話を始めた。

『ユーノ君、どうしたの?』
『散歩がてらに、傘を持ってきたんだ、なのはがすずかやアリサの家の車で帰るなら、このまま帰るよ?』
『う、ううん、いいよ、一緒に帰ろう!』
『分かった、じゃあ待ってるよ、警備員さんに捕まらないようにジッとしているよ。』

笑いの混じった念を感じながら、なのはは気分が高揚していくのを感じる。

「うわ、なのはがニヤニヤし始めたわよ。」
「ユーノ君との帰り道想像してるんだよ、きっと。」
「なのはちゃん…ユーノ君の前でそんな顔したあかんで?」
「…傘どうしよう?」

4人が4人に好き勝手な事を言う(若干一名、自分の心配をしているが)
後ろで色々言われても、なのははニヤニヤしている。
それはもう、どれだけ嬉しいんだ、と言わんばかりの表情だった。




ボケッと空を見上げていると、黒い雲が眼に入った。
それはもう、正に雨雲、と言った感じで、大粒の雨を落としてくる。
今日はもうやまないかな、と見上げていてユーノはのんびり思った。

「ん?」

歩いてきた道に視線を戻せば、こちらに歩いてくる人がいた。
傘を差して、そして、自身も傘を持って歩いている姿に、ユーノは自分と同じか、と仲間を見つけた気分になった。
黒い服を着たその姿をユーノは何気なく眺める。
そして、ふと、傘が持ち上がった瞬間に、その正体に気づいた。

「クロノ?」
「ん、ユーノか。」

それはこんな時間にいることすら珍しいような男だった。
アースラの艦長であるクロノが、平日の昼間からこんなとこを歩いているとは。

「フェイトに傘かい?」
「ああ、突然の雨だったからな、持ってないだろう、と思って。」

この口ぶりからすると、本日はこの世界の天気をずっと見ていた、と思っていいだろう。

「今日は、休みだったのか!?」
「そうだが…何故、君はそこまで驚くんだ?」
「いや、クロノが休んでいる姿って、想像できにくいからかな。」

疑問に正直に返すと、クロノは顔をひきつらせた。

「君にだけはそんな事を言われたくないぞ。」
「…ごもっとも。」

思わず二人で苦笑しあって、ハァ、と溜息をついた。
仲間内各位に話を聞いても、確実に、この二人が一番忙しい、と言う答えがでるほど、二人は働いている。
それは、相応の責任者なのだから当たり前なのだが、それでも、まだ20歳と15歳にしては異質なのは確かである。
何せ、いくら就業が早いとは言え、長、と言われる立場に着くこと自体が異例なのだ。

「でもさ、クロノって休日に何するの?」

興味本位からユーノが聞いた事に、クロノは答えすらすらと口に出す。

「ふむ、基本的にはS2Uとデュランダルの分解整備、それと戦術的な訓練等か。」
「…仕事しているのとてんで変わらないじゃないか。」

ユーノが思った事を口にすれば、クロノは何を心外な、と少しだけ声を荒げた。

「ならば君は人の事を言えたほど、変わった事をしているか? どうせ、本を読むか、遺跡の資料を漁っているか、遺跡を探索しにいくかだろう。」
「……反論できない。」

仕事をそのまま休日にも持ち込んでいる、と言われても何ら反論できない二人であった。
しかし、最近は彩りもある。

「それに、エイミィと出かける事もある。」
「それを言われると、僕もこれからはなのはと出かける事が増えるかな?」

お互い、恋人の名前を出して、そう言うものの、クロノは気の毒そうな顔をする。

「それは難しいんじゃないか?」
「……そうだね。」

ユーノも少し思案するとすぐに気づいた。
一緒に出かける、と言う事は、双方に同じ時に休みがなければならないのだ。
なのははともかく、ユーノに暇があることは少ない。
しかも、それがなのはの休みと上手く合致する確立は低いだろう。
クロノの場合は、自分と補佐の事だ、合わせようと思えば、しっかりと休みは合うし、仕事場でも一緒なのだ。

「そう考えると、本当にクロノにはいくら感謝しても足りないよ。」
「…いきなりなんだ、気持ち悪い。」

ユーノの言葉に、クロノは本当に嫌そうに顔を歪めて見せた。
それに苦笑しながらも、ユーノは言う。

「いや、こんな休みをくれなかったら、恋人になって早々になのはに寂しい思いをさせてただろうしね。」
「…そうさせない努力を怠らないことだな。」
「それは、分かってる。」

神妙に頷くユーノにクロノは満足そうに頷き、その後、真剣な表情に戻る。

「ユーノ・スクライア無限書庫司書長。」
「…はい、クロノ・ハラオウン提督。」

休暇中とは言え、仕事モードになっている二人。
その声には、先ほどまでの話とは違ってより真剣なものが含まれていた。

「明後日、AM9:00より、謹慎を解き、通常業務へと戻る事を通告する。」
「――了解しました。」
「なお、今回の一件の処置は、減棒10%が3ヶ月らしい。」
「はぁ。」
「後、個人的に僕への借りを一つ蓄えた。」
「何それ!?」

減棒にさして興味はない。
何せ、寮に住んでいて、買うものも特になく、エンゲル係数が95はあるのだ。
溜まる一方のお金が多少入らなくなっても、困りはしない。
それよりも、ユーノはクロノの借りの方が気にかかった。

「当たり前だろう、僕が穏便に軟着陸させるのに、どれだけ気を使ったと思っている。」

意地悪そうな表情をしているクロノだったが、大変なのは分かったので、ユーノは何も言わなかった。

「まあ、不当な事は多分言わない。」
「君が多分と口にすると、嫌に不安だ。」
「ああ後、なのはは羞恥刑になった。」
「…はぁ?」

また訳の分からない事を言い出すこの艦長に、ユーノは首を傾げる。
すると、徐にクロノは一つ、携帯音楽再生機を出し、スイッチを入れた。

「『私、高町なのはは…ユーノ・スクライアの事が、大好きです。』」
「な、な、なぁ〜!」

流れ出た声に、思わずユーノは大声を上げてしまう。
それは確かに、なのはの声であり、聞いた覚えがありすぎるほどにあった。
あの騒動の最後のときに、なのはの口から放たれた、告白――!

「どう言う事かと言うとな、なのはの復帰一日目――君と日付は一緒だが――彼女の教え子達に流されるらしい。」
「何だ、その悪趣味全開なのわ!」
「僕に言うな、考えたのはエイミィと母さんなんだ。」

どこか遠い眼をして語るクロノに、ああ、こいつも色々言ったんだろうな、とユーノも頭を抱える。
空からユーノに視線を戻し、クロノは言う。

「ちなみに、オフレコだ。 なのはにこれを警告するのは駄目だぞ。」
「…じゃあ、言わないで欲しかった。」
「安心しろ、君もあまり変わらない。」

徐に、クロノは携帯音楽機をいじり始め――

「『僕、ユーノ・スクライアは、高町なのはを愛しています!」』」
「…分かってたさ、そうさ。」

何だか泣きたい気分になりながら、ユーノは諦めの声を出す。

「ちなみに、なのはに警告すると、これとさっきのなのはの台詞が管理局中に一日中リピートされるらしい。」
「…エイミィさんは悪魔だ。」
「…母さんもな。」

男二人、女二人のバイタリティと悪知恵に完全敗北だった。

「ユーノく〜ん!」

と、男二人黄昏ていると、走ってくるなのはの姿が眼に入った。
いつのまにか、ホームルームも終わっていたらしい。
雨を気にせずに、こちらに走ってくるなのはに、ユーノは慌ててなのはの傘を渡そうとして――
そのまま体当たりするかのように抱きつかれた。

「うわ、なのは!?」
「えへへ〜、ユーノ君補充〜♪」

多少濡れていてもなんのその、とユーノに抱きついて頬をユーノに擦り付けるなのは。
クロノはそれを呆れ眼で見ている。

「なのは、ほら、落ち着いて。」
「落ち着いてるよ、ハイなだけで。」

それはきっと、落ち着いているとは言わないんじゃないかな、とユーノは冷静に考えたりする。

「なのは…そろそろいいだろうか?」
「え?」

ふと、声になのはが頭をめぐらせれば、そこにはクロノの姿あった。
珍しいものを見た、と言わんばかりに眼を丸くしたなのはに、クロノはちょっと溜息をつく。

「なのはも、明後日から仕事の復帰が決まった、よろしく頼む。」
「あ、うん、了解。」

こちらは随分と気安く通達されたものだ、とユーノは思ったが、きっと今のやり取りにやる気を失ったのだろう。

「な、なのは、待って〜、って兄さん!?」

なのはに置いていかれて慌てて走ってくるフェイトは、クロノの姿を見つめて、驚きの声を上げる。
思わず苦笑しながらも、クロノはゆっくりとフェイトに傘を差し出した。

「必要なかったか?」
「ううん、助かった。」

こちらは、とても普通の兄妹の交流だった。
その隣にいる一組の彼氏彼女はと言えば。

「ユーノ君も、明後日から仕事に復帰なの。」
「うん、そうらしい。」

先ほどクロノから聞いたなのはの罰を思い出しつつ、ハタ、と気づいた。
なるほど、こう言う事をしろ、と言う事なのかもしれない、とユーノは思いついた。
罰は罰だろう、だったら恥は押し隠し、ここで一度、やりたい事をやってしまおう、とユーノは考える。

「それじゃ、今日と明日は、ずっと一緒にいようね。」

少し寂しそうに言うなのはを軽く抱きしめて、ユーノは一つの事を決心した。
でも、今は、残った時間を有意義になのはと過ごそうと、心に決めた。




明後日、訓練室で。

「あれ、ユーノ君?」

教え子全員が居並ぶ場所に、一人、ユーノが混じっていた。
こちらに軽く手を振って微笑んでくるユーノを見て、なのはは頬を緩ませる。
疑問に思ったが、ユーノは気にしないで、と言っている風に思えたので、気にせずに始めた。

「皆さん、今までお休みしていてすいませんでした。」

なのはの挨拶が始まったと同時に、プツ、とスピーカーに電源が入る音がした。

「理由の方は、その何といいますか…」

言いよどむなのはを予想でもしていたのか、そこから先を引き継ぐように声がした。

『そこから先は、アースラからお送りいたします。』
「へ?」

いきなり聞こえたスピーカーからのエイミィの声に、なのはは思わずスピーカーを見上げた。

『先日、高町教導官が設備の私的利用をしたのが理由です、ちなみにこれはその時の言葉。』

なのはが呆然としている間に、エイミィは一方的に物を言い、スピーカーから声を流す。

『私、高町なのはは…ユーノ・スクライアの事が、大好きです。』

辺りをシーンとした空気が一瞬襲い、教え子、なのは共々、沈黙が降る。

『それでは〜♪』

楽しそうに言うエイミィの声は、それで消えた。
そして、それに一瞬遅れて爆発する怒号とも取れる歓声。

「エ、エイミィさ〜ん!?」

自身の告白をしっかりと聞かされ、なのはは顔まで真っ赤になり、教え子の女性陣は皆、なのはに興味深々の視線と歓声を上げている。

パン、パン!

そこで、拍手を打ち、興味を惹く人が一人。
名前が挙がった、ユーノである。

「はい、そう言うわけで、先日より、僕、ユーノ・スクライアと高町なのははお付き合いさせてもらってます。」

よく通る声でニコニコと通る声を辺りに響かせながら、ユーノはなのはに近づいてく。

「ユ、ユーノ君、知ってたでしょ!」
「口止めされててね。」

顔を真っ赤にしたなのはの抗議に苦笑するユーノだったがそれでも歩みは止めず、なのはの隣に立った。
パン、ともう一度手を叩くと、その場にいた全員がユーノに集中した。
それを確認しながら、ユーノはニコニコと笑い、宣言した。

「なので、皆さん、なのはに手を出そうとしないでくださいね。」

そう言うと、ユーノは素早くなのはの腰に手を回し、なのはを引き寄せ――

チュッ

小さな音のはずなのに、大きく響いた錯覚を覚えさせる、そんな音がした。
なのはは呆然と自分の唇を押さえ、緩々と周りを見渡してから、顔を真っ赤にし、ユーノは――

「それじゃ、そう言う事なので。」

周りに対する牽制を終わらせ、悠々と自分の仕事場に戻って行った。
そして、出て行ったユーノを嫉妬目線で睨む男性陣と、なのはに話を聞かせてください、と言って走りよる女性陣がいた。

その一部始終をモニターで見ていたエイミィは呆然とし、驚愕するしかない。

「ユーノ君、すごっ!」

クロノもまた、呆れ顔でその一部始終を見ていた。

「よくもまあ、人前で堂々と…」

しかし、ユーノはと言えば、飄々としてたように見えたが、訓練室を出た途端に、顔を真っ赤にして、頭を抱えていたりする。
内面を言えば、ああ、とんでもないことをしちゃったよ、と言った感じである。
なのはに対する牽制をしておきたかったから、丁度良い、と思ったのが運のツキである。

「ユ、ユ、ユーノ君のバカァァ!」

訓練室の中から聞こえてきた、なのはの照れ隠しの怒声を聞きながら、ユーノは自身も僕はバカだぁ、と思うのであった。

ー終わりー


明るくコメディムード。
しっとりから今回はギャグ調に。
この後、なのはは教え子の女性陣に詰め寄られたりしてます。





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