ユーノ・スクライア(14歳)はある意味とんでもない状況に身を置いていた。
その脳裏を掠めていくのは、どうしたものか、と言う言葉である。
冷静にしているように思えるかもしれないが、彼の脳みそは今大回転中である。
つまり、混乱の真っ只中にあったのだ。
「ユーノ君。」
そう言って、艶かしく笑うのは、月村すずかである。
常とは違うその顔に、ユーノは違和感を感じもするが、あまりそれを気にする余裕はない。
彼女は、その、一糸纏わぬ姿で、彼の前にあったのだ。
「どうしたの、すずか?」
何故か、表面上はひたすら冷静に振舞っていた。
まあ、ともすればすずかに襲い掛かっていたろうけども。
「分からない?」
質問に質問で返されました。
確かに、ユーノはすずかと恋人であった。
とは言え、キスは何度かしたけれども、こう言う事に発展しそうな事は一度もなかったわけで。
思わずユーノがうろたえてしまったのも仕方がないのだろう。
「いや、うん、その、まあ…分かるけど。」
しかし、ユーノが聞きたいのはそう言う事ではない。
何故、突然こんな事をしたのか、と言う事だ。
「私ね、今、凄く醜いの。」
「え?」
すずかはそう宣言すると、ユーノに抱きついてきた。
ユーノは鼓動が更に早まっていくのを感じる。
ともすれば、意識がどこかに飛びそうな感じだったが、それはさすがに男として許容できなかった。
「誰にも渡したくないから――」
「すずか、何を言って――」
「こうするんだ。」
そう言って、ユーノはすずかから、口付けを受けた。
そうされると、逆にユーノは頭が冷えていく感触を味わっていた。
性的興奮、と言う意味なら、沸き立っていたろうけども。
すずかの恋人を自認しているユーノは、強引にすずかを引き剥がした。
そうされて、すずかは、酷く怯えた目をしていた。
ユーノは優しく微笑むと、ゆっくりとすずかの体を抱きしめた。
「……女の子に恥をかかすんだ。」
「それは卑怯な言い方だと思うんだよ。」
ポンポン、と頭を撫でるユーノだったが、余裕など皆無である。
境界線を行き来しているのは、男の欲情である。
女の子みたい、と言う風に言われるユーノであったが、当然のように男である。
そっちの方面に関しては当然、人並みに興味もある。
しかし、今日のすずかの様子は明らかにおかしい。
そちらの気持ちが何とか男の欲情を叩き潰していた。
結局、その日の二人は、それから特に何をする事もなく、眠ってしまったのであった。
翌朝、先に起きだしたのはすずかの方であった。
ユーノは少しばかり目の下に隈を作っていたけれども、ぐっすりと眠っていた。
「酷いな、ユーノ君、女の子が恥ずかしいの我慢してあんなことしたのに。」
そう言って、ピン、とすずかがユーノの鼻を少し弾くと、ユーノは苦しそうに唸った。
それにクスリ、と笑って、すずかは寂しそうに笑った。
この人は、もしかしたら明日にも本当の自分の気持ちに気づくかもしれない。
そうなったら、その時には、優しく送り出してあげないと、まず、自分から何も言わないだろう。
「ずるいよね〜」
惚れた弱みだな、とすずかは悲しそうにつぶやく。
「別に、いいんじゃない?」
「!?」
聞こえてきた声に振り返れば、そこにはすずかの姉の忍がいた。
何故、と混乱する頭を余所に、忍はジーとすずかを見つめてくる。
「いい体になってきたわね…」
その言葉にハッとしてすずかは自身の体を見下ろす。
そこにあるのはまだ一糸纏わぬ裸の体…
慌ててすずかは落ちている服を着込んでいく。
「もう、お姉ちゃん、何で覗いているの!」
「朝になっても起きて来ない二人がいるからでしょうが?」
実は昨夜も見ていたけれども、それはおくびにも出さない。
すずかの様子を怪訝に思ったからこその行動であった。
「で、何、ユーノ君は実はなのはちゃんが好きでしたって気づいたの?」
「…え?」
何で分かったの、と呆然とした顔のすずかに対して、忍はサラリと答えた。
「とっくの昔に気づいてたからね、そんな事。」
私と恭也はね、と何でもないように忍は言った。
年上を馬鹿にしないでよね、と言いながら、忍はチョイチョイとすずかを手招きした。
手招きされて、すずかはユーノをおいて、忍についていく。
ついたのは、いつもお茶を飲むバルコニーで、ノエルがゆったりと頭を下げて、お茶を淹れて待っていた。
「それで、すずかはユーノ君とどうしたいの?」
「どうって…」
そう問われると、今までどおり、としか言えないだろう。
望んでいるのは、恋人として一緒にいる事だ。
「だったら、いいじゃないの、ユーノ君が別れたいって言うまでそうしときなさい。」
「…いいのかな?」
それはそれでおかしくないかな、とすずかは首を傾げる。
だが、忍はにべもなく言い切る。
「他の女の子に遠慮なんてしてても、絶対にものにならないし、ユーノ君の気持ちを第一に考えるにしても、それは本人が自覚した時で充分!」
いい切る忍は、それで私も恭也を恋人にした、と自信満々に宣言している。
思わず呆れるすずかだったが、そんな策謀的な考えも、するりと理解できた。
「頑張りなさいよ、すずか、他の女の子が好きな男を自分に首っ丈にしなきゃならないんだからね!」
「うん。」
静かながら、それは新たな決意。
渡したくない、と言う思いだった。
陽だまりの穏やかな光の中で IF
『月照らす安らかな光の中で』
「すずか…どうしたの?」
「ううん、何でもないよ?」
いつもよりべったりと張り付いて来るすずかに、ユーノは少し不思議に思った。
昨夜の事もあり、その様子にはやはり首を傾げるしかない。
しかし、本来なら昨日聞くことを聞けなかったのはまずかったかもしれない。
完全にタイミングを逸してしまった。
「ユーノ君は私の恋人だよ?」
「え、あ、うん、そうだね。」
今更、どうしてそんな事を宣言するのか、とやはりユーノは首を傾げる。
ユーノの意識は当然ながらすずかの恋人であることを認識している。
と言うか、つい、昨日、一年になったというのを思い出していたくらいだ。
「すずかと付き合って一年だよ、そのくらい分かってるよ。」
一年…とユーノが言うと、すずかは少し驚いた顔をして、軽やかに笑った。
「ちゃんと覚えててくれたんだ。」
「…まあ、ね。」
苦笑と共に言うユーノはちょっとだけ後ろめたかった。
一年、と言う日付を覚えていたのは確かだけれど、そのための何か、と言われると用意などできていなかったからだ。
何かすずかに贈れたらな、と思ったのは嘘ではない。
「すずか、何か欲しいものとかある?」
「…そうだね。」
う〜ん、と考えるすずかの様子に、ユーノはゆっくりと待つ。
紅茶一杯を飲むほどの時間が経った頃だった。
「うん、決めた。」
「何?」
「デートしよう。」
デート、その単語に、ユーノは目を瞬かせた。
そういえば、と思い返せば、いつも月村邸で会ってばかりで、そう言ったことはした事なかったことに、今更気づいた。
とは言え、二人ともそう言った事を不満に思っていたわけでもなかったので、特に問題はなかったのだが。
しかし、すずかがそう言うのなら是非もない。
「それじゃあ…デートしようか、すずか。」
「うん♪」
楽しそうなすずかの声に、笑みを深くするユーノだった。
勿論、彼も恋人とするデートを楽しみに思っていた。
とは言え、まさかデートするだけで、一騒動、しかも、ある意味で転機になるほどのことが起こるとは、露にも思っていなかった。
この日、海鳴の隣の街を二人でくっついてブラブラした。
それほど変わったことはしなかった。
ユーノがすずかに途中でプレゼントを贈ったり、すずかがユーノにプレゼントを贈ったり。
そんな、他愛もない――だけど、本当に楽しい時間だった。
「すずか、あんた男と一緒に歩いてたって噂が…」
約束のデートをした翌週の月曜日、学校に来て見ればクラスメイトにそんな事を言われた。
誰かに目撃されていたのか、とゆっくりと考える。
とは言え、そう言う事がうわさになっていると言うのなら。
「すずか〜!」
「すずかちゃん!」
予想通りの親友達に、ちょっとばかり苦笑。
目を爛々とさせたアリサとはやてが何とも言えず、後ろで苦笑しているなのはとフェイトが印象的だった。
とは言え、昼休みだし、既に逃げるのは不可能だろう、とすずかは思う。
ちょっとばかり困った顔を見せてしまっても、仕方がないと思って欲しい。
「…こうなるんだ。」
「そりゃ、ね。」
すずかの引き攣った声も、仕方がないといえよう。
何故なら、学校の屋上で、確かに周辺にいるのはなのは達親友だけだが、少し遠くまでみれば、こちらを気にしている生徒が沢山いた。
…女子ばっかりだから、こういう話題に目がないのは分かっていたけども。
「ちょっと注目されすぎじゃないかな?」
「…さあ、すずか、聞かせてもらうわよ。」
アリサは無視する方針のようだ。
はやて達も同様の様子。
皆の熱の入りように、すずかはやっぱり苦笑するしかなかった。
「う〜ん、じゃあ、質問形式でお願いだよ。」
「ふ〜ん、それじゃあな、男と一緒に歩いていたって言うのはホンマなん?」
「本当だよ。」
周りから息を呑む音が一斉に聞こえてきた。
やっぱり、それは気にしてはいけないのだろうか。
アリサ達も驚いた、と言う顔をしている。
「それじゃ、それは彼氏だったりするわけ? しないわよね?」
まっさか〜、と言う顔をするアリサに、すずかは卵焼きを咀嚼してから、のんびりと答えた。
「世間一般的に言う彼氏彼女の関係だよ?」
『ブフォッ!』
アリサとはやてが吹いた。
なのはとフェイトも目を丸くしている。
「…汚いし、失礼だよ、二人とも。」
周りからもざわついた声が聞こえてくる。
そんなに驚かれても一体どうすればいいのか。
「だ、だって、すずか、今まで浮いた話の一つもなかったじゃない!」
アリサの言葉に、すずかはう〜ん、と人指し指を顎に当てて、空を見上げる。
思い出してみると、確かにそう言う話はした事なかった。
「…そういえば、したことなかったね。」
「…のんびりしすぎと言うか…マイペースよね、本当に。」
「…すずかだし。」
アリサとフェイトの少し疲れたような声が印象的だった。
とは言え。
「ねえ、皆、私に彼氏がいたらそんなにおかしいの?」
ちょっとばかりそこが気にかかった。
改めて問われたからか、4人は一斉に考えてみた。
誰が一番彼氏がいて違和感がないかと言われれば…
「…うん、おかしくないね。」
「と言うか、すずかが告白を受けるとか思ってなかったから。」
なのはの言葉はともかく、フェイトの言葉は語弊があった。
それは――
「違うよ、フェイトちゃん。」
「え、何が?」
「告白したのは、私。」
思わず、ポロリと全員は箸につまんでいたものを落とした。
そこまで衝撃的なことだろうか、とすずかは思う。
しかし、何が衝撃的とかそんな話ではなくて。
驚かれたのは、その行動である。
「告白したんだ…」
それでOKをもらった事が凄く偉大な事である、と言うような視線が向けられた。
それも屋上中からだ。
一際強かったのは、なのはからの視線だ。
それは、尊敬、畏怖と言ってよい。
なのはがユーノに告白できていないのは周知の事実なだけに、何ともいえない。
「でも、すずか…告白するほど、好きな人なんていたんだ。」
アリサの言葉に、すずかは満面の笑みを浮かべる。
それは、本当に幸せそうで、満足そうで。
綺麗な、笑みだった。
その表情に、親友達は羨ましそうに声をあげる。
「うわ〜、すずかちゃん、青春しとるなぁ…」
「何だか、凄い負けた気分よね…」
「いいなぁ、すずかちゃん。」
「私も好きな人とかいたらなぁ。」
羨ましい、と皆声を揃えて言う。
――もし、皆が真相を知ったら、何て言うのだろう。
もしかしたら、私は4人に非難されるのかもしれない、とすずかは思う。
言ってみれば、私はなのはちゃんを裏切ったようなものなのだから、といささか自嘲気味に思った。
「なあなあ、すずかちゃん?」
「え、あ、何、はやてちゃん?」
何ともいえないニヤニヤ笑いに、すずかは少しばかり冷や汗を流した。
とても、嫌な予感がしてきた。
「相手の人って、どんな人なん?」
「え…?」
それは、当然ながら聞かれることだ。
好奇心の塊のようなこのくらいの年の女子中学生はとても厄介なのだから。
う〜ん、と考えてから、すずかは考える。
とりあえず、当たり障りのない事を話すことにした。
「そうだね…月並みだけど、優しい人で、話していて楽しいな。」
それを聞いているはやては、おお、と眩しそうにすずかを見ている。
はやての方からは、何故かすずかが後光をさしているように見えているのだ。
そのくらい、すずかが笑顔で輝いているのはきっと嘘ではない。
少々、後ろめたさも含まれていたのかもしれないが。
「何よ…結局、抜け駆けって事ね。」
ブスッ、と不満そうな顔をしているアリサ。
その何気ない言葉に、思わず、すずかはその胸を押さえた。
抜け駆け…そういわれて、アリサの言っている意味とは違う事に感じて、すずかは罪悪感を感じる。
まだ、誰にもこのことを言っていないからこそ、かもしれない。
「そうだね、抜け駆けだね。」
すずかは、苦笑しながら、その場を収めた。
心の中では、沢山、わだかまりを持っていたけれど。
「…すずか?」
それから一ヶ月ほど経って。
すずかの家でいつも通りお茶をしていると、すずかが妙に落ち込んでいるような気がした。
どうしたのか、とユーノは首を捻る。
「何か、悩み事?」
「…うん。」
なのはちゃんがユーノ君の事を好きだから、困っている、とは言えない。
当たり前だ、そんな事をしてもどうにもならない。
「ねえ、ユーノ君。」
「何?」
「好きだよ。」
突然飛び出した言葉に、ユーノは少し驚いた顔を返すが、すぐににこやかに微笑むと、同じようにすずかに言葉を返した。
「僕も、すずかの事が、好きだよ。」
そう言われると、すずかは頭の中が溶けたような気分になる。
それに、その中の好きに、恋人に対する好きが増えてきたような気がする。
このまま行ったら、いつかきっと…
「ユーノ君。」
「ん、キス?」
呼びかけたら、不思議そうに返されて、すずかは真っ赤になった。
「な、何で?」
どうして分かったのかな、とすずかは恥ずかしそうに俯く。
自分はそんなにあからさまなのだろうか。
「それくらい…」
「あ…」
顎を持ち上げられる感触が嬉しく思った。
「いい加減、分かるよ。」
「ん…」
二人の唇はゆっくりと合わさって…
すずかは幸福感に呑まれると共に、罪悪感にも苛まれていく。
恋人と一緒にいれる幸福、親友を裏切っている罪悪感。
スッと、唇を離すと、ユーノは少しだけ目を細めた。
「すずか、僕に言えないのなら仕方がない。 でも、誰か相談できる人はいる?」
思わず、すずかはドキリとした。
本当に、ユーノはこちらの内面を的確に言い当ててくる、と思う。
何で悩んでいるのかは分かっていないだろうが、悩んでいる事は分かっているのだろう。
「…ん〜」
それが何だか悔しくて、切なくて、すずかはユーノの胸に顔を押し付けて、ユーノの体を抱きしめる。
ユーノはそれを確認すると、ゆっくりとすずかの頭を撫でる。
そして、髪を梳く様に手を動かし始めた。
「…ユーノ君がいてくれるから、私は勇気が持てそうだよ。」
「…そっか。 なら、よかった。」
ゆったりとした時間が流れる中、そうして、二人は穏やかに笑った。
それから、半年くらい経った頃だったろうか。
4月になって、もう中学三年生だね、と言っていた所だった。
「なあなあ、すずかちゃん。」
帰っている途中で、はやてが声をかけてきたので、すずかは何、と微笑んで振り返る。
「う〜ん、言い方悪いけど、まだ彼氏さんと付き合っとるん?」
「うん。」
苦笑しながら言うはやてに、確かに言い方自体はまずいなぁ、と思う。
でもまあ、言いたいことは分かった。
「…そっかぁ…なあ、会いたいって言ったら、あかん?」
「え?」
振り向けば、はやての顔が好奇心に満ち満ちていた。
周りを見れば、感心なさそうにしているなのは達も、聞き耳立てていた。
思わず、顔が退きつるすずかだった。
「…会いたいの?」
「そりゃ、なあ、すずかちゃんがそこまで惚気るんやもん、興味わくやん。」
周りの3人も小さく頷くのが見えた。
…思わず、すずかは無言となった。
でも、頭の中には、様々な思考が生まれては消えていく――
「いいよ、今度の日曜日なら。」
「え、ほんま!?」
思わず、そう口に出していたのは、多分、いい加減心の中の軋みが限界まで来ていたから。
友情が壊れるかもしれない、と思っていても、それでも、もう言った方がいいだろう、と思ったのだ。
だから、すずかは微笑んで頷いていた。
「でも、後悔しない?」
「へ?」
間抜けな声を出すはやてに、すずかは静かに首を振った。
何でもないわけもなかったのだけど、なんでもない、と言って。
「で、アリサちゃん達も?」
聞くと、ビクリ、と体を震わせて、バツが悪そうに笑った。
なのはとフェイトも同様だ。
――今度の日曜日は、ひどい事になるな、それだけをすずかは確信していた。
「…で、いつ来るの?」
アリサが少しいらだった様に声を上げた。
待ち合わせ時間の5分前である。
なのはとフェイトは苦笑している。
はやてとアリサは少しばかりいらだった顔をしていた。
「…もうすぐだって。」
すずかは言いながら、頭の中で思考をグルグルと回転させていた。
とは言え、それは答えなどでない、いたちごっこだ。
どうしようもない事なのだと、理解しているのだが。
「すずかちゃん、顔色悪いよ?」
なのはにそう言われて、すずかは大丈夫だ、と返す。
こちらを心配そうに見つめているなのはの視線を辛く感じた。
結局、自身の弱さが、こんな事態を呼んだことを分かっていたからだろう。
「あれ?」
フェイトが不思議そうな声をあげた。
つられて、すずかも、なのはもそちらを見た。
金色の髪を尻尾のように揺らせながら、近づいてくる男が一人。
すずかはそれを見て、瞑目した。
ユーノには、当たり前だが、なのはの事は知らせていない。
ただ、すずかがユーノの事を彼氏だと言う、と言うから、やってきたのだ。
勿論、休暇だったが。
「ユーノ、珍しいわね?」
「それは、アリサとはあまり会わないけどさ。」
苦笑するユーノはすずかに視線を送り、苦笑する。
それは、いつもの顔で、少し安心した。
なのはの顔を、すずかはチラリと、見た。
そこにあるのは、どこか幸福そうな顔。
どうなってしまうのだろう、と思った。
「それで、ユーノはどうしたの?」
フェイトがユーノに聞いた。
それに対して、ユーノはまた、苦笑した。
「皆が、すずかに言って、僕に会いたいって言ったんじゃなかったっけ?」
「…え?」
苦笑するユーノに対して、皆は、何を言っているか分からない、と言った顔で呆然とした。
そんな時に、すずかはゆっくりと、ユーノに向かって歩き出した。
そして、ゆっくりと、ユーノの首に手を回して抱きついたのだ。
すずかの雰囲気をおかしく思いながらも、ユーノは自然とそれを受け止めた。
「ねえ、皆。」
すずかの声に、4人はビクリ、と体を動かした。
それは、うろたえている、と言っていいだろう。
多分、まさか、と言う思いが頭をよぎっているのだろうから。
「改めて紹介するよ――」
震えている――とユーノはすずかを見下ろす。
密着状態だからこそ、それはすぐに分かった。
それでも、すずかは声にそんな調子を一切出さずに言い切った。
「私の彼氏のユーノ・スクライア君。」
ー終わるんだ!ー
…正直に言いましょう。
これ以降をどうしようもなくなって止めました。
これ以上書いたら、自分の中で何かが壊れそうだったのだ。
はぁ…
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