第2話:相棒との出会い
 
 
 やはり、デバイスが必要だ。と、罰則の作業をこなしながらユーノは思った。
 今までどおり書庫で働くなら別に必要ない。いや、あればあるで業務ははかどるのだろうが、そこまでしようとは思わない。
 しかし、これからは違う。自分には目的ができた。そのために必要なのは時間だが、無限書庫勤務はその時間を大量に削り取っていく。
 ならば時間を得るために、業務の効率化は必須で、そのためにはデバイスが必要になる。
 それに、デバイスが必要な理由はもう一つ。訓練のためだ。かつてなのはがレイジングハートを使ってやったように、自身に魔力負荷を掛け、かつ戦闘経験を積むために。なのは並の負荷に耐えられる程ユーノの魔力は高くないが、検索に使う魔力量自体はそれ程膨大なわけではないので、訓練の方にそこそこの魔力を振り分けることができる。
 正直、無謀なことをやろうとしている。自分になのはのような才能がないと分かっていて、同じことを程度の差こそあれ、やろうとしているのだから。
 フェイト達が聞けば、無茶は止めろと言うかもしれない。いや、きっと言うだろう。でも決めたのだ。自分自身に、そう誓ったのだ。だから、ユーノは立ち止まるつもりはない。
 問題は、どんなデバイスを入手すべきか、ということ。
 司書業務だけなら既製ストレージでもいいのだろうが、訓練等の支援を考えると、インテリジェントデバイスの方がいい。金銭面なら、今まで使う暇がなかった給料がしっかり貯蓄してあるので問題ないし、既製品を購入するのが一番早く確実ではある。しかし既製のデバイスに自分の求める性能があるだろうか、と思った。おまけにインテリジェントデバイスには相性の問題もある。性能も分野によって千差万別で、既製品から相性の合う機体を見つけるのが難しい。
 それにミッドのデバイスの主流は杖型であり、自分はそんな物を持つつもりはない。起動させずに運用すればいいが、いくら金があると言っても無駄な部分にはかけたくない。
「自分用を作るかなぁ」
 だから、そんな結論に至ってしまった。デバイスの知識は、デバイスマイスターと呼ばれる者達程ではないが持っている。使いこなせはしなかったが、レイジングハートの整備だって自分でやったし、闇の書事件で大破した時は、再生作業に付き合いもした。はやての騎士杖シュベルトクロイツやユニゾンデバイスのリイン製作にもある程度は関わっている。経験値はそれなりのつもりだ。
 機材があれば、自分で組むこともできる。時間はかかるかもしれないが今後を考えるとそれが一番か、と思い。ユーノは心当たりの人物へと『何故か』今日もロックが外れていた通信を繋いだ。
 
 
 
 そして拘束期間も終わらせ。なのはの見舞いを済ませた後、ユーノはミッドチルダ首都、クラナガンへと降りた。手には一枚の紙。そこには、とあるデバイスショップへの地図が描かれている。
「確か、この辺りなんだけどなぁ」
 地図と地形を確認しながら、通りを外れて脇へと入る。喧噪が消え、寂しげな雰囲気が漂い始めるが、気にせずに歩く。
 やがて、目的の建物を見つけた。ごく普通の雑居ビルだ。壁の案内図を見てテナントを確認する。目的の店の名は地下のフロアにあった。
 薄暗い階段を降り、同じく薄暗い通路を進む。同フロアのテナントはシャッターが降りていたが、1つだけ、正面にある店からだけは光が漏れている。今時珍しく自動ではないドアを開け、ユーノは店内に足を踏み入れた。
 外の雰囲気とは裏腹に、店内は明るい。中古屋と聞いていたのに新品を始め、品揃えも多く、イメージしていたのとは大違いだった。客も結構いるようで、賑わっている。
「見ない顔だな。ここは初めてか?」
 入り口に立って店内を見ていると、レジにいた男が声を掛けてきた。体格のいい、中年の男だ。レジ仕事をするような風体ではなく、どちらかといえばゴロツキが溜まっている酒場のマスターの方がイメージに合う。
「はい。ちょっと、デバイスが必要になって……自作しようかと思ってるんですけど、だったら、ってここを知人に紹介されて」
 正直に答えると、男はふむ、と顎に手をやりながら値踏みするようにこちらを見る。
「使用歴は?」
「数年前までは、短い期間ですけどインテリジェントデバイスを」
「そうか。まぁ、何か分からないことがあれば遠慮無く聞きやがれ。新品が手前、奥が中古だ。スペックは基本的な部分しか記してないから、詳細が知りたけりゃ声かけろ。インテリジェントを自作するなら、コアは右手の壁際だ」
「ありがとうございます」
 ガラは悪いが親切だった。先のイメージを少しだけ修正し、ユーノは目的の物を探すべく、進む。
 
 
 品揃えはよかった。コアも各種揃っていて、用途に応じた基本設定もされている。しかし、どうにも自分に合いそうなものではなかった。というより、ほとんどがそうだ。用途に応じてと言ってもデバイスは基本的に戦闘用で、インストールされている術式も攻撃主体。ユーノにとって、必要なものではなかった。
「やっぱり、素体コアだけ手に入れて、中身は一から構築するしかないか」
 基本のAIから何まで全て、こちらが取捨選択し、作り上げる。手間と時間が掛かるが、これなら相性の問題はほぼ解消できるだろう。
 そうするか、と考えたところで、ユーノは店の奥を見た。そちらは今見ていた新品とは違い、中古のデバイスが置いてある区画だ。
 一応、目を通しておこうかとそちらへ向かう。
 数はそれなりに。スペック的には若干、最新版に劣るが、アップデートや増設をすれば十分使い物になるレベルだった
 以前の持ち主の構成も千差万別だったようで、様々な仕様が並んでいる。それでも、やはり何というか合いそうにない――スペック、仕様もそうだが、全て杖型だった。
 こんなものか、と諦め、新品のコアをもう一度見てみようと思った時だった。視界の隅に、ひっかかるものがあった。
 それは店の隅っこにあるワゴンで、中古パーツが山になっている。その中に、大きさは2×4センチ程の緑色の結晶板があった。待機状態のデバイスだ。
「なんでこれだけ、ここにあるんだろう?」
 不思議に思い、手に取ってみる。スペック等は記されていない。そもそも入っていたのがジャンク同然の中古パーツの中だ。ただ、他のパーツはどこかで見たことがあるような――
「ってこれ、管理局の制式ストレージデバイスのパーツ?」
 本来、武装隊が使うタイプの杖型ストレージのフレーム、コアパーツが、何故かあった。シリアル等は削られている。官給品の横流しだろうか?
「そりゃ、ただのジャンクだぞ」
「うわぁっ!?」
 突然の声に驚き振り向くと、いつの間に来たのかレジの男が立っていた。
「正確には、管理局の廃棄品だ」
「って、どうしてそんなものがあるんです? 普通、その手の物は管理局が自主処分するのに」
「さてな。そこまでは知らねぇが、うちは中古屋だからな。持ち込まれれば、その品の状態を見た上で、適正価格で買い取るさ。別に、管理局の官給品を買い取ってはいけないって法はねぇからな」
「それはそうですけど……」
 釈然としないものを感じながらも、ユーノは手にしたデバイスを、男に見せた。
「これも、そうなんですか?」
「ん? ああ、確かそうだったはずだが、ちょいと待て」
 男は似合わないエプロンから携帯端末を取り出すと、何やら操作を始める。
「そうだな。そこのジャンクと一緒に持ち込まれた奴だ。ただ、こいつは不良品だぞ」
「不良品?」
「ああ。AIは入ってるが、その割にデータがでかくてな。しかもそのデータが何なのかわからねぇときてる。まあ、クズデータが妙なところに入り込んでんだろ」
「売り物になるんですか、それ?」
「まあ、フレームも構築されてねぇし、一度フォーマットしちまえば、素体コアと変わらねぇからな。それをベースにするのも悪くはねぇと思うが、出所が出所だからディープな客以外は敬遠してるみてぇだな。他にも幾つかあったが、それは完全にフォーマット済だったから売れたんだったっけか」
 話を聞く限り、胡散臭いというか曰くありげなデバイスのようだ。だったら最初から初期化しておけば良さそうなものだと思ったが、データそのものを求めてこういう店に来るマニアもいるらしい、とは、ここを紹介してくれたマリーの言だ。
「ちなみに、値段は?」
「ま、売れ残り品だしな。勉強してやるよ」
 提示された価格は、他の中古デバイスよりもかなり安かった。コアのみであることもそうだが、買い取りはしたものの、管理局からの流出品をいつまでも置いておきたくはないのだろうか。
「それが気になるなら、とりあえずアクセスしてみろや。工房はあっちにあるから、空いてる部屋を使え」
「あ、はい」
 どうしようか、とも思ったが、気になるのも事実で。結局、ユーノはそれを持って工房へと向かった。
 
 
「へぇ……これだけあれば、色々できるなぁ」
 デバイスの構築、カスタマイズ、メンテナンス。個室状の工房には、旧式ながらもそれら作業に必要な機材が揃っていた。正式な局員でもないユーノがデバイスをいじるには最適な場所とも言えた。本局でも可能だろうが、あくまで個人的な理由でデバイスを求めるのだから、こういう場所はありがたい。
「とりあえず、コンタクトしないと始まらないか」
 デバイスを機材に置き、休眠モードを解除する。緑の結晶は自分の魔力光と同じ色で数度点滅した。
 さて、どんな奴だろうか、と期待半分、不安半分でそれを見つめるユーノ。
 やがて――
《ん? どこだここ?》
 第一声は、そんな砕けた口調の男声だった。
《あと、お前は誰だ?》
「え、っと。初めまして。僕はユーノ。ここはクラナガンにある中古デバイスショップだよ」
 デバイスにしては珍しい性格設定だなぁ、と思いつつも、ユーノは名乗り、説明をした。デバイスは何か考え込むように少し明滅し、
《ここ、技術局じゃねぇよな?》
「うん。民間のショップだけど」
《てことは……俺、売られたのか? それとも横流し?》
「横流しかどうかは分からないけど、店の人は買い取ったって言ってたよ。え、っと……ジャンクと一緒に」
 あまり言っていいことではないように思えたが、正直に話した。
 デバイスはまた少しの間沈黙すると、
《ま、あの状況じゃ仕方ねぇか》
 とあっさり現実を受け入れた。ジャンク扱いをされてこの態度。なかなか変わったAIだ。
《で、お前――ユーノっていったか。このジャンクに何の用だ?》
「いや。デバイスを探してて、目に付いたから。何か曰くありげだったから、話を聞いてみようかと」
《物好きなことで。ま、いいけどな。それで、何が訊きたいんだ?》
「本当ならスペックとか聞きたいんだけど……その前に、どうして管理局のデバイスが中古屋に流れたのか……今の状況に至る理由って、説明できる?」
 一応、管理局製のデバイスであることは認識しているようだ。ということは、機密に関わることは答えられないだろう。それでも気になったというか、それこそがこのデバイスを手に取った理由だったので、訊いてみた。
 デバイスは、あっさりと答えた。
《短く言っちまえば、失敗作だったからだ》
「失敗作? 機能に何か問題が?」
《いや。機能というか、求められた性能は備えてた。問題はな、その機能を活かせる奴がいなかったってことだ》
「どういうこと?」
《あー……少し長くなるがいいか?》
 ユーノは頷く。
《俺らは元々、試作機だったんだ。情報連結機能搭載型のな》
「情報連結機能?」
《ああ。お前も魔導師なら分かると思うが、通常、デバイスが持ってる情報は、瞬時に術者に伝えられねぇ。音声なり映像なりで間接的に伝えるしかねぇわけだ。それだと、情報の伝達に若干のタイムラグが生じるし、場合によっては致命的な隙になる。それを解消し、リアルタイムで魔導師にフィードバックできるようにする、ってコンセプトで開発が進められたのが俺らだ》
 言いたいことは分かる。デバイスには記憶装置としての面があり、蓄積できるのは魔法データに限らない。状況に応じて必要な情報を即座に魔導師へ伝達できるなら――
《で、な? 執務官みたいに単独行動をとる局員や、指揮官職のサポート用として、情報収集、分析能力に重点を置いて試作されてたわけよ》
 クロノあたりなら喜びそうなコンセプトだな、とユーノは思った。かさばる捜査資料を瞬時に運用するにはうってつけなデバイスだと思えた。それに常に最新の情報を必要とする指揮官などにも有益だ。
 が、デバイスはただな、と続ける。
《単なるメモやら伝言程度ならともかく、流動的な戦場の情報だとか、事件資料なんかの膨大なデータを、いきなり頭の中に叩き込まれて、処理できると思うか?》
「できるんじゃない? 資料って言ってもいきなり全部見せる必要はないんだし。戦場の情報、っていうのはどの程度になるか分からないけど、必要な分だけ取捨選択すれば問題ないと思うけど?」
 無限書庫での業務と大差ないと思えたのでそう言うと、デバイスは沈黙した。何かおかしな事を言っただろうか?
《できなかったんだよ。少なくとも、運用試験に関わった連中には無理だったんだ》
 やれやれ、とデバイスが溜息をついたようにユーノには思えた。
《執務官や捜査官は提供した情報量に混乱して活用できねぇし、前線指揮官も同じくだ。それに、後衛指揮官には元々スタッフと機材が付くのが当たり前だからある意味無用の長物だしな。結局、魔導師自身に高度な情報処理能力が必要とされ、機能をフルに活かせるテストマスターは開発当時1人もいなかった。処理能力が低いと魔導師への負荷も酷くてな。処理してる間の動きは鈍るわ魔法の精度は落ちるわで散々だった。ま、着眼点はともかく需要はない、って結果に終わってよ。プロジェクトは凍結、となったわけだが、最後のデータ回収中に何やらトラブったらしくてな。機体は破損、データも飛んだ。後はお決まりの廃棄処分だな》
「でも、君のデータは残ってるみたいだけど?」
《全部が全部、消えてたわけじゃねぇんだ。AIは残ってた奴、他のデータも残ってた奴、色々いたんだよ。だがな、基本データは既に抽出済みだった上に、凍結決定したプロジェクトだ。廃棄が決まってたモンを、トラブルがあったからってわざわざフルチェックすると思うか?》
 答えはノー、だ。捨てる物にそこまでこだわりを見せるとは思えない。しかもそれが失敗作と判を押されたものなら尚更だ。
《ま、そんなわけだ。ここへ流れた経緯までは分からねぇが、俺の身の上はそんなとこだ。満足したか?》
「うん。疑問は解けた。ありがとう」
《じゃあ、こんな不良品つか、ピーキーなデバイスに用はないだろ? とっとと自分に合いそうな相棒を探すんだな》
 話は終わった、とばかりにデバイスは黙ってしまう。が、ユーノは既に決めていた。多くの情報を扱えるように調整されたデバイス。こんな好物件、逃すつもりはなかった。
「うん。そういうわけで、これからよろしく」
《……は?》
「いや、だから。今の話を聞いて決めた。今日から君は、僕のデバイスだ」
《って、おい!? 今の話ホントに聞いてたのか!? 言ったろが! 魔導師に高度な情報処理能力が必要だってよ!》
「ああ、その辺は大丈夫。これでも無限書庫の司書なんてやっててね。そういうのは得意分野なんだ」
《あの情報の墓場で司書だ? 正気じゃねぇな》
 呆れたようなデバイスの声。どうやらあの頃の無限書庫を知っているらしい。ということは、少なくともこのデバイスが作られたのは2年以上前だ。
 そんなに大層なものかな、と首を傾げる。無限書庫勤務も、蔵書整理には何の問題もない。問題なのは過度な情報提供依頼だけだ。
 それはともかく。情報処理系に特化したインテリジェントデバイスを、こんな形でとはいえ入手できたのは幸運だった。あらためてここを紹介してくれたマリーに感謝したい気分だというか何かお礼をしなくては。デバイス関連の書籍か何かを探してみよう。
 まあ、それは後にするとして。ユーノはデバイスに意志を伝える。
「とにかく決めたんだ。僕が求める性能を君は持ってる。性能を全て引き出せるかどうかは、僕次第だけどね」
《……いいだろう。お前が俺を使いこなせるかどうか、使いこなせるようになるかどうか、見届けてやろうじゃねぇか》
 なかなか挑戦的な言葉をデバイスは吐いた。面白い。絶対に使いこなしてやろうとユーノは心に決める。
「それじゃあ、あらためてよろしく。僕はユーノ・スクライア。君の名は?」
《ID/XDC−07》
「いや、型式じゃなくて、君の名前だよ」
《試作型に名前なんていちいち付ける酔狂な奴はいねぇよ。無くて困るもんじゃねぇしな。好きに呼べ。つか、お前が付けてくれて構わねぇぞ》
「僕が?」
 自分の周囲の者達が持つデバイスには皆名前があるので、名前がないことにも驚いたが、自分に名前を付けろと言われてもっと驚いた。
 無くて困るものじゃない、とデバイスは言ったが、こちらとしては無い方が困る。特にこちらから呼びかける時に。
「名前、ね……」
《お前のセンスに期待するぜ、ユーノ》
 プレッシャーを掛けてくるデバイス。どうにもこのデバイスのAIはおかしな設定だ。割と事務的なレイジングハートやバルディッシュと違い、すっかり個が定着している。口は悪いがノリのいい兄貴分、の人格と言えばいいのか。
(名前、かぁ……うーん)
 何かいい名前はないだろうかと考える、というか記憶を探る。
(レイ……フォロン……暴走しそうだなぁ)
 海鳴にいた頃に偶然見たアニメに出てきた、機動兵器のサポート人工知能は却下した。
(今の口調とか性格も考慮に入れた方がいいのかなぁ……)
 どんどん選択肢が狭まっているような気がしてくる。何かいい名はないものか。
《どうしたー? まだかー?》
 急かすデバイス。しかし焦れば焦るほど何も思いつかない。頭をかきむしりながらなおも考えていると、
《ところでユーノ。お前、どうして俺が必要だったんだ?》
 突然、真面目な声で問いかけてきた。
《デバイスを必要とする理由があったから、この店に来たんだろ? お前の目的は何だ?》
 ここへ来た理由。デバイスを求めた理由。全ては目的のため。自分が誓ったこと、決めたことを成すために必要だったから。ユーノの誓い、それは――
「よし、決めた」
 それを考えたら、ふと浮かんだ名前があった。
「スプリガン。それが、今からの君の名前だ」
《スプリガン、ね……何か由来があるのか?》
「とある管理外世界の書物に載ってた、財宝を守護する妖精の名前」
 海鳴の図書館で読んだ、ファンタジー系の事典に載っていた存在の名を思い出す。そういえばマンガにもその名があったな、と一緒に思い出した。あちらもロストロギアのような遺跡に関わる組織を描いたものだったか。
《ふぅん……スクライアの一族らしいセンスだな。なかなか洒落た名前だ》
 気に入った、とデバイスは言った。その表面に文字が走る。登録内容変更――名称設定:なし――新規登録:スプリガン――登録完了。
《それじゃあ、俺は今日からユーノのデバイスだ。よろしく頼むぜ、マスター》
「うん。こちらこそ」
《で、だ》
 スプリガンが、明滅する。
《デバイスまで手に入れて、こんな名前まで付けて。お前が護りたい宝ってのは、何だ? いや、誰だ?》
「うえっ!? べ、別にそういうのじゃなくて……っ!」
 何でそんな発想ができるのかと驚きつつ、実際図星だったので慌ててしまう。
《俺のことは話したんだ。相互理解のためにも、ユーノの事をよく知らないとなぁ》
 きっと実体があれば、ニヤニヤと笑うのだろう。このデバイス、人間味がありすぎる。
《時間はあるんだ。たっぷりと、話を聞かせてもらうぜ?》
「な、何のことだかっ!? それより君、どうしてそんな性格なのさっ!?」
《最後のテストマスターがこんな性格でな。暇な時には話し相手になれや、って人格プログラムに手を入れられたのがきっかけだな。ま、そんなことより今はユーノの話だ。おら、とっとと吐きやがれ》
 
 
 
 これが、ユーノと相棒の出会いだった。

 
 
 
 
 後書き
 今回は、デバイス入手のお話でした。ユーノって元々デバイス使いませんし、特別な理由がないと欲しがることってなさそうですよね。
 人格はどうしようかと悩みました。事務的なのはレイハさんを始めとする原作デバイス陣がいますし。かといって子供人格は既にG−WINGさんを筆頭に偉い人がいますし。で、情報系特化型だしなぁ、と「ツインシグナル」の某Aナンバーズをベースにしようと思ってたんですが……ふと友人から借りた「牙狼」のビデオが目に入り、脳内会議の結果、A−Oと魔導輪を混ぜたような人格に決定w
 まあ、いい相棒に成長させることができればなぁ、と思ってますが……はてさて。
 それではまた、次の作品で。





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