第3話:懸念
 
 
  
「これでこの件は終了、と」
 依頼された検索の1つを終え、ユーノは肩を回した。
 仕事の方は順調と言える。先日入手したデバイスのお陰で、かなり効率が上がった。とは言え、それで時間が取れることと、なのはの見舞いに行く時間が取れることは別だったりする。面会時間は決まっていて、その時間に書庫を抜け出せるかどうかは自分のノルマにかかっているからだ。面会時間後に空きの時間ができても見舞いには行けない。
(まあ、そのぶん、別の方面に時間が割けるわけだけどね……)
 今の自分には無駄な時間は存在しない。仕事、なのはの見舞い、そして自分のやるべきこと。全てはそれらに費やされるのだから。
(でも、この調子じゃ、次になのはの所へ行けるのは明日……いや、明後日くらいかなあ)
 抱えている検索依頼のリストを表示させ、考える。
 あまりにハイペースで片付けると、追加が飛び込んでくる。それらを避け、納期までに依頼を終わらせ、かつ見舞いの時間を作るとなると、色々と調整しなければならないのだ。
 その分、他の司書達の負担になるのだが、その辺りは古参の司書が力になってくれていた。依頼を引き取ってくれたり、互いの依頼を交換したりして、こちらが時間を作りやすいようにしてくれているのだ。普段なら絶対にそんなことを頼んだりはしないのだが、向こうは勝手にこちらの仕事を奪っていくし、交換していく。厚意とあっては断れないし、正直有り難かった。
 なのはの見舞いへ行けたのは最初の日を含めて2回だけ。3回目の時間を確保するべく次の検索に取りかかろうとした時、通信のウィンドウが開いた。
【ユーノ君、少しいいかしら?】
 そこにいたのはシャマル。今はなのはの主治医扱いになっている守護騎士だった。
「ええ、何か?」
【実は、なのはちゃんの容態のことなんだけど……】
「……何か、問題が?」
 言い淀むシャマルを見て、いい話ではないことが分かってしまった。
「とりあえず、場所を移しましょう」
 近くの司書に声を掛けて、ユーノは仮眠室へとその身体を向けた。
 
 
 仮眠室と名が付いていても、ここで寝る者はほとんどいない。現時点では寝る程の余裕がある者はいないし、眠ると言うよりは倒れた者が行く先は、ここではなくて病室だからだ。
 その、使われることのない一室で、
「……もう一度、言ってもらえませんか?」
 自分の耳の機能を信じることができずに、ユーノはシャマルへと声を投げた。
【……神経系の損傷が思ったより深刻で、なのはちゃんの足は現時点では全く動かないわ。今後回復する見込みも低い。それにリンカーコア自体の消耗が激しい上に、回復が始まらないの。今のなのはちゃんは、魔力の行使ができなくなってる】
 硬い表情で風の癒し手は、同じ言葉を口にする。
【このままだと、なのはちゃんは魔導師生命を断たれることになり、通常の生活においても支障が生じることになる。これが、今の私達の見解よ】
 信じられなかった。いや、信じたくなかった。なのはが墜ちたというだけでもショックだったのに、その上、二度と飛べなくなるどころか歩けなくなるかもしれないなどと。これが悪い冗談であればどれだけ良かったか。しかし今はそんな雰囲気でもなければ、目の前の騎士はそんな冗談を言う――こともあるが、さすがに時と場所は選ぶ。
 口の中がカラカラに乾いていた。無理矢理唾で口内を湿らせて、問う。
「それで、なのはには……」
 いずれは話さなくてはならないことだが、それをなのはがどう受け止めるかが不安だった。今のなのはにとって、魔導師であることは夢そのものと言ってもいい。それが断たれるということなのだ。
 ウィンドウの向こうでシャマルが重々しく頷く。
【ええ、話したわ。長期のリハビリもそうだけど、魔導師としての再起は難しい、って。それでね、ユーノ君にお願いが――】
【ユーノ、ちょっといい?】
【ユーノいるか!? 話があんだよ!】
 その時、シャマルを遮るように別の通信が飛び込んできた。フェイトとヴィータの2人だ。どちらも深刻な、厳しい表情をこちらに向けている。
「シャマルさん、フェイト達には、もう?」
【ええ、その時、一緒にいたから……多分、用件は私と同じだと思うわ】
 苦笑を浮かべるシャマル。それで、用件というのにも察しがついた。
 一度、目を閉じて、ゆっくりと息を吸い、ゆっくりと吐き出す。感情を押し殺し、頭の中をクリアにして、フェイトとヴィータの映るウィンドウへ視線を向けた。
「で、僕にどうしろと?」
 
 こちらが用件を伝える前に、ユーノはそう問いかけてきた。彼の横には別のウィンドウが開いており、そこにはシャマルが映っている。なるほど、どうやら同じ用件で通信していたらしい。だったら、話は早い。
「なのはを立ち直らせて欲しいんだ」
 前置きは無しに、フェイトは言った。苦虫を噛み潰したような顔でヴィータも続く。
「あいつ、何でもないような顔してさ、そういうことなら仕方ない、って諦めてんだよ」
「わたし達が何を言っても、もういいんだの一点張りで……」
 身体の現状を伝えられた時のなのはは、あっさりとそれを受け入れてしまった。あれだけ空を飛ぶことを望み、進んできたなのはが、だ。魔導師としての再起にしても、足のことにしても、全ては可能性の問題なのだ。それなのに、今のなのはには現状に抗う意志が微塵も感じられない。事故のショックが大きいのは分かるが、何もしないまま諦めるなんてなのはらしくなかった。
 立ち直ってほしかった。でも自分では駄目だった。ヴィータでも、シャマルでも、声は届かなかった。だから、他の人に頼もうと思い、一番にユーノを思いついた。
【励ますんじゃなくて、立ち直らせる? つまり説得しろって言うの? もう一度、飛ぶんだ、って?】
 しかしウィンドウに映るユーノは表情を動かすことなく、
【断る】
 予想外の言葉を口にした。
「なっ……何でだよっ!?」
 隣のヴィータが激昂する。ユーノの発した言葉が、何かの聞き間違いではないかと自分の耳を疑った。しかし、ユーノの表情に変化はない。いや、若干苦笑めいたものが浮かんでいた。
【僕はまだ、なのはと話してないからね。なのはがどんな気持ちで、どんな考えを持っているのかは分からない。だから、空に戻れなんてこと言えないよ】
「でっ、でも――」
【今、一番辛いのはなのはだ。今まで追いかけていた夢の途中で翼が折れてしまったんだから。でも、その夢を決めたのはなのはで、諦めるかどうかを決めるのもなのはなんだよ。多分、周りのみんなが口を揃えて言えば――いや、リンディさんや武装隊の上司あたりが説得を続ければ、なのはは復帰を決めると思う。そのための努力もするだろうね。でもそれは、なのはの意志じゃなくて、周りの期待に応えようとする責任感、義務感からだ。そんな状態で空に戻ったなのはが、この先やっていけると思う?】
 ユーノの言うことは正しい。自分の意に反することをするのは、精神的な苦痛だ。その苦痛を抱えることが、抱え続けていくことが、なのはのためになるのか。勿論答えは否だ。だが、ユーノはいいのだろうか? なのはが飛べなくなったままでもいいと言うのだろうか?
 そんな考えを読んだように、ユーノが言った。
【なのはには空が似合うと思うよ。でも、僕個人の気持ちはここでは関係ない、ってこと。大事なのは、本人の気持ちと意志。僕らの気持ちを押しつけちゃ駄目だ。僕の言ってること、間違ってるかな?】
 全くの正論に、何も言えなかった。隣のヴィータも、そしてユーノの横のウィンドウに映っているシャマルも。
【近いうちに話はしてみるよ。でも、復帰しろとは言わない。他に何かある?】
「え、あの……」
【他の司書達の負担が大きくなるから、悪いけどこれ以外の用件がないなら切るけど、いい?】
「う、うん……」
【それじゃあ、これで】
 それ以上は何も言わず、ユーノは通信を切った。
 何とも言えない沈黙が周囲を支配している。どうにも先日から違和感が付きまとって離れない。
「ねえ、ヴィータ。最近のユーノ、おかしくない?」
 近頃気になることを、隣の騎士に訊ねる。しかしヴィータは、
「そーか? 書庫が大変だってのはお前も知ってんだろ? 責任感が強いあいつが、それを放り出すことができねーってのは不思議じゃねーだろ」
「それはそうだけど……なのはとのことも。仕事が忙しいのは分かるけど――」
「その合間を縫って見舞いに行ってるだけでも大したもんだろ。なのはだってそれを知ってるから、最近は表情にそれを出さねーだろ? まあ、来た時は嬉しそうだったけどな。で、どーすんだ? 他の連中に説得してもらうか?」
 と、つまらなそうに話を戻してきた。
 そうだった。なのはを説得してもらうために、ユーノに通信を繋いだのだ。
 しかしその気持ちが薄れていた。確かになのはに復帰してもらいたいという想いは今もあるが、ユーノが言うとおりなのだ。
「ううん……やめとこう」
 まずはなのはの本心を知らないことには始まらない。いや、最初にそれをすべきだった。諦めるなと言う前に、どうして諦めるのか、それを聞くべきだったのだ。
 明日にでも直接聞いてみよう、フェイトはそう決めた。
 
 
 
「なあ、どう思う?」
 本局の一室で、そう問いを投げた。
 今この場にいるのは、夜天の守護騎士のみだ。主であるはやては、そのデバイスであるリインのメンテナンスの関係で席を外している。その帰りを待っていた。
 今日の出来事を含め、ヴィータは仲間に意見を求める。
「今の話だけでは、判断できぬな」
 床に伏せている蒼き守護獣は、それだけを発した。
「その職責を全うしようとすることは不思議ではないし、今の話にしても、言うことはもっともだ。それはヴィータも分かっているだろう?」
 壁に寄り掛かっていた烈火の将もそう言い、逆に問い返してくる。
「わーってるよ、それくらいは。その上で訊いてんだ」
 子供扱いするな、とシグナムを睨みつけてやる。
「でも正直、ああ言うとは思わなかったわ」
「それは高町のことか? それともスクライアのことか?」
 ザフィーラの問いに、椅子に座っている湖の騎士が溜息をつく。
「両方よ。なのはちゃんが諦めることもそうだけど、ユーノ君のことも。なのはちゃんの夢のこと、ユーノ君は知ってるわ。普通なら、励ますなり何なりするのが当然の反応だと思うもの。だから私だって通信を繋げたんだし」
「なのにユーノにその気はなし、だもんな……」
 ユーノらしくない、と自分も思った。無限書庫という戦場で前線の者達を支える、それがユーノの仕事だが、個人的なことでもいつも親身になってくれる友人の態度ではなかった。言っていることが正論だからこそ、腑に落ちないのだ。
「気になるか、ヴィータ?」
 こちらを見上げる狼。まっすぐに見つめてくる瞳から視線を逸らし、照れ臭くなって頬を掻く。
「そりゃ……あいつらの仲の良さは知ってるし。付き合いだって長いんだろ? そんな知り合いが今回みたいなことになってるのに、あの反応はどうかと思うのは当然じゃんか。それにみんなだって聞いただろ」
 今でも容易に思い出せる、あの声。あの場にいた他の仲間達も、あれを聞いていたはずだ。もっとも、込められたものにまで気付いた者は自分達くらいだろう。普通に聞けば強い悲しみと受け取ってしまうだろうから。実際、フェイトあたりはその感情に引きずられていたようだった。
 だがあれはそんな単純なものではない。悲しみだけに留まらない様々な負の感情が入り交じった声だ。一瞬とはいえ、自身もあの声に含まれる感情に呑まれかけた――共感してしまった身だから、それがよく分かった。
 それに、自分達には聞き慣れた声でもあった。かつての主から聞いたこともある。そして自分達によって数多く生み出されてきた類の声でもあるのだから。
「絶望の咆吼か……」
 いつも以上に低い声で、ザフィーラが呟く。皆の表情が、一様に曇った。
「ああいう手合いがどうなるのか、あたしらは知ってるはずだ。そして、それが大抵、ろくでもない方へ転がることも」
 ああ、とシグナムが首肯する。眉間に皺を寄せ、彼女は組んでいた腕を片方ほどいて自分の口元にやった。
「問題はどちらのタイプか、ということだが……ユーノの場合は、間違いなく溜め込むタイプだな」
「だから余計に厄介なのよね……方向性がしばらく見えないことも珍しくないから。仕事に逃げている、くらいなら問題ないんだけど……」
 片頬に手を当てて、首を傾けながらシャマルがゆっくりと息を吐き出した。それを否定するようにザフィーラが鼻を鳴らす。
「あれは逃げ場に選べるような仕事ではなかろう。むしろ、薬物か精神制御の魔法でも使っているのかと思うことはあるが……あの職場のあの業務を、文句を言うことはあってもきっちりこなすのだからな」
 ああ、と溜息をついた。同時に、3人の口からも同じものが漏れる。
 ここにいる全員は、無限書庫の業務を経験したことがある。リインフォースUを製作するための資料集めの時、いくら何でも身内に関わることを全て他人任せにするなど騎士の名折れ、と手伝いを買って出たのだ。
 その時、ユーノは検索魔法をベルカ式対応にすることを快く引き受けてくれた。そして、検索方法や注意事項についても親切に説明してくれた。
 そして知ったのだ。無限書庫というものを。
 通常の司書が検索を掛けることができるのが最大で5冊ほど。自分達の処理能力も似たようなものだった。騎士の中で一番処理能力が高かった例外はシャマルで、10冊前後というところ。
 ただし司書達と違うのは、その勢いがその日限りだったことで、1日が終われば喋る気力も尽きる程の負荷とストレスがかかっていた。ペースを調節すればどうということはなかったのだが、あの時はこれくらいどうということはない、と戦力を見誤ってしまった。その影響は翌日にまで及び、散々だったのを覚えている。無敵のはずのヴォルケンリッターは、無限書庫に敗北したのだ。
 あれだけのことを毎日やってのける司書達に驚いたものだが、その中でも、20冊近い本を扱って通常業務を片付けながら、並行してこちらの探し物まで手伝ってくれたユーノ。慣れればどうってことないよとは本人の弁だが、あれだけのことを数日徹夜でこなすこともあるというのだから、どう考えてもユーノは化け物だ。魔導師ランクならぬ事務職ランクなるものがあるのなら、間違いなくオーバーSだと断言できるほどに。
 自分達、守護騎士は、戦闘力だけで人を見ることはしない。過酷な無限書庫の業務をこなす司書達は尊敬に値する人達だと思っている。その筆頭であり、戦友でもあるユーノは、自分達にとって敬意を払う対象である以上に、闇の書事件の最中に闇の書のことを詳しく調べてくれて主を救うきっかけを作ってくれたし、リイン誕生のためにも尽力してくれた、八神家の恩人と言っても過言ではないのだ。
 そのユーノが、危ない状態にあるかもしれない――放っておけるわけがなかった。
「ユーノが壊れちまうのは……嫌だ。それに、そんなことになったらなのはは絶対自分を責めるし、はやてだって悲しむだろ? だから、何とかしてーんだ」
 むぅ、と唸ってザフィーラが目を閉じた。元々寡黙である盾の守護獣だが、考え事をし始めるとそれに拍車が掛かる。恐らく、何か思いつくか、こちらから呼びかけるまではこのままだろう。
 一方、シグナムはあっさりと案を出した。
「溜め込んでいるものを吐き出せる方法があるなら付き合ってやるのだがな」
「それって、武力的な意味? アルコール的な意味? それともこっち?」
 それに問いかけるシャマルの手が形を変える。握り拳――ただし、親指を人差し指と中指で挟むようにしている。意味は分かる。分かってしまった。顔に血が上っていくのを自覚する。
「最後はまだ早かろう……なんだ、お前はそこまで視野に入れていたのか?」
「そうねぇ、ユーノ君相手ならそれもいいけど……できればもう3、4年くらい育ってからの方が――」
「てめーら、真面目に考えろっ!」
 思わず叫んでいた。無意識のうちにグラーフアイゼンを起動させて。しかしシャマルは平然と返す。
「やぁねぇ、ヴィータちゃん、お顔真っ赤よ? ひょっとして本気にした? 冗談に決まってるじゃない」
「そう言いつつ乗り気に見えたが」
「まあ、それで本当に発散できるならやぶさかではないけど?」
「まず本人が望むまい」
 何やら楽しんでいる様子のシャマルと、呆れ顔のシグナム。沸々と、怒りの感情が湧き上がってくる。
「てめーら……」
 本気でアイゼンの頑固な汚れにしてやろうかと、それを振り上げようとして――
「しばらくは様子を見るしかあるまい」
 蒼き狼が口を開いたことで、その機会を失った。
「実際にユーノの動向がはっきりせねば話にならん。下手につついて逆効果、では意味が無かろう」
「超過勤務者に対するカウンセリングって事で、話を聞いてみるのも1つの手ね。これは実際に行われていることだから、不審がられる心配もないし」
「真面目にやれるなら最初からやれよ……」
 一気に身体から力が抜けた。愚痴をこぼすと、そんな自分を見てシグナムが苦笑した。
「そのくらいで丁度いい」
「何がだよ?」
「この件は我らだけで留め置く。あまりこちらがピリピリしていれば、主はやてに気付かれるかもしれない。ならば、我らはできる限りいつもどおりでいることが望ましい」
「正直、今のユーノ君が何を考えてるのかは分からないから。今できるのは、ザフィーラの言うとおり、様子を見ることだけ。後手に回ることになるけど、考えるのはそれからよ」
 椅子から立ち上がったシャマルが、こちらに近付いてくる。そして背後に立つとその両腕をこちらに回し、抱きしめてきた。
「だから、ヴィータちゃんもいつもどおりで。なのはちゃんのお見舞いの時、それとなくユーノ君の様子を見てて。恐らく今のユーノ君と接点を持てるのは、なのはちゃんの病室だけで、そこにいるのはヴィータちゃんくらいだから」
 何だか乗せられた挙げ句に子供扱いされたような気がしたが、悪い気は何故かしなかった。皆それぞれに、自分と同じ想いを持っていることが分かったから。
 と、そこである人物のことを思い出した。
「フェイトは? あいつ、ユーノがおかしいって気にしてんだ。理由までは分からねーみたいだけどさ」
「そうだな……状況次第といったところか。判断はヴィータ、お前に任せる」
 将の決定に、おう、と頷く。と同時に、
「みんな、お待たせやー」
「ただいまですー」
 主と末っ子が部屋に入ってきた。リインのメンテが終わったらしい。
「あれ、ヴィータ。どうしたのん、アイゼンなんか出して?」
「え? あ、もうちょっとで大会とかあるからさ! 時間を見つけて練習しようと思って!」
 はやてに問われて、シャマルから離れるとゲートボールのフォームを作る。なるほどなー、と頷く主。
「まあ、それは後にして帰るよ。途中、晩ご飯の買い物に寄ってなー」
「うん。あ、はやて。アイス買ってもいいか?」
「リインも食べたいですー」
 グラーフアイゼンを待機状態に戻して訊ねると、リインもはやての周囲を飛び回りながら言った。
「買い置きも少なくなってたしなぁ。ええよー、一緒に買って帰ろかー」
 承諾し、部屋を出て行くはやて。それに続くリイン。
 それに続こうとして、一度だけ、騎士達を見た。何も言わずに3人は首を縦に振る。
『ユーノのことだから心配いらねぇ、って言いたいけど、こればっかりはそう単純なことでもねーし……』
『主に余計な心配はかけられん』
 ザフィーラが身体を起こし、
『恩を受けっぱなしなのも騎士としては問題だものね』
 シャマルがクラールヴィントを見つめ、
『騎士として、いや、1人の友人として』
 シグナムも、待機状態のレヴァンティンに視線を落とす。
『ユーノがもし無茶をやったり、道を踏み外したりするんなら……あたしらが止めるっ』
 手の中の小さな戦槌を握り締めて、ヴィータは足を踏み出した。
 
 
 
 
 
 後書き
 
 なのはの現状判明と、ヴォルケンズのお話。二期では半ば無限書庫へ放逐された形でしたけど、ユーノの果たした役割って大きいと思うのですよ? リイン開発に絡む、ってのは公式には明記されてなかったと思いますけど、そういう流れになっていたらやはり八神家にとってユーノの存在は大きいと思うわけです。
 実際はなのはの看病で接点あるのはヴィータだけだと思いますし、シャマルも主治医にはなってないと思いますけど……まあ、それはそれw
 それではまた、次の作品で。
 
 H22.8.8 加筆修正





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