それは、遥か彼方の次元で始まっていたのかもしれない――――。

「ちっ!、何で今日に限ってこうなるんだよ!!」

幾重もの複雑な幾何学模様の空間を駆ける一人の少年。
白と薄紅を基調とし綺麗な刺繍が入った民族衣装を着込み、炎のような長い赤い髪に、凛とした赤い瞳。
そして彼の背中からは2対の純白の翼が生えていた。

(ALT…Hic Tractus Fugio ―アルト…この空間を出よう―)

彼の持つ、背丈をもあるクレイモア型の黒銀の長剣から男とも女とも取れる中性的な声が聞こえてきた。

「ん?、そうだな」

アルト…そう呼ばれた少年は懐から短剣を出した。
それは水晶の原石を荒削りしたかのような不恰好な短剣だった。

(Infestus!! ―危ない!!―)
「?…!!」

振り返るアルトに何かが近づいてきた―――――。


第1話
空から舞い降りた者


私立聖祥大学付属中学校
時は昼時
校舎のあちこちで昼食を楽しむ生徒達で賑わっていた。
その中、中庭のベンチで楽しくおしゃべりをしている5人の少女達がいた。

「ところでさ」

楽しいおしゃべりの中、アリサが新たな話題を切り出してきた。

「みんなって……恋人って出来た?」
『えっ!?』

一瞬、みんなの動きが止まった。

「やはり、なのは以外いないかぁ…」
「アリサちゃん、それどういうことかなぁ?」

なのはは苦笑いしながら聞いた。

「シャラップ!!。ネタは上がっているのよ、この頃ユーノ君とちょくちょく会っているらしいじゃない」
「ちっ、ちがうよ、ユーノ君は友達だよ」

両手をバタバタと振り慌てふためくなのは。
振動で膝に置いた弁当が落ちかけるが寸でのところで抑えた。

『はぁ……』

みんなはなのはの鈍感ぶりにため息を漏らした。

「っていうかなんでいきなりそんな話?」
「何言ってるの、来年は私達も高校生よ。恋人の一人や二人もほしいわよ。
フェイトやはやてなら顔もルックスもいいから男達が集まってきそうなんだけどなぁ」
「ははっ」
「そういうアリサちゃんやすずかちゃんはどうなん?」
「私達は……」
「ふっ、寄ってくる男達はろくなものじゃないわよ」

やれやれと言った感じで手を振りアリサが答える。

「ははっ、相変わらすアリサちゃんは手厳しいなぁ」
「いいわねぇ、あんた達は」
「何で?」
「だって周りに大人の男性がいるんですもの」

アリサの眼が夢見る乙女の眼に変わった。

「はは、そうでもないかも」
「そういえば、今日って定例の合同戦闘訓練とちゃうか?」
「ああっ、そういえばそうだったね」

「あんた達、噂に聞くけどそれなりに強いんでしょ?、さらに強くなってどうすんのよ?」
「いやはや、いつもやっているから癖になっちゃって」
「それに私達は全然強くないよ」
「そうは言ってもこの前ブラスト・カラミティでアースラの訓練室、結界ごと壊して
クロノくんに怒られてたね」
「ははっ、耳が痛いね」

放課後
「それじゃあね」
「バイバイ」
「また明日」

なのは、フェイト、はやての3人はアリサ、すずかと分かれて
それぞれの家に一旦帰る。

「お邪魔します」

私服に着替え、なのはとはやてがフェイトの住むマンションへと集まった。

「行こうか」
『うん』

転送機の座標をアースラに設定し起動させる。
次に気づくとそこはもうアースラの中。

「おかえりフェイトちゃん、なのはちゃん、はやてちゃん」

ブリッジに入り最初に出迎えたのはエイミィだった。

「ただいまエイミィ」
「もうみんな用意は出来てるよ」
「みんな家にいないと思ったらもう来とったの?」
「ええ、シグナムやヴィータはもうやる気満々だったよ」
『ははっ……』

それを聞きなのはとフェイトは苦笑した。


「第75回ベルカ式騎士対ミットチルダ式魔道師、チームバトル〜」

パフパフ♪。ドンドンドン♪

慣れたもので、はやての言葉のあとにラッパや太鼓の効果音がついていた。
見慣れたアースラの戦闘訓練室
見慣れたメンバーが騎士服やバリアジャケットに身を包んでいた。
なのはや他の者のジャケットは大した変更はないが
フェイトは昔纏っていたものではなく、黒を基調にした長袖とセミタイトスカート
そして白いマントを纏ったのものに変わっていた。

『はぁ〜っ』

ノリノリなテンションの中、約2名だけが重たいため息を吐いた。
アースラの艦長、クロノ=ハラオウン。
時空管理局、無限書庫司書長であり結界魔道師、ユーノ=スクライア。

「どうしたのユーノ君?」
「ん?、わっ!!」

なのはの顔がすぐ目の前にありユーノは驚いた。

「なっ、なんでもないよ!」
「?」
「はいはい、イチャイチャカップルはほっといてはじめよか」
『………』

皆の緊張が一気に高まり、室内中がピリピリとしていた。

「それでは、はじ――!?」
『!?』

はやての声を遮り艦内に警報が鳴り響いた。

「どうした!?」
「“クロノくん大変だよ!!”」

スピーカーからエイミィの慌てた声が響いた

「次元断層が発生したんだよ!!」
「何だって!!」

みんなは訓練を一時中断してブリッジに向かった

「エイミィ、詳細を説明してくれ」
「発生したのいは今から2分前、場所は太平洋上空」
「次元震は?」
「ないよ、突然現れたの」
「突然発生だと?」

クロノは困惑しメインモニターを見た。
モニターには空が裂けその向こうを映し出す映像が映し出されていた

「艦長、断層付近に人影が見えます」
「拡大してくれ」

モニターは断層の一部を拡大した。
そこには翼を生やし、長剣を持った少年――アルトとヒトの形をした影が対峙していた。

「あの二人が犯人かな?」
「どちらかの可能性があるな」
「きれいな羽やねぇ」
「有翼民族なんて聞いたときも見たときもないぞ。
とにかくあの二人に話を聞く必要があるな。フェイト執務官」
「了解しました」

二人の顔が引き締まった。
仲のよい兄妹から上官と部下の関係に

「クロノくん、私も行くよ」
「私もや」
「そんなに大人数は必要ない」
「いや、結構人数が必要かも」
「どういうことエイミィ?」
「軽く計測しただけど、あの少年、魔力量がなのはちゃん達と同等かそれ以上。
それにもう片方の影は…ロストロギアの可能性があるよ」
「何だって!?」
「……わかった。フェイト執務官、なのは捜査官、はやて特別捜査官
及びヴォルケンリッターは速やかに現場に急行、あの少年の身柄拘束とロストロギアと思われる影を回収。
現場指揮はフェイト執務官だ」
『了解』

みんなは転送機に向かい現場に急行した。


「っはぁはぁはぁ……」

アルトは疲れていた。
次元空間を出ようとしたらあのわけのわからない影が襲ってきた。
そう強くないのだけれども影だけあって一撃の手ごたえが希薄だ。
逃げても追ってくる。応戦と逃避、それをもう何十時間も繰り返していた。

(Fungi Tu Debilito? ―疲れたか?―)
「はぁ…はぁ…。へっ、疲れてなんかいないさ」
(2Km Ambitus Illic Homo ―2K圏内に人がいる―)
「人?、それはいるだろう」
(Nullus…… ―いや……―) 「詮索はあとだ!。今は目の前のやつに集中しろ!」
(Sic ―了解―)

アルトは中空をタッと蹴り影との合間を縮めた。

「うぉーーーーっ!!」

ガシャン!!

鉄と鉄の激しくぶつかる音が木霊した。
自由自在に中空を駆け激しい剣戟の最中、みんなが到着した。

「あの少年、なかなかいい腕をしている」

ヴォルケンの将、シグナムが頷く。


「こちらでもモニターしている」
「へぇ〜、すごいよあの子、わっ!、やられる!!、そこだぁいけぇ!!」

エイミィはモニター越しに見る戦闘に一人白熱していた。

「エイミィ、仕事中だぞ」
「はいはい、そうでしたそうでした。それでどうします艦長?」
「フェイトに任せよう」
「そうだね、これも経験経験」


「どうするフェイトちゃん?」
「……様子を見よう」
「様子なんて悠長なこと言えるか。私は行くよ。グラーフアイゼン!!」
(Ja!!, Explosion!)

手に持つ鉄槌に魔力の弾丸が装填される。

「待って、ヴィータ!」
「お前ら神妙にしろ!!」

ヴィータが二人の間に割って入った。

「!!。ちっ!」

アルトは驚いたが突撃を止めない。

「なにっ!?」

ヴィータの左を掠め一回転し

(Fragor ―爆せよ―)
「!!」

ヴィータはその言葉を確かに聞いた。
次の瞬間、術を施され遠心力で速さを増した刃が影に襲い掛かった。

バァァァン!!

「わーーーーっ!!」

瞬間、爆発が起こりヴィータが吹き飛ばされる。

「っと?」
「大丈夫か?」

落下するヴィータをシグナムが受け止めた。

「ああ。すまねぇシグナム」

ヴィータは体制を整え、二人の戦闘を見る。

「……あいつの持っているあの長剣、デバイスかもしれない」
「何だと?」
「なんかわからない言葉だったけど確かに喋ってた」
「……そうか」
「大丈夫か、ヴィータ?」
「ごめん、はやて……」
「あぶねーな、がきんちょ!!」

突然飛び出してきたヴィータに野次を飛ばすアルト。

「んだと!?。おい!。テメーは誰なんだよ!!」
「ちっ、早くカタをつけねぇとな」
「おい聞いてんのかっ!!」
「ったく、五月蝿いな」
(Inclino Constituo. Laedo Infit ―場所を変えよう。あの者達に被害が及ぶー)
「見た感じ、堅気の連中じゃないな。自分達で何とかできる力を持っている。
それにヤツの気をこっちに向けさせ続ければ済むこと」
(Autem Puto Mprobus Civitas ―だがいつまでもこのような状況はいけないと思うぞー)
「ビリーセスト・キャリバー、あれいいか?」
(Ridiculum ―笑止―)
「うん、心強い。んじゃ……」

剣を突き出し横に構え、もう片方の手で手首を固定する。

「――――――」

アルトの足元の中空に金色の魔法陣が広がる。

「悪夢の王の一欠けよ 空の戒め解き放たれし 凍れる黒き虚ろの刃よ」
「魔力量増大!!」

辺りの魔力が長剣へと集中する。

「我が力我が身となりて 共に滅びの道を歩まん」

長剣に黒い闇が燻り始め――――

「神々の魂さえも打ち砕き」

闇が一気に長剣を包み、形の成らない暗黒の剣へと成った。

「いい加減、やられろーーーーーっ!!」

宙を駆け一気に詰め寄る。

「ラグナ・ブレーーーード!!」

暗黒の剣はその影ごと後ろの空間も切り裂いた。

「空間を切り裂いた!?」

そこにいる者、皆驚愕した。

「なんていう魔力だ!?」

モニターで見ていたクロノも驚きの表情を隠せない
昔見た、なのはのスターライト・ブレイカー。それ以上の魔力量だと感じていた。

「ふっ……」

力を使い果たしたアルトが余韻に浸っていると

「!!」

まだ息絶えぬ影か天を仰ぎ巨大な黒金色の魔法陣が出現した。

「うっ…ウソだろ!?」
(Gladius Agito…… ―アーセナル・オブ・ソード……―)

魔法陣から放たれる数十条の光矢、それらを投擲すると陣は消え影は消滅した。
光矢はアルトの身体と翼を貫き

「くっ……」

そのまま落下していった。

「確か下って海だったよな…ヤバイ溺れる――」
「!?」

だが、いつまでたっても着水し水の苦しさが襲ってこない。
変わりに感じるのは人の手の温もり

「……」
静かに眼を開けて手の先を見る

「見ろよビリーセスト……女神様がいるぜ」

アルトはその手をつかむ少女、フェイトに微笑みかけた。


綺麗な人…同い年ぐらいだろうか赤い髪に赤い瞳。
だが女々しさはなく強さの漂う人――。
それがアルトに対するフェイトの第一印象だった。

「くっ!!」

アルトは気絶しその重みが一気に腕に圧し掛かる。

「フェイトちゃん!!」

一緒に落ちようとしたところをなのは達が支えに来てくれた。

「影は消滅、少年は救助しました」
「ふぅ〜っ、取りあえずみんな帰還してくれ」

エイミィの報告、クロノは艦長席にもたれ掛かり最後の言葉を伝えた。






あとがき

Krelos:どうもです。
初めてここに投稿したものです。
アルト:チィーッス。たぶん主人公(?)のアルトリウスです。
と言うか、おい作者!。勝手に人の姉貴の名前騙るなよ。
Krelos:ヤダ。この名前気に入ってるから。
アルト:それにこっち書く前に祖母ちゃんやマスターのストーリー(作者
オリジナル本編)の基盤を整えろよ。
Krelos:ぶっちゃけ言ってしまうと・・・・・・1400ページ以上もある長編
を頭から整理して書くのめんどい。確実に年単位掛かる。うん。
アルト:10年近くそれに費やしてたもんなぁ。
Krelos:こっちが一区切り付いたら着工予定〜。
アルト:こっちのストーリーや設定は大丈夫なんだろうな?
Krelos:大丈夫、ちゃんと年表も書いたしちゃんと完結している。
ちなみに君が<ピーー>と一緒に<ピーー>に<ピーー>されちゃう
のは決定事項。
アルト:おい!!、それって第3部の結末だろうが!!。ネタバレしてどうする!!。
それにフェイトファンにフクロにされるぞ!!
Krelos:皆さん大丈夫です。彼がオーバーなだけであまりひどい扱いには
ならない・・・・ハズ。
アルト:ああっ、おおいに心配だ・・・・・・






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