それから1週間後、式の参加者はなのは、はやて、アリサ、すずか、クロノ、アルフ、
ユーノ、ヴォルケンリッター、リンディ、エイミィの計13人となった。

「みんな集まった?」
『は〜い』

みんなは少し大きめの荷物を持ち公園に集まっていた。

「それじゃちょっと待ってね」

そう言うと掌大の端末を取り出し操作し始めた。

「そういえば何で行くの?」
「まぁ、そう慌てなさんな」

しばらくすると轟音が鳴り、辺りに突風が吹いた。

「なっ、なんなのよ!?」

空を見上げると風景が歪み、1機の小型シャトルが現れ、目の前に着地した。

「さぁ、乗って」

みんなは乗り込み、シャトルは浮上しまた姿を消し飛び立った。


第2話
別世界へ


「うぁ、宇宙だぁ」

眼前に広がるのは黒い空間に星々が煌く世界、
下を見ると自分達が住む青い星。

「ねぇ、まさかこれで行くの」
「いいえ、もっと大きな船」
「んなもの見当たらないけど」
「月の裏にいる」

間もなく、シャトルは月の軌道に乗り日の当たらぬ真っ暗な月の裏へと着いた。

「あれよ」

アニスは指差すが見えるのは一面の闇。

「真っ暗で何も見えねぇ」
「もうすぐ日に出」

太陽の光がだんだんと月表面を照らしていく、そして姿を現す巨大な艦体。

「おおっ、でけぇ」
「大きいですぅ」
「かっこいいなぁ」

ヴィータとリィンフォースが窓に張付いて言い、すずかはうっとりとしている。

「大きいな、あれが君達の船か?」
「そう、ハイギガ・クラス旗艦支援戦闘艦ファルコン」
「はぁ、そういえば初めてアニスちゃんが来たときアースラとニアミスしたのよね」
「激突したらアースラのほうがひとたまりも無かったな」
「なんせ750Mクラスだからな」

シャトルは艦の下に潜り上下逆さに艦底部のベイに接続し、みんなは乗り込んだ。

「あわわ!」

シャトルから出るとふわりと浮く。
艦内も薄暗く最小限の明かりしかない。

「気をつけてね」

みんなは浮遊しながら先に進んだ。

「やけに静かだな」

通路を進むも自分達の気配しかなく、まるで幽霊船のようだ。

「何か変だと思ったらミリィがいないんだ、GSUも止まっているみたいだし
アビオニクスもライフ以外止まってる。カオス・ワーズでも使ったのか?」

アルトの言うとおりアニスの相棒でありこの艦の意思とも言える彼女の姿がない。

「今お仕置き中」

冷淡にアニスは答える。

『お仕置き?』

通路の先にはエレベーターホール。
アニスはパネルに大きめの鍵を差込みコードを打つ。

「乗って」
「いや〜ん、そこ触わんといてぇ。もぉ、クロノくんのエッチ」
「なぜ俺!?」
「騒ぎに準じてなど見損なったぞ提督!!」
「わっ!、こんな狭いところで剣抜くな!!」

16人乗るには少し狭いが何とか乗り込み上のエリアへ上っていった。
ドアが開くとそこはブリッジ、アースラほどではないがかなりの広さだ。

「適当な席に座って」

みんなはコンソールの席に座り、アニスは中央の席に座った。
コンソールの掌大のパネルにタッチし開いた鍵穴にキーを差込みコードを打ち込む。

「再起動シーケンス、スタート」
「"…Yes、Master…"」

何処からともなく聞こえてくる落ち着いた少女の声、ミリィのものである。

「"MIF(マン・マシン・インターフェース)を構築します"」

アニスの目の前に光粒子が集まり、少女の姿を成した。

「再起動シーケンス。サイ・システム接続。
対消滅炉稼動、GSドライブエンジン、アイドリングから本稼動へ」

事務的に述べていき稼動音がこだましていく。

「GSU(グラビティ・サイクル・ユニット)起動、アビオニクス最適値に設定」

一つ一つ項目を言い、同時に機動音、周りのこだまする音も増えていく。
ブリッジに明かりが点灯し体に感じるのは確かな重力の重み。

「FCS(ファイア・コントロール・システム),MCS(ムーヴ・コントロール・システム)、
各種センサーアレイ、オンライン。ショックキャンセラー、MDU(マルチ・ディフェンス・ユニット)起動展開。
艦内システム群、全てオンライン、全システムオールグリーン。マスター…オーダーを」
「MIF環境をコンディショングリーンへ」
「………!!」

今まで規律正しかったミリィの雰囲気が反転、ここは何処?と言った感じで辺りを見渡している。

「!!」

そして目の前のアニスを見つけたとたん、目に涙を浮かばせ泣きついた。

「わ〜〜〜〜ん!!、ごめんなさ〜〜い。もう二度とNASAにハッキングなんてしないからゆるして〜」

泣きながら恐ろしいことを言う。

「わかってくれたらもういい。ミリィ、みんなに挨拶、わからない人もいるから」
「はい。……みんなさん、お久しぶりな人や初めての人もいると思いますが。
私、この旗艦支援戦闘艦ファルコンのヴァルキリー、ミレニアム=ヴァン=ファルフィードと申します、
どうぞミリィと呼んでください」
「はじめまして、月村すずかです」
「アリサ=バニングスよ」
「ミリィさん、ヴァルキリーって?」
「簡単に言ってしまえばA・I。この艦の意志です。
私達は戦闘艦だから高貴なる機動女神、ノーブル・マシン・ヴァルキリーと呼ばれています」
「へぇ〜」
「そろそろ出発しましょ。みんな、コンソールをむやみにいじらないこと、特にヴィータとリィンフォース」
「わーてるよ!!。はやてに怒られたくないからな」
「です」
「アサルトアンカー収納。艦首回答、亜光速でカイパー・ベルト、およびオールドの雲を出る」
「了解」

ファルコンは発進しあっという間に太陽系を出た。

「急加速なのにぜんぜん負荷を感じない」
「ショックキャンセラー機能が付いていますから。……マスター、オールドの雲を越え
安全ゲートイン可能域に入りました」
「トリニティ・ドライブ起動」
「了解。トリニティ・ドライブ起動。目標次元、時空、空間座標軸固定」

アニスは意識を集中し、エンジンの動力源たる緑の石が輝きを増してゆく。

「トリニティ・ドライブ、カウント5,4,3,2,1、スタート!!」

星の瞬きが後方に尾を引きファルコンは超空間へと突入した。

「ハイパースペース航行中、システム、アントラブル、ゲートアウトまで、カウント600」
「到着まで10分か、ガイア宙域のゲートアウトチケットは申請してある?」
「事前に申請済みです」
「うわーっ、キレイ」

前面ガラス張りから見えるのは幾何学模様が流れる景色。

「ところでこの船には君達以外にはクルーがいないのか?」
「基本、私達だけ、時々部隊の人達が乗るけど」
「部隊?。君は何処かに所属しているのか?」
「こんな戦艦持っているんだから軍に決まっているでしょ」
「軍人さんなんだ」
「そっ、しかもこんな戦艦をプライベートで持てるぐらいだからかなり上」
「アルト、それ以上はダメ」
「何で?」
「みんなに当ててもらう」

アニスは子供らしからぬ笑みをこぼした。

「そうですね、ちなみに私も階級がありますからそれも当ててもらいましょう」

それにミリィも乗った。

「そんなこと言ってもそちらの制度とこちらでは違うんじゃ?」「違うところもあるけどすぐわかる」
「…………」
「マスター、もうすぐゲートアウトします。それとチェックの結果、ゲートアウトポイントがドンパチ騒ぎです」
「わかった。たぶんスケジュールにあったヤツでしょう」

幾何学模様の流れがゆっくりになりファルコンは通常空間に出た。

『なっ!!』

そこは戦場。何万隻もの戦艦、何千機もの巨大人型ロボットや戦闘機が入り混じる戦場。

「乱闘だねぇ」
「あなた達はどこかと戦争状態なの?」
「違うわよ、これは実践演習」
「演習?」
「それにしては規模が大きいわね」
「大きいって言っても2個大隊だから」
「えっ、軍全体じゃないの!?」
「うちの軍は人材が豊富だから自然に部隊の人員数が多くなるの。1個師団だけでも旧米軍の総人数を上回るほどだから」
「いいな、うちにまわしてもらいたいぐらいだ」
「そういえばここ数日、リンディさんとクレロスを通して管理局への加盟・出向契約が結ばれたみたいですね」
「ええ、滞りなく行われました。そちらの準備が出来次第、人員をまわしてくれるみたいです」
「これで管理局の人材不足も解消されるな」
「ミリィ、インビンシブルは?」
「前方3万5000kに位置、戦場を越えて停泊します」
「宜しく」

ファルコンは戦場を縫い進み反対方向の宙域に出た。

「あれが、ガイアよ」

目の前には緑に輝く美しい星。

「それであれがインビンシブル」
手を指す方向を見るがそこには何もない。

「何もないね」
「周りの風景と同化しているからなぁ。ミリィ、フィルタをかけて見えるようにしてくれ」
「はいな、みんなさんメインスクリーンをご注目」
スクリーンに同じ画像が映し出されフィルタを掛けるとその艦影を浮き出した。

「隣がガイアでその隣がインビンシブル、ちなみに相対距離よ」
「おっ、大きい……」
「うひゃぁ、ほんとに星と同じ大きさなんだ、これじゃ本局が米粒って言うのもわかるわ」
「こちらファルコン、インビンシブル管制塔、応答を」
「"こちら管制塔、ピーコン確認、入港を許可する"」
「エレベーターに近いドック空いてる?」
「"すまん、そのクラスだと今のところ第4ドックしか空いていない"」
「仕方ない、そこでいいわ。ミリィ」
「入港します」

ファルコンが入港し、みんなが外に出ると

「うわっ!?」

突然無重力に足をすくわれた。

「気をつけて、ドックブロックは0G地区だから」
「フェイト、手を貸すぞ」
「うん、わっ!?」

アルトはフェイトを抱き上げた、世に言うお姫様抱っこである。

「ちょっとアルト!?」
「あ〜いいな〜、クロノくん私も抱っこ」
「リィンもです〜」
「おっ、おい」
「行こう、なのは」
「うん」
「私達も行くわよ」
「待ってください提督」
「あ〜あ、見事にカップルやグループができちゃったわね」

ふてくされた顔で呟くアリサ。

「アリサちゃん行こう」

その呟きを知ってか知らずか笑顔で手を差し出すすずか。

「…………」

アリサはふてくされの顔をそのままにすずかの手を取りみんなの後を追った。

「あっ、さっきのロボットだ」
「かっこいいよなぁ」

しばらく進むと、先ほど戦場にもいたのと同型のロボットがいた。

「あれはガンダムって言うんだよ」
「ガンダム?」
「そっ、汎用人型機動兵器、軍の主力でもある」
「へぇ〜、結構タイプもあるんだな」

見ると基本は同じ姿だがバリエーションが豊富にある。

「ガンダムの開発は軍営の兵器会社から個人レベルまで多彩に行われているからな」
「個人レベルにまで?」
「ええ、申請さえ出せば誰でも作れるの」

その時、突然ドック内の証明が消え辺りは非常灯だけの薄明かりになった。

「あら?。またですか?」
「どうしたんだこれは?」
「おい、またかよ」
「また光の奴やったのか?」
「キャナルとカーナがまだ暴れるぞ」

ドックにいた人達が次々に言っている。

「みんななんか言っているようだけど」
「大丈夫、いつものこと。下手に関わらなければ被害は無い。行こう」

薄明かりの中進んで行き重力ブロックにたどり着いた。

「あっ、電気がついた」

ブロックの通路に入った途端電力が回復した。

「戦場になりますね」
「……うん」

先ほどからわけのわからないことを言うミリィとアニスにアルトは苦笑いをし、みんなは首をかしげている。

「みんな久しぶり」
「あっ、クレロスさん」

みんなの前に現れたのはクレロス、カティウス、ナイジャ、メビウス、そして見知らぬ男女が3人。

「パパ!!」

アニスが青と赤のオットアイの男に駆け寄った。

「おう、元気だったかアニス?」
「無事で何よりだわ」

どうやら3人のうちの男女2人はアニスの両親のようだ。

「あっ!、生まれたの?」
「ええ、そうよ。名前はレナス。これであなたもお姉ちゃんよ」

金髪の女性が屈み腕に抱いた赤ん坊を見せた。アニスはいつもの大人びた雰囲気ではなく年相応の反応を見せている。

「姉貴も生まれたのか?」
「ええ、名前はベルダンディーよ」
「ばあちゃんの名前かよ」
「ええ、強くなることを肖ってね」
「ナイジャ、メビウス久しぶりね」
「ええ」
「エイミィも…元気そうで…」

身内同士や友人同士でわいわい話していると

「アルト、アニス。そろそろ俺達のことを紹介してくれないか?」

クロノが切り出した。

「あっ、すまねぇ」

オットアイの男はクロノに歩み寄り

「中嶋 彩(なかじま さい)だ。ユニバーサル・フォース総将をしている。こう見えてもアニスの父親だ」
「時空管理局提督、クロノ=ハラオウンです」
「同じくリンディ=ハラオウン。クロノの母です」
「みんなのことはアニスから聞いている。妻のミレニアムに生まれたばかりの娘、レナスと」

ミリィと同じ風貌の女の子が一歩前に出て

「はじめまして、フィリア=ヴァン=リンクフィードと申します。いつも姉のミリィがお世話になっております」
「姉?」
「そう、私の双子の妹」
「通りで似てると思った」
「高町なのはです」
「フェイト=T=ハラオウンです、そしてこの子が使い魔のアルフ」
「どうも」
「八神はやてです。それでこの子達がヴォルケンリッター。シグナムにシャマル、ヴィータにザフィーラ、
リィンフォースです」

ヴォルケンの面々はそれぞれ挨拶した。

「一般人代表のアリサ=バニングスです」
「月村すずかです」
「時空管理局通信指令のエイミィです」
「みんなよろしく」

そのとき、けたたましい警報音が艦内に響いた。

「"警戒態勢!!、魔獣が野に放たれた!。繰り返す!、魔獣が野に放たれた!。
獲物は第3エリア第5ブロックに潜伏中。付近の者は巻き添えを食らわないように……って!!
カーナ!!なぜここにいる!!"」
「"うるさい。貸せ"」
「"うわぁーーー!!"」

男の叫び声と共に乱闘をしているのだろう、けたたましい音と怒号と断末魔の叫びが聞こえてくる。

「"――――――――"」

その騒音がピタッと止み

「"……艦内の全員に命令する、光(こう)を見つけ出せ、どんな状態でもかまわない、生きてればいい――――"」

ひどく冷酷な口調で女の声が命令する。
その後通信はプツンと切れた。

「こりゃ、巻き添え食らう前にさっさと降りたほうがいいな」
「そうね」
「いや、もう手遅れかもしれない」
「アニス?」

アニスは自らのマテリアルファクト、アブソリュート・フリーダムを構え

「そこ!!」

壁に向かい剣を振り下げた。
激しい剣戟、傍から見れば単なる一人剣戟だが、どうも違う。
見ると剣戟を繰り出す空間がエモノを持った人型に歪んでいる。

「はっ!!」

袈裟斬りが入り空間から血が噴出す。影は倒れ足元であろうか、すかさず斬りつけ血が流れ出す。

「……ってて」

何もない空間から傷を負った金髪の青年が現れた。

「まさか迷彩で隠れていたとはな」
「へっ、しかも熱センサーも完全に欺く新型だ」
「この方は?」
「アナウンスで言っていた光だ」
「カーナ、キャナル。獲物を捕獲した。引き取りに来て」

アニスが通信で連絡すると

「なっ!、アニス、テメェ将軍のクセに最高司令官を売るつもりか?」
「将軍関係ない、それに下手に逃げて巻き添えになるより差し出してさっさと帰ってもらうほうがいい」
『確かに』

軍族の面々は揃って頷く。

「そういうことだ。っと、早速来たぜ」

辺りに漂い始めるのは重苦しい黒い空気。

『………』

その発生源であろう金髪と緑の髪の二人の女性が霊鬼のような足取りでこちらに向かってくる。

「さっ、貞○!?」
「こわいですぅ!!、おしっこちびるです!!」

その身の毛もよだつような恐怖と重圧に数多の戦場を駆けてきたヴィータのみならす
大人達も素足で逃げ出したい感覚に襲われた。

「アニス…獲物は?」
「その前にカーナ、殺気を抑えて、ここには赤ん坊もいるしお客さんだっているの」

二人から殺意の波動が消え、ふーっと一息ついた。

「さて、奴を引き渡して」
「ほらよ」

いつの間にか鎖でグルグル巻きにされた光が投げ出された。

「足の腱を斬ってあるけど、油断しないように。それと戦利品として光が作った新型のステルス迷彩ちょうだい」
「わかった、解析・複製し次第渡すわ」
「さぁて、光、楽しい楽しい拷問の時間よ〜」

金髪の女性、カーナは指をボキボキ鳴らしながら不適に微笑む。

「へっ、悪いのは俺だけじゃないことを忘れてもらっちゃ困るな」
「なんですって?」

それに反応したのは緑の髪の少女、キャナル。

「俺は積年の恨みをはらずべく基盤にコーヒーを零し――――――」
『結局元凶はお前だろうがっ!!』

言い終える前に蹴り上げ落ちてきたところにハイキック。
見事なまでのシンクロ率でW二段キックが決まり光は壁にメリ込んだ。

「さて、次は何して遊びましょうか」
「おっ、おい、いくらなんでもそれくらいにしたほうが」

クロノが言い、二人がギロリと睨み付ける。
他のみんなはこれから死に行く人を見るがごとく悲痛な表情だ。
そして思った"棺桶に両足突っ込んだ"と。
カーナはまるで霊鬼のようにスススとクロノに歩み寄る。

「あのね坊や」
「自分はこれでももうすぐ二十歳になるのだが」
「そう。私は2350歳、二十歳なんてまだケツの青いお子ちゃまよ」
「いっ、行き送れ」

光がポツリと言うと今度はキャナルの強烈なニーキックが腹に入る。

「それで坊や、あんたここの人間じゃないわね」
「じっ、時空管理局提督、クロノ=ハラオウンだ」
「時空管理局?。ああ、光が言ってた他次元の組織ね、そう、提督。
それじゃ技術屋の苦労なんか粉微塵も分からないわねぇ」

クロノの右肩に手を置き、クロノは言いようが無い緊張感に息をのむ。

「毎日毎日、音声入力で声がガラガラになるまで、タッチタイプで指が腱鞘炎になるまで、徹夜して徹夜して、
やっと組み上げた何万、何十万、何百万ものコードを、たった一言でプツリ……はい最初からやり直し。
紙データでバックアップは取ってあるけど……それを飽きずに何年も、何十年も、何百年も」

クロノの肩に置いている手に力が入る。
その痛みに顔を歪めるが、それより彼女から放たれる負のオーラのほうが恐ろしかった。

「何回堪忍袋のが切れたか分からないわよぉ」

そこにいたのは修羅だった。

「キャナル。ヤッちゃってもいいカナ、カナ?……」
「ほどほどにね」

許しが出た瞬間、カーナの周りに魔力が集中する。

「ヤバイ!。クロノさん、早く離れろ!。アイツ完全にイッちゃってるぞ!!」
「そんな事言われたってなぁ。イタタタッ。肩がっ!、肩がぁっ!!」

指がガッチリ食い込んでいるので引き剥がすことが出来ない。

「おい、カーナ!、落ち着けって!」

彩が後ろから羽交い絞めにする。

「は〜な〜し〜てぇ〜。たとえ闇に堕ちても仲間殺しの汚名を被っても、こ〜い〜つ〜だけは〜!!」
「光はどうなってもいいが、他のところでやってくれ、俺達を巻き込むな、
ここには赤子やこれから結婚式を挙げる奴等もいるんだぞ!」
「………」

最後の理性がさすがにそれはヤバイと思ったのか、魔力の集中が途切れ

「………あ〜るはれたひ〜るさがり…………」

気を失った光をズルッズルッと引きずり歩き何故かドナドナを歌い、去る。
その様子は正しく、狂人が死体を引きずって行くホラーそのものだった。

「そうだ、アルトリウスこれを」

キャナルがアルトに1着の白いジャケットと何かが書かれている金のワッペン、そして手紙らしきものを渡した。

「これは?」
「あなたの階級章と軍ジャケット、それと命令書よ」
「キャナル〜。早くきてぇ、解体ごっこしようよ……」
「それじゃあね。待ちなさい、カーナ!、その前に音声認識の解除よ。地獄以上の拷問を与えるのはそれから」
「助けてくれーーー!!」

光は物騒なことを言い合う二人に引きづられて連れ去られた。

「さーて、問題も解決したことだし、星に降りようか」
「いいのかあれで?」
「いいの、ここが爆心地にならなかったんだから」

みんなは彩達が乗ってきた大きな荷台付の反重力バイク、ライドチェイサーに乗り出発した。

「クロノくん肩大丈夫?」
「ああ、ひどい目にあった」
「総将!!」

しばらくすると同じチェイサーに乗った兵士に呼び止められ、何か話している。

「……すまねぇみんな、ちょっと用事ができた。アルト、必ず式には出るからな」
「はい」

彩達は兵士と共に通路を駆けていった。

「俺時々、あの人が多忙なのか暇人なのかわからなくなる」
「まぁ、総将だからね」

アニスは呟き、発進した。

「先ほども聞いたが総将とは何だ?」
「この軍の階級のひとつよ、この軍には超将軍って言う階級があるの」
「超将軍?」
「基本は軍には属しているけどどの命令系統にも属さず単独行動で戦場を駆けるワン・マンズ・アーミー。
将軍だから独自の判断で2〜3個師団は動かせるし、時には総司令官に代わって軍を指揮したりもできるの。
総将って言うのはその超将軍達を統率する階級ね」
「そうなんですか。ということはさっきアニスちゃんが将軍って呼ばれていたことは……」
「そう、私も超将軍の一人よ」
「私は中艦将。地球の軍隊で言うと中将ってところかしら」
「ちなみにさっき連れ去られた光が総司令官である総軍将。連れ去った女の人で
緑の髪でミリィと同じ格好をしているのがこのインビンシブルのヴァルキリー、
キャナル=ヴァン=インビンシブルフィード超将軍で、もう一人の金髪が軍営インコム・エンジュニアリング、
ソフトウェア開発部部長、カーナ=パルス大佐」
「おかしな話だな、士官が最高司令官にたてつくなど」
「まずは、光はキャナルと毎日のように口喧嘩している、怒った光はカオス・ワーズ、ヴァルキリーの思考をストップさせる言葉を言う」
「そこで一番の被害者カーナさん、うちのソフトウェアのプログラムは全部組みあがらないと保存もできないのよ。
そんな中でヴァルキリーの思考ストップ、艦の生命維持以外の電力はストップ。当然プログラムはパァ、最初から組みなおし、
大佐は発狂、大暴れ。うちの軍は地球の軍のように厳しい規律が無くフレンドリィだからあんな状態になるの」
「そんな一連をもう1000年ぐらいやっているらしい。もううちの名物行事というか毎日のライフワークね。
巻き添えを食らわなければよし、食らったらご愁傷様ってカンジ」
「さすがに1000年も繰り返したら怒るよね」
「ああ、まだ震えがとまらねぇぜ」
「怖かったです」

ヴィータとリィンがブルブルと震えている。

「……なぁ、姉貴、兄貴……これマジデスカ?」

そんな中、アルトが命令書を見つめ深刻な顔をしていた。

「えっ、何々?」

アルトは無言で命令書を渡した。

「えっと、何々?。アルトリウス=ゼファー、貴君をユニバーサル・フォース大艦将に任命。
ラーナ訓練シティ所属、統合戦技教導軍団長クレロス=ゼファー先任大艦将配下とする。
うん、私の部下になるってことだね」
「命令のほうはっと、この度報告があった時空管理局に出向、互いの友好関係促進に努めることだってよ」
「時空管理局に出向するのはかまわない、フェイトと一緒にいられるからな。しかし、階級が大艦将ってどういうことだ?。兄貴だって中艦将なんだぞ」
「知らないわよ、確かに軍上層部には階級授与要請はしたけど大艦将にしてくれとは言ってないわよ」
「雰囲気からするとこちらで言う大将でいいんでしょうか?」
「そう。しかも総合作戦司令部直属を表す白いジャケットだし」
「そりゃぁ、私の戦技教導軍は総合作戦司令部直下だし」
「クレロスさんって私と同じ戦技教導隊だったんですね」
「そう、泣く子も黙る無敵の統合戦技教導軍、新人は訓練シティに入って半年間、
その教育部隊によって地獄の業火も生ぬるい洗礼を受けるそうだ」
「あらっ、私は新人達に戦場の厳しさを教えただけよ」
「隊じゃなくて軍なんですか?」
「規模が違うからね、どうしても師団・軍団規模になってしまうの」
「ところでアニスちゃんってまだ7歳だよね?」
「はい」
「それなのにもう軍でお仕事してるの?。しかも将軍だなんて」
「本当は15歳にならないと登軍訓練にも参加できないんだけど能力がある人は特別処置が取られるの。
ちなみに私は10歳で入って14歳で大艦将になった」
「将軍なのは、もうその称号がフィフスの一族に当てられてるの。
誰も将軍職に就きたがらないからねぇ、まぁ、厄介払いみたいなもの」
「ん?。アニス宛にも命令書が来てるぜ」
「今手が離せない、代わりに読んで」
「え〜と。アニス=フェリア=ノクターン超将軍。貴君を時空管理局出向人事統括官に任命する、だってよ」
「……………」

しばしの沈黙の後、アニスは通信機を取り

「……キャナル?。光ってまだ生きてる?。…虫の息?。そのままにしておいて後で私もシメるから」

感情が入っていない無機質な言葉と漂う黒いオーラにみんなは震え上がりしばらく気まずい空気が漂っていた。

「……ミリィ、もうすぐエレベーターホール出でる、みんなにあれを渡して」
「あっ、はい!。みなさんこれを」

ミリィはみんなに補聴器みたいな機械を渡した。

「これは?」
「翻訳機よ、星の標準語はガイア語だからそれをあなた達の言葉に変換してその逆もするものよ」
「そういえば今まで気づかなかったけど僕達って違う星に来ているんだよね、みんな言葉が通じるので忘れてました」
「軍関係者は業務上、他の星にも行くからね、言語学習は必須よ」

暫くすると巨大なホールに出た。

「ここから軌道エレベータに乗って下の星に降りるの」

みんなは空港の検査ゲートのようなところを通り検査を受けた。

「すまんな。一応星を汚すものを持ち込ませないためなんだ」

ゲートの職員が申し訳なさそうな顔で言った。
その後、何も問題や異常も無く、みんなはエレベータに乗り星に降りた。







あとがき

Krelos:これっていいのかなぁ?。
アルト:自分で書いといて俺に聞くなよ!。
Krelos:まぁ、最初に注意書き書いたしカーナのエピソード書けたからいいか。
アルト:それでいいのか?。それにしても何で俺が大艦将なんだよ、戦時や作戦行動時じゃ前線最高指揮官だぞ!!。
Krelos:さぁ、それは何ででしょう?。
アルト:おまけに総合戦技教導軍付きだなんて。
Krelos:案外クレロスの後継者にしたいのかもよ。
アルト:………怖いこと言うなよ。
Krelos:さて、次はやっと地上に降りて結婚式ですよ〜
アルト:なっ、なんか緊張してきた!。





BACK

inserted by FC2 system