「そういえばクレロスさん、ちょっと頼みたいことがあるんですけど」
「何ですかリンディさん?」
「実はこちらに来るついでに出来るだけ軍事情勢などをリサーチしてレポートにまとめてくれと上から言われまして」
「私はいいけど、アニス、将軍としてどうですか?」
「構わないと思うけど、一応、光には私から許可とっておく。ラーナ辺りを見せればいいんじゃない?」
「そうですね、アルトも軍籍だけあるって言ってもみんなに紹介しなくちゃね」
「足は私がやる」
「いいの?」
「どうで出向の最高責任者は私になるわけだし、このメンバーの旅、なんか面白そう、見ていて損はない」
「俺達をどんな目で見ているんだよ……」
「ミリィもいいよね?」
「はい、マスターがよければ。どんな珍道中になるか楽しみですね」

笑顔を崩さずミリィは言い切った。

「はぁ、この主従って……」
「それじゃ、早速行きましょ、今から行けばお昼前には着くから」
「出港手続きはやっておきますね」
「お願い」


第5話
ラーナ訓練シティ


それから1時間後、ファルコン艦内。

「なぁ、こんなに科学が発達してるのに何で転送ポートがねぇんだ?」

ヴィータの素朴な疑問。
光の速度を超え、完璧な自立思考型のAIまで創れる科学技術を持つのに
遠方や惑星間移動はもっぱら船舶である。

「そういえばそうやな、ミッドチルダでは科学もこっちよりは乏しいのに転送ポートがあるで」
「実際、物質転送装置というものはあり、実用もできますけど、ほとんど使いません」
「何でだ?」
「昔、光が言ってた」
「光とは、昨日の最高司令官のことか?」
「はい」
「その光が以前言っていたんだけど、物質転送装置を人体用に改良して軍の標準移動手段にするのは簡単だ、
しかしそれでは今まで移動手段として役に立っていた艦やヴァルキリー達の存在をもう要らないと否定してしまう。
艦ごと移動させることもできるが、それでは友人だった人達が真に戦うだけの道具と化してしまうと」
「うむ、光とは見た目と違いなかなか人が出来た御仁のようだ」
「立派な人ですねぇ」
「いや、シグナム、シャマル。騙されてるわよ」
『えっ?』
「光を一言で表すなら"楽しければいいマッドサイエンティスト"、少しは常識はあるけどそのほとんどが変人、
さっき言ったのだって建前で本音は自分のシュミじゃないらしい」
「ヴァルキリーの子が全員女の子なのもハーレム作りたかっただけって噂されるぐらいだ」
「……なんや、最高司令官なのにぼろくそいわれとるなぁ」
「なんか不憫に思えてきたぜ……」
「ですぅ」


「アニス、フォーレが見えてきましたよ」

目の前には緑の星が。

「どうします?、シャトルで行きますか?」
「めんどくさいからこのままでいい」
「了解しました。このまま大気圏を抜けシティに向かいます」

ファルコンが成層圏に侵入し赤いカーテンが辺りを覆う。
体に感じる揺れもなく、成層圏から対流圏、そして草原が占める地上へと。

「第1隊の位置は分かる?。予定ではグルディ森林での森林演習なんだけど」
「はい、シグナルを確認、グルディ森林のベースキャンプを基点に半径5キロ圏内に散らばっています」
「森の近くに下りてライドチェイサーで移動、ファルコンはシティのドックに入港」
「分かりました」

しばらくすると広大な森が見えてきた。

「ねぇ、ここから行くの?」

ドックの底部ハッチを開くと眼下には草原、シールドのおかげか突風といったものは起こらず、
容易にハッチの前に立って見下ろせる。

「みんな、乗って」

アニスが乗ってきたのはカーゴが付いたライドチェイサー、インビンシブルと同じタイプのものだ。

「それじゃ、行くよ」
「うっ、うん……」
『…………』

みんなの顔が強張る。
いくら低空ホバリングといってもハッチから地面までは有に100メートルはあった。
いくら魔法で空を飛べるといっても自由降下ダイブは絶叫マシンやバンジーが好きな人か、
相当度胸が据わっている人でなければ相当怖いものだ。
アニスはスロットルをふかし一気に飛び出した

「きゃ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「………」
「やっほー」

叫ぶ者、必死にしがみつき耐える者、楽しむ者、皆それぞれの対応を見せたが、
チェイサーは無事着地しそのまま森を進みファルコンは浮上しそのまま発進した。

「"キャンプまではおよそ10キロです"」
「分かった」

しばらくすると目の前に見えてくるのは銀の骨組みの見張り台。
そしてなおも進むと広場に出た。
そこには見張り台をはじめ骨組みと鉄板だけで作られた、いかにも即席のベースキャンプといったところだ。

「隊長。どうなされたのですか?」

門に着くと門番が話しかけてきた。

「ちょっとね。みんなはまだ演習してるの?」
「はい。その方達は?」
「私の義妹とその家族に友達」
「はぁ?」
「召集かけるからアナウンスがあったら来てね」
「はい」

みんなはどんどん進むクレロスとカティに付いていった。

「ここが教導軍の基地なのか?、ボロッちいな」
「違う。ここは演習するための仮の基地でシティは他にあるわよ」
「シティ?」
「そう。主要惑星にある基地で10万〜100万人が暮らしていて、
もうひとつの街みたいだからシティって呼んでるの。
特にここ、第4惑星フォーレ、ラーナシティは全軍共同の訓練シティだから
その規模は他のシティとは比べ物にならないわね」
「へぇ〜」
「みんな元気でやってる?」

クレロスは広い部屋に入り、開口一番言った。
大きなスクリーンに数々の機器、見るからにキャンプの発令所だった。

「隊長、お早いお帰りで」

しかしそこにいた兵士達は驚きを隠せない。

「ちょっとね。通信機いいわね?」
「あっ、はいどうぞ」

クレロスはマイクを取り外部放送のスイッチを押した。

「こちら隊長のクレロス。全部隊に通達、演習を一時ストップ、キャンプ中央広場に集合。
繰り返す、演習を一時ストップ、キャンプ中央広場に集合。これはここにいる全員に適応される、
5分以内に集合のこと。なお、これを囮だと思い来なかった奴は、惑星フルマラソン10週してもらうから。以上」

通信を切ったとたん、地響きが鳴り始めた。

「何だこの揺れ!?」
「どうやら来たみたいね。あなた達も早く来なさいよ」
『はい』
「それじゃ、俺は一足先に行ってる」
「ヨロシク」

ぴったり5分後、みんなは中央広場に向かった。
文字通り整備も何もされていない広場の中央に150名ほどの野戦服姿の兵士が規則正しく並び、
それらを囲むように少し離れているところにも兵士が2列に整列していた。

「全体〜っ、休め!」

カティの号令と共に皆が休めの姿勢になった。
軍隊特有の緊張感がピリピリと伝わり、フェイト達の顔も自然と引き締まる。

「クレロス隊長、ラーナ教導教育隊第1隊120名、訓練生160名、総員280名揃いました」
「ご苦労、カティウス副長」

二人の間で交わされる言葉。この広場に入ったときからもう二人は夫婦としてではなく、上官と部下として接している。

「120って軍という割には少なくない?」
「ここにいるのは教導軍教育部管轄、教育隊第1隊、教導軍の精鋭でクロレスの側近中の側近よ」
「しっ、始まるわよ」
「さて、演習を中断してすまないと思うが、皆に新入隊員を紹介する」

アルトは一歩前に出て

「アルトリウス=ゼファーです。よろしくお願いします!!」
「皆の知る通りアルトは私の弟だ。このたび大艦将になりこの教導軍に軍籍を置くことになった。
しかしながら同時に妻であるこの娘、フェイトの所属している時空管理局に出向となった。
まぁ、他の者にも出向募集はあるみたいだけど、それはアーシナルで募集すると思う。
とりあえず新しい仲間だ」
「おい、アルトが結婚だってよ」
「嫁さん綺麗じゃんか!!」

隊員の彼方此方から話が聞こえる。

「はいはい、新婚イジリはまた後ほどで、さて諸君、もうそろそろ昼だ、シティではあと10分ほどで戦場になる。
副長、ここからシティまでは?」
「約1000kです」
「運動がてらシティに食事をしに行こう」
「ということは?」
「先ほど手配して料理長が君達のために通常とは別で特別メニューを作ってくれている」
「よっしゃ〜、久々にマトモな物が食える!」
「レーション地獄からの脱出だぁ!!」

隊員や訓練生達は狂気なまでの喜びを見せている。
クロノ達はまともに食事とってないんだろうなぁと哀れみの眼で見てしまうほどに。

「しかし!!。用意できるのは150食、つまり130人は食べられない」

クレロスの言葉にみんなから殺気が放たれる、和気藹々の雰囲気から一気に弱肉強食の世界。

「これは……」

その切り替えの早さにクロノ達はただ呆れるしかなかった。

「10分以内にシティにたどり着け、順次着いた者から配給。移動方法は獣化以外なら何でもいい、
もちろん妨害もアリだ、自分以外を全滅させればすべて勝者のものだ。溢れたものは惑星マラソン10週」
「とんでもねぇバトルロワイアルレースだな」
「ですねぇ」
「アルト、せっかくだ、お前も参加しろ。私も参加する」
「えっ!?、マジで?」
「皆がお前の結婚を祝いたいそうだ」
『は〜い!』

皆の顔はいかにも"お前が第1標的だ"と言わんばかりの笑顔である。

「あのぅ〜、我々の食事はどうなっているのでしょう?」
「大丈夫、ちゃんと人数分確保してあるから、参加したいって言うならとめないけど」
「遠慮しておきます」
「そうだ、すみませんリンディさんこの子見ててくれませんか?」
「ええ、分かったわ」

ベルダンディーをリンディに預けた。

「カティ、みんなの事頼んだね」
「おうよ!、ってそうなると俺の飯は?」
「私の分あげるから」
「しかたねぇな」
「我々のことだったら心配せずとも」
「あのなシグナム、1000kを10分以内で行くんだぞ。どんくらいのスピードか分かってるのか?」
「たっ、確かに……」
「離れたら離れたで面倒だから一緒にいなさい。さて諸君、そろそろ行こうか」

訓練生や隊員は軽装甲のタクティカルアーマーを着込んでいた。
基本は同じだが武装タイプやカラーリングの違い、小型ブースター付きの機械翼を生やしたタイプもある。

「教育隊は訓練生の10秒後に出発」

クレロスのブレスレットが光り、体を覆うと皆と同じタクティカルアーマーに成った。

「さぁ!。汝、料理を求むるなら最強を以って証明せよ!!」
『オ――――――ッ!!』

一斉にスタートした。

「さて、俺達も行くか」

カティは巨鳥に姿を変え、みんなを背中に乗せ飛びだった。

「さて、私達も行くわよ、総合戦技教導教育隊第1隊、訓練生なんかに遅れをとるんじゃないわよ」
『おう!!』

教育隊も出発した。

「先頭集団はもう森を抜けてるな」

上空から見ると、森を抜けた草原に大きく巻き上げる砂塵、訓練生達がちらちらと見える。

「開始して30秒経ってないのよ」
「それだけ速いってことだ」

カティは先頭集団に向かい飛ぶ

「隊の連中はまだみたいだな」

そこへ後方から砂塵を上げ猛スピードで追いかけてくる者一人。

「おっ、アルトが来た」

アルトは後続集団を抜き、真ん中あたりまで来た。

「あっ、早速始まった」

位置をキープしたと同時にアルトに攻撃が始まった。

「あちゃ〜、見事にタコ殴り状態」
「いや、なかなか面白い会話ですね」
「うん」
「えっ、聞こえんの!?」

アニスは右耳に付けていた通信機をみんなの前に置いた。

「"……………"」

少しずつ会話が聞こえてきた。


「畜生!!、あんなかわいい嫁さんもらいやがって!!」

罵倒と同時にパンチやキックが入り

「うるせぇ!!。テメェもほしかったら多元世界へ旅発て、永遠にな!!」

言い返すと同時にやり返す。

「去年までは半人前だったのに!!」
「それは言わない、お約束だろうがぁ!!」

一人に強烈な蹴りが入り、後続を巻き込み後方へ転げていった。

「それで嫁さんはどうなんだよ?」
「そりゃいいオンナに決まってるだろ、美人で強くて礼儀正しく、
ちょっと嫉妬心が強いけどそこがかわいいんだなそれが!。
昨日だって"二度と離れられないように俺をチョーキョーする"とか言って迫ってきやがった。マジかわいい!!」


「………」

通信機から聞こえてくるアルトののろけにフェイトはただ顔を赤くして俯いていた。

「すごいこと言ってるねぇ」
「ほんと、孫の顔が早く見たいわぁ」
「お母さん!!」
「私達5人の中で一番進んだわね」
「アリサぁ」
「大体、双子や三つ子が生まれる確率が高い。名前は複数考えていたほうが良いぞ」
「カティさんまでぇ」
「そういえば変じゃないか?」
「何が?」
「クレロスさん達がまだ追いついていませんね」
「あっ!?」
「考えてみればそうやね」


「みんな、気をつけろよ。あの連中のことだ、どこから来るか分からんぞ」
『おう!!』

言う束の間、空間が揺らめき教育隊が現れた。

「ちっ、やっぱり迷彩で隠れてやがったか!!」
「囲まれてるぞ!!」

前後左右上空、完全に囲まれ

「ファイアー・ピット!!」
「アーリィ・アロー!!」

魔法による集中砲火。

「すごいな」
「これじゃひとたまりも無い」

傍から見れば反撃を許さない一方的な攻撃。
死人が出てもおかしくはないのに、それでもクロレスはそう命じた。
訓練生を信頼しているのか、それともこれしきでは厳しい戦場を生き残れないと振るいにかけているのか、
それは彼女にしか分からない。
それでも教育隊は命令を信じそれを実行している。

「こりゃ全滅かな」
「アルト大丈夫かな?」

辺りが砂塵に覆われる中、一筋の閃光が教育隊に向けられて飛び出してきた。

「なにっ!?」

それを機に内から外に向けられる何十条もの砲撃。

「へぇ、訓練生もなかなかやるな」

眼下には砂塵と閃光、まさしく乱戦状態。
しかし、そんな乱戦でも駆けるスピードは落とさず時にはセイバーでの剣戟をも繰り返すところを見ると
彼等の戦闘技術がどれほど高等かわかる。
そして向うに見えるのは巨大なビル群。

「残り4分、距離450、ラストスパートだな」
「なら、追い込みをかけよう」

いつの間にか近くをクレロスが飛んでいた。

「ララ、ラジュオ……」
「げっ、カイザ・ワーズ!!」

詠唱開始と共に教導隊が引いていった。

「連中が引いていくぞ」
「やばい!、真上だっ!!」
「ヴァジュラ、マハ・ドラグ・ファイア、フリーッ」
「させるかよ!!」
『ドラグ・スレイブ!!』

上空、地上、一斉に放たれる赤い閃光、それはぶつかり爆風と熱が襲った。
それを核爆発と例えるならなんと甘い考えだろう。
その熱はすべてを無に帰し。
その熱き風はすべてをなぎ倒す。

教導隊は十分に距離をとっていたが、爆風に巻き込まれ、
カティもみんなを振り落とさないように必死に翼を羽ばたかせる。

「すっ、凄まじいな」

爆発が止むとそこにはクレーターが出来ていた。

「みんな大丈夫やろか?」

よく見るとクレーターのあちこちに死体のように転がっていた。

「っはぁはぁ、大丈夫よ。外傷はあるけどみんなヴァイタルは正常よ」

肩で大きく息をしながらクレロスは言う。

「っててて、ひどい目にあった」

屍の山と思われる光景から最初に立ち上がったのはアルトだった。
その後、訓練生、教導隊の中にも続々と起き上がる者がおりシティを目指した。

「それじゃラストスパート!!」

すぐそこに見える巨大なビル群を目指し駆ける。
だが爆発の影響なのか皆調子が悪く結局クレロスが軽々とゴールした。

「ダァ――――ッ!!、アイ、アム、ナンバーワン!!」

正門前で勝利の雄叫びを挙げているとアルトを初め後続が次々とゴールした。

「はぁ、はぁ。ひでぇよ、カイザ・ワーズ版のドラグ・スレイブやるなんて」
「戦場に卑怯も何も無いのよ」

そこにみんなを乗せたカティが降りてきた。

「ねぇねぇカティ、私勝っちゃった。褒めて褒めて」
「はいはい、おめでとう」
「んじゃ、勝利のご飯でも食べに行きますか」
「その後は後片付けな」

突然、男の声が発せられ振り向くと

「あっ……ユウリィ司令官……」

そこには、腕組みをして仁王立ちしている男が。

「どっ、どうかなさいましたか、司令官?」
「あれは、お前らの仕業か?」

彼の指差す先には半壊したビル群があった。いや、周りをよく見ると正門側の建物が半壊していた。

「あら〜、どうしたのこれ?」
「誰かさんがシティ400M圏内でカイザ・ワーズ版のドラグ・スレイブなんか撃つからだ」

こめかみに浮かべた血管をピクピクさせながら言う。

「シールドは?」
「最高出力でこれだっ!」
「私だけじゃないのに……」
「てめぇら教育隊と訓練生、重傷者以外全員でだ」
「ご飯食べてからじゃダメ?」
「まぁ、それぐらいは許そう。だがな、一人でもサボったらシティ全員510万人が敵になると思え」
「さっ、さっさと食べてきまーす」

彼のドスの聴いた声にクレロスは乾いた笑みを保ちつつ、リンディからベルを受け取り足早に去っていった。

「んじゃ俺達も」

アルト達が入ろうとすると

「カティ、アルト、お前らは修復参加しなくて良いぞ」
「えっ、どうして?」
「カティは客人の輸送で事に関与していない。アルトは客人を相手せねばならん。
それに、新婦を修復ごときで待たせたら妻達に殺される」
「ブーブー、ヒイキダ―」

行ったと思ったクレロスが不満を漏らしている。

「うるせぇ、新婚の特権ってやつだ」
「まぁ、それも一理ある。アルト、フェイトの相手をしてあげなさい」
「姉貴がそれで良いならお言葉に甘えさせてもらう」
「俺は、姉貴を手伝うよ」
「カティ……」
「直すのにまた壊されちゃ困るし」
「はぁ〜、そうだな」

カティとユウリィはやれやれと手を仰ぎ言った。

「あ・ん・た・達ねぇ……」
「さて諸君、料理長の特別料理でも食べに行くか。その後、仲間の回収とシティの修理だ」
『へぇ〜い』

みんなは食堂に向かった。

「へぇ〜、上から見て街だぁって思ったけどほんとに街みたいだねぇ」

エイミィが周りをキョロキョロ見ながら呟いた。

「ラーナ訓練シティ、ユニバーサル・フォースの軍人になるための登竜門ね」
「あらっ、皆さんもう帰ってきたんですか?」

そこにミリィが現れた。

「ミリィ」
「何処に行ってたの?」
「はい、ちょっと第5GSドライブの抽出エネルギーに大幅な差があったのでGSライドを見てもらってました」
「調子は?」
「はい、もう差もなくなりましたので大丈夫です」
「そう」
「アニス、それと彩さんから通信がありました。銀河標準時2時までにジェダイ大聖堂に出頭するように、です」
「そう。昼食を摂ったら出発するわ」
「了解しました。それでしたら皆さんはどうします?」
「連れて行く。あそこだったらシグナムが喜びそうだから」
「そうですね」
「?、何か言ったか、ノクターン?」
「いや、別に」


食堂に着くとそこはもう戦場だった。
これほどの規模のシティの食堂は広いはずだ。
現に東京ドームのマウンドかと思えるほどにここの食堂は広い、
しかし今は沢山の兵士が押すな押すなの大騒ぎ、まさしく食を求めての戦争状態だった。

「主、私の後ろへ」

ザフィーラを先頭にヴォルケンズははやてをガードしていた。

「いつもいつもここは戦場だな」
「軍でも有名だからなっ!!」

カティとアルトは乱闘で吹き飛ばされてくる人からクレロスとフェイトを守っている。

「こんなんじゃ、ご飯食べれないよ」
「あっ、そういえばスズナがお前等の分は他の場所に用意してあるって言ってたな」
「他の場所って何処?」
「それは……あん?」

ユウリィが何かに気づくと皆もその方向を振り向いた。

『ガルルル……』
『ヒィィッ!!』

そこにいたのは先ほどまで食料争奪戦をしていた兵士達。
その野獣のような気迫にみんなは思わず引いてしまった。

「司令、他にも料理あるんですか?」
「すまんなお前等、それはこいつ等の為に料理長じきじきに作ったものだ。それを奪ったなんて知れてみろ」
「うっ……」
「シティで料理長を敵に回すとどうなるか忘れたわけじゃないよな?」

兵士達は数秒考え、また食の戦場へと身を投じていった。

「ふぅ〜、何とかしのげた」
「さすがですね、一触即発の状況を打開するなんて」
「さすが司令官だ、クロノ提督とは格が違う」
「シグナム、それ言いすぎだぞ」
「なーに、シティで料理長を怒らせるととんでもないことになるからな」
「そんなに強いの?」
「強いのは強いが、それ以上に料理長はシティの食料の搬入・管理・配給まで一手に担ってるからな、
怒らせて飯抜きにされちゃたまんねぇよ」
「ははっ、確かにそれはマズイね」
「俺達の資本は食料だ、それを止められることは地獄の業火に焼かれることよりもつらい。
だからシティの司令官でも料理長に逆らえない部分はある」

そしてユウリィに連れられてしばらく時間が過ぎた。

「さぁ、ついたぞ」

到着したところは軍港ドックエリア、目の前にはファルコンが停泊していた。
「なるほど、この中ならまぁ安全だわ」

みんなは乗艦し食堂へ向かった。

『わ〜っ!!』

ドアを開けるとそこには豪華な料理がテーブルに並ぶ。

「わ〜い!!、肉だ肉だ!!」
「ごちそうです〜」
「こら、ヴィータ、リィン!!」
「さぁ、みんなで食べましょ、ユウリィもどぉ?」
「いいのか?」
「嫌なら別に行けど」
「いや、食う」
「それじゃ頂まーす」

人数が人数なだけにパーティーみたいな昼食が始まった。

「はい、ユーノくん、あーん」
「あっ、あーん」
「アルト、ご飯粒ついてるよ」
「あっ、わりぃ」
「……フェイトはともかく、なのはがユーノに積極的にアプローチしてる……」
「仲良しさんだね」
「ほーっ。ねぇねぇクロノくん、はいあーん」

なのはの仕草を見て、はやても小さく分けたハンバーグをクロノに差し出した。
「いいよ、自分で食べれるよ」
「ブーッ!」
「こらテメェ、クロノ!!。はやてのを断るつもりか!!」
「そんな人はメッです!!」
「わっ、分かったよ。あーん」
「おいしい?」
「う、うん……」
「こっちはこっちでちょっとは進展したみたいね」
「ほんとに何があったんだろうねぇ」
「一部ストロベリーな雰囲気で他は殺伐としてるわね」

アリサの言うとおり、なのは達が独自の空間を展開しているのに対し、他の人達は乱闘状態だった。
乱闘といっても殴り合いではなく、席に就き自分の料理をキープしつつ
ナイフやフォークを使い他の人の料理を奪いあっていた。
アリサは思った、食器が凶器になるんだなぁと。

「よう、そこの可憐なお嬢さん方」

二人に食べ終わった兵士が声をかけてきた。

「なんか御用ですか?」
「美女に声をかけないなんて失礼だろ?」
「ふんっ!!、見え透いた声のかけ方なんてするんじゃないわよ!!」
「はっ、はい?」
「ごめんなさいね、今虫の居所が悪いみたいだから」
「そりゃ仕方ねぇや」

男達はガッカリして去っていった。


「あら、ユウリィさんって奥さんが3人もいるんですか?」
「しかも可愛い妹さん達、もうウハウハですねぇ」
「いや、実際、大変ですよ」
「お子さんは?」
「はい、6人ほど、今は全員成人してI・E・S・Tにいます」
「I・E・S・T?」
「独立エクセリオン特殊部隊、U・F第0独立師団所属、総合旗艦を有しているから軍総司令部にも所属している部隊よ。
ミリィや私もそこの軍籍」
「別名、世界守護には忙しくて軍職では超暇な部隊」
「おかしな言い方ですね」
「まぁ、実際見てみるといい、午後から呼び出し食らっているようだから」
「なんかその言い方イヤ」
「学校の先生に呼び出されている問題児みたいですねぇ」
「さて、みんなあらかた食べたようだし、作業を始めますか」
『おーーーっ!!』
「アニス、食器はこっちで片付けておくから、もうそろそろ行ったほうが良いよ」
「わかった、ありがとう」
「アルト達のことは頼んだよ」
「分かった」

クレロス達は食器の片づけを手早く行い、降艦していった。







あとがき

Krelos:4月なのか、なんとなく調子たが出ない。
クレロス:組織のうつり変わりの季節だからね。
Krelos:さて今回はシティ(駐屯基地)での話だったわけだけっど。
クレロス:ガイアのあるゼロ星系第4惑星フォーレ、公転軌道がガイアに近いので緑に覆われた森林惑星。
Krelos:ユニバーサル・フォースの基幹ともいえるラーナ・シティがある星だね。
クレロス:作者の作品にネタ的に数多く登場するシティでもある。
Krelos:まぁ、紹介はこれぐらいにして。次回は、はやての今後に影響を及ぼす出来事が起きます。
クレロス:ああ、恒例のアレね。





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