「さて、コルサンドへ行きましょうか」
「コルサンドって何だ?」
「銀河社会の中心地、すべての経済と司法を司る首都惑星です」
「出港。十分な距離を取った後、浮上、コルサントに向かう」
「了解」

沖に出ると、水しぶきを上げてファルコンが浮上し大気圏を抜け目的地に向かおうとした。

「ん?」
「どうしました?」
「いや、なんか変な感じがして、こう戦いの前の静けさというかなんと言うか」


第6話
海賊強襲


その時であった。
けたたましい警報が艦内に響く。

「警報!?」

同時、前方の宙域が瞬き、数隻の戦艦が現れた。

「インビンシブル圏じゃなく、こんなところにゲートアウト?」

その間にも続々と戦艦が現れる。

「変です。スケジュールにはこの時間、この宙域でのゲートアウトは無いはずです」
「シティに対し警戒警報、第一種警戒態勢」
「了解。……マスター、ラーナのユイリィ司令官から通信です」
「繋いで」

メインスクリーンに映し出されるのは先ほどのユイリィ司令。

「"こちらでも確認した、何なんだよあれは?"」
「私もさっぱり。大気圏を出たらいきなり現れたの。しかもスケジュールには無い」
「"イリーガル……海賊か?。でもフィールドは?。
あれがある限りゲートアウトチケットがなきゃゼロ星系には入れんぞ"」
「私にも分からない。とりあえず艦隊の発進と星系シティに伝達を」
「"了解、とりあえず艦隊を送る。ちっ、こんなときによぉ"」
「さて、みんな。これから我が艦は戦闘に入る。シートベルトをしてしっかり捕まってて」
「戦闘って、まだあれが敵だって証拠は――――」
「ガイアがあるこのゼロ星系には、第10から第4惑星にかけて空間絶断フィールドというものが張られていまして、
ゲートアウトチケットというものが無ければ星系内でのゲートアウトが出来ないようになっているのです」
「チケットは軍が発行し管理し公開される。スケジュールに載ってなければ違法。
おまけにこのフォーレ宙域に出るって言うことは訓練シティが目当てってこと」
「ラーナは軍の中でも重要拠点ですからねぇ。訓練施設以外でも主要部隊が駐屯してますしね。
それでどうします?、艦隊、数、ギガ・クラスからHテラ・クラスまでおよそ1万以上、
そのほとんどが擬似ヴァルキリー艦、距離12万5千、……ウォーニングスコープ(警告)反応、
ありません。待ちますか?」
「いいや――――」

その時であった。
敵艦隊の一部が装甲の一部を開きレンズがせり上がり、突っ込んできた。

「一部艦、ファランクスレーザー展開!」
「シールド展開!、急加速!!」

ファルコンの周りに透明なシールドが張られ、同時に急加速。

「急制動」

惑星から離れたところに止まり、同時、敵の攻撃が開始された。
数千をも数えるビームがファルコンへと向かう。
しかしビームは、シールドの面に沿って湾曲し、軌道をずらしている。

「シールド、5%減」
「向こうも荷電粒子レーザーか、海賊にしてはいい武器持っているね。艦隊は?」
「あと5分と言ったところでしょうか」
「よし、このまま艦を楯にする」

ビームの幾つかがシールドに跳ね返り、こともあろうかにフォーレの草原地帯の一角に着弾し、
宇宙空間からでも分かるほどの炎のドームを広げていた。

「あっ…………」
「シールドの反射計算ミスったわね。しかも確かあそこらへんはシティの周辺よね?」

「……事故と言うことで」
「"事故じゃねえだろ!!"」

通信で怒鳴り出てきたのはユウリィ指令。

「"こっちはさっきの影響で守り薄いんだから頼むぜ"」
「分かった。……ミリィ、サイ・システム接続75%。FCS/MCS、比率6/4、全コントロールを私に」
「了解。シーカーボール生成。全ファランクスレーザー展開!」

ブリッジが暗くなりコンソールの灯りのみに。
アニスの目の前にはフォログラムであろうか、床から伸びた光が球体を形作り
そこに自艦と敵艦の位置をマーカーで映し出す。
同時、敵艦と同じようにファルコンも装甲の一部を開きレンズをせり出し戦闘の準備は万端。

「さて、いきま――――」
『"ちょっとまったぁ!!"』
「って?」

通信から聞こえる複数の声。
同時、ブリッジの両サイドを掠める複数のガンダムと戦闘機。

「あれは第7ライン連艦隊のトップ・ワン・トップ(第一疾走部隊)」
「やっと来たね」

続いて惑星の方向から艦隊と艦載機の一団が近づいてきた。

「"こちら第7ライン連艦隊旗艦長アリス=ライン中尉です。それでお祭りの会場ってここかしら、将軍?"」

通信に出たのは若い女性。
そのおっとりした表情からとても軍人には見えない。

「ええ、そうよ。それで中尉、艦隊の状況は?」
「はい。我が第7ライン連艦隊、艦船144隻、Xs(エクス)−グラスパー48機、
ガンダム60機。全て戦闘準備完了です。パイロットがほとんど新兵ですけど大丈夫だと思います。
全体旗艦を任せてもよろしいかしら?」
「ええ、いいわよ」
「おい!、お前頭大丈夫か?。この戦力で適うはずないだろ!。無謀にもほどがある!!」

ヴィータの言うとおり、傍から見れば無謀だ。
1万以上もの艦隊に300にも満たない艦隊が挑むのだから。
何処の歴史上にもそんな無謀な戦いはなく、あったとしても敗北に終わっているだろう。

「ふっ、そんなこと」

しかし、それをアニス達は鼻で笑いのけた。

「それは普通の場合の話ですわ」
「海賊艦隊相手ならこれぐらいの規模で十分、いや、ファルコンだけでも十分だわ!!」
「全軍に伝令、戦闘体制。OCS(オール・コマンド・システム)構築。
第11、12分艦隊を残し、全艦トップ・ワン・トップに続け!」

空間モニターに映し出される艦のマーカー、それぞれが繋がりネットワークを構築する。

「さぁ、行くぞお前ら!」
『"おう!!"』

トップ・ワン・トップが発進し後に艦隊が続く。

「おりゃぁ!、まずひとつ!!」

先行部隊の1機が戦艦に取り付き、取り出したビームソードでブリッジタワーの中腹を真っ二つ、
ブリッジ部が爆発し沈黙した。

『脆っ!!』

一瞬だが、みんな戦場ということを忘れて驚いた。

「すげぇ、戦艦を真っ二つにしやがった」
「驚くところじゃありません!!」
「何あの装甲の脆さ、私達をバカにしてるの!!」

驚くヴィータとは反対にミリィとアニスは激怒していた。

「バスタービームソードじゃないと標準の装甲は断ち切れないんですけどねぇ、
標準装備のビームソードで断ち切れるなんて驚きですわ。装備にお金かけて戦艦の装甲をケチったんでしょうか?」
「確かにこれほどの規模なのに海賊旗も見たことない」
「こんな状態でフィデラムドライブをしてくるなんて、ホントにおバカさんですね」

アリスは口元に手を当てオホホホと笑っている。

「これなら5分10分で終わりそうですね」
「マスター、敵も艦載機を発進、数1000、解析から多数が3世代前のMSです」
「よし、ヒヨッコ共、型遅れだからって油断するんじゃねぇぞ!!」
『はい!!』

ガンダム、Xs−グラスパー混合隊と敵MS部隊の戦闘が始まる。
無音の宇宙空間で爆発光が花火のように咲き、戦場であることを実感させる。

「こっちも負けてられないわよ。複数標的同時ロック!、攻撃開始!!」

艦隊も攻撃を開始する。
数千、数万条ものレーザーが飛び交い、戦場は広がっていった。

「アリス中尉」
「"なんでしょう?"」
「有人無人どちらでもいいから適当に敵艦1、2隻を掴まえて、フィールドを越えてきた原因を知りたい」
「了解しました。なら11分艦隊に担当させ、そのまま星に降ろしますね」
「それでいい、司令には言っておく」
「はい、11分艦隊聞いていましたね?」
「"こちら11分艦隊、了解しました"」
「兵装はイオン砲のみ許可、ほぼ無傷の状態でお願いします」
「"了解"」

軌道近くに待機していた艦隊も動き出した。

「敵損害15%、我が軍損害なし」
「すごい、本当に圧倒してる」
「豪語するだけのことはあるな」
「順調だけど油断は出来ない。時々軍並みの兵装と戦略を導入してくることがあるからね」

アニスは考える。

「ミリィ、包囲戦の場合、私らが勝つ勝率は?」
「65%です」
「敗因の35%は?」
「仮定で、相手がサイジング(波刃)兵器を持ち使用した場合、こちらが少数な分、艦隊に与えるダメージも大きいです。
それに加えてパイロットが新兵な分、回避率も上乗せされます」
「確かに。ウイルス砲を装備している可能性は?」
「映像分析の結果、クワイアット社製、VCX−46ウイルスキャノンと同種の砲影が見て取れますが、
電波障害による荒い映像のため明確ではありません」

アニスはミリィの意見を取り入れ、戦略を巡らせる。

「やはりあの手しかないか……。ミリィ。取得した情報をOCSに搭載。
通達、超将軍の権限により全艦隊にゲートアウトチケットを発行。作戦行動中のフィディラムドライブを許可する。
OCS再構築、艦隊を4つに分け、敵艦隊を中心にした半径5000キロ四方に配置、包囲戦で一気に畳み掛けるわよ」
『"了解!!"』

返答と共にモニターのマーカー郡が4組に再構築され、一部の艦隊が急加速し短距離超光速航法に入った。

「ちょい待って!。今ミリィさんが言ったこと聞いてなかったんか?」

そんな中で異議を唱えたのははやて。

「包囲戦になれば被害も出るって、無謀や」
「位置に着いたら各自撃ち方始め」

それだけ言い残すとシートから降り、はやての方に向いた。

「………アルトから聞いたんだけど、はやてさんも指揮官らしいじゃない?」
「はい。それを踏まえたうえで言わせてもらしました」

指揮官とは部下や部隊の被害を最小限に留め、迅速に事を収める。
これがはやての信じる指揮官の姿だった。
しかしアニスは危険だと分かっていても部下をそこに行かせるのだと言う。

「はやてさん……あなた部隊を持ってもいずれ潰すかもね」
「何だと!、テメェ、はやてになんて事いうんだよ!!」
「まぁ、待てヴィータ」
「それは……どういう意味ですか?」

はやての声が震えている。
今まで指揮官として部隊を率いたこともあった。
これから部隊を立ち上げ運営していく自身もあった。
だけど、それが一気に踏みにじられた気分だ。

「確かに私がやろうとしていることは無謀よ。部下の安全や艦隊の被害を考えたなら誰もが避けると思う。
しかし、それでは部隊が育たないの」「部隊が育たない?」
「ええ。部隊もまた家族のようなもの、親である指揮官は子である部下達の命を守るいために戦いの先頭に立つものよ。
しかしそれではだめなの、何時も守っているだけでは、守られているだけではいつかその部隊は堕落し、
ほんの数%の敗因でも作戦を台無しにしてしまう」
「あらゆる戦略、攻撃を体験させ、時には窮地に陥らせ、痛みを分からせ、
自ら生き抜く力を養わせなければなりません」

話に加わるアリス。

「部下が窮地に陥った時、その痛みを最小限に治め、勝利への戦略をめぐらすのが指揮官の務め。
それでも負けることもあるかもしれない、でもその経験は必ず糧となる」
「それを繰り返すことで指揮官も部隊も成長し、いつしか精鋭と呼ばれるようになるのよ。
それは何処の世界、どんな職種の隊でも同じことだと私は考えるわ」
「……………」

爆発光が照らす中、アニスは真剣な眼差しではやてを射抜く。
はやては何かを考えるように黙り込んでしまう。
それは正論であり一つの理想形とも言える。
そのため皆口を噤み、異を唱えるものはいない。

「"おいお前ら、戦場ほったらかしにして何はなしてんだよ!!"」

パイロットの一人が怒鳴ってきた。

「ごめんなさい。それで、戦況はどぉ?」
「"順調だ。数も減ってきてるし、しかし――――"」
「ええ。ここからが正念場ね」
「"こちら捕獲部隊、擬似ヴァルキリー艦1隻を確保及び制圧完了。速やかに戦線から離脱する"」
「了解。それじゃ――――」
「敵艦数隻より魚雷発射!!」

見ると数機のミサイルが円状に発射されている。

「光子魚雷!?」
「いえ、弾頭部が違います!」
「?。………!、全機、艦隊のシールド圏まで後退!。衝撃波来るわよ!!」

弾頭の爆発と共に扇状の蒼い波が一定方向に上下左右、斜めに広がる。

「指向性の全方位!?」
「なんてレアなものを。シールド全開!。防ぎきれっ!!」

蒼い波は後退する部隊に襲い掛かる。
それぞれ回避を試みようとするが、追いつかず、機体が衝撃波によって切り刻まれる。

「くっ!!!」

艦隊にも衝撃波が襲い掛かる。
シールドに衝突し、互いに相殺しあう。
艦はコンバータを使い、クルーの精神エネルギーを源にして稼動する。
シールドも例外ではなく、消失を防ぐためにクルーの精神エネルギーを消費し続けなくてはならない。
現に、アニスは、精神力の消費のためか額に汗が滲んでいた。

「っ、はぁ、はぁ……」

衝撃波が消失し、艦隊は何とか防ぎきった。
しかし中にはシールドが消失し中破する艦もあった。

「何これ、エネルギーの消費が激しい」
「無理もありません、計測の結果、通常のサイジング兵器の3倍の破壊力です。
いくらマスターの精神力でも疲労を覚えます」
「被害報告!」
「艦隊損害率41%、艦船中破5、小破50、艦載機大破4、中破6、小破10、重軽傷者29」
「はぁ、はぁ。さすがラーナ直属の艦隊ね、負傷した艦と機を後退、
ダメージ・コントロールを最優先。残りは攻撃を――――」
「マスター!、例の砲塔が回頭、こちらをロックオンしましたっ!!」
「シールド再展開!!」
「今の精神状態じゃ危険です!」
「かまうな!、私はもとよりそれに特化して造られているのだから!」
「……了解」

再びシールドが構築されるが、砲から放たれたビームは軽々とシールドを貫き装甲を掠った。

「非破壊性!?」
「単なる可視光線?……チッ、やられたっ!」

アニスはコンソールに指を躍らせキーを叩く。
同時、艦内に警報が響く。

「あちゃ〜、やはりウイルスキャノンでしたか」
「ミリィ、我が艦のすべてのオンラインシステムをカット。あとワクチンプログラムを投与、あなたも避難して」
「"どうしました?"」
「システムにコンピュータウイルスが侵入したのよ」
「"あらまぁ、あの情報は本当でしたのね"」
「のようね。さっきの攻撃、ファルコン意外に受けた艦は?」
「"そのような報告は受けていません"」
「よかった。全艦に通達。我が艦はウイルス進入によりシステムを停止しスタンドアロンとなる。
OCSをフルオープン。各自殲滅に当たれ、なお不明確だった情報が更新された、OCSの最終更新で情報を得よ。
アリス、あなたの艦は私の護衛について」
「"了解しました"」
「交信終わり、各艦、機健闘を祈る」

通信終了と同時、艦隊と部隊が動き出した。
そして停止するファルコン。
動力音が消え、五感に届くのは戦闘の爆発光とアニスの叩くキーの音のみ。

『うがぁ―――――っ!! 』

ほぼ無音状態の空間に総長く人間の精神が耐えられるはずも無く、ヴィータとアリサが雄叫びを上げた。

「落ち着けヴィータ」
「アリサちゃんも」
「だけどよぉ、ザフィーラ」
「耐えられないのよ!」
「確かに精神衛生上よくないですねぇ」
「うがぁ―――っ!!、早くなおんねぇのかよ?」
「落ち着くですぅ」
「騒がないで。今ウイルス除去してるんだから、キーミスしたらどうするの、下手すれば自爆装置が起動しちゃうのよ」
「そっ、それを早く言ってよ」

ヴィータ達が騒いでいる中、はやて達は戦況を見ていた。

「…………」
「すごいな、陣がぜんぜん崩れていない」
「ええ、指揮系統が崩れたのに」
「すごい」
「アリスさんが指揮を執っているの?」

5人が驚くのも無理がない。
通常なら最高指揮官が潰れた場合、どんな優秀な副官がいても一度指揮は崩れその間に敵に押し戻されてしまう。
しかしこの部隊は統制の乱れもなく、逆に勢いがついているようだ。

「これはどういうことなの?」
「OCSさ」

答えたのはアルト。

「OCS、全指揮体制。さっきアニスが言った部隊と指揮官の理論の集大成さ。
普通なら指揮系統は上から下の絶対統制、でもU・Fは違う。
リアルタイムに変化してゆく戦況にあわせて情報を共有し更新し状況を打開できる策を持つ兵士がいればその指揮権を託す」
「1つの任務で指揮官が変わるのか?」
「ああ。見た感じ今戦っている部隊も階級など関係なく数人が指揮に当たっているだろうな」
「まさしく経験がなせる業ですね」
「………」
「どうしました、主はやて?。先ほどアニスが言ったことが気になりますか?」
「ううん、なんでもあらへんよ。なんでもな」

はやてはこう言っているが、彼女が後にとんでもないことを言い出すとは、今この場にいる者は誰も思わなかっただろう。


「"チーフ。あらかた片付いたぜ"」
「"こっちもだ"」

ガンダム・戦闘機部隊はアニスの最終交信の後、その高機動性をフルに使い、
脅威たるウイルスキャノンを搭載している戦艦を叩いていった。

「よし、そんじゃアニスが復帰する前に片付けちまうか」
「"なぁ、アニスが復帰するかこっちが片付くか賭けねぇか?"」
「"おっ、いいねぇ。俺は敵殲滅に夕飯2日分"」
「"俺一週間分"」
「"それじゃ私はアニスの復帰に朝昼晩1週間分"」

会話に入ってきたのはアリス中尉。

「"こりゃまた大冒険だな"」
「"それほどでもないですわ。あの子の能力を分析すればおのずと分かることですわ"」
「"とか言って手抜かないでくださいよ"」
「"当たり前よ"」


「よし、除去完了、ミリィ、全システム再起動」
「"了解"」

それからしばらくして、ファルコンが息を吹き返した。

「みんな待たせたわね」
『"ブーブーブー!!"』

しかし、帰ってきたのは歓喜の声ではなくブーイングの嵐だった。

「?。みんなどうしたの?」
「"それがですね、アニスの復帰が先か敵殲滅が先か賭けてたんですよ"」
「それで私が先に復帰したからブーイングの嵐と?」
「"はい、儲けさせてもらいました"」
「"中尉の一人勝ちだもんなぁ"」
「これから1週間、朝昼晩とご飯を持ってきてくださいね。ちょろまかしてもだめですよ、
フライトレコーダ、オペレーションレコーダの二つ、おまけにOCSのログに記録が残ってるんですから」
『"へいへい"』
「さて、話が済んだところで、指揮権を私に返還、状況報告を」
「"敵損耗率89%"」
「"ウイルスキャノン、及びサイジング兵器搭載艦、確認できる限り全て沈黙以上"」
「報告確認。さて残り11%、一気に行こうか。全機速やかに帰島、
各艦、マイクロウェーブ送信要請、プラズマブラスト発射用意」

ブリッジ下から6つのピットが飛び出し艦の前方に整列し辺を結び六芒星を形作る。

「…………第7ライン連艦隊既存艦及び旗艦支援艦ファルコンよりマイクロウェーブ送信要請……複数目標送信開始」

惑星フォーレの月にあるマイクロウェーブ送電施設。
暗い部屋の中、そこを管理・守護するサテライト・ヴァルキリー、サテラ=ヘヴィフィードは呟き、
施設のパラボラから艦隊に向かい複数のガイドレーザーが伸び
ブリッジタワーの付け根にあるクリスタルプレートに溶け込む。
そしてチャージされたマイクロウェーブが照射され艦内にチャージ音が木霊する。

「フルチャージまであと6秒。連動トリガーを回します」

アニスの目の前に擬似トリガーが現れた。

「目標照準、いきなり発射!」

各六芒星から放たれた数条の光の帯は一つにまとまり、敵艦隊を飲み込み、
その後には装甲の欠片すらも残っていなかった。

「敵艦隊、完全に消滅」
「作戦終了、全艦全周囲警戒を続行しつつシティに帰島。アリス、後のことはお願い」
「"了解しました"」
「ミリィ。コルサンドに向かって。みんなゴメン、私少し休むから」

アニスはおぼつかない足取りでブリッジを後にした。

「アニスさん、相当疲れているようですけど大丈夫ですか?」
「ええ、少し眠れば回復します。さて、コルサンドへ向かいますか、アニスが回復できるようにゆっくりとね」







あとがき

Krelos:語ると言葉もございません………。とりあえず作中で出てきた用語を数点載せますか。

・ギガ・クラス……戦艦のクラス表記、100m以上、1k未満を指す。
        なお500m以上だとH(ハイ)が付く。

・Hテラ・クラス……上記の上位クラス、5k以上のクラスの戦艦を指す。

・フィデラムドライブ……相転移空間超光速移動航法。この世界で一般的
           に使われているワープ方法。

・ウイルスキャノン……非破壊性のレーザーと一緒にコンピュータウイルスを放ち、
          照射した戦艦のシステムを破壊したり乗っ取ったりする兵器。

・サイジング兵器……爆発時の衝撃波で周りのものを切り裂く兵器。
          全方位はもちろん指向性のものもある。





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