時空航行船アースラの医務室。
そこに傷ついたアルトは眠っていた。

同時刻、ブリーフィングルーム。
ここには先ほどの事件に同伴した主要関係者が揃っていた。

「さて、今回の件だが、結論から言って次元断層も修復できたし一件落着したと言える」

「なぁ、クロノ、あいつって何者なんだ?。いきなり空間を切り裂くなんて信じられねぇぜ」
「俺も困惑している。有翼の種族は管理局が管理している次元世界には存在しないからね」
「あの少年の魔力も軽く計測したらなんとSSS+クラスだったんだから」
『SSS+!!』

皆は驚いた。
自分達が知る中でSSS+の魔力量を持つ者など存在していないのだから。
はやてですらSクラスの魔力量だ。

「ヴィータ、報告では少年の持つ長剣はデバイスなんだな?」
「かもしれねぇってだけだ。変な言葉言って切りかかったら爆発しやがって」
「たぶんあの長剣に何かしらの魔法を仕込んだのだろう」


第2話
アルトリウス


プシューとドアの開閉音がし白衣の女性が現れた。
その腕には彼がビリーセストと呼んだ長剣が抱えられていた。

「艦長、解析が終わりました」
「ありがとうマリー」
「何してたの?」
「もしデバイスだったら部品にメーカー名や彼の素性を示すものがあるかもしれないと思って
マリーに見てもらったんだ」
「へぇ〜、クロノにしては気が利くじゃん」

クロノはヴィータの言葉に苦笑し

「それでどうだったんだ?」

結果をマリーに聞いた。

「………」

しかしマリーは浮かない顔で返した。

「はっきりと言いまして、この長剣はデバイスではありません。単なる剣です」
「ウソだろ?。確かに喋ってたぜ」
「変わったことがあるとすればこの剣はとても硬い鉱物で出来ていることだけです」
「おい、どうした喋ってみろよ」

ヴィータはビリーセストを突いた。

(…………)

だが剣はうんともすんとも言わない。

「さっきの爆発で壊れたのかな?」
「マリー。他に彼の身元がわかるものはないか?」
「これといって手がかりになるものは……一応これが彼の持っていた荷物です」

そう言いテーブルに並べた。
並べられたものは少なく、小旅行にもいけないほどだった。

「…なんだろうこれ?」

なのはは並べられたものの中から30センチほどの2組の金属製の筒を手に持った。

「あっ、それですか?。スキャンしてみたんですけど、
内部にとても高性能の回路と高密度の多面体鉱石が組み込まれていました」

(NonTactus!! ―触るな!!―)
「!!」

突然の怒号になのはは硬直した。

「今なんて言った?」
(NonTactus!! ―触るな!!―)
「わからねえ言葉喋るな!!」
「なのはわかるか?」
「ううん、英語でもない聞いたことない言葉」
(Ti…Lumen!! ―チッ…ライティング!!―)
『わっ!!』

剣から眩い光が放たれ皆は怯み、なのはは持っていた筒を手放した。

「なっ、何だ?」
(手荒なことをしてすまない。彼女をみすみす死なせるわけにはいかなかったのでな)
『!!』
「喋った!?」

視界がだんだんと回復しみんなはビリーセストのほうを見た。

「君は喋れるのか?」
(ああ。私が喋る言葉は君達は会得していないと判断し、君達がわかる言葉に変更した)
「それは話が早い。早速だが話を聞かせてもらおう」
(礼儀としてまずそちらから話すべきではないのか?)
「んだと!!」

今にも飛びつきそうなヴィータを押さえクロノは言った。

「これは失礼した。俺は時空管理局提督、
そしてこの時空艦船アースラの艦長、クロノ=ハラオウンだ」
(時空管理局?)
「数多に存在する次元世界を管理しそこで発生する魔道師やロストロギアが起こす事件を解決する機関さ」
(魔道師……。ロストロギア……?。まいいそこらへんの詳細はアルトが目覚めてからにしよう。
そちらのお嬢さん方は?)
「高町なのはです」
「フェイト=T=ハラオウンです」
「アルフだよ」
「ユーノ=スクライアです」
「八神はやてや」
「主はやてに仕えるヴォルケンリッターが将、シグナムだ」
「同じくヴィータ」
「シャマルです」
「リィンフォースUです」
「ザフィーラだ」
「管理局整備課のマリーです」
「彼女達も管理局に属している魔道師だ。さて今度はそちらの番だ」
(私の名は準聖大剣“ビリーセスト・キャリバー”。我を造り鍛えたマスターがそう名づけてくれた)
「マスター?。あの少年のことか?」
(いや、アルトは我がマスターの弟に当たる。わけあって今は行使されている身にある)
「君達は一体どこから来たんだ?」
(私は従者の身だ、仮にも現マスターの許可なく話すことは出来ない)
「ふざけんな!!」
(……アルトが目覚めたようだ。あとは彼に聞いたほうがいいだろう)
「何故わかる?」
(私とアルトはレイラインで繋がっている、今の話も私を通して聞いていることだろう)
「行ってみよう」
(彼の荷物を忘れるな。その中には彼の手元にないと危険なものも含まれているからな)

マリーは荷物をまとめ始めた。

(金属製の筒には気をつけろ、不意に力をこめて握ると死ぬぞ)
「わかりました」

みんなは部屋を出て医務室に向かった。


「…………」

気づくとそこは見知らぬ天井。一遍のシミもない真っ白な部屋。

「っててて。そうか。ここはアースラって言う船の中だったな」

痛みに耐えながら体を起こす、翼が光り、その背中に溶け込む。
俺が気絶してからの事はビリーセストから得た情報で得ている。
もうすぐクロノ達がここに来るだろう。
しばらくしてドアの開閉音と共にクロノ達が入ってきた。

「お待ちしておりましたよ、クロノ艦長」
「なっ!!」

クロノは驚き一歩下がった。

「何も驚くことはないだろう。ビリーセストが言ったはずだ」
「そっ、そうだったな」
「さぁ、長い話になる、座ってくれ」

皆はそれぞれ椅子を出し座った。

「早速だが、話してもらおうか?」
「まぁ、待て。その前に……」

アルトはフェイトに手を差し出した。

「さっきはありがとう。君が助けてくれなかったら俺は溺れていただろう」
「あっ…いえ、どうも……」

フェイトは戸惑いながらも手を握り返した。

「あれっ、翼は?」
「これのことか?」

彼の背中から光が漏れ出し広がり翼の形になり羽ばたくと同時に具現した。

「うん、傷はもう治ってる」
「白くて綺麗やなぁ」
「俺の名はアルト、アルトリウス=ゼファー。アルトと呼んでくれ」
「それじゃアルト、あなたは何処から来たの?」
「その前に今この世界は西暦何年だ?」
「えっ?。2011年だけど」
「ということは……俺は2042年の平行世界から来た」
「未来人!?」
(正確には異星人でもある。アルトはこの地球から8億光年、
ちょうどこの星と反対位置にある惑星ガイアの住人だ)
「はぁ……」

クロノは頭を抱えた。

「そんなはずあるわけないだろ、異星人というのは本当でも時間を逆行してくるなんて、
ミットチルダの最新科学でも不可能だ」
「ミットチルダ?。ああっ君達の住む世界の名か」
「それより君はどうやって次元を渡ってきた?」
「どうやってって。この宝石剣で……ってあれ?」

アルトは置かれた荷物をあさり始めた。

「どうしたの?」
「ないんだよ」
「ないって?」
「なぁ、宝石で出来た短剣見なかったか?」
「私は見てないよ」
「あっ、そういえば……」

フェイトはアルトの腕を掴んだとき懐から何かが零れ落ちたのを思い出した。

「今頃太平洋の海の底かよ……」

アルトは頭を抱えた。

「その宝石剣というものが次元を移動する手段なのか?」
「ああ。数多ある平行世界を管理し、あらゆる世界にいける。
遥かなる過去この地に住まう宝石を冠した魔法使いの最高作品さ」
「この地に住まう魔法使い?。私達のほかにも地球には魔法使いがいるんですか」

なのはが聞き

「馬鹿な!!。この世界には魔法が確認されていない」
「そりゃ、隠してるからな」
「何でそんなことを?」
「魔術から生み出される奇跡を井戸から湧き出る水と同意、
その水をくみ上げる者達が増えれば一人にいきわたる水、つまり奇跡が少なくなってしまう。
これがこの世界の魔術師の基本理念になっているんだ」
「なるほど、一人でもその水を多く得るために存在を隠しているのか」

腕組みをしているシグナムが静かに言い放った。

「そう、魔術師同士でも敵対し、我先にと魔法へいたる根源へ目指しているんだ」
「?。魔法使いなのに、魔法使いを目指すのか。おかしくねぇか?」
「あのなぁ、魔法と魔術は違うの」
「ムッ、どう違うんだよ!!」
「……ファイヤーボール」

アルトの掌に小さな火球が現れた。

「俺は今、火を生み出した。でも現代科学ならこんなことをしなくても
マッチやライターってもので火が起こせるだろ」
「うん」
「魔術っていうのはな、そんな風に時間と手間と金をかければ実現できてしまう事柄を指すんだ。
それと違って魔法はその時代でどんな手を使っても実現できない事柄。
たとえば死んだ人間を生き返らせるとか次元や時間を自由に移動できることとか」
「なるほど」
「君達の使う魔法の原理は?」
「根本的に変わらない、生命が持つ力を元に奇跡を生み出す。ただ違うところといえば呼び方だな、
俺達は力を法力、術を法術、術者を法術師、奇跡を組む術式を紋章法陣と呼んでいる。君達は?」
「俺達はデバイスと呼ばれるものに魔法の術式を登録し、術者のサポートにしている」
「私の相棒、レイジングハートです」
「私はバルディシュ」
(Nice to meet you)

電子的な女性と男性の声と共に二人が持つ赤い宝石と金の台座が光る。

「なるほど、機械との融合か」
「なぁ、アルトはこれからどうするん?」
「う〜ん、宝石剣もなくしちゃったしなぁ、しばらくはこの世界に足止めだな」
(私の法力でも宝石剣を造るのは無理だ。ラグナ・ブレードで空間に入り込むって手もあるぞ)
「冗談言うな、あんなもんそう何発もでねぇよ」
「ラグナ・ブレードとは、さっき空間を切り裂いた黒い剣のことか?」
「ああ、俺達の中でも使える者が少ない、次元をも切り裂く神殺しの闇の剣さ。
でも法力と体力の消費が激しいんだよ」
「なら、しばらくこの艦にいたら。なぁ、クロノくんいいやろ?」
「そうだな、考えなくもない」
「あのぅ……」

和気藹々と話しているなかマリーが挙手した。

「何、マリー?」
「ロストロギアのことを聞かなくていいのですか?」
『あっ!……』

思い出したと驚き後、皆固まった。

「ううん……」

皆が固まった中、まず先に再起動したのがクロノである。

「ロストロギアって何だ?」
「俺達が管理している世界には過去に進化しすぎた技術や魔法が存在する。
それらを総称してロストロギアといっているんだ」
「なるほど、オーバーテクノロジーってワケか、んで君達の組織はそれらを管理し
それらが使われ起こされた事件を取り扱ってるわけか」
「物分りがいいな」
「なに、簡単な推理さ。んで俺に襲い掛かってきたあの影もその可能性があると?」
「ああ。あの影とはどうやって遭遇した?」
「そうだな、あれは大体3日前ってとこか。次元の狭間を旅していたらいきなり襲ってきやがった」
(交戦したがあの影は強かった。仕方なく逃げたのだがしつこく追いかけて刃を向けてきた)
「交戦と逃走、それをさっきまで繰り返したってワケだ」
「なるほど」
「畜生、最後の最後に逃げやがって」
「倒してはいないのか?」
「ああ、本体は逃げやがった」
「まだ事件は解決していないか……」

その時、ぐぅ〜と腹の鳴る音がした。

「何だ?」
「腹へったぁ。そういえば3日間何も食ってねぇ」
「ふっ、では何か食べようか」
(いいのか?、アルトは今や餓えた獣だ、この艦の食料など数時間で食い尽くしてしまうぞ)
「大丈夫だろう、この艦には数百人が長距離航行できるくらいのたくわえはある」

後に自分の発言が甘かったことを、クロノは知る由も無い。







あとがき

Krelos:この小説の副題の正式名称は『Fate After Happiness』、
『フェイトの幸せ』や『運命の事件の後に訪れる幸せ』と言う意味が
込められているんだぜ!。キラーン。
ビリー:Qui. Narro Repente? ―何を唐突に言うんです?―。
Krelos:お願いビリー。ラテン語+日本語字幕スーパーは連続でやるとちと作者も疲れるんで
日本語吹き替えにしてくれ。
ビリー:・・・・・・これでいいですか?。それより我がマスターの名を軽々しく騙らないでほしい。
Krelos:お前まで言うか!!。
ビリー:皆様、申し遅れました。私はビリーセスト・キャリバー、信念を貫く強い意志を込められて造られたものです。
Krelos:無視しないで(TT)。
ビリー:ところで作者よ。中途半端な7話とアレのラテン語詠唱は出来上がったのか?。
Krelos:・・・・・・すみません。まだです、アレのほうは日本語詠唱も考えていません(><)。
ビリー:たわけ!!。どうせ文法も通っていないラテン語ならいっそやめてしまえ!!。
Krelos:カチン!。それは言いすぎだよナイジャさん!!。この精神破綻者!!。
ビリー:莫迦者!、まだその名前で呼ぶんじゃない!!。それに誰が精神破綻者だっ!!。



10分ぐらい大喧嘩。



Krelos:ゼェ、ゼェ。とにかくラテン語詠唱はやめません。
ビリー:ハァ、ハァ。ふんっ!。ならせめてちゃんと読者が読めるものを書けよ。
Krelos:精進します。
ビリー:皆様、お見苦しいところを見せてしまいましたが、今日はこのへんでお開きとさせていただきます。






BACK

inserted by FC2 system