『辞令?』

ゼファー姉妹、ことは、だいちの4人に辞令が降りた。

「異動?」
「何で?」

辞令は4人とも同じ内容だった。
ことはは戦闘研修で、アリシア、プレシア、だいちは出向のため機動六課へ籍を置くようにとの命令書だった。


「"首尾はどうかね?"」
「ああ。指示通りにした」

とあるオフィス、薄暗い室内に置かれたデスク、唯一の光源である空間モニターから流れる男の問いにデスクの主が答えた。

「ですがよろしいのですか?。今あそこには戦力が集まりすぎているのですが。もし反撃にあえば――――」

「"その心配は無用です"」

言い終わる前に男は答えた。

「"作戦の第一段階は実験と解析です。対象が一纏めになっているのなら楽でいいでしょ"」
「それで実験はいつから?」
「"雛達の訓練もありますから2,3ヵ月後といったところでしょう。それに『アレ』の建造も始まっているからね。
あそこはモルモットの実験牧場だよ、『アレ』を強くするためのね。きっといい牧場になるよ」

クククと陰湿に笑い、部屋に響き渡る。
それを見つめるのは、何処か寂しげな一人の幼い少年だけだった。


第2話
来ました!機動六課


「まぁ、ウチの課の戦力が増えるのはええことや。せけど……」
「本日付で機動六課に配属になりました。プレシア=ゼファーです」
「同じくアリシア=ゼファーです」
「だいち=Y=ハラオウンです」
「ことは=T=スクライアです」
「何でこの子達が来るん?……」

はやてはぐっと肩を落とした。
自分の指揮する部隊に息子が配属されてきた、いわゆる"親の職場を見学に来た息子"状態で気恥ずかしいところがある、
なのはやフェイトも微妙な顔をしている、きっと同じ心境だろう。

「はい、受領します。早速なんだけど、君達の所属する部隊なんやけど、新しくストライク分隊を立ち上げます。
みんなそのまんま組み込みや、えっと隊長は、ゼファー二等空佐です」
「了解しました」
「まぁ、他の人達にはおいおい紹介するとして。それでは付いてきて」

4人は先行する3人の後をとぼとぼと付いていった。

「はぁ……」
「どうしたの、フェイトちゃん?」
「あの子達の所属って今度立ち上げたアルトの部隊だよね」
「そうや。ストライク分隊。あ〜っ、まさか娘二人に愛するアルト君を取られないか心配やんか?」
「そっ、そんなことないよ!!」
「まぁ、まぁ、そんなにムキにならなくても」

「何はなしてるんだろう?」
「さぁ?」

「ところでアルト君どこにいるんやろ?」
「あっ、ねぇスバル」

なのはは向かいから歩って来る青い短髪の女性に話しかけた。

「何ですか、なのはさん?」
「アルト君、どこにいるか知らない?」
「アルトさんだったらアニスさんと一緒にグラウンドで何かやってましたよ」
「そか、ありがとな。そやスバル、この子達が新しく立ち上げた部隊に入る子達や」
「お久しぶりです、スバルさん」
「ああ、アリシアちゃんにプレシアちゃん、だいち君にことはちゃん。こんにちは」
『こんにちは』
「そうかぁ、君達がはいるのか」
「それじゃ、正式な発表は後からするから、これで」
「はい」

スバルと分かれみんなは隊舎グラウンドに向かった。
グラウンドにはアルトと少女に成長したアニスが対峙していた。

「おーい、二人共〜」
「ちょっと待ってはやて」
「?」


「はぁ、はぁ」
「ぜぇ、ぜぇ」

ファイティングポーズを取り、互いに息を切らせている。
アルトの手にはグロウ・グラスプ、アニスの手にもそれと同種らしきグローブを装備。
互いの顔にも殴られた痕があるから相当激しい訓練をしていたのだろうと思う。


『ゴクリ……』

これから再開されるであろう激しい戦闘にその場にいるみんなは固唾を呑む。

「いくわよ!!」
「おう!!」

振り下ろされる拳と拳。

『殴って!、防いて!、ジャンケンポン!!』
『ダァァァ』

真剣に言う間抜けな言葉にみんなはコケる。

「勝ったぁ!!。シネェェッェ!!!!」
「くっわっ!!!」

防御するがアニスの拳が顔面にヒットしアルトは吹き飛ばされた。

「くっ!、まだまだぁ!!」

「何やってんねん、あの二人?」

みんながあきれる目の前でそれは繰り返されていた。
勝率は半々といったところだろう、負け防ぎきれなければ強烈な拳が飛んでくる。
グロウ・グラスプは装着者の腕力と握力を数倍に上げると聞く。
もし、アニスが装備しているグローブがそれと同じものならば、いくら頑丈な彼でも相当こたえるはずである。

「たぶん思考の探りあいの訓練じゃないかな?」

もっともなことを言うフェイト。

「はいはい、二人とも止め止め!!」
『ん?』

はやての言葉で二人は気づき手を休める。

「どうしたんだ、みんなして?」
「そっちこそ何してんの?。いやいい、言わんといて」
「?」
「久しぶり、アニスちゃん」
「お久しぶりです」
「今日はどうしたの?」
「いや、私一応ガイアの出向人事統括官だから時々見回らなくちゃいけないのよ。
それで公務でストレス溜まったからアルトと手合わせしてたところ」
「提督業も大変だねぇ」
「それでみんなは?」
「そや。今度アルト君の分隊に所属することになった子達を連れてきたよ」
「へぇ〜って、アリシアにプレシア、だいちにことはちゃんまで……、まさか?」
「そう、そのまさか」
「……まぁ、いいか。いいかお前ら、身内や知り合いだからといって容赦はしないぞ」
「わかっているって、パパ」
「こちらもガンガン行きますわ」
「よし、いい心がけだ。これで俺のストライク分隊も様になってきたな。
なぁ、隊の役割ってこっちで決められるんだよな?」
「そうやよ」
「それじゃ、隊長は俺として………副隊長はだいち、フロントアタッカーにプレシア、センターガードにことはちゃん、
アリシアはフルバックを頼む、訓練は明日からだ」
「わかったわ」
「はい」
「了解しました」
「がんばります」
「首尾よく決まったようだね」
「そうそう、アルト君にはもう一つ頼みがあるんやけど」
「ん、なんだ?」
「アルト君には3分隊の総隊長もやってほしいんよ」
「……はい?、イマナンテ?」
「ほら、小規模の事件だったら分隊規模で対応できるけど、3分隊合同で処理しなくちゃいけない規模の事件になったら
3つを指揮しなくちゃならないし」
「それははやてがやるんだろ?」
「私はロングアーチからの指揮やし指揮系統を分断される恐れもある、
現場で即断しなしなくちゃならん事態も出てくるかもしれへん」
「なのはやフェイトは?」
「アルト君のほうが実戦経験あるし、みんなより階級上やし、みんなの了解は取ってある、後は君の承諾だけや」
「………まぁ、少し考えさせてくれ、そんなに時間はとらせない」
「うん、わかった」


「ふぅ〜」

夕食を終えてアルトは自宅のソファーに体を埋めた。

「お疲れ様」
「うん、君も」

フェイトは隣に座り身を大きな体に預けた。
今家にいるのは二人だけ。
アリシアとプレシア、だいちとことはは早く隊に慣れるため四日間の宿泊研修に出ている。
サンクド・ヒルデは管理局に勤める子達も数多くいるので、そういった配慮もされ支障が無いのだが、
遊ぶ時間が減るとぐずっていた。

「なぁ、フェイト……」

サラサラした彼女の髪を撫でる。
フェイトは気持ちよさそうに目を細める。

「ん?、なんか心配事……もしかしてお昼の総隊長の話?」
「ああ、俺に出来るのかなぁ、10年前はあんなだった俺に……」
「今のアルトは昔とは違う。とっても頼れる私の自慢の旦那様だよ。もっと自信を持って。
大丈夫、あなたならきっと出来る。もし不安になった時は私やなのはやてもいるから」
「そうか。俺は一人じゃないものな」
「ええ。でも一番に私に相談してほしいな」
「ああ、わかった」


翌日、部隊の全員が集まった。

「さて、みんなももう知っていることと思いますが六課に新しい仲間が入ってきました」

アリシア達は一人ずつ名前と階級を言っていった。

「もうひとつお知らせがあります。ゼファー二佐、前へ」

アルトははやての横に立った。

「実行部隊が増えたことに伴って現場での総隊長を任せたいと思います。
分隊規模で対応できない事件の時、3部隊合同出動の際の指揮を執ってもらいます。
ロングアーチの他に指揮権を与えます」
「謹んでお受けします」
「さて。朝はこれで終わりや、みんなそれぞれの仕事に就いてな」


「さて、早速だがツーマンセルの訓練を始める。お前達の当面の目標はチームワークの確立と連携戦に慣れることだ」
「チームワークはできているよ、みんな子供のときからほとんど一緒だったから」
「今も子供だろうが…。いいか、いくら昔からの知り合いだからといって日常と戦闘じゃ違うだろ。
それを含めて一から築きあげるんだ」
「具体的には?」
「ひたすら連携戦の訓練、そうだな、最初は2人1組で組んで、最終的に4対1になって
一人ずつ俺に一発当てられたら合格としよう、一人で突っ走ってもだめだ2人で協力して、
4人のときは3倍の気配りと予想を張り巡らせ確実に全員クリアできるようにしろよ」
「それは訓練1回につき全員のノルマですか?」
「う〜ん、最初は1訓練1人だろうな、回を重ねていくことに全員が当てられればいい」
「分かったわ。班分けは?」
「う〜んと、今日はなぁ……」
「ちょっと待ってパパ!。今日はってことは毎回変則性?」
「当たり前だ。毎回同じだったら面白くないだろ?。それに今はパパじゃない。アルト隊長だ」
「アルト隊長。訓練で遊んでどうするんですか……」
「別に遊んでは無いさ、まじめなところはまじめにして手を抜けるときは手を抜く。そうしないとまいっちまうからな。
う〜んと、今日は妥当にアリシア・だいちとプレシア・ことはだろうな。よ〜うし!。訓練所に行って早速始めるぞ!!」
『お〜っ!!』
「終わったらアイス食いに行くぞぉ」
「お〜っ、おごり〜」
「割り勘だ」
「え〜〜」
「はぁ〜っ……この親子って……」
「ドンマイ、だいちくん」

それぞれの心境で訓練所へ向かった。

「本当にゼファー二等空佐は子供の扱いがうまいですね」
「私達は子供好きだし、アルトの場合は根が子供だけなのかな」

みんなの様子をグラウンドが見渡せる隊舎からシグナムとアニスが見ていた。

「有能な指揮官には有能な部下が自然と集まると言われているけどホントねぇ」
「主はやての夢が叶えられたのも指揮官としての心得を教授してくださった提督のおかげです」
「そんなこと無いわよ、登軍訓練での経験もあったし、はやてにはもともと指揮官適正があったのよ。
私は少し背中を押しただけ。それにしても昨日はやてに止められて中途半端に終わっちゃったから、まだ疼いているわね。
どう?、こっちも手合わせしない?」
「おっ、小戯れを!、私などでは到底相手になりません!!」
「そんなにあわてなくても、純粋な剣技だけだったらそうでもないのになぁ。
それにしても年下なんだから変に敬語はやめてよ」
「いや、一応上官ですし、こういう性分なので……」

照れてモジモジしているところに

「もうシグっちって生真面目さんなんだから」

何も無い空間からいきなり現れシグナムに抱きついたのは、アニスの副官でありヴァルキリーのミリィ。

「なっ!。ミレニアム一等空佐!!」
「ほら、私にも、そんな子にはこうだぁ〜」
「そっ、それは……きゃっ!」

ミリィはシグナムの背中や脇の下などをくすぐり始めた。
はやてがU・Fでの登軍訓練を修了した後、アニスの副官として半年間行動を共にした時から
八神家の面々との交流が深まり、今では気軽に何でも話し合えたりミリィがシグナムにやっているような
少々過激なスキンシップなども行われている。

「………」

そんな二人の様子をドアの隙間から覗き見る者が一人。

「うひょ〜、めったに見れない姐さんの悶える姿!!」

部隊の輸送要員であるヴァイスである。

「ヴァイスさん」
「何しているんですか?」

そこに通りかかるのはまだまだ純な心を忘れないエリオとキャロ。

「おっ、いいところに来た。見てみろよ滅多に見れないシグナム姐さんの悶える姿だぜ」
「シグナム副長の?」
「をっ、あんなとこま――うがっ!?」

突然、誰かがヴァイスの鼻を摘んだ。

「うがっ?。…ゲッ、提督!!」

そこにいたのはにっこりと笑うアニスの姿が

「うふふふ、ヴァイスさん、ここで何してるんですか?」
「ヴァ、ヴァイス。貴様!!」
「ヴァイス曹長、私の訓練の相手をしてくれない?」
「えっ、遠慮しておきます!!」

ヴァイスはそそくさと逃げていった。

「全くもう、それじゃ私は帰るわね」
「はい、お疲れ様です」


『いただきまーす』

夕食時、フォワード部隊の面々が食堂で食事を取っていた。
しかし食べて早々

「ほへぇ〜」

ただただ驚くスバル。

「毎度毎度あんた達、よく食べるわねぇ」

呆れるディアナの姿がそこにはあった。
この中で一番食べるスバルでも驚くほどの量を二人はたいらげていた。

「そ〜ぉ?」
「パパと一緒に食べたこと無いの?」
「アルトさんが来てから1ヶ月もしないし。そんなにいっしょにいたことが無い」
「パパはね、最高、この3倍食べるよ」
『へぇ〜』

スバル以外の全員が驚いた様子も無く声を上げた。

「えっ、みんな驚かないの?」
「俺達は遊びに行ったときよくアリシア達とご飯食べるし」
「私もフェイトさんの副官のよしみでよく呼ばれる」
「私達と食べるときフェイトさんもそれぐらい食べますから」
「えっ!、フェイト隊長も?」
「私がどうかしたの?」

そこに来たのは食事のトレイを持ったフェイト、ちなみに食器に盛られた量は人並である。

「……人並だけど?」
「何の話?」
「フェイトさん、失礼ですが、神族並の大飯食らいですか?」
「うーん、朝と昼はそうでもないわね。夜は比較的食べるけど。今日はお昼食べたんでそうでもないかな」
「出身はアルトセイムで生粋のミットチルダ人ですよね?」
「昔はね、今は神族の血も入っているけど」
「どういうことですか?」

スバルが聞く。

「そういえばスバルには話してなかったね。シャドゥ・ドール事件って知ってる?」
「はい、PT事件、闇の書事件以上の規模で神族との交流がきっかけとなった事件ですよね?。
確か隊長陣も参加なさってたとか」
「そう。その時ね、私死ぬほどの重症を負ったの。ううん。
実際は死んでアルトの魔力で生命維持を継続させていたほうが正しいかな」
「そんな、フェイトさんでも太刀打ちできなかった事件なんて」
「相手は神族の大英雄だったからね」
「それでどうしたんですか?」
「アルトに右目と血の半分をもらって蘇生させてもらったの。それで体の60%が神化、今は80%。
本当は私はアルトの眷属って位置付けになるけど夫婦として過ごしているよ」
「へぇ〜」
「エリオ兄とキャロ姉は私達が生まれる前からパパ達と一緒にいたから私達からしてみればもう家族だね」
「優しいお兄ちゃんとお姉ちゃん」
「そうだね」
「はいはい!、ガイア式の魔法って使えるんですか?」
「アルトやクレロス義姉さんに教わって一般的なものは扱えるけど」
「確かガイア式ってミッドやベルカより魔力消費量高いのよね」
「ガイアの人は運用、戦術、魔力量のどれを取っても平均S〜SS+だし」
「まぁ、広域魔法ならそうだけど、魔力量だけで見ると一般的なものだったらAクラスでも十分対応できるよ」
「でもS〜SS+って封印しているときのランクですよね?」
「どういうことキャロ?」
「神族は力を封印するために封環という封印装置を身につけているの、ほら私にも」

フェイトの耳には綺麗な装飾のピアスが取り付けられていた。

「私達にもありますよ」

アリシアとプレシアの耳にもピアスが。

「封印開放時、私はSSSだった」
「ちょっと待ってください!、SランクのフェイトさんがSSSランクだとすると、
SSS登録のアルトさんやアニスさんは……」
「10年前、一度だけ封印を解いたけど、そのときは計測器が壊れて大規模次元震が起き掛けたよ」
『ひぇ〜〜〜』
「なに話しているの?」

そこに来たのはアニスと他の隊長陣、皆近くの空いている席に座った。

「みんなでね、神族ことを話していたの」
「へぇ〜」
「ねぇねぇパパ。パパってどのぐらい強いの?」
「そうだなぁ。手短なところでいくと、時空管理局の艦船・魔道師。全武力と勝負しても1時間ぐらいで殲滅できる」
『………………』

場がピキッと凍った。
それは見事なまでの静止、隊員が食べようとしていたスパゲティも洋食屋のイミテーションのように固まっている。

「(軽々やってしまいそうだからなおさらこえーーよ!!)」
「ん?。どうした?」
「アルトが過激なこと言うからみんな固まったのよ。私ならもっと優しく2時間って言うわ」
「なんで?」
「だってすぐに終わっちゃったら楽しくないじゃない。
1時間半ぐらい向こうの優位に動かし優位の絶頂に上り詰めさせた後、最後の30分で一気に殲滅、
絶望のどん底まで行ってもらいましょ」

ザアァァァ。
吹き荒れるブリザード、ここにコキュートスが具現された。

「(あんたが一番怖いよ!!)」

そして再びひとつになる心の叫び。

「圧倒的な力の差を見せ付ければ二度と歯向かう事はない。これ一騎当千の鉄則!!」
「(歯向かいません、歯向かうつもりもございません。と言うかそんな鉄則はねぇよ!!)」
「それじゃ私は帰る」
「おう。また愛しのダーリンのところか?」
「なっ、何言ってるのっ。ただ騎士団の様子を見に行くだけよ」

アニスは顔を赤くし、そそくさと去っていった。

「それって彼氏のところに行くと同義やろ?」
「そういえば、アニス、来年結婚なんだってな?」
「うん、何でも中学校からの付き合いらしいよ」
「へぇ〜」

みんなが固まる中、何気なく問答するアルトとはやて。

「それじゃ俺もデバイスの整備でもしようかな。みんな傷が癒えるまでゆっくりしていけや」

アニスとアルトが去った食堂。

『ふぅ〜』

なんともいえない脱力感と安堵感が隊員達を癒してくれた。

「冗談ですよね?、いくらアルトさんやアニスさんでも管理局の全戦力と戦って勝つなんて」
「あれは言い過ぎというものじゃないんですか?」

口々に言うロングアーチの面々、だが不可能と言う文字が拭いきれず声が震えている。

「そういえば私達、昔アルトにボロ負けした」
『えっ!?』
「私達やヴォルケンズ、アルフにクロノくん。7人全員が完全武装して向こうは無武装や、
それなのにシールドと拳だけで5分と持たなかった……クロノくんなんか1発KOや」

信じられない、あのクロノ提督が1発KOだなんて。

『………………』

プチン

『ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

とうとう恐怖の糸が切れみんながパニックに陥った。

「うゎ〜〜ん!。ママ怖いよ怖いよ!!」
「大丈夫、あなただけは護ってあげる!、たとえユーノくんを盾にしようが、
レイジングハートが壊れるぐらいのSLB撃とうが!!」
(M…Master……)

レイジングハートの悲痛な叫びも今は聞こえず。

「ママァ、抱っこ」
「おうよしよし、だいちはお父さんに似てかわええなぁ」

普段大人っぽいだいちに甘えられ、はやては久々に母性本能をくすぐられ、我が子をあやす行動を楽しんでいる。

「シグナム姐さん!、今生の別れの前に俺と一緒になってくれ!!」
「ヴァイス……」
「ダメです!、ヴァイスさんは私の!!」

ヴァイスの突然の告白にときめくシグナム。
それに横槍を入れるティアナ。

「うっしゃー!!、ミッドチルダ中のアイスを食いまくるぞぉ、目指せ全国制覇!!」
「お供しますししょー!!」

燃えるヴィータとスバル。

「エリオ君、今すぐ結婚式を挙げよう」
「えっ!えっ!」
「早く早く!、私を式場へ連れてって!。死ぬ前にエリオ君の子供を産む―――!!」

みんな日頃内に秘めている欲を暴露し、ほどよく壊れている中で冷静に見つめる双子一組。

「まったく、ママが余計なこと言うから」

振り向くとそこには

「いっ、いややめてクレロス義姉さん、アインナッシュはもうイヤです!。キヤァァァ、ツルがツルがぁぁ!!」

一人間違った方向でトラウマの引き出しを引いた天然がそこにいた。

数分間、阿鼻叫喚の世界を続けていると

「うるせぇぞテメェら!!」

アルトの怒号でぴたりと止まった。

「ったく、整備中にピーチクパーチクと。
あのなぁ、俺はよほどのことが無い限り管理局ともお前らともやりあうつもりはねぇ。しかしだ」

アルトはフェイトの後ろから肩を回し

「俺の女に手を出す奴は誰であろうと容赦なく潰す!」

ピキッ!
再び凍りつく一同。

「いやん、アルトったら、人前で、そんな恥ずかしい」

先ほどまでトラウマで怯えていたのは何処吹く風か頬を赤くし照れるフェイト。

「パパって意外とワイルド&デンジャーだよね?」
「私もパパのような人に愛されたい」

この日、機動六課の面々は隊長陣の住んでいた地球と言う星の古い諺を知り頑なに守ろうと思った。
それすなわち、"触らぬ神に祟りなし"







あとがき

Krokes:はい、いきなりの急展開です。それにしてもまた人が増えたから誰かを忘れそうな……。
アリシア:がんばってくださいね。
Krokes:ヤバイ。もう書くことがねぇ。と言うわけでまた来週!!。





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