「はあっ、はあっ、はあっ……」

太陽が隠れ、薄暗い世界の中、女の深い呼吸が聞こえる。

「はぁっ、はあっ。大丈夫かアギト?」
(へっ、これぐらい何ともねぇよ)

肩で大きく呼吸をしながら剣を構えるシグナム。
その鋭い目線の先には、剣を持ち宙に浮かぶドライとフィアの姿があった。


第14話
瞬間、心重ねて 〜シグナムとアギトとセトレ〜


「おいおい、もう終わりかよ、ねぇちゃん?」
「そんなんじゃアッチの相手もままならないぜ」

相変わらず下品な言い回しをする2人。
シグナムはそれに構わず切込みを開始する。

「ふっ、無駄無駄」

2人はシグナムの一撃を剣で受け止め、そして両脇腹に激しいキックを食らわせた。
その動きはまるで鏡のように対称だ。

「クッ……!」

何度目かの挑戦、見た目よりも重い蹴りでシグナムは意識が遠ざかりそうになるか、
落ちる寸前、フィアの足首を切断しそのまま落下し粉塵が上がる。

ドライとフィアのISはミラーアクション。
まるで鏡のようにパートナーの動きをトレースし相手に倍の攻撃を繰り出す。
シグナムにとって一対多戦闘やそんな攻撃は大して重要なことではないだろう。
だがミラーアクションには更なる能力があった。

「いてぇ!!。アイツ足を切りやがったっ!」
「さっさと再生しろ。来るぞ」
「おう」

フィアの足首の切断面から肉が増殖し、だんだんと足を形作りそしてちゃんとした足が出来上がった。

「なにっ!?」
(アイツ、足を再生しやがった!!)

二人は驚いた。
これまでの戦いで斬り傷を何度も負わせ、その度すぐに回復された。
異様なまでの回復力だと二人は思っていたが、まさか失った器官までしかも短時間で再生できるとは思わなかった。

「そんなに驚かなくても良いだろ。万能細胞って知ってるか?」
「万能細胞だと?」
「別名ES細胞。分裂誘導をすればどんな細胞・臓器へと姿を変えられる細胞だ。
俺達2人はその万能細胞を体内に保有している」
「互いに生体データをオンラインで参照できてな。失った部分はそのデータを呼び出し細胞が増殖し再生できるんだよ」
「ちなみに生体機械部品はナノマシン技術で再生がお約束」
「ばかなっ!」
「同じ部品で出来ているからな、そういうのも可能なんだよ」

鏡のように互いを実体と鏡像とし、鏡像と同じ姿にするため実体の失った部分を再生する。
倒しても倒しても鏡像が無事で実体も生命活動が維持できれば完全再生が可能。
これがミラーアクションの真の能力。

「はあっ!」

再びシグナムが跳ぶ。
互いの身体を参照し再生するなら、どちらか片方を倒してしまえば再生は出来なくなる、
そう考えたシグナムはまずフィアに狙いを定めた。

「フッ」

しかしフィアはシグナムの一撃を意図も簡単に防いだ。

「チッ。きゃっ!」

間入れずドライの蹴りが入り吹き飛ばされる。

「おうおう、見た目の凛々しさとは違いかわいい声を出すじゃねぇかよ。そのギャップがたまんねぇ」
「どちらか倒せば再生は出来なくなると考えたな。でもなお前が考えてたことは弱点じゃねぇ」
「なにっ!?」
「たとえ俺が息絶えても再生を司るコアさえ残っていれば強制修復され記憶の転写がされる、
コアも欠片さえ残っていれば兄貴のコアを参照、自動修復され強制修復されるってわけだ」
「まぁ、反則的によく出来たシステムだよな。俺達を殺したけりゃタイムラグ無しでコアを粉々にすることだな」
「いいのかよ兄貴、わざわざ教えちまって?」
「なに、教えたところで一人じゃ俺達を倒せるわけねぇよ」
「それもそうだな。俺達には兄弟図一の戦闘学習能力がある、一度見た攻撃は二度通用しねぇぜ」
「これは……困ったな」

二つのコアを同時に粉々にしなければ倒せない。
そんなこと、どんな俊足を以ってしても不可能。
思わず弱音が出てしまう。
しかし、弱音を吐く暇はない、再びレヴァンティンを構える。

「何だよ、来ないのかよ?」
「なんならこっちから行くぜ!」

ドライが剣を構え突撃していく

「クッ!!」

レヴァンティンを縦に構え一撃を防ぐが、隙を狙いフィアが懐に入り込み刃を振るう。

(PanzerGeist!!)

レヴァンティンの詠唱のおかげで胴が離れることは無いが、受けた反動で吹き飛ばされ、瓦礫に激突し粉塵が上がる。

「ううッ……ゲホッ!ゲホッ!」
(うっ!、シグナム…大丈夫か?)
「なんとかな」
(おいおい、どうするよ!?)
「焦るな!」
(だけどよぉ)

口ではそう言うがシグナム自身も焦っていた。
フェイトやなのはそしてゼスト、これまで自分は強い者に幾度無く出会い、
感化され切磋琢磨し互いに強くなっていったと思っていた。
しかし、自分は目の前の奴等に出遅れている。
奴等が強いのか、それとも自分が変わっていないのか。
そんな考えが頭をよぎる。

「へっ、お前データで結構強いってあったんだけど、それほどでもないなぁ、むしろダメ騎士じゃん」
「ヴォルケンリッターだっけかな。お前リーダーの騎士なんだろ?、
リーダーがそんなんじゃ他のメンバーもお前が仕える主って奴もタカが知れてるな」
「……なんだと」

シグナムの目の色が変わる。

「聞こえなかったのか?、お前が仕える主って奴もタカが知れてるって言ったんだよ、
よく部隊長なんてやってられたな、誰も護れねぇクセによ」
「………黙れ、私は構わんが、仲間やましてや主の陰口を叩くのは許さん!」
(おいシグナム、落ち着けよ!)
「分かっている!」

シグナムは再度二人に突っ込んでゆく。
二人は微かに笑いシグナムの突進を華麗に避け、両側から全く同じ体制で切りかかる。

「レヴァンティン!!」
(Schlangeform!)

レヴァンティンを大きく振り走る刃、荒れ狂う連結刃は自らを囲み敵の接近を防ぐ。

「おう、やるねぇ、だがな」

いつもより大降りに振っているせいか所々に抜け道ができ、ドライとフィアはそこを通りシグナムに近づく。

(やべぇ!、シグナム!!)
「!!」
「オラオラ!、オネンネの時間だぁ!!」

振り下ろされる二振りの刃。
レヴァンティンはギリギリのタイミングでシュベルトフォルムに姿を変え剣を防ぐ。

「チッ」
「命拾いしたな」
(シグナム、少しは落ち着け、技が大振りになってるぞ)
「ああ……」

平静を保っているつもりだが、心の内では怒りがこみ上げてくる。

「へっ、しぶといねーちゃんだなぁ、さっさと負けちまえよ。後でお仲間や主様も後を負わせてやるから」

フィアが陰湿な笑みを浮かべて言う。
挑発だというのは分かっているが、こいつらに言われると腹立たしくなる。

(もう一人は何処行った!?)
「はっ!」

辺りにはフィアの気配しかない。
瞬時に目を巡らせ気配を探す。
上から下に空気の流れを微かに感じた。

「上か!!」
「おせぇんだよ!」

真上から急降下してくるドライ、フィアも真横から突っ込んでくる。
真上からの攻撃は両手を添えなければ防ぎきれない、かといって横からの攻撃を無視することは出来ない。
考えが巡る。
だが短すぎる時間では答えを求められない。

「アギト耐えろ!」

二人が激突する。
結局、ドライの剣はレヴァンティンで防ぎ、フィアの剣は強化を施した鞘で防いだ。

「くっ!……」
(くぅ〜、いてぇ)

重力加速がついたドライの攻撃をやはり片手で防ぐことは無謀だっただろう、手が痺れ力がうまく入らない。
フィアの攻撃も防いだ角度が悪く、腕が引き千切れそうだ。

「がぁっ!!」

間入れず二人のニーキックが腹と背中に入る。
全身の力が抜けシグナムは落下してゆく。

(おいシグナム!、しっかりしろ)

意識が飛びそうになりながらも踏ん張り、何とか体制を整え着地する。
しかし二人の追撃の手が伸びる。
一合、二合、三合……、薄暗い闇の中で剣戟の金属同士がぶつかる甲高い音と微かな火花が散る。

「はぁっ!!」

不意を就きフィアの右腕を首から袈裟切りで切断するが、すぐに再生してしまう。
先を読ませないため我武者羅な戦法でただ剣を振るう、双子を翻弄しているがそれも最初だけ、
何度切り裂いても再生し一手一手が読まれてしまう。しかしシグナムは諦めず傷を負っても攻撃し続ける。

「はぁっ、はぁっ……」

どのくらい経っただろうか、とうとうスタミナも切れ疲労が溜まり、シグナムは立っているのもやっとだった。

「騎士様はお疲れのようだな」
「あれだけ暴れたんだから当たり前じゃね?」

傷ついた身体に力が入らず逆に意識が遠のいてゆく。
対照的にドライとフィアの二人は息一つ乱していない。

「さて、もうそろそろ終わりにしようか」

シグナムはバインドで雁字搦めにされ、前方と後方から二人が攻め寄り剣を振るう。

『うっ!』

しかし、発せられた呻き声はシグナムのものではなかった。

「なにっ!」
「何だテメェはっ!」

シグナムを庇い二人の間に割って入ったのはフードとマントに身を包んだ長身の女性。
彼女の持つ双刃の槍が二人の肩と腿を貫いている。

「よく頑張ったね」

そう呟くと、シグナムを抱き寄る。
シグナムは疲労しすぎて助けられたのも、女の存在も知覚していない。
二人から刃を抜いた瞬間、数個の筒状のものをばら撒いた。

「アギト、目を瞑ってなさい!」
(えっ?)
「まてっ!!」

女は後ろへ跳びドライとフィアから離れ、二人が追おうとした瞬間、
筒が炸裂しバババン!!と爆音と共に閃光が視界を覆った。

「うわっ!!」
「何だこれ!?」

閃光で目がやられ、耳もキーンと言う音しか聞こえない。

「チッ、スタン・グレネードかっ、小癪なっ!」

ドライは視覚モードを変え索敵に入るが、映像がザラついていてうまく索敵できない、
サーマルもダメ、どうやらあの中にブレアやチャフ・グレネードも含まれていたらしい。
生身的・機械的に視覚と聴覚を失った二人は瓦礫を破壊し粉塵に紛れ何処かに身を潜め回復するのを待つしかなかった。


「あいつ等も身を潜めたみたいね。あのまま引き下がるとは思えないけど、ここも見つかるのも時間の問題ね」

3人は瓦礫と化したビルの中に潜んでいた。

「あっ、アンタはいったい?」
「あらアギト、数年来の親友の声も忘れたの?」

女はフードを外し、アギトは驚いた。

「セトレ!、セトレじゃないか」
「お久しぶり、アギト、何年ぶりだろうか」

シグナムと出会ってから10年以上も経つというのにセトレは老いを感じさせず、心身ともに若さを保っていた。

「どうしてここに?」
「アニスに付いてきたの、親友の危機に駆けつけないわけないでしょ。それにしても……」

セトレの目線の先にはシグナムが眠っている。
先ほどまで意識はあったのだが、座らせた瞬間、気を失うように眠りに就いた。

「ほら、起きなさい」

頬を軽く叩くと呻き声と共に気を取り戻した。

「セ…ト…レ……。セトレ!?、お前が何でここにいる!?」
「手を貸しに来たに決まってるでしょ」
「手を貸すって……」
「それで今どんな状況なの?。スタンとチャフの効果がそう長続きしないから手短にね」
「ああ。――――――」

二人はセトレに自分達が知りうる、といっても相手が勝手に話した情報を全て教えた。

「う〜ん。二人同時に倒さなくちゃいけないのかぁ。そんな奴等に一人で挑んでいくなんて、アンタお馬鹿になった?」
「なっ!、何を言う!、最初は私もその事を知らなかったんだっ!」

緊張の糸が解けたのか、シグナムは子供のように言い訳する。

「はいはい拗ねない。そんじゃ私が来たことだし、さっさとその生意気なガキ共を黙らせようか」
「だがどうするんだ?。相手が相手だけに……」
「何言ってるの、あんたと出会って15年、ただツルんでたわけじゃないでしょ?」

二人が出会った後、ガイアとの国交が本格的になり二人は頻繁に連絡するようになった。
シグナムは新たな好敵手(とも)に出会えた喜びを照れ隠ししながらも休暇の度にジェダイ大聖堂に足を運び、
逆にセトレもミッドチルダに足を運んでいた。
年相応の女友達のように、ショッピングや遊びに行ったり、悩み事の相談もする。
その仲の良さにヴィータやフェイトが無意識に嫉妬し、はやて達がはやし立てるほどだ。
しかし、ただ遊んでいたわけではない、会う度に必ず1回は模擬戦を行う。
J・S事件後はアギトを含めその技術を高めあっていた。もう互いの考えや手の内が手に取れるほどに。

「そういえば彩さんにゼロハルコン製の手錠をはめられてタックマッチを行った時もあったな?」
「あの後彩兄が鍵を無くしたおかげで1週間アンタと共同生活、もう参っちゃったわよ」
「ああ、あの時は本当に大変だった、何をするのもお前と一緒だったからな」

戦場だというのに談笑が辺りを和ませる。
疲れや不安が吹っ飛びそうなほどに。

「そのおかげでアンタとは阿吽の呼吸が出来るし」
「そうだったな。すっかり失念していた。お前が来てくれて頼もしいよ。この戦いは勝てると自信を持って言える」

その時、近くで轟音が響いた。

「チッ、あいつ等動き出したみたいね。急ぎ作戦を」
『ああ』


「チッ、何処行ったっ!」

ドライとフィアが剣の真空刃で隠れていると思わしきビルを片っ端から破壊していた。

「チッ、スタンの効果は消えたけど、まだレーダー系が不調だな、早く探し出してさっさと殺るか」


「あのガキ共見境ないわね」

アギトとユニゾインしているのでセトレの容姿が少し変わっている。
これはシグナムにあわせるため炎属性魔法と飛行魔法を補てんするためだ。
三人が考えた作戦は一つ、目には目を。二人の呼吸を合わせたミラーアクションばりの同時攻撃によるコアの破壊、
阿吽の呼吸がものをいう二人にしか出来ない攻撃である。

「シグナム」
「ん?、うぐっ!!」

セトレはシグナムの唇に軽くキスをする。

「成功のおまじない」
「わっ、私にはそっちの趣味はなっ、ない!」
「私もよ、でも惜しいなぁ、相性は抜群なのになんで男じゃなかったんだろう、男だったら確実にオトしてたのに」
「知るかっ!」
(はいはい、その辺で止めとけ)

アギトはセトレにその気があるのかと心配しつつ漫才に終止符を打つ。

「それじゃ、勝つために」
「ああ」

互いの武器をコンと軽くぶつけ健闘を称えあい目を瞑る。

『…………』

靜みかえり精神統一をする二人。
不揃いだった呼吸がだんだんと同調してゆく。


「ん?。兄貴いたっ!」

気付かれ、ドライとフィアが突っ込んでゆく。

『………』

タンタンタンと同時足でリズムを刻み、駆け出し跳ぶ。

「なにっ!?」

ドライ達より高く跳び、空中で一回転、重力に身をゆだね二人の延髄にかかと落としを一撃。

『グハッ!!』

間入れず片足を軸に回し蹴りが炸裂。
その姿は一糸乱れぬ鏡姿。

「うっ……」

ドライとフィアは重力に任せて落下していく。

(Explosion!)
(炎熱召喚!)
「飛竜――」
「一閃!!」


レヴァンティンのカートリッジリロードのタイムロスまで計算に入れた見事なまでの同時攻撃。

「にゃろっ!!」

連結刃の攻撃をかわし、二人も反撃を開始し切りかかってくる。
タッと宙を蹴り後ろに後退、斬撃の衝撃を和らげる。
剣戟、一合、二合、三合、繰り返し続く敵の猛攻に剣と槍の違いはあるが全く同じタイミングで流す。

「何なんだこのオバちゃんはっ!」
「このねーちゃんのほうも急に元気になりやがった!」

焦るドライとフィア。

「ムカッ、誰がオバさんよっ。シグナム、ちょっとよろしくて?」
「別に構わんがその喋り方は止めろ。お前らしくない」
「なら、いくわよ!!」

セトレはブラッドペインを一振り、勢いで双刃が飛び出しジャラジャラと光の鎖が続く。
その刃は中空を何処までも縦横無尽に駆け巡り、そして一直線にオバさん発言したフィアに襲い掛かる。

「くっ!ああっ!!」

大蛇のように鎖がフィアの身体に幾重にも巻きつき締め上げてゆく。

「がぁっ!!」

光の鎖はスーツごとその身体に食い込み、そしてとうとうその四肢を締め千切った。

「バカフィア!、さっさと再生しろっ!」

ドライは悪態付きながらもセトレに切りかかってゆく。
しかし先読みできるセトレにとってはすでに分かりきったこと、
槍の柄で剣を止めそこにシグナムが入り一気に胴を真っ二つにする。

「ナイスタイミング、シグナム」
「フッ、お前もな」

血を大量に流し落下するドライとフィア、しかし再生能力で四肢と下半身が即座に形成される。
ナノマシンのおかげか服も元通りだ。

「へっ、俺達をここまで似させるとはな、さすがオバちゃんだ」
「ムカッ……、シグナム、お尻の青いジャリ共がなんか言ってるけど?」
「私に振るな」
「まぁ何言おうが関係ないわね、口先だけでこんなに弱っちぃんだから」
(そういえばセトレってやられたら倍返しする性格だったな)
「んだと!。あのアマ共、殺す。殺してやる!!」
「嬲り殺しだっ!」

今までこんなにやられたことはないだろう。
プライドを傷付けられた二人は怒りを通り越し獣の咆哮のように叫ぶ。
剣は落ちてしまったので拳を握り雄叫びを上げ二人に向かって跳ぶ。

「死ねェーーっ!!!」
「フッ」

セトレは一笑する。
それが命取りだということは誰が見ても明白、再び片方の刃を伸ばし飛ばす。
一条の刃は縦横無尽に飛び回りその素早い動きで二人に巻きつく、何度も何度も巻きつき、
まるでクモの巣に捉えられた哀れな虫のように束縛する。

「セトレ、頼む」
「オーケー、相棒……」

精神統一……、生まれつき目が見えないセトレは視力以外の五感が発達し、
フォースの力で強化されたそれは常人では体験できない感覚をセトレに与えた。
体温、心音、脈、機械音、そして怒りの感情、二人の事は手に取るように分かる、
そして体内を駆けるビー玉ほどの大きさのモノ。

「あれがコアね、だが体内を動き回ってるわよ?」
「タイミングはお前に任せる。出来れば致命傷にならない場所でな」

そう呟くとシグナムは平行に構えたレヴァンティンの刃先に手を沿え、腰を落とし背を低くした突進体制に入る。

「簡単に言ってくれるねぇ」

セトレもその体勢に準じる。
シグナムの注文に焦りの顔色はない。
コアはランダムに動くもその予測は簡単、しかも二人共全く同じタイミングで同じルートを通っている。

『………ハッ!!』

宙を蹴り身体をバネの様に伸ばし一気に間合いをつめる、その速さ俊足。
腕を伸ばし前に突き出した刃先は迷わずドライとフィアを捕らえる。

「ぐうっ!、はぁっ!」

二人の右手が間接部分からだらしなく垂れる。
刃が刺さったのは右腕間接部、深く刺さったそれはちょうどその位置に来たコアを見事に粉砕していた。

「これであんた達の能力は無くなった」
「おとなしく投降しろ」
「クッ!、ふっ、冗談」
「へっ、ひといきで殺さなかったこと、後悔させてやる」
「?。!、シグナム離れてっ!!」

鎖を解き二人が離れた瞬間、ババババアァァン!!!と轟音と共に二人は爆発した。
規模はそれほどではないが、人を数人殺せるぐらいの破壊力だ。
二人は爆風に巻き込まれ地面に全身を強打した。

「ゲホッ!、ゲホッ!」
「うっ、まさか自爆装置とわね。見極められなかった私もまだまだ修行が足らないわね」
(でも良かったじゃんかよ、敵は自爆しちまったけど)
「そうだ。…戦力を削ぐことは……出来…た……」
「あらあらシグナム、またおねむ?」

緊張の糸が途切れたのか、シグナムに再び疲労と眠気が襲う。

「ああ……急に…疲労が……」
「後は私達に任せて少し眠りなさい」
「たの…む……」

シグナムは突き刺したレヴァンティンに寄り掛かり、深い眠りについた。

「ふわぁ〜〜〜〜っ。かく言う私も何だか眠くなってきた…………」
(おい、冗談だろ!?)

ブラッドペインに寄り掛かりうつらうつらとし始めるセトレ。
アギトは急いでユニゾンを解き起しに入る。

「おいマジ寝ちまうのかよ?、ここはまた戦場なんだぞ!」
「むにゃむにゃ……戦場で寝れてこそ……一流の……戦士」
「何わけわかんねぇ事言ってんだよ!。またあんなの来たら私一人じゃ太刀打ちできないよ!」

懸命に起こそうとするが、とうとう揺すっても何も反応しなくなった。
辺りにはただ二人の可愛らしい寝息と

「いったいどうしたらいいんだよ〜〜〜〜〜〜!!!!」

アギトの悲痛な叫びが木霊した。







あとがき

Krelos:はい、決戦第2戦目、双子vsシグナム&アギト&セトレのトリプルペアでした。
なんかものすごい設定や中身が物足りないような気はするが、これでいっぱいいっぱいです。
ドライ:2vs3って卑怯じゃねぇか?。
アギト:私はサポートだからいいの。
フィア:なんか納得いかねぇ。
Krelos:今年の投稿はこれで最後かな?。最終話はもう完成してるから、あと4話“来年中”には完成させたいなぁ。





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