注:この作品には一部グロテスクな表現が含まれております、お気をつけください。ではどうぞ!。


「うっ……、何だったの今の?」
「何かが空中爆発したようだったけど」

アルト、フェイト、アリシアの三人は突然の爆風に咄嗟にシールドを張っていた。

「とりあえず先を急ごう」
「ええ」
「うん」


第17話
完全なる漆黒へ 〜フェイトとアルトリウス〜


「まったく、あの馬鹿共は何をしているのよ!」

爆心地の真下だというのに、プレシアとゼッドはシールドのおかげで無傷だった。

「プレシア!」
「ん?。やっと来たわね」
「プレシア……」

プレシアを庇うようにゼットが割って入る。

「お前はあの時の!」
「どけっ!、お前には用はない」
「そうもいかない。何処の世界でも妻を護るのは夫の役目だろ?」

二刀を構えた瞬間、ゼッドの姿が消える。

「!?、チィ!、ナメたマネをっ」

それはスローモーションのようにゆっくり流れる。
アルトは毒付きながらも剣を立て後方へ跳ぶ。
そこへゼッドの横一線の斬撃が襲いかかる。
立てた剣に阻まれ食らうことはないが、もう片方の剣が同じく跳んだフェイトに襲い掛かる。

「くっ!」
(Riot Zamber Stinger!!)

二つに分かれたバルディシュ。
刃を立て攻撃を防ぎ、もう片方で切りかかる。

「!!」

ゼッドは避けるのと同時に距離を取り再び切りかかる。
二刀の斬撃、アルトはダーク・スラッシュで受け止めるが、
素早い剣筋で勢いをつけた剣は手に痺れを感じるほど重い。

「くっ!」
「アルト!」
「俺が力負けするだと?。フェイト気をつけろ。あいつ只者じゃないぞ!」


「……うそ、どうして?」

アリシアは信じられないという表情でその戦いを見ていた。
いくら剣に才有る者でも人間が神族に、剣の一族である鳥族の血を引く二人に勝てるわけがないのだ。
しかしゼッドという少年は父や母を相手に同等かそれ以上の力量を見せている。

「そんなの当たり前じゃない。ゼッドは同じ神族なんだから」
「神族!?。でも………」

剣を持つところを見ると鳥族だろうが、ゼッドの髪と目の色は銀と灰色、
鳥族どころか神族のどの部族の特長とも一致しない。
その前になぜ彼が犯罪者と一緒にいる?。
成人前の子供を過保護すぎるほど守っている神族から赤子をさらってくるのは不可能。
もし成功しても追跡され殺されるのが関の山だ。

「私達が生まれるずっと昔、裏の世界で神族の遺伝子からクローンを創るプロジェクトがあった。
一度は壊滅したみたいだけどそれでも細々と研究は続けられてきた。
ゼッドはあの野郎がそんなシロモノから改良を重ねて創り出した堕天せし者、
殺人マシン、忌むべき存在。そして……私が愛し、私を愛してくれたヒト………」

最後の一言は呟くようなとても小さい言葉。

「えっ……」
「私がなぜ闇に落ちたのか、知りたがっていたわね。ふっ、少し考えれば分かることなのに………。
5年前、アイツ等に連れ浚われた私は力を封印され、鎖に繋がれ飼われていた。
イクリプスの対ガイア式魔法防御の実験を強要されていた。それだけじゃない、あの馬鹿4兄弟は私に何をしたと思う?」

顔に手を当てクククと黒い笑みを浮かべる。
悪人だらけの男所帯の中に女が一人、となれば答えはひとつ。

「思っていることは正解よ、あんな馬鹿共に何度も何度も何度も……犯され続けた…………」

ゾクリと背筋に悪寒が走った。
一生を共にすると誓った者だけに純潔やその身を捧げる神族の女性にとって、ソレは最も嫌悪する事。
それが強姦ならば最悪、精神崩壊を起こしてもおかしくは無い。

「泣き叫んでも誰も助けてくれない、暴力を振るわれ、時にはキチガイな事もされ、
私は都合のいい奴等の性のはけ口にされていった。
4年で4人……4人の子供を私は孕みそして産んだわ。
どんな生まれ方だろうが新しい命は祝福すべきもの、私も子供達がいればどんな屈強でも乗り越えて行けると思った。
でもイノーブスは何したと思う…………」

プレシアは顔に手を当て小さな笑みを浮かべ、顔を歪ませていた。
すさまじい憎悪が渦巻きプレッシャーとなって私を襲う、耳を塞ぎたかった、聞きたくない。
これ以上聞くと心が潰れてしまいそうな圧迫感が襲う。
でも私は聞かなければならない。

「あいつは精神力の実験のため子供を取り上げ、そして子供達は無残に死んだ……理由を聞くと
強化に耐えられず精神崩壊を起こしたって、でもこの犠牲は偉大なる犠牲だってさ。
今聞くとチャンチャラおかしいよ。あいつの命を命とも思わない実験で私の子供達は殺されたんだ。アハハハハ………」
『!!!!』

プレシアの乾いた笑い声が木霊する。
それを聞き、私はおろか戦っている父や母にも衝撃が走る。

「私は憎かった。あの野郎はもちろん、何も出来なかった自分にも、助けに来てくれなかった
仲間、両親、姉にも。憎くて憎くて仕方なかった……」

アリシアの顔が歪み、至りで手が震えている。
きっと私もそうだろう。
犯され、心を傷付けられ、やっと支えが出来たのにそれを失う。
悲しかっただろう。苦しかっただろう、憎かっただろう。
私なら耐えられない、舌を噛み切ってでもその残酷な現実から逃げ出していただろう。
だがプレシアは逃げることもできない。心を病み闇に落ちるのは仕方の無いことだろう。

「くっ!!」

先ほどから神族の本能が訴える。“命を奪った者を殺せ”と。

「今すぐ行ってイノーブスやナンバーズをぶっ殺しに行きたいでしょ?。
そうよね、神族は仲間の子供に危害が加えられたら一族総出で報復する、本能だもんね。
それが殺されたとなっては、フフッ、もしかしたらミッドチルダの人類が全滅するかもね」

神族の宝である子供に危害を加える者は死を持って償う。
最悪、犯人の血を引く家族、あるいは同じ血が入る種が絶えることもある。
それは私にも逆らえない、血に刻まれた本能。
身内となればなお更だ、今すぐあいつらを血祭りに上げに行きたかった。
でも理性で何とか怒りを抑え踏みとどまらなくてはならない。

「でもダメよ。今は私が相手なんだから」

プレシアを闇から救い出さなければならない。
プレシアは万が一とばかりバインドでアリシアの体を拘束する。

「ガイアに渡り苦しい、とても苦しい時が過ぎていった。相変わらずあいつらはやりたい放題、
でもね、ゼッドだけは私を大事にしてくれた、穢れた私を心から愛してくれた」

先ほどのプレッシャーはすっかり消える。
まるで恋焦がれる少女のように柔らかに話す。

「イノーブスにどんな事を命令されたのかわからない。
偽りの愛だったのかもしれない、だけど私は彼を愛してしまった……」

プレシアの見つめる先には今も激しい戦闘を繰り広げているゼッドの姿が、3人は離れ、アルトが問う。

「お前、本当にプレシアのことを愛していたのか?」

その問いにゼッドが答える。

「最初はイノーブス様に言われ傷ついた彼女の心を癒すのが目的だった。
だけど接していく度、逆に俺の乾いた心が癒されていくのを感じた。
戦闘マシンだった俺に心を与えてくれた。最初は偽りの愛だったかもしれない、だけど今は違う、俺はプレシアを愛している!!」

二人の交流にどんな変化が訪れたのかは二人にしかわからない、でもゼッドは傷ついたプレシアの心を癒し、
プレシアもゼッドの心を変えていき焦がれあっていったのは確か。
でもアルトは気に食わなかった。

「愛していたのになぜプレシアを救ってやらなかった!!」

これほどの力があるのに、なぜ娘を救ってやらなかったのか、もしイノーブスの魔の手から
救い出していたのならばこんな事態になっていなかったかもしれない。
やるせない気持ちと共にアルトはダーク・スラッシュを振るい、フェイトのザンバーも続く。

「くっ!、俺も逃げたかった、逃げたかった。でもっ!!」

悔しさの念と共に受け止めた刃をはじき返す。


「そう、その時には私は堕ちていた。血の味を覚え、殺人に悦楽を感じ、
イノーブスのゴミ処理も進んでやるようになった。もう戻ることはできない」
「そんな……」
「でもゼッドはそんな私でも愛し、沢山のかけがえのないものを与えてくれた。そして……最後のひとつは……」

一瞬、悲しげな表情を浮かべ、そして空を仰ぐ。

「さぁ、ゼッド!。私に最後の贈り物を!!」

プレシアが叫び、その先の上空ではアルト、フェイト、ゼッドが激しい戦闘を繰り広げている。
それはまるで、崇高な儀式を飾る演舞のようだ。


「はあぁぁぁぁぁああ!!!」
「やあぁぁぁぁぁああ!!!」

アルトとフェイトは雄叫びを上げゼッドに切りかかる。
剣をクロスさせ、二人の重い剣戟を受け止めはじき返す。

「テメェ、なぜ本気を出さない?」

ゼッドは自分達よりも強い。
何度か剣を交え、アルトとフェイトは痛感し同時に苛立ちも覚えていた。
もしゼッドが本気を出せば自分達は数分とて持たないだろう。
しかし彼はただ自分達の攻撃を軽くあしらうだけで、自分から仕掛けて来ず一向に決着がつかない。

「………」

ゼッドは答えない。その態度になお苛立ちを覚える。

「何とか言ってみろっ!」

アルトは水柱を出現させ潜る。
パワーは落ちるが、華奢なリアの姿になったことでスピードが上がり、
フェイトと合わせて一気に決着をつけようとしていた。

「ハッ!」

宙を蹴り、一気に間を詰めグロウ・グラスプを装備した拳を突き出す。
ゼッドは迎い撃つこともせず腕をクロスさせ防御に徹する。
しかし、加速をつけた拳はそれを物ともせず、腕を砕き

「くっ、がぁっ!」

グサリとゼットの胸を貫く。
ゼッドは血を吐き出し苦悶の表情を見せる。

「リアっ!」

しかし、神族は胸を貫き心臓を潰したところで死にはしない。
胸から手が離れ、リアが離れると同時、フェイトが追撃に入る。

「はぁぁぁぁっ!!」
「フッ……」

ライオットを構え、ゼッドの体を17分割。
斬られる瞬間、血だらけの口を歪めゼッドが笑ったように見えた。


「…………………」

愛する人が切り刻まれたというのにプレシアは動揺も涙の一筋も流さずに無表情で見つめていた。

「フッ、フフフフ、ワハハハハ………」

それどころか笑っている。
目的が果たされたように歓喜に沸いていた。

「フフフ。17分割とはさすがの私でも考え付かなかったわ。
しかもアストラルサイド系の法術付加で魂をもバラバラにして消滅させちゃうんだもん、
もう彼と一生逢えないじゃない」

面白い冗談で大笑いするようにプレシアは笑う。

「なっ、何で笑っていられるの……」

プレシアの奇妙な行動に不安と恐怖を感じ、この後起こりうる事態を思い体が震える。

「何でって!、ククク、これが笑わないでいられますかって言うの、ワハハハハ!」

しばらくし、顔に手を当て息を整え冷静になる。

「ゼッド。もう逢えないけど、でもありがとう。これで私は……逝けるわ」
『うっ!!』

リアとフェイトに向けられたのは、肌がピリピリするようなアリシアの凄まじい殺気。
プレシアは少し歩きそして立ち止まる、そこにはかつてゼッドだったものの残骸が、
その一欠を掬い取り、そして食べ始める。

『……………』

バリバリと力強く骨を砕き、肉と血をためらいも無く嚥下していく。
誰も声が出なかった、その狂気の沙汰に嫌悪感も沸かずにただ見つめるだけだった。

「……ねぇ、アリシア。確か神族って大事なものを奪われた時って必ずみんな同じことをするよね?」

ルージュのように赤く濡れた唇を軽く吊り上げ笑い問う。

「えっ……」

嫌な汗が流れる、心拍が上がり、早鐘のように脈が速い。
フラッシュバックのように脳裏におぼろげな映像が浮かぶ。
それは未来、最悪な未来が見えてしまった。
でも今の私は無力、巻き付いた鎖は超高密度の魔力で出来ておりその存在を主張する。

「ぶっ殺すに決まってるよねっ!」
「待ちなさい。プレシアッ!」

タッ!、と地を蹴り一気にリアとの差を縮める。

「やめろプレシアッ!、正気にもどれっ!」
「何言ってんのさっ!。愛した人がぶっ殺されたからぶっ殺した奴をぶっ殺しているだけさ。
十分神族にとっての正気じゃないのさぁ!」

大剣シェドザードが容赦なくリアを襲う。
グロウ・グラスプの甲の3本爪を出し受け止めるが所詮は爪、力負けしそのままなぎ払われてしまう。

「くっ!」
「はぁぁぁああっ!」

プレシアの一方的な攻撃、力が劣るリアでは大剣を受け流すのが精一杯。
アルトの姿に戻りたくてもその隙を与えてくれない。

「ホラホラ、どうしたの?」
「やめてプレシア!!、このままじゃホントにっ!」

本当にあの未来が現実になってしまう。
しかし、自分を縛る鎖は地に深く根を張り自力で解くことはできない。

「くっ!、あああぁぁっ!!」

爪を弾かれ腕が宙を仰ぐ。
シェドザードの一閃、リアの左腕が宙を舞い、シェドザードの次撃、その刃がリアの腹を貫く。

「父さん!!」
「リアッ!。止めなさいプレシアッ!」

フェイトがライオットザンバーを構え二人に割り込もうとする。

「アンタは後、少し待てないの!」

剣を振り、リアを引き抜き再び振るう。
シェドザードとライオットの鍔迫り合い、そして互いに弾く。
フェイトの二刀を使った素早い斬撃、プレシアも大剣ながら素早い身のこなしで斬撃を繰り広げる。
しかし実の娘を傷付けることも出来ず、攻撃は相殺止まりになっていた。

「まったく、5年も経つのにぜんぜん強くなっていないのね、母さん」
「えっ!?」

“母さん”、その言葉にフェイトは一瞬動きが止まる。
その隙を突きプレシアが攻撃を加える。

「母さん!!」
「クッ!!……グハッ!」

ドスっ!、という衝撃と共にフェイトが口から血を吐き出す。
襲い掛かる不快感、プレシアの右腕はフェイトの胸を貫き、その腕をとめど無く鮮血が流れる。

「フフフ、どぉ心臓を貫かれた気分は?。ゼッドもこんな気分だったのよ」

痛みが全身を駆けショックで気が遠くなりそうになる。

「痛いでしょ?。悲しいわね、人間だったら即死、痛みや恐怖から解放されるけど
不死なる私達はこれくらいの怪我じゃ痛みからも恐怖からも逃れることはできない。
じわじわと噛み締めればいいわ」
「止めてアリシアっ!、いくら不死でもほっとけば身体は死ぬのよ!」
「そんなことは分かっているわよ」

プレシアは腕を引き抜き血飛沫が宙を舞う。

「ぷっ、プレシア……」

フェイトの目から一筋の涙が流れる。
涙が枯れ果てたと思ったのに、プレシアを救うことが出来ず私は負けた。悔しさと悲しみが胸一杯に広がる。
フェイトは手を伸ばすが無常にも払われ背に強烈な蹴りを食らい地面に激突する。

「母さん!!」

舞い上がる砂塵、プレシアは手を掲げデアボリック・エミッションのような黒い球体を発生させ、
自分の背丈ほどに膨張する。
それは夜よりもなお深く、所々濁ったような模様を見せる。

「あれは……」

それは全ての負の塊、神までもが触れただけで消滅しかねない光と相反する暗黒の魔法。
見ただけで背筋に悪寒が走る。

「お願い…お願いだからやめてプレシアッ!!!」

あんなものまともに食らえば確実にフェイトは死ぬ。
アリシアは身体に食い込む鎖もかまい無く身を乗り出して叫ぶ。

「消滅しなさいっ!」

アリシアの叫びは届かず、そのおぞましい物は放たれる。

「クッ!、血が足りない!」

血溜りが広がる、起き上がろうとするが失血と痛みでうまく体が動かない。
暗黒の球はゆっくりと、だが確実にフェイトに近づく。
回復も間に合わない、もうダメかと思い諦めて目を瞑るが、一向にソレは襲い掛かってこない。

「えっ?……アルト」
「だっ、大丈夫かフェイトッ?」

アルトが間に入りシールドで防ぐ。

「くっ!、力が入らねぇ!、やっぱまだ傷が塞がってねぇか」

腹が抉られ左腕も失った。
うまく力が入らず轟音を上げ加速する暗球に押され足が地に減り込む。
片腕だけで張ったシールドも押され侵食され、腕が魂が犯されてゆく。

「フッ、こりゃぁダメかもな」

このままだと自分は飲み込まれる。
アルトは死を覚悟し受け入れようとした、しかし自分の後ろにはフェイトがいる、
まだ飲み込まれるわけにはいかない。

「クッ!。フェイトッ、立ちあがれっ!、お前だけでも逃げるんだっ!」
「ばっ、バカ言わないでっ!」

傷が塞がったばかりの体を引きずり起き上がり、アルトの背を支えるように体ごと寄りかかる。

「あなたを置いて行けるわけ無いでしょ!。お願い、あなたは私が守るだから生きてっ、
生きようとしてっ!、私を、私達を置いていかないでっ!」
「フェイト……、ああ、お前らを残して死んでたまるかっ!」

左腕を胴に回し右腕を沿えシールドを強化する。
少しずつではあるが闇球を押し返している。

「見上げた夫婦愛よねぇ。私もゼッドと育みたかったなぁ、でももうそれも叶わない……」

プレシアは二人に向かって手を翳す。

「やめてプレシア!!、やめてぇ〜〜〜!!!!」

喉が潰れる勢いで叫ぶ。
放たれた数多の火球、ソレは高速で二人に襲い掛かる。

「おい嘘だろっ!!」
「まだよっ!」

バルディッシュのオートディフェンスが展開されるが、気休め程度、
火球はいとも簡単にディフェンスを突破し二人に衝突し爆発の連続、
押さえが無くなった暗球は全てを飲み込み轟音を立て大爆発を起こした。


「ハッ!……」
「ん?。どうしたのアルフ」

フェイトの使い魔であるアルフは一筋の涙を流した。

「ラインが切れた………フェイトが死んじゃったよ」


黒いドームが消滅し残ったのは更地。
二人の生きた痕跡も何もかも無く、風の流れる音が空しく響く。

「フフフフ、これで邪魔者はいなくなった。……たった二人だけになっちゃったねぇ、お姉ちゃん」
「……………」

プレシアは語りかけるが、答えずバインドが解けてもアリシアは力無く俯き続けていた。

「さぁ、お待たせ。次はあなたの番よ。さぁ、盛大に殺しあいましょうよ」
「そんな、そんな……………」
「ん?。もしかしてショックで意気消沈しちゃったぁ?」

父さんと母さんが死んだ。
殺したのは誰だ?、私の実の妹。
そう二人を殺したのは妹、悪魔と成り果てた妹。
世界を滅ぼそうとする悪しき存在。
私は神族、悪しき者である悪魔を滅ぼさなくてはならない。

空っぽの頭に電撃のようにとある感情が浮かぶ。
ソレは決して思ってはならないこと。
しかし思考はソレを正当化する大義名分を構築し意識に刻み付ける。

「私………者………」

アリシアは立ち上がり、何かを呟いている。

「ん?」
「私は………する者、私は神族……」

まるで自分に言い聞かすように何度も何度も繰り返す。

「私は神族、悪しき者、悪魔を滅する者。……アルヴァレスタ……拘束と封印を開放……」
(Ma'am!!)







あとがき

Krelos:はい、決戦第5戦目、アルト&フェイトvsゼッドでした。
いや〜、結構な難産だったがあまり二人の活躍が無いような気がする。
フェイト:……ううっ、ヒドイよ!。私とアルト死んじゃったよ!、
しかも実の娘に殺させるなんてっ!!、なんていう人なの!!。
Krelos:仕方ないのよ、あの結末はこのストーリーを考えた時から決まっていたことですから。
フェイト:ならば裁判にかけ再構成を申しだてます!。
Krelos:わっ、ひどっ!。職権乱用だろソレは!。
フェイト:いいんです!。さぁ、さっさと書き直してください!。
Krelos:ハイハイ、ちなみにどのような内容に?。
フェイト:そうですねぇ〜。やっぱり二人の愛の力で倒して、その真実の愛でプレシアとゼッドは目が覚めるの、それでねそれでね…‥…。
Krelos:さてフェイトはほっといて、次はいよいよ最終決戦、アリシアvsプレシア!。クライマックスです!!。
フェイト:ちょっと、聞いているんですか!!。





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