「……アルヴァレスタ……拘束と封印を開放……」
(Ma'am!)
「聞こえなかった?。拘束と封印を開放!」
(……I Ma'am The restraint and the seal are opened ―……了解、拘束と封印を開放―)

アルヴァレスタが淡く輝き、魔力を帯びた突風とともに力を解放する。

「我が内に眠る力よ、光と共に解き放ち……」

呟く言霊が耳に付けてある封環を砕き、足元に黄金の魔法陣が浮き上がる。
アリシアを包む光の風、段々とその勢いを増し、光が爆せ、アリシアの本来の姿を現す。


第18話
白翼と黒翼 〜アリシアとプレシア〜


「フフフ、とうとう本気を出したわね。これで殺し合いが出来る……」
「………」

紅みがかった金髪はその色を失い、獣のような銀の瞳。
魔力と共に纏うはエターナリィ・ガーブと白銀の甲冑。
膨大な魔力のせいなのか、ピリピリと空気が研ぎ澄まされる。

「もう……戻れないのね――――」

構えるは穢れを知らない純白の刀身の剣。

「ええ、互い待つのは生か死よ。さぁシェドザード、こっちも本気を出そうか!」

プレシアも封環を解放、黒い風が吹き荒れ、現れたのは黒のエターナリィ・ガーブと漆黒の甲冑。
その手には憎悪によって染められた漆黒の刀身の剣。
白と黒、対極の姿をした2人はさしずめ聖騎士と暗黒騎士と言ったところだろうか。

『…………』

睨み合いが続く。
二人の力に影響され、空気は張り詰め、雲行きも怪しく雷鳴が聞こえる。
互いに構えるのは、マテリアルファクト、アルヴァレスタとシェドザード。
デバイスの姿は本来の力と姿を封印する拘束具、仮の姿にすぎない。

「ハッ!」
「ヤッ!」

互い、タッと駆け出し中央で剣を交える。
交わった瞬間、ぶつかり合った力が衝撃波として周りに広がる。


「クロノ提督!、地上本部跡付近に高魔力反応、次元震発生の恐れがあります!」
「こんな時に!」


「どうしたのアリシア、そんな力量じゃ私を倒せないわよ」

続く剣戟。
一合一合が甲高い音を奏で、同等の力量を見せるが若干プレシアが余裕を見せる。

「私はこの5年間、憎悪の中で生きてきた、それが私に力を与えてくれる、アンタと違う!」
「勝手なこと言ってんじゃないわよっ!。こっちだってどれほど探したか、どれほど悲しみに暮れたか。
そんな父さん達をなぜ殺したっ!」
「ハハハハッ!。そう、それが憎しみよ。おめでとう、やっと生まれた」

プレシアが心底楽しそうに笑みを浮かべる。
しかし今の私にはその意味が分からない。いや、どうでもいいことだ。

「何が生まれようと、私はただアンタを滅するのみ!!」

アリシアの背中から純白の翼が生え、プレシアに突撃する。

「面白い!。やってみなさいよ!。ゼッドも死に私の大切な人もいなくなった。
もうこんな悲しいだけの世界なんて要らない。アンタを殺し、この世界も滅ぼしてあげる!!」

対するプレシアも漆黒の翼を広げ突撃する。

「アルヴァレスタ!」
「シェドザード!」
((Fire braid!!))

互いの刀身に灼熱の炎が覆う。
激突の瞬間、爆発を起こし二人は吹き飛ばされる。

「ライトニング・ランサー!、ファイア・ランサー!」
(Ice Lancer!,Air Lancer!)

体制を整えつつ、アリシアとアルヴァレスタは個々で全く違う属性の二つ魔法を同時に放つ。
プレシアとシェドザードも同じく個々に二つずつ魔法を放ち相殺する。
次、アリシアは宙を蹴りプレシアに近づきつつアルヴァレスタと共に5つずつ、計10の魔法を唱えプレシアに放つ。

「うわっ!!」

しかしプレシアは爆発の反動で吹き飛ばされただけでダメージは微塵も無い。
アルヴァレスタを構え縦一文字、シェドザードを構え横一文字、

「くっ!」

しかしそれぞれの刃はサレットとブレストブレードに阻まれ動きが止まる。
両者力押しで刃を進めようとするが、とうとう刃が耐え切れずに接地点から音を立て真っ二つに折れた。

「なにっ!?」
「チィ!!」

二人が纏う甲冑はデュエル・ガーブ、纏い手の爪や髪、体の一部を使い、
魔力の炎で鍛えられた金属、ゼロハルコンで出来た、対魔力攻撃、対物理攻撃属性を持つ究極の神具。
しかし、それは他の神族、魔法を司る者に対して、キャパシティが似通った二人にとっては気休め程度にしか過ぎない。
高い防御力を得るためには生成時に多くの魔力を込める必要があるため、
敵の魔力が弱ければ最強の防御力を発揮するが、上回ってしまったら簡単に消し飛んでしまう。

「フッ。ゼロハルコンの刃を断つほどのデュエル・ガーブを作り出すとはね」
「そっちもね」

プレシアは柄から実刃を抜き、アリシアも同じようにした。
タッと駆け出し、間合いを詰め

『はぁっ!!』

互い柄から生み出されるのは光の刃と闇の刃、交じり合う対極の刃、同時凄まじい衝撃波が走り

「くっ!」
「わっ!」

反発する磁石のように二人を天高く跳ね上げる。


「現次元座標に小規模次元震発生!」
「なんだと!?」
「今はミッドチルダに限定されていますがこのままですと大規模化し近接する第3、第47、第50無人世界が崩壊!。
第45管理世界にも小規模次元震の恐れがあります!」
「有人世界は次元結界で幾分は耐えられる、ひとまずここの次元震を抑えるぞ!」
『はい!!』


「いったいどうなってるんだ?」
「まったく管理局は何やってんだ!」
「私達どうなっちゃうの?」

激しく揺れる大地、激しい稲光、まるで世界の終わりといえる光景を前に
ベルカ自治区聖王教会に避難していた人々は不安と不満にかられていた。

「皆さん落ち着いてください」
「騎士カリム、やはり私も加勢に行ったほうが。このままこの状態が続けば暴動になりかねません」
「落ち着いてシャッハ、今ははやて達を信じ、私達は私達にしか出来ないことをいたしましょう」


体に感じる浮遊感、衝撃によりアリシアは吹き飛ばされ、未だ宙に身を委ねている。

「アイス・アロー!!」
「!!」

数条もの氷の矢が襲い掛かる。
アリシアは翼を一羽撃き、急上昇し避ける。

「はあぁぁぁっ!」

そこにプレシアの攻撃、咄嗟に剣を振るい受け止めるが、その重い斬撃に押される。

「チィ!」
「フフフ」

何とか踏ん張り鍔迫り合うが、一瞬でも気を抜けばなぎ払われる、
だが先ほど回避したアイス・アローが再び襲い掛かろうとしていた。

「くっ!」

回避も応戦も出来ず、無残にも氷の矢はアリシアの右腕をガントレットごと貫いた。

「どうやら魔力のほうは私が上みたいね」
「煩い!」

剣を弾き、プレシアと距離を取る。

「ララ、ラジュオ、ヴァジュラ、マハ・ボルト、フリーッ!!!」
「その呪文はっ!」

空を雷雲が覆い始める。
それは神族の一般法術体系、カオス・ワーズのさらに上を行く上級法術体系、カイザ・ワーズ。

「雷よ、万物悉く砕け!。サンダー・フォール!!」

ゴゴゴォォ!!と轟音と共に幾条もの雷の柱が辺り一面に降り注ぐ。

「わぁぁぁぁぁああっ!!!」

そのうちの一条がプレシアに直撃、全身をありえない単位の電流が駆け巡り
肉体を焦げ付かせ断末魔のような悲鳴を響かせる。

「はぁっ、はぁっ」

落雷が終息しボロボロのプレシアが何とか意識を保っていた。
その威力は有にカオス・ワーズの100倍、威力もさながら消費する力も膨大、
放ったアリシアも疲労を見せ、プレシアの漆黒の甲冑も殆ど砕け散る。

「はぁっ、くっ!、まさかカイザ・ワーズが使えるとは!」

間髪入れずアリシアが切りかかる。
電撃のショックで手放したシェドザードは遥か下、引き寄せ応戦する暇もない。

「くっ!」

腕に微かに残るガントレットで光刃を防ぐ。
ガントレットに皹が走る、この分だとそう長くは持たない。
しかしプレシアは焦り一つ見せない。

「はっ!」

幾合いかの攻防、とうとうガントレットは砕け散るが待たずして斬撃が走る。

「調子に乗ってんじゃないわよっ!」

足を蹴り上げグリーブを使い弾き飛ばす。
一瞬の隙を見せるアリシア、その隙を見、プレシアが手中に生み出すのは漆黒の炎。
それをアリシアの腹に叩き込む。

「うわああぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」

全身の肌が切れ、血が噴出し、甲冑が砕き散る。
アリシアの断末魔のような叫び、彼女の体内では闇の炎が縦横無尽に駆け巡り肉体と精神を削る。

「ガハッ!。くっ!」

血を吐きつつも歯を食いしばり意識を繋ぎ止める。
次の瞬間、プレシアの拳が視界に入り横っ面に思いっきり入る。

「くっ!」

アリシアもプレシアと同じようにアルヴァレスタを下に落としてしまった、プレシアの拳が迫る、
アリシアは拳を握り締めその拳を弾き、もう片方の拳でプレシアを殴りつける。
プレシアも負けてはいない、続くフルファイト、素手だというのに二人の拳は骨身にしみるぐらい重い、
拳だけではない、キックもパンチの後に続く、顔はもちろん急所またはそれに近いところを確実に攻めてくる。

「はぁぁっ!」
「やっ!!」

互いにクロスするキックとキック、急所を突くボディブロー、剣戟ばりの激しく鋭いラッシュ。

『うっ!!』

極めつけのクロスカウンター、汗が飛び散り互いの意識を削りクラリとよろける。

(Ma'am!)
(Buddy!)

聞こえるのは互いの相棒の声、落下した二振りの剣が主の下へ猛スピードで飛び戻る。
二人は体を半回転、タイミング良く剣を取り刃を出しそのまま遠心力の勢いで相手に切りつける。
二人の動きは綺麗で完全なるシンメトリー、何度目かの白刃と黒刃の鍔迫り合い。
二人ともハァハァと肩で息をしている。
体力も魔力ももう限界が近いのだろう、刃を弾き互い翼を羽撃かせる。
天に伸びる白と黒の二重螺旋、その接点で刃を交える。
螺旋はさらに天へと伸び、そして漆黒の空間へと到る。

『はぁぁぁあっ!!』

魔力を込め再び交じわる刃、放たれる衝撃波。


「次元震が拡大!、第3無人世界に次元断層!、世界が飲み込まれていきます!!」

宇宙空間だというのに揺れを感じる。
この宇宙、いやこの次元自体が二人の強大な魔力に刺激され、悲鳴を上げてもがき苦しんでいるようだ。

「次元震さらに拡大!、管理世界にも徐々に影響が出始めています!!」
「チィ!、我が姪たちながらよくもやってくれる。そっちは本局に要請してあたってもらえ!」
「マズイな、Gストーンが影響を受けている。このままだと機関が暴走するぞ!」
「全てのサイ・システムを停止、エネルギーラインをメインからサブに切り替えろ」
「“どうした?”」
「あの嬢ちゃん達の精神波動に影響されGストーンが暴走してるのさ。幸い敵さんも同じらしい。
主機関から副機関へ移行したから心配はいらねぇけど、機動防御共に下がるぞ」
「“暴走だと!?、じゃ突入隊は……”」
「そう慌てるな提督さんよ、突入隊を信じろよ」
「“それはそうだが……”」
「お前等、とばっちりを受けたときの準備をしておけ」
『おう!』


宇宙に二つの閃光が縦横無尽に動き回る。
アリシアとプレシアは艦隊を気にすることなく戦いを続けている。

「ぐはっ!!」

アリシアの足を掴むプレシア。
そのまま投げ飛ばされ戦艦の甲板に激突、船が大きく揺れる。

「チィ!、腕が砕けたかっ!」

硬い装甲に衝突した時の衝撃かアリシアの右肩から下は動かず痛みが走る、

「……プラズマ・ランサー、カタストロフシフト」

アリシアを見下すプレシアの周りにジェノサイドシフトを超える量のスフィアが生まれる。
術式はミッド、しかし込める魔力はそれを遥かに上回る。

「アル、カタストロフシフト!!」

回復の暇はない、アリシアもとっさに術を構築し周りにプレシアと同じ数のスフィアが生まれる。
今自分の持ちうるありったけの魔力を込める。そして―――――。

((Fire!))

同時一斉に発射された矢はぶつかりあい、無音の空間を煌きに染めそして消滅してゆく。

「おらあぁっ!!」
「はあぁぁぁあっ!!」

閃光の中、二人は雄叫びを上げ再び剣を交える。
二人の間にはすでに言葉を交わす理性はない。
妹を滅し闇を封じる。姉を滅しこの世を闇へと堕とす。
滅せよ――――本能と言う目的のため二人はただ刃を激しく交える。

「くっ!」
「うおぉっ!」

いつの間にか惑星の重力に引かれ大気圏に入り摩擦で炎が上がる。
しかし、彼女達の纏う風の魔法が強力なのか、その高温を1℃も伝えることなく、二人は縦横無尽に駆け回る。

「はあっ!」

剣を弾かれ離れる際、アリシアは縦一文字に振るう、
発生した真空刃は大気との摩擦により炎を纏いその威力を上げる。

「きゃっ!」

プリシアは避ける暇もなくそれに飲み込まれ大爆発。
ハァハァと肩で大きく息をし爆発を見つめるが、その隙がいけなかった。

「はっ!」

爆発からほぼ無傷のプレシアが飛び出し対応が遅れた。
プレシアの斬撃を剣で防ぐ、だが体の疲れか受け止めたが反動で簡単に手からすり抜けてしまった、
プレシアも同じなのか叩きつけた衝撃で手からすり抜け二振りの剣はあっという間に主達から離れていく。
だがプレシアはなおも襲い掛かる。頭と両手を捕み足もがっちり固めそのままアリシアを下に加速する。

「くっ!」

大気圏を抜け対流圏へ、だんだんと地上が迫ってゆく。
片腕だけではこのホールドは解けない、甲冑も無く魔力もほとんどない今、
この高高度、高音速で地面に衝突すればただではすまない。

「死ねぇぇぇえええええ!!」

ホールドが硬く、翼を広げエアブレーキにしようとするが風圧に負け中頃から天に向かって折れてしまう。

「くっ!、骨がイったか」
「ウフフ。ホラホラ、もう高度が無いわよ、このまま激突したら四肢断裂どころか頭まで吹っ飛ぶわよね。
さぁ、片手を開放してあげるからどんな悪あがきをするか見せてちょうだい」

そう言い片手だけ開放する。
普通なら反撃するのだが片腕だけではやれる範囲が限られる、地上まで200メートルを切った、ならば。

「ウインド・ボム!!」

魔力を搾り出し地上に向かい魔法を放つ。
ソレは地表で暴発し空気のドームを形作る。
その中に二人は落ちてゆく。

「ぐはっ!」
「くっ!」

空気のクッションで速力は殺したが、それでも相当な勢いで激突した。
激突の反動でバウンドし、宙に浮き上がる。
二人の目が合い、同時最後の力を込めた魔法弾を撃ち込む。

『くっ!!!』

眩い光と爆風が二人を襲い大きなドームを生む。
二人は抵抗する力無く吹き飛ばされ、やがて静寂が訪れる。

「……………」

もうだめ、体が動かない、魔力もエンプティ……視界が消えてゆく……、意識が遠のく…………。







あとがき

Krelos:はい!。決戦6部作、最終戦アリシアvsプレシアやっと終わった〜〜!!。
アリシア:これで本編のほうは完成したわね。
Krelos:おうよ!、あとは出来上がっている原稿をHTML化していくだけだぜw。
アリシア:だけどなんか納得いかない!!。
Krelos:そりゃぁ姉妹の殺し合いだからなぁ。
アリシア:このままじゃ不幸街道まっしぐらじゃないの!!。
Krelos:まぁ、自分もそう思いましてトゥルーエンドとグッドエンドを用意しました。
アリシア:フラグらしきものがないのに?。
Krelos:そこは言わないで!!。





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