最期のプレシアを見て今まで押し殺してきた感情が蘇る。

「終わらせたりしない!、終わらせたりはっ!!」

私は諦めない、たとえ一時的でもプレシアは闇から開放された。
何百年後には再び闇に蝕まれるだろう。
だけど私はたとえ数年でも再び仲のよい姉妹として過ごしたい。

「我が翼よ、奇跡を成す鍵となれっ!!」

翼の羽ばたきと共に走る炎。
あたり一面、紅と変わる。


第20話 グッドエンディング
輝きし未来へ


半年後、ミッドチルダ中央区、首都クラナガン跡。
更地と化したそこには非難していた人々や応援部隊が集まり、一からの復興が始まっている。
完全に崩壊した地上本部とその体制、生き残った地上部隊はゲンヤ=ナカジマ一佐を中心に臨時守備隊を構成し
事件後の動乱等の対応に精を出していた。


ミッドチルダ北部、聖王医療院。
白亜の壁が続く病院の廊下、赤子を抱きゆっくりと歩くシャマルとそれに付き添うシグナム。

「皆さんお加減はいかがですか?」

大部屋の戸を開けると、そこには今回の功労者達がいた。

「うん。肩の傷も塞がったしすっかり大丈夫だよ」
「そう良かった。他のみんなもたいした怪我じゃないし、でもヴィータちゃんはまだしばらくは安静ね」
「はやて達はもう守備隊だろ?。私も早く現場に戻りてぇ、体動かしたい」

なのはやヴィータの怪我も大事には至らず、時間さえあれば完治する。

「俺達は、まだまだだな」
「うん」

続き話すのはアルトとフェイト。
プレシアの攻撃を真っ向から受け、死んだと思われていたが、
戦場から離れた海岸に打上げられていたのを運よく発見された。
しかし命は取り留めたものの、体に後遺症が残り、現場復帰が危ぶまれている。

「ほんと、ラインが途切れたあの時ほど私は生きた心地はしなかったよ」
「神族の魔法でも直せないのか?」
「我ら光と相反する闇の攻撃だったからな、下手すれば消滅ものだ。命が助かっただけよしとしよう」
「医者の立場から言わせてもらうと、復帰できても出来る仕事はデスクワークぐらいですね、戦闘はほぼ無理でしょう」
「“そうよ。いっそのこと私達に任せて隠居生活でもしたら?”」
「“……うっ、うん……”」

念話で話しかけてくるのはアリシアとプレシア。
アリシアは死にかけていたプレシアを転生の炎で助け、プレシアは命を取り留めたが、死闘の末、
力尽きた二人は今日まで最小限の生命機能を残しほぼ全ての身体機能が停止している。
神族側の医師によれば、身体維持に使う魔力まで使い切ったため、体が休眠状態になったとのこと。
身体維持に必要な魔力が集まる1年間は寝たきりの状態だと言う。
現に、意識はあるものの、アルトとフェイトの向かいのベッドに幼児化して横たわっている。

「隠居生活ってなぁ、お前達もその状態でよく言えるな」
「“私達はまだまだ若いんだし”」
「そうだ。プレシアちゃん、ファミリアちゃんを連れてきましたよ」

「“えっ……”」
「“なに躊躇してるの、あなたの娘じゃない”」
「“うっ、うん……”」

プレシアが躊躇するのも無理がない。
自分はみんなに酷いことをたくさんしてきた。
そんな私が幸せを噛み締めてもいいのだろうか。

「はい、ママですよ〜」

しかしみんなはそんなことは気にしていないようだ。
ただ、帰ってきてくれただけでよかった。
みんなはそんな思いで一杯だった。

「ふっ、まるで双子の赤ん坊みたいだな」
「赤ん坊といえば、スバルが助けた赤ちゃんは?」
「検査の結果。遺伝子情報がスバルのものとほぼ一致、多分スバルか、
その母クイントの遺伝子から作られたのだろう。だが戦闘機人としての改造は施されていない」
「それで自分が保護者として育てるそうよ」
「そっか」
「“それでシグナムさん、裁判の判決は?”」

プレシアの一言にみんなの顔が暗くなった。
裁判とは今回のクラナガン・クライシスの首謀者の一人プレシアとその戦いで次元世界を危険にさらしたアリシア、
両名の裁判だ。

「判決は……」

みんなの息を呑む音が聞こえる。

「アリシア=T.H=ゼファー、プレシア=T.H=ゼファー、両名共に回復の後、執務官資格を剥奪、
軌道拘置所で2年間の禁固刑に処す、以上だ」

『“えっ?”』

二人は信じられないといった声を上げた。
あれほどの被害を与えたのだ、それ相当の重刑に処されてもいいはずだ。

「よかった。そんなに重たい刑じゃなくて」
「“よかないわよ。私達は世界を滅ぼしかけたのよ。それがこんな軽い刑でいいの!?”」
「だが、世界を救ったことも事実だ。アニス提督に感謝するのだな、2人の弁護を引き受けてくれたのだからな」
「“それは感謝しますけど、でも…………”」
「これは最終決定事項だ、再審も執り行われないように取り決められている。罪を償いたいなら行動で示すことだな。
幸い資格も永久剥奪と言うわけでもないしな」
「また執務官資格を取ってバリバリ働いて社会に貢献してくださいね」
「“………分かりました”」
「“プレシア?”」
「“私、刑を終えた後、執務官資格を取り直します。ゼッドにはもう逢えないけど私にはこの子がいる。
この子が大きくなった頃、平和な世界になるようにがんばるよ”」
「“プレシア……。仕方ない、それじゃ私も補佐官になってあなたの手助けをするわよ”」
「“お姉ちゃん、うん、よろしくね”」


それから数年後。

「おばぁちゃ〜ん、おじぃちゃ〜ん」

ミッドチルダ南部、アルトセイム地方。
大草原を走り抜ける小さな女の子達。

「ファミリア、転ばないように気をつけてね」

先頭の女の子の目指す先にはアルトとフェイト。
走り寄ってきた女の子をアルトは抱き上げる。

「あのね、私一番だよ!」

太陽のように眩しい笑顔で得意げに言うファミリア。

「うん。すごいすごい」

隣にいたフェイトが優しく頭を撫でる。

「こらぁ〜まてぇ〜」

後から追いかけてくる3人の女の子達。

「うわ〜っ、またファミィに負けた〜」
「ファミィちゃん足速いよ」
「はっ、はっ。疲れたです〜」
「デュアリスもプレオもパレットも十分早いと思うな」
「当然ですフェイトさん!、私は大きくなったらママやフェイトさんみたいな執務官を目指すんですから!。
だから身体を鍛えないと」
「私はママのような防災士長〜!」
「うん、きっとなれるよ」

アルトとフェイトは管理局を長期休職し休養とリハビリを兼ねてアルトセイムに移り住んでいた。
今では仕事が忙しい旧機動六課フォワードの面々に代わり、その子供達の相手を日課としている。

「ねぇ、おばあちゃん。ママ達はいつ帰ってくるの?」
「そうだね。今は長期任務だからね。でも今週末には帰ってくるって言っていたよ」
「ホント!?」
「うん」
「ほらほら、あんた達昼飯の時間だぞ」
『はぁ〜い!』

家の奥からエプロン姿のアルフが顔を出しみんなが家に入っていく。

「賑やかねぇ、まるで本当の姉妹みたい」
「ああ、……もう2人ぐらい家族が増えてもいいかな」
「えっ?」
「ほら、お互い賑やかな家族が好きだし」
「えへへ、もう。アルトったらっ!」
「のわっ!」

子作り発言に照れ笑いするフェイトは手加減なしにアルトの背中を叩き、アルトは地面にめり込んだ。

「フェイト達も早く席に着きなよ!」
「は〜い」


クラナガンが復興を完了し治安も安定したあと、臨時守備隊は新地上本部の設立に伴いその構成に組み込まれた。
その折、機動六課も正式に解散し隊員達はそれぞれの仕事に従事している。


「八神大将、追加の書類です」
「そこに置いとき!」

高々と聳える書類のタワーをデスクの端に置くギンガ、同じように並べられた書類に囲まれながら
はやては一つ一つに目を通し印鑑を押してゆく。

「まったく、ゲンヤのおっさんにハメられたわ!!、何でウチがこないなことを〜!!」

はやては今地上本部のトップの座にいる。
本来ならゲンヤが就くはずだったのだが、彼の巧妙な手によりはやてが任命されてしまった。
今ゲンヤは管理局を離れ、4人の娘達と共に平和な隠居生活を送っているだろう。

「はぁ〜っ、唯一の救いはヒメルとギンガが秘書についてくれたことやな」
「私としましては生贄に差し出された心境なのですが……」

微妙な笑みを浮かべるギンガ。

「でも良いじゃないですか、はやてさんが地上本部のトップに就いてくれたことにより
長年続いた本局とのわだかまりも解けていったんですから」
「確かにそうだけど……」
「大将、追加の書類です、今日中にやっちゃってくださいね」

ヒメルが追加のタワーを置く。

「こないなもん今日中に終わるかい!!」

文句を言いつつ手を動かすはやて。
それを扉を少し開けこっそり伺うヴォルケンリッターの面々。

「うわっ、はやてマジイライラモードだ」
「ですぅ」
「これは荒れるな」

彼女達もはやての手足として各部門を任されていた。
しかしシグナムやヴィータはその性格ゆえか時々姿をくらまし部下達を困らせている。

「シグナム!、ヴィータ!、シャマル!、リィンにアギト!、それにザフィーラ!。
そこにいるのはわかっとるで!。暇してるんだったら手伝い!!」
『はっ、はい!!』

突然呼ばれ急いで部屋に入る面々。


「この紅茶もおいしいねぇ」
「良い葉が手に入ったんで早速入れてみました」

リンディ、カリム、クロノ、アニスの元後見人メンバーはカリムの執務室でシャッハの入れた紅茶を優雅に飲んでいた。

「ただいま帰りました」
「ママただいまぁ」

そこにミリィと一緒に部屋に入ってくる女の子が、彼女は一直線にアニスに向かい抱きついた。

「あのねぇあのねぇ」
「お帰りミリィ、こら!、シルア、皆さんにご挨拶は?」
「うっ、うん。皆さんこんにちは」
「はい、こんにちは」
『こんにちは』
「会う度に大きくなるわねシルアちゃん」
「本当にかわいいわねぇ、子供って」
「カリムもシャッハも早くイイ人を見つけなくっちゃね、本当に生き遅れになっちゃうよ」
『はっ!!』

言った本人には悪気は無いのだろう。
しかしそれは本人達をへこませ場を凍らせるには十分だった。


「ハラオウン特別捜査官、これから向かう現場の資料です」

写真立てを見ていただいちに部下が資料を手渡す。

「おう、悪いな」
「その写真、奥様ですか?」
「ああ、それと娘達だ」
「かわいいですねぇ」
「そうだろそうだろ」

写真を見せびらかすだいち。
そこにはことはと幼い子供達が。
だいちとことはは結婚し双子を設けた。
だいちは特別捜査官になり、ことはも教導官になった。
ことはは今、育児休暇を取り生まれたばかりの赤ん坊達を育てている。

「“ハラオウン特別捜査官、もうすぐ目的地に到着します”」
「分かった。さて、頑張ってくるかな」


「母さん、じゃなかった。高町少将、頼まれていた資料をお持ちしました」
「ヴィヴィオ〜。ありがと〜。それとついでにかまって〜」

ヴィヴィオがオフィスに入るとデスクに項垂れるなのはがいた。

「もう、戦技教導隊第1部隊長なんだからもうちょっとシャキっとしてよ」
「だってぇ〜、あんまり現場出てないんだも〜ん、体動かしたいよ〜、肥っちゃうよ〜、ユーノくんに嫌われちゃうよ〜」
(Endure Master ―我慢してください、マスター―)
「耐えられないよ〜」

なのはは長年の無理がたたってとうとう体に限界が訪れた。
しかしそうだと言って現場から離れるわけでもなく、シャマルは仕方なくはやてを通し本局にかけあった。
本局も貴重な人材をみすみす失うわけにもいかず快く了承、今回の事件を教訓とした戦技教導隊の再編に伴い
昇進、現場から離れた今のポストに就かせた。

「うわ〜、ストレスがたまっちゃうよ〜、スカッとしたいよ〜」
「お願いだからノリでSLB撃たないでね」


炎上するショッピングモール。
その中にクロスミラージュを構えたティアナと追い詰められた犯人がいた。

「さぁ、ここにはアンタと私だけ。違法ロストロギア密輸と各次元世界での爆破テロ及び大規模騒乱罪で逮捕する!」
「捕まってたまるかよ!!」

逃げようようする犯人。
しかし、頭上の壁が崩れその巻き添えを食らう。
犯人が潰されかけるそのとき、突然の爆発が

「ティア、助けに来たよ」
「スバルあんた」

粉塵を分け現れたのはスバル、彼女の腕の中には気絶した犯人の姿が

「いやぁ〜間に合ってよかった。建物にいた人達はみんな避難したよ。あとは私達だけ」
「それじゃ、行くわよ」

しかし、スバルの開けた穴は崩れ落ちた瓦礫で塞がれてしまった。

「ありゃ」
「仕方ない、例の手で行くわよ」
「うん!」
(Load Cartridge!)

2人の足元に展開される魔法陣、そして収束する魔力。

『スターライト・ブレイカァーーー!!』

放たれた二つのSLBは一つに交わり建物を貫く。


「キャロ、あそこだ」

エリオが指差す先には森林を駆ける2人の男が

「フリード」
「グゥゥゥ」
「待ちなさい!、あなた達を密猟の罪で逮捕します!」

しかし密猟者達は止まらない。

「はさみうちだ。行くぞストラーダ!」
(ja!!)

フリードの背中から跳び降りて密猟者の前に降り立つエリオ。

「観念するんだ!」


フォワードの面々もそれぞれの古巣に戻り、その腕を存分に振るっている。
そして彼女等も――――。


「アリシア様、プレシア様、突入準備全て整いました」
「こっちも近隣住民の避難終わったわよん」
「“了解”」
「“ねぇ、その様って言うのやめてくれないかな、ウーノさん”」
「いえ。あなた方は私達の保護者であり上司です、敬うのは当たり前のことです、
それにドクターの命の恩人のご息女でもありますし。トーレ、セッテ、お二人のサポート頼んだわよ」
「“任せてもらおう”」
「“了解です”」
「はぁ〜っ」
「“諦めなよプレシア”」
「そうね」

イノーブスに殺されかけたスカリエッティだが、フェイトの治療魔法とシャマル、ヒメルの治療で一命を取り留めた。
その後、スカリエッティは再び刑に処されたがウーノ、トーレ、クワットロ、セッテの4人は
スカリエッティの希望と説得により海上隔離施設へ、更正期間を終えた彼女達はフェイトを保護監察官とし
アリシアとプレシアが保護者になることになった。
4人はフェイトへの恩を忘れることなく、その娘達である二人を献身にサポートしているという。


そしてその当の2人は。

「作戦をもう一度確認する。全班一斉突入の後、私の班は密輸される質量兵器の確保、
プレシア班は犯人逮捕、いいわね?」
「相手は世界規模のマフィアよ、各班気合を入れていきなさい!」
『はい!!』
「よし、作戦開始!!」

刑期を終えた後、再び執務官として現場を駆け回っている。
数年後、数百年後、数千年後、何時になるかわからないが彼女等の前には再び闇の自分と対峙し
闇に堕ちるか消滅するかの二つの道を選ぶことになるだろう。
だが二人はそんな暗い未来は考えない。
今はただ駆け抜けて行くだけ、いつか訪れる、平和な世界を夢見ながら。

Fin







あとがき

Krelos:はい、ちょっと無理な設定がありますがグットエンドです。
プレシア:ヤタ−!、私食われてない〜!。
アリシア:良かったわね。
Krelos:プレシアは食われたか食われてないかが問題なのね……。
プレシア:そんなこと無いわよ、まだみんなと一緒になれたし、ファミリアとも暮らせて幸せだよ。
アリシア:うんうん。
Krelos:ほかのみんなも古巣に戻り平穏(?)な日常を過ごしています。
フェイト達がどう生き延びたかは突っ込まない方向で。
アリシア:それにしてもはやてさん出世したわね。
プレシア:うん、地上本部トップだもんね、ヴォルケンズも各部門の長だしね。
Krelos:今回の事件解決で機動六課の面々は差はありますが昇進しています。
長期休養中のアルトとフェイトも将官クラスに昇進し、体のこともあるのでなのは同様部隊長か訓練学校の教官、
またはそれを統括する責任者になる予定です。
はやて、なのは、フェイトには新伝説の三提督まで呼ばれるほどになってほしいです。
アリ&プレ:へぇ〜。
Krelos:それではここまで!。
アリ&プレ:またね〜。





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