「…よく食べるねぇ」
「うん」
「……………」

クロノは先ほどの自分の考えを恨んだ。
ビリーセストの言うとおりアルトは餓えていた。
テーブルに並べられた料理を獣のように食らい付きその胃に収めている。
空になった皿、その量軽く10人前はくだらない。

「おかわり!!」

しかし彼はまだ満たされないらしく、おかわりを要求する。

「はぁ〜〜〜」

ただ、ため息が止まらない。


第3話
底知れぬ力


「ふぅ〜〜、食った食った」

アルトは満足げに椅子に寄りかかった。

「はぁ〜、物資補給に戻らないとなぁ」

結局、彼が平らげたのはざっと50人前、人ならば異常な量である。

「よく食べたねぇ」
「そんなことねぇ、俺達の一族の中にはもっと食べる人もいる」
『………』

皆言葉を失った。

(アルト、今気づいたのだが、封環が壊れているぞ)
「ん?、いちっ!」

左耳を見るとかすかに血が流れた跡があった。

「あらいけない。すぐに手当てを」

シャマルが近寄った。

「いや大丈夫だ、ありがとう。なぁ、遮蔽物がない部屋はないか?」
「どうしてだ?」
「封環が壊れちまったんで再封印しないといけないんだ」
「封環?、なんやそれ?」
「自分の法力を抑えるプロテクトみたいなものだ。さっきの戦闘で壊れちまって」
「わかった。訓練室を使うといい」
「なら早速行こうか」

みんなは訓練室に集まった。

「魔力的な防御も完璧ってワケか」

50M四方の何もない空間の真ん中に佇み呟いた。

「エイミィ、用意はいいか?」
「“OKだよ、クロノ君”」

スピーカーからエイミィの声が聞こえてきた。

「何の用意だ?」
「失礼だと思うけど君の魔力…法術量を」
「そっちの言い方でいい、俺もなるべくそっちの言葉にする」
「そうか。それで君の魔力量を計測させてほしい」
「計測?。まぁいいけど機器が壊れても俺のせいじゃねぇからな」
「ふっ。管理局の機器を甘く見ないでほしいな」

そう言うと部屋を出た。

「あのう……」
「何故私達がここにいるのですか?」

部屋の端にはビリーセストと共になのはとフェイトがいた。

(すまないな、万が一のことを考えて防御結界を張ろうと思うんだが、
備蓄量が少なくてな魔量が高い君達から供給しないといけないのだ)
「ハァ…そうですか」
(すまないな、力を貸してくれ)
「わかりました」
「ビリーセスト、万が一のときは頼んだぜ」
(無論だ)

それを聞くとアルトは一笑し

「………」

眼をつぶり沈黙した。
「……我が内なる力よ、光と共に解き放ち……」
「わっ!!」

足元に黄金の魔法陣が浮き上がり荒ぶる暴風と共に力が解放されていく。

「きたきたきたぁ!!」

エイミィが操作するコンソールの計測器が動き始めた。

「すごいよ、どんどん跳ね上がっていくよ」

一瞬にして光が爆せた。

「一気にSSS+だよ」
「なのはやフェイト、はやての魔力量を遥かに超えるとは」
「また跳ね上がる、止まってよ!。キャッ!!」

機器は計測不能を示し放電し始め

「クロノくん!。止まらないよ!!」

機器はとうとう耐えられなくなり小爆発を起こした。

「ううっ……」

二人の視界が回復しその眼に映ったものは――――。

『綺麗……』
「…………」

真っ赤だった髪は色を失い、赤い瞳は獣のような銀の瞳に。
背から生えるは炎翼、纏うは圧力的な魔力の流れ。
長髪と童顔故か女性的な妖艶さ、気高さを醸し出していた。

「クロノくん大変だよ!。次元震が起こるよ」
「何だと!?」
(アルト、時間がないぞ、もう影響が出始めている)
「……わかっている――」

アルトの差し出した掌には緑の宝石。宝石が輝き、世界をその色に染める。

「我が力よ、我が意志に従い我が内深くへ、そして宝石奥深くへ……」

緑の世界が収縮し本来の色を戻していく。
それと共にアルトが元の姿に戻っていく。

「ふぅ……ビリーセスト、影響は?」
(最小限だ)
「そうか。すまないが少し休ませてもらう」

そう言いトコトコと部屋を出た。

(私を置いていく気か?)
「異文化交流は大事だぜ」
(いいのか?。いろいろ話してしまって?)
「お前の判断に任せる」

手をひらひらと降り部屋を出た。

(まったく……)

その後、取り残された私は皆と共に談話室で喋っていた。
いろいろ聞いた。アルフがフェイトの使い魔であること、
ヴォルケンやリィンが夜天の書、蒼天の書という魔道書が創り出した存在ということ。
私もアルトや自分が使える主のこと、自分が考え、話しても許される事を話した。

(時にみんな、先ほどは失礼した)
「すまなかったって、さっきの閃光のこと?」
(ああ、危うくなのはが死ぬところだったからな、私も必死だった)
「死ぬって…、あの筒は何だったの?」
(あれはライトセイバーといい、筒は柄と握りだ)
「柄と握りって事は剣か何かか?」
(ああ、君達にはビームソードと言ったほうが分かりやすいか。
しかしエネルギー源が問題でな、サイ・エネルギー、精神力をエネルギー変換して光刃を作り出すんだ)
「精神力をエネルギーに?」
(メタ・サイコロジー、精神物理学、主らはそう呼んでいる)
「すごい科学力だな」
(しかしそれは危険なものでもある。現にライトセイバーは特に危険でな。
我々以外は精神力を増幅するコンバータを装備しなければ光刃を形成する前に精神力が枯渇し死にいたる)
「私って結構危なかったんだ。ありがとうビリーセストさん」

なのはは笑顔で答えた。


翌日。アースラ内、訓練室。

「………」

50メートル四方の中心に佇む少年。両手には青い光を放つ光刃。
昨日、ビリーセストが言っていたライトセイバーというものだろう。
そして彼の周りに浮遊するドッジボール大の機械球が3基。

(準備はいいか?)
「いつでもいい」
「なぁ、何が始まるんだ」

そこに通りかかったクロノが見物している昨日のメンバーに聞いてきた。

「訓練だって」

なのはが答えた。

(では行くぞ)

球体が不規則にアルトの周りを浮遊している。

「!!」

1機から青白いビームが放たれ、アルトは光刃で跳ね返した。
それを皮切りに3機からビームが放たれた。
時には規則、時には不規則に、何条、何十条のときもあれば何百条のものビームが襲い掛かった。

「………」

しかし、アルトは慌てることもなく、避け、時にはその光刃で弾いている。

ブゥゥン、ブゥゥン

空気を切る重低音を響かせながら、サイド、バックステップ。
時にはターンと、まるで踊っているようだ。

「アルトくんってすごいなぁ!!」
「はい、光の速度のあの光線を寸分狂いもなく跳ね返しています」

シグナムが冷静に言う。
だがみんなはまだ知らない。烈火の将の心の奥底でうごめく欲望に。

「ふぅ」

訓練後、アルトは汗にぬれた体を拭っていた。
小柄な体のわりに程よくついた筋肉が彼の着ている黒いインナーの上からでも分かる。

「お前の剣技は中々のものだな」

話しかけてきたのはシグナム。

「これくらい、当たり前だ」
「さぞ名のある師に教授してもらったのだろう」
「まぁ、違う意味で名高いな。剣は俺の母や叔母、姉貴から習った」
「ほう。それにしては光線を弾くとは常識外れだな」
「そうですねぇ、いったいどんな魔法を使ったんですか?」
「フォースと言うものを使った」
「フォース?」
「なんだ、それは?」
「簡単に言えば、・・・・・・なんだっけ?」
(バカ者!!。フォースとは簡単に言ってしまえば、生命ならば誰もが持つ力。
他人と自分をつなぐ生命の繋がりのことだ)
「生命の繋がり?」
(そうだ。魔力とはまた別の力。自然界の至る所に満ちている。
ともあれ行使する我々ですら、このように簡素な説明でしか言い表せられない、
それを会得し行使することは出来ても、それを理解するのには人間の寿命では足りないほどの時間と激しい修行が伴われる)
「行使することが出来れば、念動力、自然な他人の意思の操作、未来視、過去視。
一般に超能力と呼ばれる力が身につく。このようにな」
「えっ?」
「わっ!?」

アルトがなのはとフェイトに手を翳すと、二人がフワリと浮き上がった。

「えっ!?、どうなってるの!!」
「怖がることは無い、フォースの力で君達を浮き上がらせただけだ」
「・・・・・・重くないですか?」

フェイトの顔が赤くなってゆく。

「重量は関係ない。重視するのは対象との繋がりだ。
先ほどの訓練では未来視の能力を使い数秒後に来るビームの軌道にあわせて剣を振るったまでだ」

手を下ろすと二人は着地した。

「面白そうやな。訓練すれば私等にも使えるようになる?」
「う〜ん、先天的な才能も絡んでくるけど、一般に会得するまで最低5年ぐらい掛かる。
一端に使えこなせるためにはその倍」
「10年も掛かるのかぁ」
「ライトセイバーもフォースを使えこなせてはじめてその本領を発揮する武器だ」
「なるほど、先ほどのを見るともう達人の域に達していると見える」
「違うよ、シグナム。アレはあくまでただ使っているだけだよ」
「どういうことだ?」
「俺は剣であれば大抵のものは扱える。けれどセイバーも含めそれらは本当に自分の担う剣ではないということだ。
ビリーセストもそう、あれは姉貴の作り出した剣、扱えたとしても、本人以外に使いこなすことはできない。
俺の旅は自分が真に担う剣を捜し求める旅なんだ」

シグナムは思った。
彼の剣捌きは2度ほど見ている。どちらも卓越された剣技だと思う。
しかしそれでも彼はただ使っているだけだと言う。
ならば真に担う剣を手にした彼はどうなるのか?。
そこでシグナムは心の奥底で蠢く欲望を言った。

「私と手合わせをしてもらえないだろうか」

剣を極めた私ですら適わないのか。
その前に今の彼に対し私はどれほどなのか。
それは、武人なら誰もが持つ強い者に挑む性だった。

「………はい?」

アルトはポカンと口を開けて答えた。







あとがき

Krelos:ごめんなさい、ごめんなさい!、ごめんなさい!!。
アルト:先に謝ってるよ、この人。まぁ後半に、世界的有名な某映画『星戦争』と、
知っている人は知っている、某アニメ『遺失世界』の設定を持ってきたからねぇ、しかもモロに。
Krelos:モロではない、ちゃんと自分なりに解釈はしている。
ちなみにオリジナル本編のほうは、その2作品のアイテム設定が主軸です。
アルト:うわっ!?、立ち直り早っ!。
Krelos:フフフ。このぐらいで驚いていたら身が持たんよチミ!!。
アルト:自慢してどうする!?。
Krelos:ここでひとつ、重大な発表が……。
アルト:何だよ?。
Krelos:前に年表作って最後の話まで考えてるって言ったよな?。
アルト:ああ。
Krelos:実はその年表……、年代と各キャラの年令がものすごいズレてた。
アルト:別にいいんじゃないのか、単純計算で?。
Krelos:良くない!!。周りが良くても俺は許せない!!。早速修正だぁ!!。
アルト:ああっ、悲しきA型のサガ……。と言うことは本編の投稿速度はどうなるんだ?。
Krelos:うまくいけば変わらない。ああっ、でもまだ7話が……orz.。
アルト:修正がうまくいっても結局は6話出した後は自動的に遅くなるのね……。
Krelos:ごめんさい、がんばります!!。
アルト:しっかりしてくれよぉ。






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