「面白そうやな、合同訓練も出来へんかったしウチらも混ざってええか?」

はやて達も聞いてきた。

(一つ聞こう。君達は自殺願望者か?)

次に問うのはビリーセスト。

「……悪いが、断る」

アルトは急に機嫌が悪くなり立ち去ろうとした。

「何故だ?」
(私からも言おう、アルトと戦うのはよしたほうがいい、アルトは未熟者ゆえ、君達の誰かを殺してしまうかもしれない)
「……どうせ俺は半人前だよ……」

ビリーセストの言葉に今にも隅で“の”の字を書きそうな勢いで落ち込んでいた。

「やってみなくてはわからんだろ」
「やめろ、俺と君達では強さの規格が違う」
「んだと!!、よっしゃ、私もやるよ」

アルトの言葉を挑発と取ったのか、ヴィータが乗り出してきた。


第4話
模擬戦?!


(仕方ない、少し相手してやったらどうだ?)
「しかしなぁ」
(ハンデをつけたらどうだ?)
「どんな?」
(お前の武装は黒鍵が1本と無手のみ、防御はフィフス・レインフォースのみ。それ以外の攻撃は禁止だ)
「仕方ない。用意を頼む。他に混ざりたいやつは?」

そこにいる全員が挙手した。

「う〜ん、フェイトは混ざってほしくないなぁ」
「どうして?」
「命の恩人を傷つけたくない」
「うれしいですね。でも私も参加します」
「意外と戦闘狂なのね」

アルトは手を翳し、手甲の宝石が光り衣服を包んだ。
光が止みアルトの衣服は民族衣装からGパンと白いシャツというラフなものになっていた。

「騎士を愚弄するつもりかっ!!」
「別に、ただ俺の法衣は対魔力が強くてな」
「くっ!、レヴァンティン!!」

シグナムは叫び、持っていた剣形のペンダントヘッドが変化しブロードソードになった。
同じく、なのはとクロノは杖、フェイトは戦斧、ヴィータはハンマーの形になった。
そして服装もバリアジャケットに変わった。

「さっき見たのは通常形態でそれがデバイスの戦闘形態か、そして戦闘服か。
……一つ問おう。剣を抜いたからには互いの命を掛ける。たとえ訓練でも骨や手足の一本や二本、失うつもりの覚悟だろう。それでも俺に立ち向かうか?」
『………』

みんなは無言で武器を構えた。

「なら。いつでも来い」
「ふっ、構えなくていいのか?」
「必要ない、それとも何かアクションを起こしてほしいか?」
「チッ!!」
(Nachladen!)
(Load Cartridge)

それぞれカートリッジが装填され

『やーーーーっ!!』

接近戦のシグナム、フェイト、ヴィータが我先にと切りかかっていった。

――グサリ――

シグナムの剣が肉を貫いた。
「ふっ……、他愛も無い」
「――いつまで勝利の余韻に浸っているつもりだ?」
「なにっ!?」

振り向くと遥か後方にアルトの姿があった。

「フェイトちゃんより速い!」

シグナム達は驚愕を隠せない。確かに肉を切り貫く感触はあった。
だが彼はまったく違う方にいる。
では自分が貫いたものは?。

「…炎…」

レヴァンティンで貫いたモノは炎になり消えた。

「悪いが俺の一族はフェイカーと呼ばれていてな、こんなことは容易くできるんだよ」
「これは全員本気で行かないとな」

クロノがS2Uを握りなおした。

「そうそう、早速一人仕留めたぜ」

よく見るとアルトの腕の中には

『シャマル!!』

ぐったりとするシャマルの姿が

「安心しろ、気を失っているだけだ」

そう言い壁に寄りかかした。

「さぁ、次は誰が相手だ?」
「チッ、アイゼン!!」
(RaketenForm!!)

トリガーヴォイスが響き、グラーフアイゼンはハンマーからスパイクとロケットブースターを装備した姿へと変化した。

「ラケーテンハンマァァ!!」

ロケットブースターで加速をし、アルトに突っ込んでいった。

「フィフス・レインフォース」

アルトの周囲には球体状の半透明のシールド。

シャン!!。ガガガガァ!!。

スパイクがシールドを貫こうとする。

「かっ、硬ぇ」

バリア破壊に手がけたラケーテンハンマー、だが相手のシールドには皹ひとつ入らない。

「バリアーーッ、ブレイクッ!!」

もう片方、同じバリア破壊能力を持つアルフの拳が炸裂した。

「チッ、術式がわからないよ――――」

相手のバリア構築術式に割り込みを入れて破壊するバリア・ブレイク、しかしその術式すらつかめない。

「どうした?。お前らの力はそんな程度か?」

巧みに挑発をかける。

「んだと!!」
「にゃろーーーっ!!」

二人はなおも力をこめる。

『!?』

突然、シールドごとアルトが消えた。
当然ながら、二人は惰性で交差する。

「のわっ!!」
「きゃっ!!」

互いに体を激しく打ちつけたがすんでのところで互いの技が決まることはなかった。

「アルフ!!」
「ヴィータ!!」

二人は落下し地面に叩き付けられる直前にアルトに抱えられた。

「はぁーーーっ!!」
「うっ!!」

着地と同時にザフィーラの拳がアルトの横っ面にヒットし吹っ飛び

ドン!!

壁にめり込んだ。

「っててて」
「不意をつく結果になってしまったが」
「ふっ、不意だと?。不意じゃねぇよ。わざと食らってやったんだよ」
体を起こすとパラパラと壁の破片が零れ落ちる。

「なにっ!」
「獣人よ、いい拳を持っているが…兄貴や、ファミリア・マスター、アニスにも劣る!!」
「!?」

ザフィーラとの合間を一気に締め

「はぁぁぁっ!」

拳を腹めがけて放った。

「がぁぁっ!!」

ザフィーラの巨漢はあっさりと宙を舞い天井にめり込んだ。

「ザフィーラ!!」

クロノは天井から落ち、地に伏せるザフィーラに駆け寄ろうとするが

「はっ!」
「遅い!」

アルトの足払いで宙に浮きそのまま延髄エルボーで地に伏せた。

「!!」

アルトは何かに気づきその場を離れた。
次の瞬間、その場に突き刺さったのはフェイトの射撃魔法、数条のプラズマランサーだった。

「ターン!」

フェイトが指示すると環状魔法陣が消え、スフィアが方向転換をする。
そして環状魔方陣が現れ加速をつけアルトに向かっていった。

「遠隔操作弾?」
「なのは」
「うん」
(AccelShooter)

なのはの周りに数個のピンクの球体が現れた。

「アクセルシューター、シュート!」

球体は掛け声と共に飛び出した。

「こっちからもか」

言葉とは裏腹にその顔は焦りの色も見せない。

「速い!!」

直線的なプラズマランサー、曲線的なアクセルシューター。
その動きは速いもののアルトの瞬間移動的な速さには追いつけない。
その翼を羽ばたかせ宙を自由自在に飛び回る。

「すまないな」
『!!!!』

いつの間にか3人の目の前にはアルトの姿。
わけのわからない謝罪の後、突然姿を消し目の前にはこちらに向かってくるアクセルシューターとプラズマランサー。

「間に合わん!!」

シールド展開も間に合わず、当たろうとした瞬間、見えない壁に阻まれ爆発した。

「なぁ、まだやるのか?」

3人の後ろに少しげんなりした表情で問うアルト。

「当たり前!、フェイトちゃんはやてちゃん、トリプルブレイカーいい?」
「うん!」
「了解や!」

3人はアルトから距離をとり

(Starlight Breaker)
「全力全開!、スターライト!」

レイジングハートを包むいくつもの循環魔法陣とともにエネルギーが収束し。

(Zamber Form)
「雷光一閃!、プラズマザンバー!」

大剣に姿を変えたバルディシュ、その刀身にプラズマスフィアから発生した雷を纏い。

「響け!、終焉の笛、ラグナロク!」

ほかの二人とは違う三角形の魔法陣、その各頂点にエネルギーが集中する。

「おいちょっとマテッ!!」

慌てたのはクロノ。

『ブレイカーーーーーッ!!!!』

だが叫びも空しく3条の巨光がアルトに向かい放たれた。
凄まじい轟音と光、有にこの訓練場も軽々吹き飛ばせるぐらいだ。

「………………」

爆発が止み、煙が晴れた爆心地には、シールドで覆われた無傷のアルトの姿。

「うそ……」
「私達の全力がぜんぜん効かない!?」
「ふぅ。ビリー、部屋の被害は?」
(ない、シールド許容範囲内だ)
「そうか。まぁ威力はすごいが、まだまだだ。そろそろお三方にも退場願おう」
『!!』

アルトの姿が消え、次の瞬間、3人は地に伏せていた。

「フェイト!!」
「なのは!!」
「手足にちょっと衝撃を加えて痺れさせただけだ、すぐに動けるようになる」

そう言いアルトは3人を皆が固まっている群に寝かせた。

「さて……」

アルトは立ち上がり、最後の一人、シグナムに向き直った。

「ビリーセスト」
(Ego Quaero ―我は求む―)

ビリーセストが何かを呟く。
瞬時、アルトの手には細身の剣が握られていた。

「ふっ、そんな細身の剣でレヴァンティンを受けきるつもりか?」
「いいや、俺は騎士じゃないから正々堂々ってわけじゃない、勝てばいいだけだ」
「なるほど……」

シグナムは眼を閉じ一息つき

「剣の騎士、シグナム。参る!!」

駆け出し一気に間合いを詰める。

ガシャン!!

鍔迫り合う剣と剣。

「ツッ!!、やっぱり黒鍵じゃ受け止めるのはつらいか」
「どうした?。まだまだこれからだぞ!!」
「おもしれぇ!!」

幾重にも繰り返される剣戟。

「すげぇ、あのシグナムを圧倒してる」

ヴィータの言うとおり、アルトの剣戟にシグナムはただ剣で受け流すしかなかった。
先ほどのセイバーの扱いのように曲線的な剣筋、それは衰えること無く、段々と速さを増す。

「くっ!!。これほどまでの差なのか!?」

自分の数分の一も生きていない少年の剣捌きに、シグナムは心底打ちのめされる。

「しかし!、私は騎士として負けるわけにはいかない!!」

鍔迫り合いの剣を何とか跳ね除け、カートリッジをリロードする。

「紫電一閃!!」

シグナム、必殺の魔力と炎を纏ったレヴァンティンが振り下ろされる。

ガシャン!!

だがその細身の刀身で防いだ。
それだけではない、付加した魔力の炎も一瞬のうちに消滅した。

「なにっ!?。キャッ!!」

シグナムは驚く間もなく腹に強烈な一撃を食らい吹き飛んだ。

「くっ!!」

レヴァンティンを地に突き刺し足を踏ん張り何とか壁への衝突を防いだ。

「紫電一閃を防いだだと!?」
「エイミィ、どうなっているんだ?」
「“わからない。彼は模擬戦が始まってから防御魔法以外、魔法は使っていないのよ”」
「何だって!!」
「わりいな、投擲用の黒鍵じゃなくちゃんとした剣ならちゃんと相手できたのにな」
「何だと!?」
「もう降参してくれないか?」
「………」

シグナムは答えず剣を鞘に収め腰元に構えた。

「降参か?」

淡い紫の三角魔方陣が足元に展開した。

シグナムは闘気を失わない。
彼は確かに強い、私と全く違う闘い方をする。
ならば彼から学び取り私も強くなろう。

「……そうかい……」
「飛竜一閃!!」

最速の抜刀。だが抜き出された剣は魔力を纏った連結刃、蛇のようにうねる刃は伸び続けアルトに襲い掛かる。

「面白いな、その武器」

アルトは焦りひとつ見せずに軽々よけている。

「だが……そろそろご退場願おうか」

さっきまで穏やかだったアルトの雰囲気が一気に変わる。

「はぁっ!!」

シグナムは柄を巧みに操作し刃の渦を一気に狭めた。
破れる服、傷つき流血する肌、だが気にする様子もない。
それところか、暴れる刃をその素手で掴んだ。

「なんだと!!」

食い込み皮と肉を切り裂く刃。血だらけの手。

「お前、正気かっ!!。わっ!!」

連結刃を引っ張る、つられて体制を崩したシグナムの喉元には――

「チェックメイトだ」

アルトの黒鍵。息継ぎもできない距離にあった。

「…………」

先ほどとは違う殺気を帯びた銀色の瞳。
シグナムは思った。今の彼は人を殺すことに何のためらいもない血に飢えた獣だと。

(SchwertForm)

レヴァンティンは連結刃から本来の剣の姿になり。

(PanzerGeist)

シグナムの危機感に気づいたのか体をその魔力光と同じ色で覆われる。
かの剣が主を守るために展開した防御魔法である。

「レヴァンティンよ、主を守ろうとする姿勢は立派だ、だがそれも無駄だ」
(Warum?)
「この黒鍵はどうやら概念武装らしい。簡単に言うならば事柄を上書きし無効化する。こんな風にな」

黒鍵で体を撫でると魔力光が消え防壁が消滅する。

「この剣に付加された効果はメイス・スレイヤー、魔法殺しの効果だ」
「くっ!」

今度は胸倉を掴み持ち上げ喉元に剣を突き立てる。

「どうするんだ?、このまま試合再開で俺に血の雨を浴びさせてくれるか?、それとも負けを認めるか?」
「シグナム、もうええ、負けを認めるんや!!」
「かわいい主様もああ言ってるが?」
「くっ……」

このまま行けばアルトは狂気に飲まれる。
私を殺し、最悪な場合、仲間や主はやてまで殺すかもしれない。

「………わかった。私の完敗だ……」

その言葉を聴き剣を下ろした。
殺気漂う銀色の瞳も赤い瞳に戻っていた。

「ふっ、魔法も使わず我らに勝つとは、やはりお前は強いな」
「俺なんて……姉貴達の足元にもおよば――――」

ドクン!!

その時、アルトの体中を大きな鼓動が駆けめくった。

「ううっ……」

アルトは胸を押さえ方膝をつく。

「おい、どうした?」
「離れろ」
「何だと」
「いいから離れろ!!」

シグナムは風の魔法か何かで吹き飛ばされた。

「シグナム」
「主はやて」
「どういうことだ、魔力が膨れ上がっている」

「くっ!…ぐはっ!……があぁぁあっ!」

アルトから膨大な魔力が漏れ出し、苦しみだす。
行き場を失った魔力がカマイタチのように体を傷つけ、
少しずつではあるが彼を中心に影響が出始めている。

「“クロノ君!、次元空間に歪みがっ!!”」
「まずい、このままだと次元震がっ!!」
「……大丈夫よ」

どこからか聞こえる女性の声。ここにいる誰のものでもない。
そして変わる世界、訓練室だった風景が赤茶けた剣の乱立した砂漠へと変わる。







あとがき

Krelos:さて、何とかして模擬なのか真剣なのか分からないシーンを書いたわけですが……。
シグナム:何か不満でもあるのか?。
Krelos:いえ、ちょっとね、自分でもいいのか悪いのか判断をしかねまして。はい
シグナム:自分で書きたいように書いたのだから良いのではないのか?。
Krelos:そうですよね!!。
シグナム:しかし、他の投稿作者も言っていたが、なぜ強さの比較に私を使う?。
Krelos:バトルマニアだから絡めやすいんじゃないですか?。
シグナム:うむ……そんなに私はバトルマニアに見えるか?。
Krelos:まぁ、ヴィータも言ってますし。
シグナム:まぁ、皆からそのようなキャラに思われているのは仕方の無いことだ。実質、私も嫌いではない。
Krelos:そうですかぁ。
シグナム:ところでアルトはどうしてしまったのだ?。
Krelos:それは次のお楽しみということで。それでは〜。






BACK

inserted by FC2 system