それはアルト達が来て1週間ぐらい経った頃だった。

「忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

朝方、絶叫と共にアルトが飛び起きた。

「どっ、どうした!!」
「どうしたの!?」

クロノとフェイトが飛び起き部屋に駆けつけた。

「リンディさん!、今すぐ関係者を招集してください!!」

ビシッと指を指して言うが

「あれ?」

リンディの姿が無かった。


第7話
アルトリア


当の本人は――――

「う〜ん……」
「あれだけの絶叫なのに寝ているよ、この人は……」
「母さん、すごいよ」

その後、クロノの手で関係スタッフがアースラのブリーフィングルームに召集された。

「ふぁぁ〜っ、こんな朝に何なんですかぁ?」
「寝不足はお肌の天敵やでぇ」

欠伸を漏らしながらなのはとはやてが言う。
現在午前6時、大抵の人はまだ夢の中。

「うが〜っ……」
「すぅ、すぅ……」
「ううぅ、うにゅう……」

ウィータとリィンのお子様組は完全にまだ夢の中、リンディも半分寝ている状態である。

「んで、何なの?、くだらない事だったら殺すわよ」

ナイジャも寝起きで、ものすごい毒舌を吐く。

「う〜ん、もしかしたらなのは達、戦力にならないかも」
「なんでぇ?、足止めぐらいはできるでしょぉ?」
「……固有結界……」

アルトがポツリと呟き、ナイジャはまだ眠気が取れない頭で考える。

「………忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

何かに気づいたのか一気に眠気が覚め大絶叫する。

「へぇっ!!」
「なっ、何だ!?」
「うるさいですよぉ」

その絶叫のおかげかまどろみの中にいた者達が一気に現実に呼び戻された。

「どっ、どうしたんだ?」
「ああっ、確かにみんな戦力にならない……」

ナイジャは悲しみのあまり床に両膝を付いた。
「どういうことか説明してくれないか?」
「あなた達ってラテン語喋れる?」
「ふぇっ?」
「ラテン語って何?」
「はぁ、やっぱり……」
「ラテン語って、あのラテン語だよね?」

ラテン語とはヨーロッパの一部や中央アメリカなどの地域で話されている古い言語の一つだ。

「そう、固有結界内は、呪文の詠唱がラテン語に限定されているのよ」
「どういうことですか?」
「実際体験してみるといい」
「ちょっと!。これ以上お母様からいただける魔力が無いのにどうやって展開しろっていうのよ!!」
「これを使え」

アルトが手渡したのは青いバンダナ。

「これって竜の毛のバンダナじゃない、こんなのどこにあったの?」
「荷物の中に入って――――――」

言い終わる前にナイジャのアッパーが入り地に伏せた。

「こんな大事なものなんで今まで隠してたのぉ?」

妙にやさしく聞く声が不気味だ。

「昨日見つけました。荷物に入れたのすっかり忘れてました」

地に伏せたまま言う。

「まぁいいわ。これでお母様の負担も減るし。それでは実演して見せるから、
一応みんなデバイスを展開しておいて」

バンダナを頭に巻きながら言い、みんなは指示に従ってデバイスを展開した。

「それじゃ――――」

ナイジャが集中すると一気に魔力値が上がり放射状に魔力が開放される。
竜の体は高性能の魔力炉心、その毛でも膨大な魔力を生み出す。

「Intertio infinitas posterus ―この手には無限の未来。
Ferrum-corpus Flamma-mens ―体は鋼で、心は炎」

呪文の詠唱が始まる。

「Nullus-nomen bellum currunt ―名も無き戦場を駆け巡り。
Multi posterus defungo per fatum ―数多の未来が運命により消ゆる」

世界に響く感覚。呪文が紡がれていき世界に変化が現れた。

「Ego frons infinitas acerbus infinitas despero ―我が前には永久の闇、永久の絶望。
Ego potior duo lumen gladius modo ―我手に持つは二振りの光の剣のみ」

世界が崩れ、赤砂の大地が広がるセカイが構築されていく。

「Libero gladius tenus umquam pax pacis somnium ―ならば常和を夢見て剣を振るう。
Ita ego lascivio "Fatumcomplectus-gladius-opera" ―この身は運命を切り開く無限の剣で出来ていた」

空は満天の星空、天と地の境は炎が永遠と続きその地には無限の剣が乱立している。
その地にはそれ以外何も無い。

「うわっ!!、ほんとに世界が変わっちゃったよ!!」

エイミィが声を上げ辺りをキョロキョロと見渡している。

「これはすごいの一言に尽きるわね」
「さぁ、みんないつものように魔法を発動させてみて」
「?、はい」

代表でなのはがレイジングハートを構え、桜色の魔法陣を発動させようとする。

「―――――あれ?」

だが魔法陣の展開はされなかった。

(Master cant invoke again and again)
「魔法が発動しないよ」
『えっ?』

みんな各々展開するがうんともすんとも言わない。

「なぜだ。なぜ魔法が発動しない?」
「当たり前よ。この空間は通常空間とは隔離された世界、この深層世界の主こそがこの世界の秩序であり絶対的な支配者」
「魔法体系が違うのか?」
「いや、体系自体は同じなんだが、唯一詠唱に許されている言葉がラテン語なんだよ」
「そのまま伝えられてきたら変更の仕方も分からない。
ほんとに、ベルダンディー様って何考えてたんだろ?」
「なるほど、先ほどの君達の言葉の意味が分かったよ」
「どういうこと、クロノくん?」
「相手のロストロギアもこれと同じ技を使い展開されたとしたらそのラテン語を喋れない僕達では戦闘に参加することは愚か、足手まといになるわけだ」

クロノの言葉にみんなは、あっと気づいた。

「さすが、伊達に提督の地位には就いていないな」
「茶化すな!。それで対策はあるのか?」
「一応、考えたプランは二つ。一つはこちらも固有結界を展開し君達の魔法が使えるぐらいまで通常空間に空間干渉を行う。
だがしかしそれをやると大規模戦闘になったときに通常空間にも影響が出る。相手のコピー能力が何処まで適応しているか分からないが、
必殺級の広域破壊魔法や神獣形態になったら世界にどんな影響が出るか分からない」
「神獣形態ってなんだ?」
「俺達の種族はな、見た目、人間の形をしているが本来の姿は大鳥や竜と言った獣の姿なんだ。
ちなみに俺は炎を纏った大鷲」
「本来の姿になると言うことは封印を施していた魔力も開放状態になるから強大な魔力を持つ人はその姿で存在するだけで世界に影響を及ぼし、
最悪滅ぼしてしまうかもしれないの、この前のアルトが魔力を開放したときがいい例ね」
「もうひとつの方法は?」
「聞かれなくても簡単だろ?」
「はぁ〜い、ナイジャ先生のラテン語教室でぇ〜す」
『えぇぇぇぇ!!』

学生組の3人が不満の声を上げた。

「学校で勉強してこっちでも勉強すんの〜?」
「当たり前だ。戦力は多いほどいい」
「それでは、まず皆さんの使っている魔法をリストアップしてくださ〜い」

「ってことがあったの」

授業の間の休み時間。

なのは達は今朝起きた"寝起きに外国語の勉強"と言う地獄を親友のアリサとすずかに話していた。

「うわぁ、それはさすがに私でもまいるわ」
「大変だったねぇ」
「もう大変だったじゃ済まされへんかったよ」

昼休み。いつもの通り5人が屋上でお弁当を食べようとしていると

「ん?、どうしたのあんた達?」

どよ〜んと気を落とす、なのは、フェイト、はやての3人娘。

「あっ、朝の騒ぎでお弁当忘れた・・・・・・」
「私も」
「ウチもや」

同時刻、生徒達がにぎ合う廊下。
カツカツカツと規則正しく歩く人物が一人。
赤い髪、赤い瞳、その容姿はアルトそっくりだ。
しかし、その人物は小柄で背もアルトより小さい、決定的に違うのは、なのは達と同じ制服を着た少女であるということだ。
整った顔立ちにすらりと伸びた足、モデルのようなスタイルに、その場にいる者、皆注目した。
街中で歩いていたら100%確実にナンパされるだろう。

「♪〜〜〜〜♪」

当の彼女はそんな視線も気にせず、鼻歌を歌いながら廊下を悠々と歩ってゆく。

「はう〜、おなかすいた〜」
「購買ももう売り切れてるだろうね」
「今日確かリィンとヴィータ休暇だったはずや、大丈夫やろか?」
「私達の少し分けてあげるから行くわよ」

各々それぞれ言っていると

「なのはちゃん、フェイトちゃん、はやてちゃん。お客さんだよ」

クラスメイトが呼びに来た。

「誰?」
「知らない人、でもすごく綺麗でモデルみたいなスタイルなの!!」

興奮するクラスメイト。
教室に残っていた生徒がいつの間にか全員、同じ方向を向いていた。

「ねぇ、あんた達、あれ……」

アリサの指差すところは教室の前の出入り口、そこに赤髪の美少女は立っていた。

「えっ!?」
「アルト!?」

3人は見覚えのある、しかし何処か違う顔に困惑していた。

「なのは、フェイト、はやて、忘れ物よ」

そう言い、胸まで上げた手には綺麗な模様の風呂敷に入った重箱。

「私もお腹減った、屋上に行くわよ」
「えっ!?、えっ!?」
「いいから付いてきなさい」

3人は訳の分からないまま付いていった。

「あっ、ちょっと待ちなさ〜い」

アリサとすずかもあとを追った。
6人が出て行き、しばらくみんなは放心状態だった。

屋上に出ると比較的人は少なかった。

「さぁ、座って、私お腹ぺこぺこ」
『………』

5人がまだ困惑している中、謎の美少女は食事の用意をしてゆく。

「あのう、あなたは誰ですか?」

勇気を出してフェイトが問う。

「誰って、この顔に見覚えあるでしょ?」
「・・・・・・アルトくんだよね?」
「そうだね」
「そうやね」
「そういうことだ」
「ちょっと、アルトって男でしょ?」
「それって女装?」
『えっ!?、え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?』

みんなは驚いた。
もう周りが注目するのもお構いなしに、海鳴市中に響き渡るぐらいに。
昼食を終えた女生徒が帰り際に怪訝そうに見ているが全く気にも留められないぐらいに。

「うるさいなぁ」
「ちっちちちちょっと、アルトくくくん!、ああぁぁぁあなた、おっ、男の子でししょ!!!!」
「こっこここは、じょっ女子校だっ、だよ!」

パニックになり呂律が回らないなのはとフェイト。

「う〜ん、あのアルトくんにこんな性癖が、意外やぁ」

冷静に納得するはやて。

「何が何やら・・・・・・」
「とりあえず落ち着け」

みんなは敷かれたシートの上に座った。
なのはとフェイトはまだショックから抜け出せず動きがロボットのようになっていた。

「まぁ、この姿見て驚かないほうが異常だな。ともあれ私はアルトリウスと同一人物だ。
まぁ水を被れば女になる特異体質を生まれながらに持っていたというわけだ。この姿の時にはアルトリア、リアと呼んで」
「一体どういう特異体質やねん!!」

関西人の血が騒ぐのか、はやては強烈な突込みをかますが、軽くあしらわれた。

「ほんとに女装じゃないんですか?」
「はぁ〜っ」

リアはため息しつつ、周りに誰もいないことを確認しブラウスのボタンを外してゆく

「ほれ」
『!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

みんなは突然の行動に驚きの声も出ないくらい驚いた。
だがしかし、確かに見た。かわいいピンクのブラと付け物ではない本当の乳房を。

「これで分かった?」

4人は壊れたおもちゃのように首を縦に振るだけだった。

「・・・・・・」

はやては何か思いつめるように考え

「えいっ!!」
「!!!!!」

あろう事にリアの股間に手を突っ込んだ。

「ない!、ホンマにない!!」

驚きも束の間

「はやてぇ〜、君はいったい何を考えてるのかなぁ?」

引きつった笑みのままはやてにヘッドロックを決めるリア。

「イタタ、いや。ホンマに女になったのかなぁと」
「見れば分かるでしょ!」
「痛い!、痛い!。ああっでも後頭部が気持ちええ、おじさん夢心地や」
「はやて、その言葉は女の子としてどうかと思うよ」
「分かりました!、反省しています!、ごめんなさい!!」
「分かったならよろしい、さてご飯食べましょ、アリサとすずかもご一緒に」
「そっ、そうですね」
『いただきまーす』

みんなはそれぞれの食材を一口

「おいしい!!」
「ほんとだ」
「気に入ってもらえて何よりよ」
「ということはこれリアさんが?」
「ええ、私とナイジャ、二人で作ったのよ」
「へぇ」
「料理上手ですねぇ」
「あっ、でもなんでアルトが?」
「アルトじゃない、今はリアよ」
「ごめんなさい、それじゃ何でリアが?、そんな格好までして?」
「それは――――」

それは約数時間前までさかのぼる。
今朝の騒動の後、さわりだけラテン語を勉強し、アースラの食堂で朝食を取り、それぞれ学校や職場へ。
アルトとナイジャは一服するために喫茶翠屋に入った。

「う〜ん困ったわねぇ」
「どうしましょ」

そこには、桃子、リンディ、ヴィータ、そしてヴィータに隠れるようにリィンUの姿があった。

「こんちわーっ、どうしたんですか?」
「あっ、アルトくん」
「実はなのは、お弁当忘れたのよ」
「うちのフェイトも」
「はやてちゃんもです〜」
「あちゃ〜」
「……すみません、俺達のせいです……」
「私達のお昼ご飯も作ってないです」
「届けに行きたいんだけど、みんな仕事だし、ヴィータちゃんじゃねぇ」
「確かに、このチビッコじゃ補導されかねないな」
「んだと!!」
「困ったわねぇ」
「何も困ることは無い、アルトに行ってもらおう」
「それは無理よ、だって女子校だもん」
「それは大丈夫だ。今日はリアの日だからな」
「はい!?。おいおい、冗談言うなよ。お前が行けよ」
「だまらっしゃい、元々はあなたが朝っぱらから騒ぐからでしょ」
「お前も元凶だろうが……」
「な・に・か言ったカナァ、半人前」

笑顔で両指をボキボキ鳴らすナイジャ。

「いえ、何でもありません、暴力反対です……」

そして今

「その後食材買ってきて弁当作ってこの姿になってここに来たわけ」
「そういえばその制服は?」
「ナイジャが投影で出した、ご丁寧なことに下着まで……。桃子さんもリンディさんもこの姿になったら騒ぎ出すし」

余談ではあるが、午前中に桃子、リンディ、ナイジャによるアルトリアのコスプレファッションショーが開催されたのは心の内に永遠にしまっておく。

ビリーゼスト・キャリバー=ナイジャ、趣味はアルトリアに難癖付けてコスプレファッションショーをすること。
もちろん母親譲り。

「そうそう、ヴィータ達は今頃ナイジャが食べさせているわ」
「よかったぁ、おおきに」

話は弾みに弾み、二人が作ったお弁当も好評で重箱でありながら、全部平らげられた。

「さて、おなかも一杯になったし、私は帰る」
「もう行っちゃうんですか?」
「ああ、弁当届けるのが当初の目的だったしね。それじゃ、また後で」

リアは弁当を片付け、周りに誰もいないのを確かめ、フェンスに足を掛け、キックの反動でそのまま空を飛んでいった。

「街中で魔法使っているけどいいの?」
「う〜ん、本当はダメ」
「周囲の人の視野を意図的にズラしてるんだって」

その後、5人は授業に戻っていった。

帰宅後、フェイトのマンションで見たものは――――。

「はぁ〜い!!、続いては!、ガン○ムS○EDよりザフト兵だぁ!」

テンションを高くして司会するエイミィ。

『いえぇぇい!!』

歓声を浴びせる桃子、リンディ、ナイジャにシャマル、リィンフォース。
ヴィータの冷めた眼の先には

『・・・・・・・・・』

赤い軍服を着て、俯き恥ずかしそうにするリアと、不運にも巻き込まれたシグナムの姿。

さらに数時間後

「みんな、勉強のほうは順調か?。差し入れを持ってきたぞ」

様子を見に来たクロノが見たものは――――。

「う〜っ、次行ってみよ〜」
「う〜ん、シグナムかわええでぇ」
「次はこれにしましょ〜」
「アルフかわいいよ〜」
「ユーノく〜ん」

力尽きてもなお進めようとする司会者。
力尽きもう夢の中の観客達。

「うわ〜ん、穢されたぁ〜」
「泣くなリア!、お前の気持ちはよく分かる。泣くな同士よ!!」
「・・・・・・・・・」

そして未だ冷めた視線を送るヴィータの目の前では、
赤い弓兵と、蒼い騎士のコスプレをしたアルトリアとシグナムが抱き合い固い絆を育んでいた。

また余談ではあるが

「ううっ!、なんか寒気がするねぇ、風邪ひいたかな?」
「困ったなぁ、今日は徹夜になりそうなのに。こら、そこサボっちゃだめだよ」

無限書庫でデータ検索をしていたアルフとユーノは変な寒気を感じたという。







あとがき

Krelos:はやてファンの方、ゴメンナサイ。
はやて:私こんな変態と違う!!。
Krelos:いや〜、一応公認の揉み魔だから。
はやて:あれは、みんなのバストアップに貢献しているだけや。
Krelos:それってほとんど迷信・・・・・・。
はやて:何や言うたか?。
Krelos:いえ!、何でもありません!!。
はやて:でもアルト君にあんな体質があるとは驚きやったなぁ。
Krelos:元ネタのほうは20代だったらぎりぎり覚えてるかなぁ。
はやて:それで特異体質の原因は何なん?。
Krelos:それはですね。王族の三男坊が長男に大好きな食べ物を食べられてその腹いせに性別が入れ替わる薬を飲ませたのが始まり。
その後、その成分が混じった血がアルトが生まれる前に重傷を負った母親に分け与えられたというわけ、ちなみに女性には効果がありません。
はやて:へぇ〜。それでこんなのがいつまで続くんや?。
Krelos:一応、お遊びはこれまで、次回から徐々に核心へと迫って生きたいと思います・・・・・・これ書いてる時点で一行も進んでないけど(ボソリ。
はやて:ダメやないかぁ!!(バッシ〜ン!!
Krelos:あ〜れ〜。






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