「デート、ですか?」

フェイトと一緒にリンディに呼び出され、最初に言われたのはそれだった。

「そうです。この頃二人の仲が芳しくないとのことで仲直りのデートです」

確かに、あの時俺がフェイトを振ったために、最近会うたびに避けるようになってきた。
それより、全員グルでその様子をモニターするのはどうかと思う。
アルフを初め一通りボコされた。終いには他の管理局局員まで襲ってきやがった。
まぁ、俺がしたことはそれほど最低だってことだ。

「しかし、今はそれどころでは」
「だからよ、私の予想ではもうそろそろ奴の修復も終わる。
そのときになって蟠りから連携が崩れたら失敗どころの話ではないのよ」

リンディの隣にいるナイジャが言った。
声のトーンからまだ怒っているらしい。

「でもフェイトはOK出してないぞ」
「私は……。よろしくお願いします」

先ほどまで固まっていたフェイトがモジモジと指を絡ませ言った。
顔は当然真っ赤である。

「あなたに拒否する権利はないわよ」
「はい、それに私の娘を泣かせた償いはしてもらいます」

ナイジャより笑顔で怒気を放つリンディさんが怖かった。


第10話
聖夜の決戦 〜繋がるココロ〜


クリスマス・イヴの駅前広場 。
恋人や家族連れ、沢山の人々が行きかう中

「・・・・・・・・・」

カジュアルな服装に身を包んだアルトが大きなモミの木の前でフェイトを待っていた。
フェイトはまだ来ていないが、その代わり道行く女性達が声をかけてくる。
待ち合わせの時間は過ぎておらず、アルトが30分ほど早く来ただけのことなのだが、
もう10人以上に声を掛けられ少々疲れ気味である。

「意外とアルトくんってモテるんやな」
「まぁ、元は悪くないわね」

それを見つめる影二人、はやてとアリサ。

「"こちらB班、姫はまだ現れず。そっちはどうや?"」

はやてが念話を飛ばす先には

「"こちらA班、現状変わらず。ねぇ、やめようよ〜"」

なのはとすずか、エイミィの姿。
なのははあまり乗り気ではないが、報告はしっかりとしている。
それだけではない。先の5人を現地班としてアースラ艦内にリアルタイムに生放送である。
リンディやシャマルはもちろん、クロノやシグナムまで見入っていた。

「"班長!。姫が来ました"」
「よっしゃ!。みんな、私らはあくまで傍観者や、変に手出しせえへんように」
『了解』

反対方向からゆっくりとフェイトが向かってくる。
こちらもカジュアルな服装に身を包み恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にし少し俯き気味だ。

「あちゃ〜、フェイトちゃん緊張しまくってるやんか」
「アルトくんまであと15メートル。14メートル・・・・・・。おっとぉ!。ここで乱入者だぁ!!」

エイミィの熱狂的な実況に、みんなはフェイトに注目した。

「あっ、あの・・・・・・」
「へい、カノジョ」
「俺達とお茶しない?」

数人の男がフェイトを囲んでいた。

「うっわ〜」
「なんて古典的なナンパの仕方・・・・・・」
「いまどき珍しいわ」

みんなが関心と呆れた眼差しを向けているが

「こっ、困りますっ!。どっ、どいてください!!」

今のフェイトには大きな障害となっていた。

「ちょっとやばいわよ」
「早く助けに行かないと!」
「あかん、私達は見守るんや」
「どうして!!」
「ここで助けに行ったら計画が台無しだ」
「それにアルトくんもいますしね」
「フェイト〜〜〜〜、今兄が助けに行くぞ〜〜〜」
「うっせーぞ!」
「おとなしくしていてください!」

ナイジャとリンディが言う後ろで、ヴォルケンズが暴れるクロノを取り押さえている。

「クロノ、うるさいわよ」
「アイシクルブリッド」

ナイジャが呟くと、クロノの周りに氷の結晶が集中、付着しあっという間に雪だるま、いや、氷だるま状態になった。

「おいっ、こらっ、これを解けっ!」
「シグナム〜、提督殿の口にガムテープはっといてぇ〜」

妙に落ち着いた声に

「あっ、はい」

シグナムは恐怖を感じ、ただ従った。
ナイジャの怒りはまだ続いているらしい。
無理もない、自分達の旅の目的を、その本人によって否定されたからである。
付き合っているほうは腹が立たないほうがおかしい。

「おいっ、こらっシグナム止めろ!」
「すまないな、クロノ提督、ここで逆らったら私の身が危険なのでな」
「だからって!。う〜!う〜〜!」

シグナムは言われたとおりガムテープをクロノの口に張った。

「う〜〜〜〜!!。う〜〜〜〜〜〜!!!」

哀れクロノ、これでも提督なのに、艦長なのに、指揮官なのに、今は惨めな氷だるまに成り果てた。

「う〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」
「クロノ、それ以上騒ぐと頭もダルマにするわよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ナイジャの冷たい言葉にさすがのクロノも黙ってしまった。
何処まで行っても惨め。

処変わって現地

「ねぇねぇ。そんな事言わずにさぁ」
「俺達と楽しく遊ぼうよぉ」

後退するフェイト、ジリジリと詰め寄る男達。

「わっ、私待ち合わせがあるんで」
「いいじゃんかよ。どうせロクな男じゃないんでしょ」
「俺達と遊ぶほうが絶対楽しいって」
「!!」

2番目の男が言った言葉でフェイトの頭に血が上った。

「アルトはロクナ男なんかじゃ!!」

思わず手を上げてしまったが、誰かに掴まれた。

「アルト!?」
「ん。なんだてめぇ?」
「連れが迷惑かけたみたいだな、すまなかった。それでは俺達は急ぐので」

フェイトの手を引き行こうとするが

「ちょっと待てよ」
「カノジョは俺達と一緒に遊ぶんだよ」
「あん?。なんか言ったか?」

ガラ悪く言い振り返りギロリと睨み返す。

『ひっ!!』

男達は怯え始めた。
アルトの目は銀眼にはなっていないものの、相手を恐怖に駆り立てるには十分すぎるほどだった。

「さっさと失せろ!」
「ひっ!」
「うっ、うわ〜〜〜〜〜っ!!」

男達は情けない声を上げ逃げていった。

「ったく。こんなときに世話焼かせるなよ」
「ごっ、ごめんなさい」
「あ〜。フェイトじゃなくてあいつらに対して言ったんだけど」
「そっ、そうですか………」
「…………」

この後、どう切り出していいものかと迷い沈黙する。
街の賑わいも何処か遠くのように聞こえてしまう。

「あちゃ〜。アルトくんせっかくカッコよくキメたのに、何してるん!」
「これは、先が思いやられるわね」

その時、動きがあった。

「あっ、そうだ。母さんから手紙渡されていんだ」
「手紙?」

アルトに渡し、中身を空けた。

「まさかデートプランじゃないだろ…………」

手紙を見た瞬間、固まった。

「そう言えばリンディ提督、テスタロッサが出かける際、手紙のようなものを渡されていましたが、何が書かれていたんですか?」
「うふふふ、見てれば分かるわよ」
「?」

アルトはまた固まっていた。
手紙に書かれていたのはただ一言のみ。
しかも公式文章のようにリンディの署名、プラス承認印付き。

「うがぁぁぁぁ!!」

雄叫びを上げたアルトは手紙をビリビリと破り捨てた。

「どっ、どうしたの?」

突然の奇行にフェイトはおろか、現地班もバレたと思い驚いた。

「いっ、いや、あまりにもくだらない内容だったもので。リンディさん何考えてんだよ」

近くの木に手を当て一人、打ちひしがれていた。

「あの手紙、何が書かれていたんだろう?」
「さぁ?」
「あらあら、困ったわねぇ」
「提督は一体何を書いたんだ?」

結局、手紙の内容を知るのは、リンディとアルトのみとなった。

「これからどうしようか?」
「う〜ん・・・・・・」

アルトは少し考え。
フェイトに手を差し伸べた。

「考えてもラチがあかないから、とりあえず行こうか」
「そうですね」

フェイトは手を取り、二人は歩き出した。

「なんか傍から見るとラブラブだよね」
「手まで繋いじゃって」
「さて、我々も移動するわよ」


二人はとりあえず近くの遊園地に入園した。
クリスマス・イヴということもありカップルばかりだが、そんなに混んではいなかった。

「はぐれるなよ」
「はっ、はい」

逸れないように互いにしっかりと手を繋いでいる。

「手握ってすっかり恋人同士みたいだねぇ」
「そんなことより」
「こっちは逸れないかで必死なのよ!」

確かに、人ごみを掻き分け目標を見失わないようにするのに必死だった。

「さて、せっかく来たんだし、何か乗るか?」
「そうですね。手始めに……あれに乗ってみましょう」
「……意外とスキモノなのね」

フェイトが指定したのは

「きゃぁぁぁぁぁぁぁああ!!」
「ををを〜〜〜〜ぉぉ!!」

俗に言う絶叫マシンだった。
ジェットコースターなのだが、ステップが無くまさに宙ぶらりんな状態。
楽しそうに喜声を上げるフェイト、やはり高速戦闘型なだけにスピードには拘りがあるのだろう。

「ををを〜〜〜楽しいぞこれえぇぇ!!」

アルトもやはり似たタイプなのか恐怖よりも楽しさが勝っていた。

「次何乗ろうか?」
「そうだね」

楽しそうにアトラクションの出口を通る後ろで

「わっ、私もうダメ……」
「うへぇ〜〜〜。だっ。誰よ。こんなもの考えた人は?。ぜっ、絶対まともな頭の持ち主じゃないわ」

ぐったりとするすずかとエイミィ。

「なのはちゃん大丈夫?」

振り返ってみると

「 ほえ?」

ケロッとするなのはの姿が。

「なっ、なのはちゃん。アレ平気なの?」
「何で?。楽しかったよ。もう一回乗ってもいい?」
『…………』

ここにも同類が。
なのはの言葉に二人は絶句した。

その後も二人は絶叫系の乗り物を中心に制覇していった。
だがしかし二人を尾行する彼女等にとっては大変なものだった。

一部を紹介

ジェットコースター第2弾 アリサ・はやて班

ゴゴゴォォォォオオオ!!!!。

「やっほ〜〜!!」
「きゃぁぁぁああ!!」
「グルグル回る〜〜〜」
「だ〜れ〜か〜と〜め〜てぇぇぇ〜!!」

ローリング走行による平衡感覚喪失と最後尾によるG加圧。

勢いで入ったお化け屋敷 なのは・すずか・エイミィ班

「ウワァァァァ!!!」
「怖い助けて怖い助けて!!」
「ぬを〜〜〜!。こっち来るな〜〜〜!!」

互いに怖いのが苦手で自爆。

「ううっ、私これ以上は」
「うえぇぇぇん!。こわいよ〜〜」

すずかとなのはも泣き出した。

コーヒーカップ 全班

「たまにはこういうゆったりしたのもいいな」
「そうだね」
「ねぇ、もっと早くしていい?」
『えっ!?』
「待ちなさい!、なのは!!」
「えい」

ウィィィィン!!。

『きゃぁぁぁぁあああ!!』
「眼が回るうぅぅう!!」

凄まじい回転力でコーヒーカップが絶叫マシンと化した。

「次なに乗ろうか」
「うーん、そうだなぁ」

出口を通る後ろで

「もっ、もうだめ・・・・・・」
「気持ち悪い・・・・・・」
「ひどいよなのはちゃん・・・・・・」
「ごっ、ゴメン・・・・・・」

班が全滅した。

「あらあら、みんな楽しそうね」
「何処がです」

リンディの発言にクロノが冷静に突っ込んだ。


「はぁ〜っ、もうどうでも良くなってきたわぁ〜」
「しっ、聞こえるわよ」

深夜をまわり人の姿も疎らになってきた。
そんな中、アルトとフェイトは人気のない園内の公園に来ていた。

「久々に大きな声を出したな」
「そうだね・・・・・・」

仲良く歩く中で、フェイトから段々笑顔が消える。

「ねぇ、アルト・・・・・・」
「ん?」
「今日、私ずっとアルトと一緒にいたよ。それでも、恐怖を感じる?」
「あっ・・・・・・」

ここに来てアルトは気づいた。

「そうだな、今は怖いより楽しいかな……あの時は、ごめん」
「私、諦めないから。いつか振り向いてくれるまで諦めないから」

アルトは近くのベンチに座った。

「あの時の前の晩、昔の夢を見たんだ。とてもイヤなユメ」
「…………」
「俺がまだ小さかったときの夢。母と姉弟と一緒に誘拐されて、犯人達が母を嬲り、犯し殺そうとしたとき、
俺の中で何かが弾けた。次に気づくと辺り一面火の海だった。一緒に捕まった人達も、街の人達もみんな死んだ、
罪のない人達の未来を俺は奪っちまったんだ」
「………」
「"お前は、幸せなど無用"そのユメが、そう言ってるみたいで怖くなっちまったんだ……」

組むその指が震えている。

「怖い、怖いんだよ!!」
「アルト」

フェイトは隣に座りアルトの手をとった。

「大丈夫、何も怖いことなんて無いよ」

まるで母親のようにやさしく語る。

「確かにあなたの犯してしまったことはいけないことよ。でも逃げてばかりではダメ。
あなたは奪ってしまった命の分、生きていいかなければならない。それでも、時にはその重圧に心が折れてしまうかもしれない。
その時は……あなたと同じ時間を歩み続けることは出来ないけど、私が生きてる限り、共にいてあなたの心を守り続けるから」

やさしく抱きしめる。
暖かい……。
心の芯まで温まるような抱擁。
それはとても、とても心地よいものだった。

「お前は、心が強いな」
「今頃分かった?。でもアルトには負けるよ」
「……フェイト、実を言うと俺はお前が――――――!!」
「!!!!!!!!!」
「なっ、なにこれっ!!」

みんなが感じたのは重圧。
憎悪と恐怖が肌にべったりと絡みつくような、とても、とても息苦しい重圧だった。







あとがき、もとい、はんせい? そのに

Krelos:はい、だんだんヘタレになっていく文章力を寛大な心でここまで読んでくれた人ありがとう。
ナイジャ:相変わらずだんだん簡素になっていくような。
Krelos:すみません、これでも最初書いたのよりはマシなんです。
ナイジャ:次はとうとう決戦、早いもので次で終わりかぁ。次はもっと厚みのあるものを書くように。
Krelos:精進します。ってえっ?。誰が終わりって言った?。
ナイジャ:でも次で決戦なんでしょ?。
Krelos:それはそうなんだが、大体見立てでは14,5話になる予定。
ナイジャ:へぇ〜。
Krelos:それにシリアスで終わらせるわけないし。
クレロス:そうよ!、まだ私も登場してきてないし!!。
ナイジャ:えっ!?。お母様も出るの?。
クレロス:当たり前よ!!。
???:……私も……出ていない―――――――。
ナイジャ:えっ!?。ファミリア・マスターまで!?。
Krelos:シリアスでは終わらぬよ。






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