「はぁ、はぁ……」

それは、憎悪と恐怖が肌にべったりと絡みつくような、とても、とても息苦しい重圧。
喉がカラカラになり、一呼吸、一呼吸がとても困難だった。
目の前には前戦ったローブとフードを羽織った影ではなく、ヒトの姿をした影。

「まっ、まさか本当に婆ちゃんだったとはな」
「……ego assero gladius omnis ―我は皆を守る剣―
gladius-corpus infrequentia-mens ―体は刃で 心は空―」

その者、名はベルダンディー=アレティシア。
初代ソード・ブレイカーの腹心にして、準剣帝、ソード・シアブレイカーの称号を持つ者の中で最強を冠した女神。

「autem-victoria apud multi-pugna ―幾重の戦いに勝利せども―
infrequentia-mens subsisto ―心には空虚のみ―」

ある者は錬剣の女王と、またある者は神の剣と、そしてある者は英雄と呼び崇め畏怖した女神。

「est-non gloria victoria ―勝利は我が栄光ではなく―
inclino subrideo subrisi subrisum omnis ―皆の笑顔に変わるために―」

その隻眼の顔は女神の微笑ではなく、数多の戦場で人を殺し、血を浴び、闇に堕ちた時の死人のような無表情な顔だった。

「魔力反応増大!」
「まずい、ヤツが現れたんだわ。みんな、行くわよ」
『おう!!』
「現地班はすずかとアリサを至急非難させて!。ぐずぐずしていると巻き込まれるわよ!!」


第11話
聖夜の決戦 〜変わるセカイ〜


「二人供行くよ」
『うん』
「そこの外野、動くな!!」

なのは達に向かってなのか突然アルトが叫ぶ。

「もう……手遅れだ……」
「nam tenus ille votum ―その願いのためだけに―
ego infinitus-gladius-opera ―我は無限の剣を紡ぐ―」

そう、術はすでに成った。
最後の言葉と共に世界が塗り替えられてゆく。
そのセカイはまるで夜の砂漠のようだった。
青い月と星々が砂漠に刺さる剣や槍、戦斧等の武具を照らす神秘的なセカイ。

「autem―。Somniuminstar, empty ruoabsentis ―しかし――。ユメのごとく、儚く散ったー」

付け加えられた最後の一節。
セカイは変貌する。
天空は淀み、暗雲と雷鳴が支配し、凛々しい剣草は禍々しい姿へと姿を変えた。

「なっ、なにこれ?」
「気味悪いよ」
「まさかこれほどとはな。みんな戦闘の用意を、はやてとフェイトは3人を守れ、
なのはは2人を援護、奴が向かってきたら俺ごとでいい、ぶっ放せ」
「戦わないの?」
「冗談。戦況は圧倒的にこっちが不利だ。ナイジャ達が来るまでは守りに専念するぞ」
『はい』

4人はバリアジャケットと法衣に身を包んだ。

「エイミィ、アリサ、すずか。ナイジャの結界侵食の際にお前等を通常空間に放り投げる。
後はアースラに非難しろ」
「分かった」
「さて――――」

アルトはベルダンディーを睨む。
ベルダンディーの周りに銘剣、聖剣、魔剣、10以上の剣が連なり、一斉に刃を向ける。

「それまで生き残れるかな」

ダンダンダンダン!!!!。

まるでマシンガンのように撃ち出されてゆく剣群。
同時、四散する7人。
やはり、アルトだけが狙いなのか、剣群は他には目もくれず、アルトに向かってゆく。

「やはり俺が目的か、なら好都合だっ!!」

アルトは宙を駆け、ベルダンディーとの間合いを一気に詰めた。


「みんな急いで!!」

町明かりが照らす夜空をナイジャを先頭に、クロノ、アルフ、ヴォルケンリッターが続く。

「エイミィやアリサ達は無事逃げられただろうか?」
「無理ね。私が叫んだ時点で六小節まで言われていた。アルト達がいるから大丈夫だと思うけど。
たぶん私が結界侵食すると同時に脱出すると思うから、アースラ、3人のことは任せたわよ」
「"わかりました"」
「!?」

ナイジャが立ち止まり、みんなも止まった。

「どうした?」
「どうやらここが境目らしいわね」
『?』

目の前には何も変哲も無い夜空。
しかし、目を良く凝らして見ると、微かだが空間の揺らぎが見られる。

「よっしゃ!!。はやて今行くぞ!」
「こらヴィータ!!」
「うぉりゃぁぁぁああああ!!!」

シグナムの止める声も聞かず、ヴィータはグラーフアイゼンを構え、揺らぎに突っ込んでいった。
ヴィータが揺らぎに接触すると、溶け込むように消えていった。

「全く、あいつは」
「なに、すぐ戻ってくるわよ。それよりシグナム、そこ危ないわよ」
「?」
「おりゃぁぁぁぁああ!!!」

そこにどこからかヴィータの雄叫びが聞こえ

「!!」

築いたときはもう遅く、揺らぎから飛び出したヴィータは

「うっ!、ぐっ!!」

シグナムの腹に思いっきり頭突きを食らわせた。

『ヴィータ!』
「つててて、何でシグナムがいるんだよ?」
「くっ、そっそれは、こっこっちのセリフだっ!!。全くお前は後先考えずに行きおって」
「んだと!!」
「やめんか二人とも」
「今は喧嘩している場合じゃないでしょ」
『………』
「さて。ヴィータが戻ってきたと言うことは空間がどこかでループしてるわけだな」
「どうすんだい?」
「まぁ、待ちなさい」
「お待たせ」

そこにユーノが来た。

「ユーノ、どうしてここに」
「無限書庫抜け出せないんじゃなかったのか?」
「そうなんだけれど、ナイジャに管理局の危機と全次元空間の危機とっちが大事かって言われてね。
こっちに来たわけさ」
「ユーノの結界魔法は使いどころがあるからな。さて、早速だがユーノ、アルフ。
みんなに結界魔法を、空間侵食の衝撃に備えて」
『わかった』
「さて……」

ナイジャは一歩飛び出て

「すぅ……悪夢の王の一片よ、世界(そら)の戒め解き放たれし凍れる黒き虚無(うつろ)の刃よ」

ナイジャの右手に黒い魔力が集中する。

「我が力、我が身となりて、共に滅びの道を歩まん、神々の魂すらも打ち砕き!!」

闇が一気に形の成らない暗黒の剣へと成った。

「ラグナ・ブレーーーーード!!!!」

揺らぎに一気に叩きつける。
だが、空間をも断ち切る剣は通らず、大小の激しい衝撃と剣の闇の残滓が飛び散っている。

「くっ!!、さすが祖が創り出した結界のことはある。しかし!!」

ナイジャは腕に力を入れる。
しばらく経つとミシミシと一部の揺らぎにヒビが入りガラスのようにパリンと割れる。

「みんなっ、行くわよ」

結界に囲まれ待機していみんなに振る。

「Intertio infinitas posterus ―この手には無限の未来―
Ferrum-corpus Flamma-mens ―体は鋼で、心は炎―
Nullus-nomen bellum currunt ―名も無き戦場を駆け巡り―
Multi posterus defungo per fatum ―数多の未来が運命により消ゆる―」

辺りの空間がだんだんと変わり揺らぎを侵食してゆく。

「Ego frons infinitas acerbus infinitas despero ―我が前には永久の闇、永久の絶望―
Ego potior duo lumen gladius modo ―我手に持つは二振りの光の剣のみ―
Libero gladius tenus umquam pax pacis somnium ―ならば常和を夢見て剣を振るう―
Ita ego lascivio "Fatumcomplectus-gladius-opera ―この身は運命を切り開く無限の剣で出来ていた―"」

『わっ!!』

術が成った瞬間、みんなは何かに引き寄せられる感覚に襲われ、結界ごと引き込まれる。

「くっ!」

雷鳴が支配する暗雲を切り裂き落ちてゆく。
同時、雲間から見える結界にある武器も解析する。
あの影がどこまで再現しているか、対象が最強の存在である限り、ひとつでも多く手の内を把握しておきたい。

「チッ、何これは?」

しかし禍々しい武器を解析すると同時にひどい頭痛が襲う。
本来刀剣類は殺すだけの武器ではなく、破魔やご神体など、神聖なものとして扱われることが多い。
固有結界使いは、刀剣を担う者として銘剣はもちろん、銘も無き剣に対しても敬意を表す。
しかしこの刀剣はなんだ、ただ殺すだけのモノとして扱われ、術者の殺意と憎悪の闇に染まっている。
ナイジャは仲間を冒涜されていることに、ひどく嫌悪感を感じていた。

「何だ、この世界は」
「とても不思議な場所だな」

シグナムやクロノが言うのもおかしくない。
そこは二つのセカイの境界。
方は星々が輝く満天の夜空と、威風堂々と兵士のように、武器が砂の大地に並ぶ。
天地の境界は赤々とした炎の壁が広がり、無機質なセカイでも温かみを感じる。
方は天に黒い雲と怒りの雷、大地に広がる武器は亡霊のような歪な禍々しい、
天地の境界は黒々とした炎が広がる。無機質なセカイはそのまま、凍てつくような冷たさ。
天を見上げればセカイの境界には侵食しあう赤と黒の炎。
そんな世界に自分達はいる。

「いたわ」

視界に写るは戦闘による波動。
アルトとベルダンディーが炎系魔法を放ち戦っていた。
辺りを見渡すとそれを見守るなのは、フェイト、はやての姿が。

「みんな」

3人はこちらに気づき近寄ってきた。

「みんな」
「主はやて。ご無事ですか?」
「うん」
「エイミィ達は?」
「空が揺らいで影が怯んだ隙にアルトが飛ばしたよ」


「つててて」
「戻ってこれたのかな?」
「全く、アルトくんてば女の子の扱いが雑だよね」
「"エイミィ"」
「リンディ提督?」
「"無事でよかった。今転送するわ"」
「はい」


「congelo!! ―凍てつけ!!―」

ベルダンディーを氷のタワーに閉じ込め、皆と合流する。

「お前らやっと来たか」
「それで様子はどう?」
「まだ全力を出していないな。で、お前が見てこの世界はどうだ?」
「正直、さっさとブチのめしたい気持ちよ」
「保有武器は?」
「言い伝えどおりね」
「分かった。ナイジャ、剣を貸してくれ」

ナイジャが手を翳すと、ナイジャ側の固有結界、剣の丘から一条の光が伸び、
浮き上り、複製されるビリーセスト。
複製された2本はそれぞれナイジャとアルトの手に収まる。

「いいかお前らこれからの戦闘は俺達の指示に従ってもらう」
「どういうことだ?」
「この剣草の中にはな世界中で語られる神話の武器もある。!?」

突然の破壊音。
ベルダンディーがタワーを破壊し、こちらに突っ込んでゆく。

「散らばれ!!」

アルトが叫び、皆が散らばる。

「いいか、この剣草の中には一撃必殺の武器が多い、その時はかまわず俺かナイジャを楯にしろ!!」
「シグナム、ヴィータ!」

ナイジャは二人に近づき、身に付けているマントと腰布を渡した。

「これは?」
「対魔力が付加されているマントと腰布よ。なのはのスターライトブレイカーぐらいは軽々防げるわ」
「フェイト、お前は俺のだ!」

攻撃をかわしつつフェイトにマントを投げ渡す。

「ユーノ、後衛を守れ、後衛!!。俺達にかまわず魔法をぶっ放せ!!」
「でっ、でも」
「俺達には対魔力がある。かまわずに撃て」
「はっ、はい」
「前衛、用意はいいな、行くぞ!!」
『おう!!』

アルト、ナイジャ、フェイト、シグナム、ヴィータが飛び出してゆく。

「はぁぁぁっ!!」

初手はシグナム。
勢いよく切り込んでゆくが、しかし、レヴァンティンは漆黒の双刃剣に阻まれた。

「!!」

もう方の腕。
いや、本来腕は生えているところからは、同じく漆黒の長剣が生え、シグナムに襲い掛かる。
シグナムは間一髪除け離れた。

「レリングヴァリーとレリングセイバーか」
「行くよヴィータ」
「おう!!」

フェイトとヴィータが駆ける。

「(sarcinacrusta!)」
「(「inflatus!!」」

魔力の弾丸が装填されバルディシュとグラーフアイゼンはハーケンフォーム、
ラケーテンハンマーへと姿を変える。

『はぁぁぁっ!!』

両の剣で二人の攻撃を防ぐ。

「シグナム!」
「今だ!!」
「はぁぁあぁぁっ!!」

再びシグナムが切り掛かる。
両からはフェイトとヴィータ、正面からはシグナム。
このままだとシグナムの手によりヴェルダンディーは真っ二つだが。

ガシャン!!。
聞こえるのは肉の切れるいやな音ではなく、鍔迫り合いの鉄の甲高い音。

「なにっ!!」

レヴァンティンを受け止めたのは、口に咥えた綺麗な装飾が施された剣。

「アブソリュート・キャリバー!!」
「pareo ―我が意に―」

呟き、刃軸にルーンが浮ぶ。
柄にも魔法陣の影のようなものが浮かび剣は発動した。

「いかん!!、みんな離れろ!!!!!」

アルトが叫びとっさに離れる。

「支援砲火!!」
「(StellaLumenQuasso)」

スターライトブレイカーの急速チャージ

「……quasso ―壊れろ―」

呟き、剣を振うと同時になのはも放つ。

ザァァァァァッ!。

桃色の巨光と炸裂する光。
それは互いにぶつかり相殺しあう。

「このマントが無かったら、我々は終わっていたな」
「そうですね」

比較的近くにいたシグナム達は魔力の衝撃波に晒されたが、アルト達のマントで無傷だった。

「あの剣は?」
「準聖剣アブソリュート・キャリバー。私と同じといえば分かるわね」
「ああ、それにこの剣群の中で一番厄介だ。お前ら、柄が光ったとき何か見たか」
「いいや、何も」
「だろうな。いいか、あの剣の柄が光ったら見るなよ」
「それでは次手がわからんだろ」
「いいから見るな。俺達なら大丈夫だがお前らだと見たら最後、頭が吹き飛ぶぞ」
「なに、油売ってる!!。来るぞ!!」

ベルダンディーは剣をアブソリュート・キャリバー一本に絞り、突っ込んでゆく。

「散らばれ!!」
「くっ!!」

今度はアルトだけではなくシグナムにも襲い掛かる。
一合、ニ合、三合、重い剣筋を受け止める、だが四合目の鍔迫り合い。

「きゃっ!!」

ベルダンディーのハイキックが頭に入りシグナムは剣草へ吹っ飛ばされた。

「シグナム!!。シャマル、シグナムを頼む」
「はい!!」
「やぁぁぁぁっ!!」

フェイトはハーケンセイバーを出し切りかかっていくが

「くっ!、がっ!!」

今度は強烈なニーキックがフェイトの腹に決まった。

「フェイト!」
「フェイトちゃん!!」

崩れ行くフェイトをアルフとなのはが受け止める。

「デュランダル行くぞ!!」
「(OK、BOSS)」
「freeze!! ―凍てつけ!!―」
「(AeternusArca ―エターナルコフィン―)」

ベルダンディーを氷付けにしようと伸びる煌く結晶。
しかしそれに気づき、剣を振るい斬撃がクロノに襲い掛かる。
熱を持つ斬撃はエターナルコフィンの冷気を吸収する。

「クロノくん!!」

斬撃はクロノを襲い爆発する。
叫ぶはやて、どこからともなく怒りがこみ上げベルダンディーを睨む。

「よくもクロノくんを!!」

飛び出すはやて

「はやてやめろ!!」
「(マイスターはやて!!)」

ナイジャとリィンの止める声も聞こえず突進する。

「げほっ!、げほっ!」
「大丈夫か?」
「ああ」

クロノは無事だった。
着弾の寸前にナイジャがシールドを張ってくれた。

「Mistilteinn!!」

石化の魔法をかける。
しかし、ベルダンディーの服も同じ対魔力があるのか、ぜんぜん利かず

「うっ!!!」

代わりに腹に強烈な一発をもらう。
正拳裏拳、拳がはやてをいたぶる。
その一発一発にはやての意識が削がれる。

「はやて!!」

ヴィータが悲痛な悲鳴を上げる。
髪をつかまれ投げ飛ばされる。

「はやて!、リィン!」

それを受け止めたのはクロノ。
ヴィータは泣きそうになりながら主の名と妹の名を呼び駆け寄る。

「大丈夫だ、外傷はあるが命に別状は無い」
「良かった」

安堵のため息を漏らすヴィータ。

「ego creo ―我は紡ぐ―」

だがベルダンディーは攻撃の手をやめない。
その手に投影したものは赤黒い槍。

「クロノ、はやてを頼む!」
「まずい!!」

その槍を見た瞬間アルトは飛び出した。

「Gaebolg!! ―ゲイ・ボルグ!!―」

その槍の真名を呼び、体をバネのようにし飛び出す。
その槍、ケルト神話に登場するクーフー・リンが所持していた槍。
心臓を突き刺すという絶対事象の呪いを付加された槍。
それ故、今ははやての心臓を突き刺そうと向かっている。

グサリ!!

だが槍が貫いたのははやてではなく、割って入ったアルト。

「いっ、いてぇ!!」

そしてその真後ろに運悪くいたヴィータ。

「クッ……がっ!!」

喉元に鉄の味がし、口から吐き出されるのはドス黒い血液。

「はっ!!」

剣を振るいベルダンディーが離れ、槍が残滓と消える。
アルトは何とか意識を保っているが、ヴィータはショックで気を失ってしまった。

「二人供!、大丈夫か!!」
「あっ、ああ、なんとかな」
「お前達は回復を優先させろ、後は私達が引き継ぐ」

そこに現れたのはシグナム、そしてフェイト、なのは。

「ちょっと待って、何かがおかしいわ」

辺りを注意深く見ると何かが違う。

「大気に眠る数多の火の精達よ」

そして日本語の呪文を唱えているベルダンディー。

「日本語!?。何でだ!?」
「微かだけど外界に干渉している。しかもあの呪文って!!」
「ヤバイヤバイ!!、みんなひとつに固まれ!!」
「どうしたの?」
「いいからひとつに集まって最高出力で結界魔法を、ぐずぐずしていると全滅するぞ!!」

みんなは集まり、それぞれ結界魔法を唱える。

「偉大なる炎の化身にして統率者である我らが母の盟約によりその力の片鱗を我に貸し与えたまえ!!」

作り出された多重結界の中でみんなは身構える。

「ローカルティ・エターナル・エンド!!」
「いいかっ!。気抜いたら死ぬと思え!!」

それは逃げ場の無い攻撃。
大気が揺らぎ一気に燃焼する。
大気自体が燃焼し、結界を解けば瞬時に丸焦げは陽を見るより容易い。
多重結界の表面数層は侵食により役を果たしていない。

「あっ、後もう少しだ」

燃焼が終わり、みんなは結界を解き、一難去ったとため息をついた。

「きついねぇ」
「何なの今の?」
「エターナルエンド。大気中の火の精に働きかけて大気自体を燃焼させる技よ。
今のは局所的だったけどその気になれば世界が一気に丸焦げよ」
「何さ、その卑怯技は!?」
「ああ、今のをもう一度やられては次防げるかどうかはわからない」
「ああっ、だからなるべく接近戦に持ち込むんだっ!」

胸の傷も癒えていないのにアルトは飛び出してゆく。

「はっ!!」

再び剣戟が始まった。

「シャマル、今のうちに主はやてとヴィータの治療を」
「ハイ!」
「アルト……」

フェイトは戦うアルトを心配そうに見つめている。
案の定、胸の傷のせいでいつもより動きが悪い。

「アルト!!」
「フェイト」

飛び出そうとするフェイトをクロノが引き止めた。

「どうしてとめるの?」
「実際戦って、自分達がどれほど無力で甘い考えだったか思い知らされたよ。
君が行っても足手まといになるのは目に見えている」
「それでも一人で戦わせるわけには!!」

フェイトはクロノの腕を振り切り戦場へ向かった。

「チッ、傷かイテェ!」
「アルト!!」
「フェイト、来るなっ!!」

アルトがフェイトに気を取られているときだった。
アブソリュート・キャリバーが光り、魔法陣が現れる。

「クッ!!」

アルトが気づき振り向いたときには遅かった。
その魔法陣を見てしまったのだから。

「がぁぁっ!!」

突然、アルトが苦しみだした。

「アルト!!」

フェイトがアルトの元に辿り着いたと同時、ベルダンディーは漆黒の翼を広げ飛立った。

「DeusConcido!! ―ラグナ・ブレード!!―」

剣に闇を纏わせ振るう。

「危ない!!」

だがその大きさは尋常ではなく地面に数百メートルの断層を作り上げた。

「うぉぉぉぉおっ!!」
「きゃぁぁぁああああ!!」

崩れ行く岩盤。
その亀裂に吸い込まれるように二人は落ちて行き、ベルダンディーも後を追っていった。







あとがき

Krelos:はい、決戦3部作、2番目やっと書き上げました。
はやて:お疲れやったなぁ。
Krelos:今回はちょっと長めだったけれど、いやぁ、ほんとに戦闘描写が下手だなぁ。
はやて:それになんでウチら八神家だけフルボッコなん?。
Krelos:いやそれは、ヴォルケンズは半不死身でちょっとやそっと怪我を負ってもって、
うおっ!何で黒いオーラ纏ってんの!!。
はやて:何のことかわからへんよ。別に嫁入り前の身体を甚振られたからって怒ってへんよ。
Krelos:いや十分怒ってらっしゃるから!!。
はやて:少し頭冷やそうか?。
Krelos:ひえぇ〜〜〜〜〜!!。






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