「さて、みんな集まったかしら?」

場所は鳴海のマンション。
そこにはアリサ、すずか、アースラクルー以外のシャドウ・ドール事件の関係者が集まっていた。

「改めて自己紹介をさせてもらうわ。私はクレロス=ゼファー。そこにいる愚弟の姉よ」
「カティウス=ゼファー、愚弟の兄だ」


第15話
暴走娘


「なら愚弟の兄と姉なら愚兄と愚姉だな」

スパコーーン!!。

乾いたいい音と共に二つ分のハリセンの音がこだました 。

「いってぇ〜〜〜、何するんだよ!!。というか姉貴、5ヶ月過ぎたんだろ?。大人しくしてなくていいのかよ」
「カティがフォローしてくれるからいいの。それに約束の期日だからどんな様子か見に来てみれば、
あんな状態…フフフ、これはオシオキが必要ね、フフ…フフフフ……」

クレロスの笑みが段々と黒いものを帯びてきた。

「母様、戯れはそれぐらいで」

それを止めたのは無表情を通り越して仮面のような表情の少女。
ナイジャ達からメビウスと呼ばれていた。

「皆様、改めて名乗らせていただきます、私は準聖剣ビリーセスト・キャリバー=メビウス。ナイジャの妹に当たります」
「はいメビウス。挨拶はそれぐらいで、ほんとに収拾がつかなくなるから」
「了解しました」

本当に感情の起伏が無く無表情、ナイジャとは正反対だとみんなは思った。

「さて。あなた達のことはナイジャのラインを通して大体のことは掴んでいるわ。それでフェイト」
「はっ、はい」

クレロスはソファに座るフェイトの前に立ち、じっと見つめた。

「…………」
「……あっ、あの」
「……きゃわいいいぃぃ!!!!」
「えっ、えっ!?」

いきなり抱きついた。

「いやぁ〜〜ん、この子が私の義妹になるのねぇ。アルトがベタ惚れするのもわかるわぁ」

すりすりと頬ずりして思い切り抱きしめる。

「うっ、うぐっ!!」

フェイトは思いっきり抱きしめられ首ギュウギュウ骨ボキボキ、昇天寸前だった。

「フェッ、フェイトちゃん!!」
「姉貴ってこんなキャラだったか?」
「妊娠による一時的情緒不安定……らしい」
「情緒不安定?。つか!、姉貴、今すぐ離れろ!、圧死するぞ!!」
「ああっ、ごめんごめん」
「げほっ!、げほっ!」
「大丈夫?」
「しっかりしろ!!」
「うっ、うん」
「すまない、自由奔放な姉で」
「当たり前でしょ、今まで女っ気が無い姉弟で過ごしてきたんですもの」
「……なんか穢されてるような……」
「クッ、クレロス義姉さん?」
「いやぁ〜〜ん、義姉さんじゃなくてお姉ちゃんって呼んでぇ」
「おっ、お姉ちゃん」
「いやぁ〜ん、かわいい〜〜っ」

クレロスは再びフェイトを抱きしめた。

「だから圧死するだろっ!!」
「ん?」

クレロスは何かに気づき

「くんくん」

フェイトに鼻を近づけ匂いをかいだ。

「ねぇ、アルト…ひとつ聞いていい?」
「ん、なんだよ?」

クレロスはこちらを向きニヤリと笑い

「何でフェイトの『内』からあんたの匂いがするの?」
『!!』

その言葉に二人はビクリとした。

「そりゃぁ、フェイトには俺の右眼と血が流れてるからだろ?」
「いんや、私が言ってる匂いは、身体の一部からなんだけどぉ」

クレロスの目線はフェイトの下腹部を向いていた。

「それは……」
「その……」

しばしの沈黙

「……ククク。まぁ、あんた達がライン引いたのは最初から分かってたけどね」
「姉貴。からかいすぎだろ」
「ごめんごめん、まぁ、夫婦になるだし当たり前か。でも順番が逆になったのはお姉ちゃんいただけないなぁ」
「しょうがないだろ。緊急時だったんだから」
「ラインを引くってどないするんですか?」
「はっ、はやて!!」
「わざわざ突っ込まんでも……」

頭を抱えるアルト。

「前にも同じようなことナイジャが話していたようだけど結局わからんかったし、
二人の慌て様からするとツッこまなきゃあかんと思って、なんか面白そうやし」
「ラインの繋ぎ方は儀式で行う方法もあるけど、一番簡単なのは、体液交換、言い方変えると男女の営み、夫婦の契りね」
『!!!!』
「ぶぶぅ〜〜っ!!」

その意味が分かったのか、女達は顔を赤く染め、クロノは飲んでいた飲み物を噴出した。
そりゃぁ、ナイジャでも口ごもるわけだ。

「証拠だってほら」

フェイトの腕をまくり、二の腕の傷を見せる。

「その傷、いくらやっても直らないんですけど何なのでしょう?」
「これはね。男女の営のさい、男が刻む、この女は俺のものだ、誰も手を出すんじゃない
って言う意思表示みたいなものなの。直らないのは当たり前、魂そのものに刻んでいるから、
すぐに消えたら永遠の証じゃなくなっちゃうもんね」
「男女の営みって……アレだよね?」
「アレは……アレやね……」
「へぇ〜。フェイトもなかなかやるねぇ」
「………」
「まぁまぁ、みんなまだまだ初心だこと」
「男女の営みって何だ?」
「教えてくださいですぅ」
「そっ、それはだな……」
「ヴィ、ヴィータちゃんとリィンちゃんはまだ知らなくていいのよ!!」
『????』

それぞれの反応を見せる中

「よっ…よくも……よくも……嫁入り前の妹をキズモノにしたなぁぁぁぁぁぁあああ!!!」

クロノが発狂した。

「だぁぁぁっ、うるせぇクロノ!!。俺達はもう夫婦なんだからいいだろ!!」
「夫婦…フウフ…ふうふ…」

アルトの言った夫婦という言葉にフェイトは心酔いしていた。

「そんな問題じゃない!!」
「ええ……そんな問題じゃないわ」

そこに身の毛もよだつような負のオーラが漂ってきた。

『えっ!?』

見るとそこにはブルブルと身を震わすクレロス。

「私達が心配していたときに、あんたは、次元の狭間で嫁とイチャイチャ……これはオシオキね」

そう言ってどこからとも無く出したのは宝石剣。
それが淡く光り、中空をなぞると次元の亀裂が生じた。

「次元経由、アインナッシュ行き、お一人様ごあんな〜い」
「あっ、アインナッシュ!!。わりぃそれだけはカンベン!!」

顔が青ざめ逃げようとする。
だがしかし、亀裂から強風が吹きアルトを捕まえる。
近くにいたクロノはなんとも無いことから、強風はアルトだけを拘束していると考えられる。
足を踏ん張り持ちこたえるが

「うっ、うそだろ〜〜〜」
「アルト!!」
「フェイト!!」
「ぬおっ!!」

力尽き吸い込まれるアルト。
アルトを心配して手を掴むフェイト。
フェイトを心配して手を掴むアルフ。
そしてアルフの手によってなぜか巻き込まれたザフィーラの4人が吸い込まれ、亀裂と共に姿を消した。

「あらっ、ゲストが3人も」
「う〜ん。……まぁいいか」
「よっ、4人は何処へ行ったの?」
「アインナッシュ」
『アインナッシュ?』
「腑海林とも呼ばれる吸血植物で出来た森だ。森自体が意思を持つ一つの個として活動し、
その中にいる人や動物を食らって惨殺を繰り返す」
「惨殺って……」
「おい!、そこにはフェイトやアルフ、ザフィーラもいるんだぞ!」

クレロスの襟を掴み言い寄る。

「クロノ、やめなさい!」

ナイジャが慌てて言うが聞く耳を持たない。

「今のあの子だったら3人を伴っても3時間ぐらいで戻ってくるわ。それより……」
「……今はお前の命が危ないぜ」

ひどく冷淡な声、そしてクロノは気づく、自分の首にカティの刃が掛かっていることを。

「何時の間に!!」

シグナムも剣を抜こうとする。

「やめとけ、俺のは君より早いぞ」
「クッ……」
「悪いなクロノさん。その手を離してくれないか、これ以上妻を傷付けるような真似をしたら、
俺は容赦なくあなたを殺すぞ」
「クッ………」

クロノからは見えないが、カティの眼は銀眼になっていた。

「……分かった。すまなかった」

手を離すと同時に刃も降りた。

「ふぅ、知らないのからしょうがないけど、私は、いや妊婦は一族の最優先守護対象第2位なの、
それを傷つけようとした者は容赦なく殺されるから次からは気をつけてね」
「あっ、ああ」
「さて、4人が戻って来るまで時間があるから休憩しましょう」

3時間後。
空間に亀裂が入り4人が這い出てきた。

「ぬをぉぉぉおおお!!」
「ソ○モンよぉ!!。私は帰ってきたぁぁぁぁああああ!!!」

出てきてすぐ雄叫びを上げるボロボロのザフィーラとアルト。

「アルト!!、アルトあるとぉぉおおお!!」
「ザフィーラ!!。あんたは真の男だよ!!」

その二人に縋り付く同じくボロボロのフェイトとアルフ。
見るからに4人とも極限にまで追い詰められていた。

『うるさい!!』

だが無常にもそれに突っ込みを入れるクレロスとはやて。
後に4人にアインナッシュはどういう所かと聞くと

『ガルルルル!!』
「ああっ、…何もかも皆懐かしい――――」
「いやっ!いやっ!、ああぁぁあああ、ツルがぁぁぁあああ!!!!!」

ザフィーラとアルフは仲間や主にまで牙を向き生存本能全開。
アルトは黄昏。
フェイトにいたっては皆がドン引きするぐらいの壊れ様、どうやら完全にトラウマになったらしい。

「さて、無駄な時間を過ごしたわね」
「マスター…早く彼女に伝えないと……」
「そうですよ」
「そうね」

クレロスはフェイトの額に人差し指を当て意識を集中する。

「あっ、あの」
「静かに……ねぇ、背中から翼が生える様子をイメージしてみて」
「えっ?」
「いいから」
「………」

フェイトは言われたとおりイメージしてみた。

「あっ」

イメージが出来たら、フェイトの背中が光り輝き、小さな1対の翼が生える。

「えっ!、どういうことです?」
「簡単なことよ。アルトの血と右眼の影響で身体が神化してきている。大体60%ってところね。
あと10年もすれば完全に神族として身体が作り変えられるわ」 「神族として?」
「ええ。酷なことを言うけどね。あなたは自分では死ねない身体になるの。
何十年、何百年、友達が老い死んだとしても自分はそのままの姿で生き続ける。魔に殺されない限り永遠にね」
『………』

フェイトに気を使っているのか、誰も喋ろうとしない。

「……それでも…それでも、私は願いました。アルトと共にいることを」

フェイトはまっすぐな眼でクレロスを見た。

「うん。迷いが無いいい眼だ。……それにね悲しいことばかりだけど。楽しいことや幸せだってちゃんとあるんだよ」
「はい!」
「うわぁ、可愛い羽ですぅ」

リィンがフェイトの背中から生えた小さな翼を見てはしゃいでいる。

「今は小さいけれど1ヶ月もすればちゃんとした大きさになって飛べるようになるから。
さて。男共は退出願おうか、1時間ぐらい外で暇つぶしてきて」
「えっ、どうしてだよ?」
「女同士の話し合いに男は不要。でも、何?、それでも居たいって言うの?」
「変態…野郎……」

メビウスが無表情のままサラリと言う。

「へいへい分かったよ。んじゃみんな行くぞ」
「ついでにヴィータとリィンも」
「へいへい、行くぞチビッコ共」
「チビッコ言うな!!」
「何で私とヴィータちゃんもですか?」
「う〜ん、ちょっと難しい話するからいてもつまらないわよ。
お兄ちゃん達と外に散歩に行ってきなさい、風が気持ちいいわよ」
「分かったです〜」

アルト、カティ、クロノ、ユーノ、ザフィーラの5人はヴィータとリィンを連れ部屋を出た。

「私達も席を外そか」
「いや、事情を知ってる女性が回りに一人でも多くいた方がいいしね。その前に――――」

クレロスはフェイトを抱きしめた。
今度はやさしく、包み込むように。

「……ありがとう――――」
「えっ?」
「あなたに出会わなかったら…あの子は死んでいた。あなたに出会わなかったら…私はあの子をこの手にかけていた。
この日が来るのが怖かった、自分から何もせずに他人任せだと思っていてもかまわない。だけど言わせて。
あの子と出会ってくれて、ありがとう――――」

耳元から嗚咽が聞こえる。
身体が震えている。
ほんとに怖かったんだ。
一族の慣わしだとしても、たった3人しかいない家族、その一人を手にかける事を。

「………」

フェイトはやさしくクレロスを抱き返した。


一方外の男達は

「なぁ、クロノ」
「なんだ?」
「……寒いな」
「……ああ」
「ックシュン!!」
「お前らだらしねーぞ」
「ぜんぜん寒くないですよ〜」
「誰も上着を持ってこなかったのか?」
「俺のマントと腰布だったらあるぞ」
「あんなの街中で着たら変人だと思われるよ」
「んだとぉ!!」
「ザフィーラ、わんこ形態になれ」
「俺は暖房器具ではないぞ」

午前中ではあるが、男5人寒空の下を彷徨う。
元気にはしゃぐ少女二人の後ろを歩く姿はどこか哀愁に満ちていた。


「さて、フェイト、聞くけど前と変わったところ無い?」
「変わったところですか?」
「ええ、これから身体が神化していく上で翼のほかに、その綺麗な金髪がちょっと赤みがかるわ、

その他に主だった変化は精神面で今より好戦的になるけどね、まぁ戦神だから仕方ないけど、ああ、あと食も変わるか」 「食?」
「あのう、アルトくんと最初に会ったときにものすごい量のご飯食べてたんですけど、アレって族柄ですか?」
「まぁ、日常の代謝と魔力消費が人間より激しいことと戦闘による運動量ものすごいから、それなりの量を食べるわね」
「食費が大変そうだね」
「まぁ、そんなのは些細なことで一番大変なのは女の子特有のことなのよ」
『?』


「……寒いからなんか暖かくなるもん食っていくか」
「そうだな」
「わ〜い」
「誰か財布は持ってきてるのか?」
『…………』
「くっしゅん!」
「……役立たず」


「女の子特有ですか?」
「ええ、魔力面でなんか気づいたこと無い?」
「そうですね。……前より魔力のキャパシティが大きくなったと思います。ほんのちょっとですけど」
「んじゃ、アルトとライン繋いでどうだった?。アルトの魔力をどう感じ取った?」
「そうですね……海のようでした。果てしなく続く大海、私はその中でプカプカ浮いているようでした」
「うん。今はフェイトのキャパシティがアルトより小さいからそう感じられるわ。でもね、将来それが逆転するの」
「アルトくんよりフェイトちゃんの魔力が強くなるってこと?」
「ええ。大差はあるけど、女はね男より内にある魔力が多いの、これは神族だけじゃなくあなた達にも当てはまるわ。
何でか分かる」
『?』
「ヒント、女に出来て男には出来ないこと」
「何やろか?」
「簡単なことよ。子供を生めるか」

リンディが得意げに人差し指をピンと立てて言った。

「おおっ、なるほど」
「私達の魔力はそれと関係して増減するから気をつけてね。下手すれば人間以下まで弱くなることがあるから」
「それと言いますと?」
「具体例を挙げるとしたら月のものと、まぁ、まだまだ先だろうけれど妊娠中は誰かに守ってもらわないとダメ。
卵と胎児にキャパシティの9割以上は持っていかれるからね」

なのは達はその中学の保健体育のような話に恥ずかしさを感じていた。

「私もこの子に魔力のほとんどを吸われて、カティや他のみんなに守ってもらわないといけないぐらい弱ってるの。
でもそれは嫌なことじゃない。命が育ってるんだって実感できてうれしいの」

クレロスはやさしくその大きくなった自分の腹をさする
。 この中でその感覚が分かるリンディが深くうなずく。

「分かるわぁ。その気持ち」
「私達もはやく分かるときが来るといいね。フェイトちゃん」
「そうだね」
「その前に……私は相手見つけんとあかん」
「気を落とさないではやてちゃん」
「そうです。いつか主はやてに相応しい殿方が見つかります」
「うゎ〜ん、クロノくぅ〜ん……」
「というわけで、みんな、義妹のフォローをおねがいね」
「もちろんです」
「それとその逆で魔力が過剰増加するときもあるから。具体的には春先の発情期と産後ね」
「ちょい待ち!!、今気になるワードを言ったような気がしたんですけど」
「えっ、発情期のこと?」
『はっ、発情期!?』
「あのね、私達は見た目人間の姿をしてるけど、本体は獣なのよ」
「あっ……」

フェイトは次元空間で見たアルトの姿、炎を纏った大隼の姿を思い出した。

「あっ、バカにしてるなぁ、言っておくけどねバカにできないんだからね、
本能が理性を凌駕しちゃって返ってこれないときもあるんだから。私だってちょっとヤバかったんだから。
四六時中カティに襲い掛かったりとかして……」
『はぁ〜』

みんなは想像できず生返事を返した。

「産後のほうは、今まで吸われていた分の魔力がリバウンドするの」
「それは十分想像が出来ます」
「はいっ!、質問があります!!」

シャマルが元気よく手を上げた。

「突然どうしたシャマル?」
「ずっと気になってたことがあるんですけど」

その眼はワイドショーのスキャンダルに興味津々な主婦の眼になっていた。

「その子って本当にカティさんの子供なんですか?」
「全く。お前ってヤツは……」
「関係ないと思うんだけど」
「えぇ〜。だって気になるんですもの」
「ええ、そうよ」
「キャッ!。禁断の愛〜」
「確かに近親相姦とかそういった類のものは腐女子には興味津々(?)でしょうね。
でもそれにはちゃんとした理由があるの」
「どんな?」
「ひとつは天帝の直系の場合。神族と対なす存在、魔族が復活した時、
それに対抗できる5匹の獣は天帝にしか生み出せないの。
だから天帝の血を引く王族は親戚同士で子を成し自分達にも流れているその力を絶やさないようにしているの。
もうひとつはそれ以外の場合、私達は長年の交配で種類が爆発的に増えたの、
数百単位の種族もいれば私達のように3頭しかいない種族もいるの。
己の種を絶えさせないために本能的に近親者と交わり純血種を増やしていく」
「なるほど、理に適っているな」
「でも、そういう場合、まともな子が生まれへんと聞くよ」
「ええ、生まれるわよ。魔力的にありえないキャパを持った状態でね」
「へぇ〜」
「んじゃ、これで最後にしましょうか。神族が他の種族に接触し最初にしなきゃいけない警告」
「警告……」

ピシッと空気が張り詰めるような鋭い目線。
突然のクレロスの変わりようにみんなは固唾を呑んだ。

「神族の子には手を出すな」
「……どういう意味ですか?」
「我が神族は最優先保護対象というものが決まっているの、上から行くと赤子・子供、妊婦、女性、男性の順ね、
上位に行くほどどんな犠牲を出しても護らなくてはいけないものとなる。特に赤子・子供は神族の宝と言ってもいい。
もし子供を誘拐、いえ未遂でもしたら、我らの怒りを買いその者は死刑、
下手をすればその者の一族、種族をもこの世から抹殺するかもしれないから」
「そんな、ひどい」
「さっき、クロノが私に迫ったときカティが刃を向けたでしょ。それは私が最優先保護対象第2位の妊婦だったからよ。
これは理性なんかじゃどうにも出来ない、私達が生まれたときから、本能の一部として埋め込まれたものよ。
私達と国交を結びたいなら最初にこれだけは教えこめなさい。神族の子には手を出すなってね。そ
うしなければ管理局だったっけ、そこは消滅、下手すればそこで働いていた全種族の種がこの世から消えることになるから」

冗談を言っているようには見えないクレロスの言い振りにみんなは背に冷や汗を感じた。

「さっ、大体話はこれでおしまい。あと少しすれば男共も帰ってくるでしょう」
『ふぅ〜〜〜っ』

緊張感の抜けたクレロスの声にみんなは心地よい脱力感を覚えた。

「あっ、そうだ。フェイト」
「はい、なんですか?」
「ちょっとアルトをからかってやろうじゃない」
「からかうって!」
「いいからいいから」

クレロスはフェイトを強引に引き寄せ何かを耳打ちする。

「……!!」

何を話しているのか分からないが、フェイトが顔を真っ赤にしていることから恥ずかしいことだろう。


「ただいまぁ」

それから10分ほど後にアルト達は帰ってきた。

「お帰りなさい」
「ああ、ただい………」

出迎えたのはフェイト。
だが男達はその姿を見た瞬間、語尾が窄まる。いや固まった。

「どっ、どうしたの……」

エプロンからスラリと伸びるきめ細かい素肌。
恥ずかしさのあまり少し高潮しており、恥らう顔とすごくマッチしている。
それすなわち『○エプロン』というものだ。
実際はレオタード風のインナーの上にエプロンを着ただけなのだが、アルト達側から見ると完全にそれだった。

「どっどっ、どどどっ、どうしたんだよフェイトォォォオオオ!!」

肌を重ねたもの同士だというのにすごい慌てようである。

「わぁはははははは!!!」

リビングからクレロスの激しい笑い声が聞こえてくる。

「あの子ったら、意外と初心なんだから、からかい甲斐があるわぁ」
「くっ、クレロスさぁ〜〜ん……」

フェイトも相当恥ずかしかったらしく眼一杯涙を貯めクレロスを見ている。

「姉貴!。フェイトで遊ぶなよ!!」

アルトはすぐさまフェイトに駆け寄りマントを羽織らせた。

「ゴメンゴメン、あまりにもかわいかったもので。ゴメンねフェイト」
「いっ、いえ」
「それよ!!」

突然クレロスが叫んだことにより場が静まり返る。

「フェイト、先輩としてのアドバイス。あなたは他人に遠慮しがちで欲を内に秘める傾向が少しあるわ。
嫌なものは嫌、欲しいものは欲しい、思いっきり甘えたい。そういうものはなるべく内に貯めないようにしなさい、
そうしないと永い人生、何処かでへばっちゃうわよ」 「あっ。はい……」
「さて、フェイトは終わり、次はアルトの番ね」
「俺の番って?」
「そりゃ当然」
「アーリィ・シアブレイカーの称号を冠するに相応しいか」
「俺と戦ってもらうぞ」
「えっ……マジで?」
「マジで」







あとがき

Krelos:さて、決戦後の後日談的話だったわけだが。
クレロス:なんか私、すっかり説明お姉さんになってない?。
Krelos:……オバサンだろ?
クレロス:私はまだ16ダァァアアア!!!。
Krelos:はいはい。まぁ。自分のオリジナル作品とクロスさせるうえでは通らなくてはならない宿命といいますか。
あっ、そういえば今回、同じ説明キャラ(?)のエイミィが一言も喋ってねぇや。
クレロス:あらら、可哀想に。
エイミィ:プリーズ!。もっと私にセリフを!、出番を!!。
Krelos:さて、次回で第一部も完結です。
クレロス約半年長かったねぇ。
Krelos:完結なのに新キャラ出ます!!。
クレロス:我らが幼女マスター!!。






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