訓練開始から2ヶ月が過ぎようとしていた。
この頃になると訓練生達も生活に慣れ、序々に余裕が出てくるようになる。
そんなある日、ある人物のとある奇病が再発してしまった。
これが後に大きな問題になることは今は誰も知らない。


第4話
くだらない闘争心


「クリスちゃ〜ん」
「きゃぁ!!」

寮部屋で楽しく談笑中。
急に名前を呼ばれ、後ろからその豊満な胸を鷲?みされ、その子は小さな悲鳴を上げた。

「はぁ〜、クリスちゃんの胸はいつ揉んでも大きくて柔らかいなぁ」
「ちょっとはやて、やめなさい!」

はやては満面の笑みを浮かべながら、その手の中で無造作に歪む胸の感触を楽しんでいる。
揉まれている当人は羞恥に顔を真っ赤に染め、周りの子達はまたかと言ったような目でただ見守っている。
はやても生活に慣れてきたのか、乳揉み魔としての本性を現し始めた。
人種・異星人問わず、ある程度の膨らみがあれば挨拶代わりに鷲掴み!、破竹の勢いでルームメイト達の胸を攻略し、
面識があれば教官陣、果ては正規の女性兵士にまでその魔の手が及んだ。
はやての痴態はシティ全域に知れ渡り、巻き込まれないために目の前で乳揉みが行われていても手を出さず、
被害者に熱い視線でエールを送ることが暗黙の了解となっていた。

「何でウチは揉まれんのやろ?」

その中でケーニッヒだけが対象外とされていた。


「ほんとにみんな懲りないわねぇ」

部屋に設置されている大きなスクリーンに弾幕を避けながら通路を走る男達が映る。
画面上の爆発とともに爆発音と振動が伝わってくる。
はやての乳揉み騒動とほぼ同時期に始まったのが、主に訓練生男子による夜這いレース。
それ自体は古くから恒例行事となっており、男女合同訓練やプライベートのときに意中の女の子が見つかれば、
その夜、誘いに女子の部屋に行くというものだ。
しかし、男子と女子の部屋は少し離れており、おまけに教官や兵士達が遊び半分で妨害してくる。
その妨害を見事乗り切り部屋に辿り付いた者だけが誘えるという。
だがみんながみんな成功するとは限らない。
遊び半分の妨害とはいっても、当たれば怪我は当たり前、潜り抜けても女の子がOKを出さなければダメである。

「おっ!、一人抜けた!」

数々の弾幕を掻い潜り、飛び出してきた男子が約一名。
外見から普通の人間と分かる。

「おう、なかなかやるねぇ、彼」
「あんなに必死に走って、誰が目当てなんだろう?」
「私だったらパスだなぁ、ど根性系はタイプじゃない」
「またまたぁ〜、そんな事言っていコクられたらタコのように茹で上がるんじゃないの?」
「お黙り!」

歳相応のおしゃべりが繰り広げられる中、はやてだけが余裕な顔でみんなを見つめている。

「何はやて、一人だけ余裕じゃない」
「あっ、まさか恋人が居るんでしょ!?」
「それはなぁ――――」

そこにうるさいぐらいの足音がし、突然扉が開かれた。

「はあっはあっはあっ!」

肩で大きく息をし、そこに立つのは先ほどの男子訓練生。

「はあっ、はあっ……俺は木羽刹那だ!、八神はやては居るかっ!」
『えっ?』
「ええっ!?」

みんなは驚き一斉にはやての方を向いた。当の本人もすごい驚き様だ。
刹那ははやての前に行くと膝立ちになり

「入隊したときから気になっていた!。どうか俺と結婚を前提としたお付き合いをしてほしい!」

見事なまでのプロポーズ。
最初周りのみんなもポカンと大口を開けて驚いていたが

「さぁ、どうする、はやて?」
「OKしちゃうの?」

すぐに意識を取り戻しはやしたてに回った。

「さぁ、返答はいかに!」
「……せっかく来たのにゴメンなぁ、私には心に決めた婚約者がおるねん。また新しい恋を見つけてな」
「………」
『えええぇぇぇぇぇぇぇえええ!!』

真っ白になり文字通り玉砕する刹那、そしてなぜか一斉に驚くルームメイト達。

「はぁ〜い!、玉砕者はさっさと退場だよ〜〜!!」
「えっ、ちょっとぉぉぉお!!」

突然クレナイが現れ刹那を掻っ攫う。

「それじゃ私はもう寝るから」
「ちょっと待ちなさい!」

はやてを囲み仁王立ちするみんな。

「はやて、あんた婚約者がいるんだってね」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「全然!」
「ケーニッヒは知っていたようだけど」
「まぁ、バディだからね」
「ねぇ、かっこいい人?」
「全部吐いてもらいましょうか」
「隅から隅までしっぽりねっとりとね」
「今夜は寝かせないわよ」
「ちょ、ちょい待ちや皆さん、……ひっ、ひいぃぃぃ!!」

この年頃の女子の情動というものはものすごく、日頃の胸揉みの仕返しも重なって、
はやては骨の髄までクロノとの関係を喋らせられたという。


「う〜ん、気持ちいい、やっぱりお風呂は心の洗濯やわ」
「何オヤジみたいなこと言ってるのよ。あっ、胸揉みする時点でオヤジか」

訓練の後、女子は共同浴場でお風呂に入っていた。

「私オヤジじゃないもん、みんなのバストアップに貢献してるだけやもん」
「他人より、自分の胸のこと心配したら?」

確かに、はやての胸は他のみんなより比べると小ぶりだ、そしてそれと同じぐらい小ぶりなのがケーニッヒ。

「私もバストアップのためにがんばってるよ、でもな他の子の胸揉む方が楽しいんよ」
「その言動がオヤジなのよ」
「もうシティにいるほとんどの女性の胸を揉んだんじゃない?」
「いやまだや、まだ大物がいる」
『大物?』
「クレナイさんや!」
『おおっ!!』
「あの、Tシャツを押し上げる張り、ス○ロボ並にプルンフルンと揺れ動くあのデカさと柔らかそうな感じ、
悩殺マッシーンといっても過言じゃない!、間違いない!、私の見立てではFは固いよ!、
インナースーツ姿だったらもうっ!、ご飯3杯はいける!!」
「そんなに力入れなくても」
「オヤジくさい……」
「でも確かにクレナイさんは背が高くてスタイルはいいよね。何だろう、ボンキュボンとはまた違ったエロさがあるわよね」
「だけど隙は見せないし、お風呂にも鉢合わせせん。ああっ、一度でいいからあの究極の美乳を揉みたい!!」

はやては天を仰ぎ手をワキワキと動かす。
みんなが白い眼で見ているのを気づかないのは幸せなことだろう。

「やめときなさい、触った瞬間何されるか分からないわよ」
「あの胸を揉めれば死んでもいい!」
「そこまで言うんかい!、それにホウさんだって黙っちゃいないと思う」
「何で?」
「ほら、だってクレナイさんってホウさんの……」
「知ってる!、確か自称ホウの○奴隷!!」
「女の子がそう露骨に言うんじゃありません!」
「なんやのその自称?」
「神族では有名だよ、クレナイさんともう一人の奥さんであるロストは、
“私はホウの奴隷”と豪語していて彼の命令には絶対服従、その身や魂まで差し出して、奴隷の首輪まで付けていたそうよ」
「そういえばいつも首に首輪付けてるよね。変わったチョーカーだと思ってたけど本当に首輪だったんだ」
「確かそれってエンゲージリングの代わりだったんだよね。だから初日に首輪が無いって怒り狂ってたのか」
「なんやのそれ?、それでホウさんは了解しているんか?」
「してるんじゃない?、現に地球大戦終戦前にはすでにそんな関係だったらしいし」
「地球大戦って何やったっけ?」
「おバカ!、授業で言ってたでしょ。地球に魔族の組織であるナイトメアの残党が進行してきて
人類滅亡の危機に陥った戦争よ」
「おう、そうやったそうやった」
「でもさ、その時ってホウさんが確か16歳だよね、若い性の情動を持て余し、
なおかつ自分を好きなようにしてくださいという女の子が………」
『………』

プシュ〜とみんなの顔から湯気が立ち赤くなった。

「はい目を瞑れ〜っ、今、えっちぃ考えが浮かんだ奴、挙手!」
『………』

全員だった。

「ふ〜っ、なんか体熱くなってきちゃった。もう上がろう」

ケーニッヒが上がろうとすると、何かに気づいた。

「みんな、動かないで!」
「どうしたの、ケーニッヒ?」
「侵入者がいる」
『えっ!?』

満ちる沈黙。
誰もが微動駄にしない空間の中、立ち込める湯気がゆらりと揺れる。

「そこだっ!、ディグボルト!!」

電撃球を放ち、当たった瞬間

『うぎゃあああぁぁぁぁぁぁあああ!!』

複数の男の叫び声と共に、Gアーマー姿の3人の男達が黒焦げになり転がる。

「ちょっと!、ここお風呂場だよ!!」
「出力を抑えたから大丈夫。さて、問題はこいつらだね」
「Gアーマーのステルス機能を使ってくるなんてね」

男達は気づき、周りを見ると、軽蔑の眼差しで見つめる女達に囲まれていた。

「さて、覗きとはいい度胸だね。別に私はバレなきゃ胸見られようが尻見られようが、
その後何に使われようが気にしないけどね」

ケーニッヒの言葉にみんなは“それでいいのかよ!!”とツッコミたかったが、
そういう雰囲気ではないので心の中で全力で突っ込んだ。

「見つけちゃったら容赦しないよ!」

ボキボキと指を鳴らすケーニッヒ。

「へっ、巨乳のシルフはともかく、誰がお前やはやてのヒンヌーに興奮するかよっ!!」
「えっ?」

いきなり振られて驚くシルフ。彼女は青い肌と頭に太い尻尾のような独特の器官を持つ異性人種だが胸はそれなりにあった。
もっと言うと、今期入隊した女子訓練生の中で一番の巨乳、もちろんはやてには揉まれ済みだ。

「……ふふっ、そうかい、そんなに私の胸は魅力ないんかい」

不気味な笑と共にワナワナと魔力が上がる。

「だけどな……はやてよりは胸あるわボケェ!!」
『のわあああぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!』

突然の突風で、天井を突き抜け夜空の星になる3人。

「おうおう、よく飛ぶこと」
「さて」
「ちょい待ちやケーちゃん……さっきの言葉、聞き捨てならんなぁ」

行こうとするケーニッヒの肩をガシリと掴むはやて。

「ふっ、真実を言ったまでよ」

誇らしげに胸を張る。

「ふんっ、私だってまだ小さいけどそれなりにあるんだから!」

はやても負けじと胸を張るがバスタオルで隠れた胸を見ても大して変わらない。

「ふっ、どうだか。まさかはやて、私だけ揉まなかったのは小さかったからじゃないわよね?」
「それはどうやろなぁ、まっ、手に余るほどは無いわなぁ、私のは手に余ってたし」
『………』

ある程度、にらみ合いは続いたが。

「やるんか板チチ!!」
「上等だチビ!!」

いきなり取っ組み合いになった。
バスタオルが脱げようが髪が乱れようがお構いなし、何とかみんなが抑え大事には至らなかったが、
納得いかない2人は医務室に直行、緊急に3サイズの測定を医務官に要請したが。

「2人共、まったく同じ体型ですね」
『はぁ?』
「だからバスト、ウエスト、ヒップ、カップサイズまで寸分狂わず一緒です。
でもまぁ年齢比で見れば少し小さいかなと思えますけど、あなた達は育ち盛りなんですからこれから大きくなりますよ」

二人は思った。“私達より年下に見えてなおかつトランジスタ・グラマーの巨乳なアンタに言われたくないよ”と。
その後、ルームメイトの懸命な努力でその日は何事もなく終わった。

「なっ、なんなのあれ?……」
「ウソ……」

次の日、ルームメイト達は目を疑った。
昨日あれほどケンカしていた2人なのに仲良く朝食を取っていた。

「何があったの?」
「さぁ?」

仲直りするにも早すぎる。
何があったのか聞こうとするがなぜか恐怖を感じ聞けないでいる。


事態は収拾したかに見えたが、その数日後。

「今日はガンダムの操縦訓練を行う」

第3訓練場、十数機の陸戦用ガンダムと訓練生達が揃っていた。
久々の男女混合訓練だ。

「今まではコクピットに乗って操縦桿を使ったコンソールシステムでの操作だったが今日はGアーマーを通して
リモートモビルトレースシステムを行う。今までと違ってより直感的にガンダムを動かせるが体重移動などが
難しいからな気をつけるように。ではこれから言うバディはGアーマーを装着しろ」

男女含めて名前が呼ばれていき、はやて達もその中に含まれた。

「Gアーマーの仮想コンソールで設定をリモートトレースシステムへ、実行の後、ガンダムへレーザー送信しろ」

仮想ミニコンソールで設定し腕をガンダムに向ける。
手甲のクリスタルからレーザーが伸び、額上のクリスタルパネルに情報が送信される。

「!?」

Gアーマーが形状を変え、ガンダムと同じようなアーマー、意匠になる。
外見上、俗に言うMS少女やメカ娘と呼ばれるような格好だ。

「これで全ての設定が終わった、手を動かしてみろ」

はやてが腕を動かすとガンダムも同じように腕を動かす。

「おおっ!」
『おおーっ!!』

はやては驚き、他のみんなも驚く。

「わっ!」

そこに女の子の一人がバランスを崩して倒れ、ガンダムも倒れる。

「モビルトレースシステムはコンソールシステムと違ってオートバランサーがOFFになっている。
姿勢が悪いと自らの重さで倒れお前らもつられて倒れるから気をつけろよ」

と言いつつも、次々に倒れていく。

『おおっ!』

男達が一斉にざわめいた。
シルフも例外なくバランスを取られ転び、その時に胸がプルンと揺れたからである。
男達はそれを見逃さなかった。

「やっぱりシルフの乳ってデカイよな」
「あの姿だから余計ソソるぜ」
「貧乳コンビとえらい違いだな」
『!!』

今回の装甲は胸のところが薄く、なおかつ黒のインナースーツなので胸が余計に強調されていた。
男達の会話に反応したはやてとケーニッヒは周りを見渡す。
特盛、大盛、並、並、控えめ、控えめ…………。
キッ!と2人の鋭い目線が交差する。

「勝負やはやて!」
「望むところやケーニッヒ!!」

突然向き合い構える2人、ガンダムも動きをトレースし戦闘態勢は整った。
女達は理解した。胸関係の言葉で闘争心のスイッチが入るのかと。

「はいやぁぁぁぁああ!!」
「あちょぉぉぉおおお!!」

二人の背には竜虎ならぬキツネとタヌキが浮かび上がる。
そして開始されたフルファイト。
2人とも見事な体術を披露している。
ガンダムも二人の動きどおりにファイトを繰り広げる。

「どうしますリーダー?」
「理由はよく分からんがやらせておけ、どのみち格闘戦の訓練をする予定だったからな。
それにホウさんやクレナイさんもノリノリだし」
「いいぞそこだ!。ふんじばれぇぇぇ!!」
「やっぱりあの2人は面白いわ!」

格闘技観戦でもしているかのように熱狂するマスターチーフの2人。
そして教官陣は深いため息を吐く。

「はあぁぁっ、あの2人はほっとけ、残りの奴を見るぞ」
「分かりました」
「今選ばれたバディは格闘戦を始めるぞ」
『はい』

この後、2人が燃え尽き倒れるまで戦いは続いた。
あまりの素晴らしいファイトに途中訓練の内容が変更され二人のファイトが教材になり授業が行われた。
余談ではあるが、きっかけを作った男達は後にガンダムパンチ、通称ゴッドハンドクラッシャー(ケーニッヒ命名)
で夜空の星になったという。







あとがき

Krelos:すいません!。調子に乗りすぎました!!。
はやて:今頃謝っても遅いと思う。
Krelos:この後、はやてとケーニッヒは時折耳にする乳関連ワードにより激しい戦闘を繰り広げ、
シティ内でも有名になったという。
はやて:私のほうが大きいもん。
ケーニッヒ:ふっ、負け狸の遠吠え。
はやて:何やて板チチ狐!!。
ケーニッヒ:私は狐やない、コウモリや!。
Krelos:そりゃぁ、狸と言ったら狐だからねぇ。
はやて:そうや、その場のノリというものが大事や!。
Krelos:ここではやてが揉みたがっていたクレナイの身体データをご紹介。
身長172.5cm
体重55kg
B98cm(G)
W63.8cm
H93.5cm
以上。
はやて:おう、なんちゅうナイスボディ!。思ってた以上や!。
ケーニッヒ:私達では到底勝てない……。
クレナイ:ホウのおかげで大きくなりました〜。
Krelos:ちなみにこのサイズは某マンガに描いてあった身長に対する各サイズの黄金比率から
算出した数字にちょこっと手を加えたものです。そのまんまだと大抵がBかCになるので。
はやて:というかほとんど手加えてるやんけ、通常その身長から算出される黄金体型は
身長172.5cm
体重65kg
B88.8cm(B)
W63.8cm
H93.5cm
になるんや。
Krelos:まぁ、そこは突っ込まない方向で。さて次回は、はやての中の人繋がりである卓上ゲームの話を
1本入れたいと思います。でもあのゲーム、ハイが全然覚えられねぇんだよなぁ、超難産になるかも。





BACK

inserted by FC2 system