「くしゅん!!」

その日、大規模教導訓練中に可愛らしいくしゃみが響いた。
今回、教導監督長を努めるアルトリアから発せられたものだ。

「大丈夫ですか、リアさん?」

他の教導官達が心配して声をかけるものの、大丈夫と返せる状態ではない。

「風邪ですか?」
「何とか、弱ったなぁ、あの日と重なったからリズムでも狂ったかな?」
「今日はもう休んだほうがいいんじゃねぇのか?」
「そうする。ゴメン、あと頼む」


魔法少女リリカルなのはAs〜FAH外伝2
風邪と猫耳と暴走と


「くしゅん!!」

くしゃみをしつつもトレイに乗っけた少し遅い昼食を落とさないように運ぶ。
幸い、食欲はあるのでしっかり体力を付けて早いとこなおそうと少々多めによそった。

「くしゅん!!」

止め処なく垂れてくる鼻水と格闘しながらご飯を食べていると

「どうしたのリア?」

ふと声をかけられた。
振り返ると、そこには愛しい我が妻フェイトと半年ぐらい前に彼女の副官になった
執務官補佐シャリオ、通称シャーリーの姿があった。
二人もリアの前のテーブルに座りご飯を食べ始めた。

「あら。お風邪ですか?」
「あの日による魔力過多と不安定に風邪のひき始めが重なっちゃって。まぁ風邪のほうはそんなにたいしたことは無い」

しかし、話している間にも鼻水が垂れ、テッシュで鼻をかいでいる。
リアの両サイドにはテッシュの箱が備え付けられ、下にあるゴミ箱はもう満杯になりそうだ。

「気をつけてね。今夜も冷えるって言ってたから」
「ああ。子供達にうつしたら一大事だもんね……っくしゅん!!」

何度目かのくしゃみ。
それと同時に耳の辺りから何かが飛び出した。

『え"っ!?』

二人して字に書けないような擬音の驚きの声を上げる。

「ん?。どうしたの?。あれ?」

ふとお尻に張りの違和感を感じ触ってみたところ。

「シッポ?」

スカートをたくし上げるわけにもいかないので、持っていたナイフでお尻の部分を丸く切り、
先っぽがフサフサしたシッポを露出させた。

「その耳どうしたの?」
「耳?」

耳元を触るとそこには同じくフサフサとした感触が

「リア。鏡」

フェイトから渡された鏡を覗くと、そこには見事な獣の耳が。
そう、どこぞの獣人化画像よろしくバリのネコミミ、ネコシッポが生えていた。

「半獣化しちゃってるし!!」

しかも顔は童顔で熱により少し赤いので

『かっ、かわいい……』

二人は心奪われ、すかさずリアの両隣に席を移した。

「いやぁ〜ん、フサフサ!」
「かわいいですねぇ、ラブリーですねぇ、抱きしめたいですねぇ!!」
「ダメ!!。この子は私の!」

フェイトは力の限りリアを抱き寄せる。

「え〜っ、いいじゃないですかぁ」

両側から美少女二人に引張られる美少女の図。
引張られるのが男であれば羨望の眼差しで見られるが、一連の騒動を見た回りの局員達は哀れみの眼差しだった。

「"はぁい"」

そこに第4の美少女、クレロスが空間モニター越しに登場。

「あっ、義姉さん」
「"あらっ、お取り込み中だったかしら?"」
「そんなことは無い!、むしろ助かった!!」
「ねぇ、見てください。かわいいお耳とシッポですよ」
「"ん?シッポ?。と言うことはあの日と風邪がダブった?"」
「そっ、そうだけどそれが何か?」

何かを察してか、リアがスススと後ずさる。
その勘は当たったらしく、クレロスの顔が変貌する。
眼は銀色になり、まるでエモノを前にした牝豹のようだ。

「"ねぇ……今から遊びに行ってもいい"」
「えっ、遠慮します!!。早く風邪を治さなくちゃいけないのでそんじゃ!!」

身の危険を感じ、リアはそそくさと去っていった。
律儀に食器とテッシュ、ゴミ箱を持って。

「何なんですかあの現象?」
「"身体リズムが狂うとあ〜なるの。アルトと違ってリアは獣族の特性を引継いでいるからあんな姿に半獣化するの。
ちっ、せっかく久々にリア『で』遊ぼうと思ったのに"」
「遊ぶって義姉さん、それはさすがに」
「"ふっふっふ、あなた達、これを見てもまだそんなことは言えるかしら?"」

もう一つモニターが現れ、映像が映し出された瞬間、二人は目をカッと開き食い入るように見入った。

「"どう?。これがリアで遊ぶということよ"」

先ほどまでリアで遊ぶのはどうかと思っていた二人だが、映像を見せられ、その考えも遥か彼方に吹っ飛んだ。

「なっ、何なんですか!、このウレシ、ハズカシ出血大サービス映像は!!」
「ううっ、鼻血が止まりません。かわいすぎるよリアァァァアア!!」

シャーリーは狂喜乱舞し、フェイトの鼻からは止め処なく鮮血が噴出している。
二人はウフフフフと邪悪な笑みを零し、そしてクレロスに向き直りサムズアップ。

『グッジョブです!。お姉さま!!』

程よく壊れかけている者、約2名。
周りで様子を伺っていた局員達がドン引きするぐらいに二人の空間は歪み、カオスと化していた。

「"さぁ、めったに味わえないその悦楽、存分に味わってきなさい"」
『はい!。お姉さま!!』
「今日のお仕事はもうないよね?」
「はい!」

しかし無常にもコール音が鳴り響いた。

「ちょっと待ってください。……フェイトさん、シティバンクで立て篭もり事件が発生したとのことです」
「そんなもん陸士部隊に任せなさい!。私達にはそんなことよりもっと崇高な使命があるの!!」

壊れたのが原因か、性格も少々破綻気味だ。

「でも、立て籠もり犯はフェイトさんが追っていた犯人グループですよ?」
「ちっ、空気を読みなさいよね。仕方ない強行手段で10分でカタをつけるわよ。私に続け!!」
「おーーーっ!!」

元気よく走り去る二人の後姿を見て、小さい時からフェイトを知る局員は

「昔はもっと清楚でおしとやかだったのに………」

と嘆いたそうだ。

「"程よく神族の血に染まってきたわねぇ……あっ!。そうだあんまりやりすぎると!、
って行っちゃったよ。まぁいいか、夫婦なんだし"」

そんなことを呟きながら通信は切れた。


「ううっ」

悪寒を感じるのか、体がブルブルと震える。

「本格化してきたかなぁ」

などと思いつつ玄関のドアを開くと、出迎えたのはアルフ。

「おや?、どうしたんだいこんな早く?。それになんだいその耳と尻尾は?」
「ちょっと風邪気味でな、悪化する前に帰ってきた。これは身体不調による半獣化。
私は少し眠るから、ごめん子供達を頼むね」
「ああ。なんか用意するものあるかい?」
「今のところ無い、ゆっくり寝れば明日には直るわよ」
「食欲は?」
「ある」
「それじゃ夕食までゆっくり眠ってな」
「そうする」

アルトリアはベッドに入り、眠り始めた。


30分後

「スヤスヤスヤ」

「ハラオウン執務官が到着しました」
「おう、結構早かったな」
「それで状況は!?」

フェイトの鬼気迫る表情に小隊長がたじろぐ。

「じっ、状況はいまだ硬直状態、人質もいるので危険な状態だ」
「なに暢気に構えてるんですか!、犯人が目の前にいるんです突撃あるのみです!!」
「えっ!?、ちょっと突撃って!、人質もいるんだぞ!!」
「犯人が行動をとる前に掴まえればいいだけのこと!!」
「ゴーゴーフェイトさん!、行け行けフェイトさん!」
「突撃します!、各員私に続けえぇぇ!!」


10分後

「ううっ、……ダメ……。我慢できなくなってきた……」

布団の中でモゾモゾと動き出すリア。

「すっ、すげぇ」

結論から言うと、犯人逮捕には10分もかからなかった。
フェイトが突入し、他の人達が突入したときには、もう犯人は気絶し、ザンバーを持ったフェイトが佇んでいた。

「あとお願い!」
「ちょっと待てぃ!!」

フェイトはあとの事を部隊に任せようとしたがそうもいかず、少しイライラしながら事後処理を手伝っていた。


30分後

「みんなただいまぁ!!」
「お邪魔しま〜す」

勢い良く玄関のドアを開け帰宅するフェイト、その後ろに連なるシャーリー。

「お帰り。ご飯調度出来上がったから、手ぇ洗っといで、シャーリーも食べていくだろ?」
「はい、いただきます」

リアも起きてきて4人で早めの夕食。
リアはくしゃみも落ち着き食欲もあるが、やはりまだ本調子ではないのだろう。
こちらをチラチラ見つめ、ソワソワしている二人にまったく気づかなかった。

「ご馳走様。それじゃ私はまた寝てるから」
「うん」

フェイトは娘二人にミルクを飲ませ、家事を片付け、アイテムを用意して準備万端。

「それじゃ行くよ」
「はい〜っ、何処までもお供します」
「アルフ、アリシアとプレシアを頼んだよ」
「はいはい。相手は病人なんだからほどほどにね」

意気揚々と寝室に向かう。

「おじゃましま〜す」

高ぶる思いを抑えつつ、昔のバラエティであった早朝バ○ーカのノリで寝室に忍び込み、ゆっくりと布団をとる。

『かっ、かわいい……』

猫のように丸くなって寝ているリアはとても愛くるしく、二人は今にでも襲いかかりたい衝動にかられていた。

「ん?……ううん……どうしたの二人とも?……」

タイミング良くリアが目を覚まし、同時に二人が持っているものを凝視しだした。

「あ、これ?。ほらほらリア」

フェイトは手に持つネコジャラシを軽くリアの鼻先で振り始めた。

「ねぇ、やめてくれないかなぁ」

しかし哀しき性かな意識とは別に勝手に反応してしまう。

「まぁ、そう言わずに」

何度もネコジャラシを振り、リアはニャッ!、ニャッ!と鳴き追いかける。
完全にネコジャラシに気が行っているようだ。
それを見て二人は"オチた"と陰でニヤついた。

「ほらほら、こっちにも沢山ありますよ〜」

これで味を占めたのか、二人はいろいろなおもちゃを取り出しリアで遊び始めた。
リアは嬉しそうにネコジャラシを掴んだりボールを追いかけたり、
仕舞いには喉を撫でられゴロゴロ鳴らし完全にネコになっていた。

「ハァ!、ハァ!。わっ、私萌え死ぬかも……」
「まだ早いですよフェイトさん!」

リアが本能の行くままにおもちゃにじゃれついている様子は刺激が強く、
上気した顔でにゃあにゃあ鳴けば、まさに出血大サービスで血の池が出来そうだった。

「わっ、私もう我慢できない!、かわいすぎるよリアァ!」

耐え切れなくなったフェイトは我慢できなくなりリアを抱きしめた。

「あ〜っ、ずる〜い!」

シャーリーも負けずにリアに抱きつく。
二人の胸中で、もみくちゃにされ嫌がるリアも気にも留めず、二人は欲に飲まれていった。

「……〜う〜…なぁ〜う〜〜」

しばらくし、今まで暴れていたリアが段々と大人しくなってゆき鳴き声も変わってきた。
何事かと見てみれば上気した顔をさらに上気させ、モゾモゾと足を動かしている。

「きゃっ!」

そしてフェイトの胸元に顔を埋めペロペロと舐め、口で器用にボタンを外してゆく。

「なっ、なに!?」
「なぁ〜う〜、なぁ〜う〜」

完全にマウントポジションを取り、奇妙な鳴き声で鳴き、その潤んだ瞳はエモノを見つけた獣のようだった。

「しゃっ、シャ〜リ〜」
「あはっ、リアさんの逆襲ですねぁ」

彼女達はリアが"あの日"であることを完全に忘れていた。
あの日の症状にはいろいろなものがあるが、その中に性欲が強くなるというものがある。
風邪で意識が朦朧とし、理性では押さえ込めず。
おまけに過多になった魔力も上乗せされ、さしずめ発情モードに入ったことだろう。
「"はぁい、2人とも楽しんでる?"」

そこにグットタイミングと言いたいほどにクレロスから通信が入った。

「"あらっ、やっぱりそうなっちゃったのね"」
「義姉さん、助けてください!。あはうっ!」

その間にもリアはフェイトの首筋をペロペロと舐め、それが段々と下に向かってきている。

「"助けてくださいって言われても遠いし、行っても逆にやられちゃうし。
大丈夫よ、ちょっと過激なスキンシップ程度だから。過多になった魔力を発散させれば落ち着くわ。
そんじゃ楽しんでね〜"」

無常にも通信は切れフェイトは声にならない悲鳴を上げる。

「シャーリー。助けて〜〜」
「ふっ、夫婦の営みを邪魔しちゃ悪いですから、わっ、私はこれで〜」
「そんなぁ!!」

シャーリーは逃げようとするがそうは問屋がおろさない。
グイッと腕が引張られ見てみるとリアのシッポが絡み付き、妖艶に誘うリアの姿が。

「やっぱりですかあぁぁぁ!!」

力任せに引張られベッドの中へ。
その後、2人は過激すぎるほどのスキンシップをリアから受けた。
そして、同時に夜の永さがこんなにも恨めしいものかと思ったという。


翌日

「………ふぁ〜っ」

眠気眼を摩りながら、ベッドから起きる。
昨日は相当汗をかいたらしく、おかげで体調は良くなったが体中がベトベトでシャワーを浴びに浴室へ。
お湯を浴び、リアの姿からアルトの姿へ。

「ふ〜っ、さっぱりさっぱり。う〜んでも何か気だるい。あの日で風邪だったからかもしれないけど。
そのほかに何かあったような……う〜ん、思い出せん」

服を着替え、疑問を引きずったまま寝室に入ると

「ぎゃぁぁぁあああ!!!」

突然の悲鳴。
当然である、アルトの目の前にあるベッドには、半裸のフェイトとシャーリーが気持ちよさそうに眠っていた。

「フェイトはいいとして、なっ、何でシャーリーがここに!?」
「ううっ……」
「うっ」

先ほどのアルトの悲鳴のせいか2人が目を覚ました。

「あっ、アルト……」
「おっ、おはよう」
「おはよう……」
「おはようございます……」

意味深に頬を赤くし目を逸らす2人。
非常に空気が重い。

「昨日何かあった?」
「なっ、なんにもないよ。何にも。私達はただ眠っていただけ」
「そっ、そうです」
「そっ、そうだよな。アハハハハ」
「アハハハ」

空気が和みはじめたその途端

「でも……何かがあっても私……アルトさんだったらいいです……」

再び頬を赤くして目を逸らすシャーリー。

「なっ、なっ……何があったんですかぁぁぁあああ!!!!」

朝一番に絶好が響く。
その後、真実が語られるしばらくの間、アルトはシャーリーの意味深な言葉に悩まされたという。







あとがき

はい、しょうもない電波をまた中途半端に受信してしまった結果がこれです。
ただそれだけのこと、それ以上でもそれ以下でもない。





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