警告:本SSというか小話は欝要素を含む恐れがあります。










―マイ フェア レディ―











「おとーさん、おとーさん〜」
「……どうしたの、菜乃?」
「えへへー、これっ!」
 そういって娘が差し出したのは、小さな一輪の野草だった。
 黄色い花を咲かせた、地味で……だけど、力強く咲いている花。
 父親は娘の大好きな笑顔を浮かべて、その小さなあたまをかいぐりかいぐりしてやった。
「綺麗な花だね、菜乃。どこで見つけたの?」
「うん、あそこでね、あそこでね、咲いてたの!」
「そう……」
「ねね、おとーさん、この花、なんていうの?」
「これ?これかい……?」


「菜の花、って言うんだよ。……菜乃と、同じ名前だね」



 次元世界の果ての果てに立つ、小さな家。
 そこに住む小さな親子の、小さな幸せ。


 けど、それは長くは持たなかった。


「……ユーノ君。あんたに、逮捕状が出とる。……理由は、分かるな?」
「………………」
「三日。三日、猶予をあげる。……それまでに、別れ、すませぃ?」
「………有難う、はやて」
「………犯罪者の礼なんていらへん」

「? おとーさん、おとーさん。あのお姉さん、だれ?」
「ああ……。お父さんの、昔の友人だった人、だよ」
「そうなのー?」
「うん。……今は、違うけど」


「…………スクライア」
「……ユーノ、とはもう呼んでくれないんだね」
「……っ!どの口がそんな事を……抜け抜けとっ!!!」
「……………」
「私は貴方を許さない……。それに、あの子供も……」
「やめろっ!!!」
「………」
「頼むから……。頼むからあの子だけには……手を出さないでくれ……。頼む、お願いだ……フェ
イト……」
「その名前で……私を軽々しく呼ばないでっ!!」



「おとーさんおとーさん、どうしたの?さいきんおかしいよ?」
「……そんな事ないよ。ほら、食べよう。菜乃の大好きな、蜂蜜のかかったホットケーキだよ」
「わぁっ!おとーさんだいすきー!」
「わっ!こ、こら、フォークをもったまま抱きつかないのっ」
「えへへー」



「おとーさんをいじめるなーーっ!!」
「菜乃…………」
「……。よく、こんなに手懐けたものですね」
「………っ」
「フェイトちゃん、やめぃ」
「やめません。……この際だから、良い事を教えてあげましょう、菜乃ちゃん」
「っ!やめろ………やめてくれっ!頼むから……」
「……おとーさん?」
「菜乃ちゃん、貴女はね……お父さんの本当の娘じゃありません」
「やめろっ!!」
「え………」
「フェイトちゃん、よしぃっ!」



「ぐすっ……ぐす、ぐすっ……おとーさん、おとーさん………」
『………ter』
「………?誰……?」
『………y master』
「?……おとーさんが大事にしてた、宝石箱……?」



「こ、こちら第七保安部隊っ!な、何者かの襲撃を受け……うわぁあああっ!?」
「そ、そんな、あの魔力光は……?!」
「………帰して」
『Buster Mode』
「………おとーさんを、今すぐ帰してぇえええっ!!!」


「おとーさんを取り返すの!おとーさんを取り戻したら、おとーさんが作ったお弁当を持って、お
とーさんと手をつないで、おとーさんといつもいってた丘にピクニックにいくの!だから……だか
ら私のじゃまをしないでぇぇえええっ!」
「…………」
「………やりづれえよ………なぁ」
「………ああ」
「じゃまを……しないでぇーーーーっ!!」


「シグナム!ヴィータ!なんで……なんで通したんっ!!?」
『……すいません。しかし……』
「しかしも何もあらへん!あっちには……あっちにはスバルがおるんよっ!!!」
『………なんですってっ!?』
「……っ」
「あ、フェイトちゃん、どこに、どこに行く気やっ!!?」


「………あれ、おねーちゃんは……」
「………許さない」
「……おねー、ちゃん?」
「……許さない、許さない許さない許さない。消してやる、消してやる消してやる……っ!あの人
の人形なんて、あの人の真似事なんて……認めない、貴女なんか……貴女なんかぁああっ!!」



「スバル、やめなさいっ!!!」
「止めないでください、フェイトさんっ!こいつは、こいつだけはっ!!」
「………ぅ……げ、げほっ……ごほっ……」
「殺してやる……殺してやる、今ここでっ!!!」
「やめなさいっ!!」
「やめろっ!!!」
「…………!」
「………おとーさん………?けが、してる……?だいじょーぶ……?」
「ああ……大丈夫だよ……。ごめんね、菜乃……。こんなに、こんなにキズだらけになって……御
免ね、菜乃……。駄目なお父さんだよね……?許してね、菜乃……」
「ちがうよぉ……だーいすき、おとーさんだいすきだもん………。なのの、せかいでいちばんかっ
こうよくてすてきなおとーさんだもん……」
「菜乃……」
「はっ!そう、よくもぬけぬけと……!」
「………」
「あの人の真似事なんかして……お人形ごっこは楽しかったですか?でも、それももう終わりなん
ですよ……。……消してやる、今ここで全部っ」
「スバル、やめなさい……やめてぇぇぇええっ!」
「あの人の技で……最後はぁっ!!」
「………………」
「消えろぉぉおぉおおっ!!」







「………遅かった、のか」
「兄さん……?」
「…………全部、全部勘違いだったんだ……僕達の……」
「勘、違い?」





「……………なん、で?」
「……………」
「なんで……なんで人形なんかの為に……」
「……人形じゃ、ない」
「………え」
「おとーさん?く、くすぐったいよ……?」
「例えどんな形で生まれたのだとしても……菜乃、お前は僕の娘だ……。彼女と僕の、大事な、だ
いじ、な……愛しいむ、すめ……」
「おとーさん……?ね、ねえ、いいよ……頭撫でるのなんて、後でいいからぁ……」
「………あいし、てるよ………なの……。ごめ……んね、さきに、おかあ……さんのところに、い
ってくるよ……。さいごまで……だめな……おとーさん、だった……ね………」
「…………おとーさん?ね、ねえ、おとーさん。そんな濡れたまま寝ちゃうと、かぜ引くよ?」
「……………」
「おとーさん?ねえ、おとーさんってば……」
「……ぁ………ぁぁあ……私は……私は…………」
「……おとーさん、おとーさん……ねぇ、おきてよぉ……ねえ、いっしょにいくって約束したよね
?あの丘にいこうって約束したよね?約束やぶったらおかあさんみたいになれないって、いったの
おとーさんだよね?ねえ、起きて、起きてよおとーさん………」





「……菜乃・T・スクライアは……クローンなんかじゃなかった」
「………え?」
「……彼女は、なのはが前にユーノとの間に体外受精で設けた……本当の子供だったんだ。その受
精卵をアイツは冷凍保存して……クローン技術を応用して誕生させたんだ」
「……う、嘘だ!それなら、それならなんで……」
「………どんな理由があれ、クローン技術は犯罪だ……。アイツはかつて司法を守る立場だったも
のとして、それに応じただけなんだろう……。アイツは、菜乃を本当に……名実共に娘だと思って
たんだ」
「じゃ、じゃあ……私達の……私のした事って……そんな、そんなっ」
「…………最後まで……馬鹿なんだよ………あのフェレットもどき……。馬鹿野郎が………」














「お父さん、菜乃、今日で十三歳になるんだよ。今ね、士郎おじいちゃんと桃子おばあちゃんが、
家でケーキ焼いてくれてるの。今日ばかりは、おじちゃんもおばちゃんも帰ってくるんだって。
雫お姉ちゃんにも会えるんだよ?それとね、それとね。私、管理局に入る事にしたの。魔力がたく
さんあるんだって、私。お父さんに似なくてよかったな、ってクロノさんは言うんだけど、酷いよ
ね。それとね……明日学校を卒業したら、本格的にあっちの学校に入るんだ。それで、しばらくこ
れなくなるかも知れないの。………だから、しばらくお別れ」










「お父さん、菜乃は……元気でやっているよ。お母さんと一緒に、見守っててください」










〜fain〜



































































・ぶち壊しエンディング











「ただいまー」
「たっだいまー」
「あ、お母さんお父さん。今回は早かったねー」
「そーぉ?いつもと同じぐらいだと思うんだけど」
「まあ、クラナガンには何度もいってるからね。あ、ひょっとしてメール打ってたの?」
「うん。もー、お母さんもお父さんも、何年もあえなかったからってちょっとハメ外しすぎだよ
ぉ。私、また数ヶ月一人で学校に行くのかと思っちゃったよぉ」
「あぅごめん」
「うぅ、ごめん」
「もぉ。まあでも、何年も会えなかった分、一緒に楽しい思い出を作りたいってのはわかるよ。…
…けどさ、これで何回目だっけ、婚後旅行」
「………34回目です」
「普通それだけいったら十分だと思うんだけどなぁ……」
「えぇー。私はまだいきたりないよぉ。だって、十年も会えなかったんだよー?私に、その間の覚
えはないんだけど……。気がついたら十年も老け込んでたなんて、菜乃に分かる?ショックだよ、
あれはー。ねえユーノ君」
「あ、あはははははは……そ、そうだね」
「もぅ、お父さんってお母さんには甘いんだからっ!!」



















〜言い訳〜


SIS:「毒電波が……毒電波が私に書かせたんですっ!私は、私は何も悪くないんですっ」
スバル:「犯罪者は皆そういうんです」






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