魔法少女リリカルなのはStrikerS 

『翠の伏龍と蒼の賢者』

第一話 司書長と司書長補佐







無限書庫と呼ばれる場所がある。



時空管理局本局の広い敷地内の端にある一施設。

管理局の管理下にある世界の書籍や情報の全てが収められている超巨大データベースであり、部署として認められる以前はその余りの物量故に目当ての情報を手に入れるのにチームを編成、さらに年単位での調査が必要とされていた場所だ。



それが比喩表現でも誇張表現でもない事はこの部署に直接的な関わりを持った人間は皆、よく知っている。



その無限という言葉の通り、書籍や情報は日々更新されていき未整理の領域が増えていくのだから。



そんな場所を司書たちは検索魔法、読書魔法を駆使し際限なく増えていく情報を整理していく。

司書長やそれに続いた者たちの努力により今では随分とマシになっているが彼らの戦いが終息を迎える兆しはない。

まぁ情報の方がどんどん増えているのだから当然なのだが。



部署として確立してから数年経った現在、無限書庫勤務は管理局に所属する人間からは恐怖の対象とさえ言われるようになっている。





検索、読書という二種類の魔法を主に用いる無限書庫での勤務は言葉にすると実に単純だ。



各所からの依頼を受け、検索魔法により目ぼしい書籍、情報を捜し出す。

さらに読書魔法(速読とも言える)で検索をかけた内容を確認。

必要な情報のみを収集し、時には書籍を貸し出し、時には情報をレポートとしてまとめて提出する。



たったそれだけの事と思うなかれ。



この二つの魔法。

行っている事は単純であり、さほどの魔力も必要としない。

だが両方を同時に使用するとなれば話は別だ。



並列思考(マルチタスク)は魔導師にとって基本である。

同時に二つの魔法を行使する事もそう珍しい事ではない。



だが必要な書物を探すための検索と、検索に引っかかった情報に目を通す為の読書を同時に行うのは脳へ相当の負担がかかる。

しかもそれを複数の情報に対して行う事が求められるのだ。



平均的な実力の武装局員でせいぜい二冊程度。

腕の立つ、総合戦闘ランクに換算してA以上の局員にしても四冊から五冊で精一杯だろう。



そもそも必要とされる技能が武装局員とは異なる分野なのだからそれも当然だ。



無限書庫が正常稼動を始めて数年。

時折、司書長と個人的親交のあるAAAランクやSランク以上の人間が手伝いに来る事があるのだが。

実力で言えば明らかに格上であるにも関わらずその効率は司書らと互角程度。

古参の司書と比べると劣ってしまう程度が限界なのだ(一部例外もいるが)。



その上、各部署からの仕事の依頼も引っ切り無しに来るため定時に終わる事など奇跡に等しい。

管理局内に留まらず、民間から資料の請求依頼が来る事もあるので尚更休む時間などない。

大量の依頼が舞い込んできた日など司書総出で徹夜をする事もある。

四日、五日の徹夜などまだマシな方だとすら古参の司書は語るのだ。



ちなみに最高記録は司書長の十日間、完全徹夜である。

さすがに力尽きてしまい、その後は強制入院となってしまったのだが。



力を向ける方向性が違いすぎる事が故に、そしてなにより勤務時間が洒落にならない事から、例え永続的なモノでなくても勤務する事を恐れられる部署。

それが無限書庫と呼ばれる場所である。



そんな別名『地獄部署』とさえ呼ばれている場所だが司書を志す者は意外に多く、また辞めようとする人間も驚くほど少ない。



何故か?

それはひとえに司書長『ユーノ・スクライア』の存在があるからである。



ただの物置と化していた無限書庫をおよそ十年前に利用し、その類稀な能力を遺憾なく発揮して書庫の整理を始めた当時、十歳前後の少年。

数十の情報を並列で検索し、それらをさらに並列で読書、レポートとして的確にまとめるという魔法を知る者からすれば唖然とするような事を平然と行う純朴な少年。



その後の功績を認められ、管理局史上初の司書長の座に就いた彼は実に温和な人柄をした人物だった。

下に付いた司書たちに対して、厳しい業務環境にありながらも決して残業を強制しないその姿勢。

自ら率先して業務を引き受け、彼らの負担を減らそうとする献身的な態度。

まだ十を越える頃の少年でありながらも、時として大人相手にすら退かぬ一本芯の通ったその心根。



配属された当初は彼の事を幼いという理由から見下していた者たちですら一ヶ月もすれば態度を改めていく。



そうさせるだけの魅力と実力が彼にはあった。



だからこそ無限書庫という場所に配属された者たちは司書長を中心としてまとまっており、『あの危なっかしくも頼もしい上司の元でなら』と厳しい業務体制にも耐えていけるのだ。



閑話休題



そんな彼、ユーノを訊ねてくる人間は多い。

仕事の依頼者は勿論の事、管理局内でそれなりの地位にいる者たちや聖王教会の関係者、彼が学会に出ている関係から親しい考古学者など多種多様な職業の人間が彼の元を訪れる。



ある者は彼の知識を求めて。

またある者は彼の持つ権力という名の『力』を求めて。



無限書庫司書長という立場が持つ権限は提督と同等。

それ故に打算を持って彼に近づこうとする者も少なくない。

あわよくば無限書庫の恩恵を独占しようと企む不届きな輩もいるのだ。



そう言う邪まな想いで彼に近づく者は悉く粉砕されているのだが。



彼は幼くも大人の世界にて過ごしている者。

頼りない外見とは裏腹の確かな智を持って自分を巡る策謀を時に跳ね除け、時にいなし、時に粉砕してきたのだ。

そしてその傍らには、彼が最も頼りにする男性の姿がある。





ここではそんな彼らの日常と物語の始まりを語るとしよう。





「おはようございます」



ただひらすらに広いその場所、無限書庫に青年の声が響き渡る。

年の頃、十代後半と言ったところか。

長身に対して少し余裕を持たせたシャツにスラックス。

中性的で優しげな顔立ちに眼鏡がよく似合っていた。

ハニーブロンドの髪をリボンで束ねたその姿が男性であると分かっているのに妙に違和感がない。



「司書長、おはようございます!」

「おはようございます! 司書長ッ!!」



彼の言葉に笑顔で応える司書たち。



「今日も一日、頑張りましょう」



そう彼こそが若くしてこの無限書庫を束ねる立場にある者。

無限書庫司書長『ユーノ・スクライア』その人である。



『ハイッ!!!』



書庫中から上がる気合の入った反応に微笑みながら彼は司書長室に向かう。

スケジュールの確認と、新しい依頼が来ていないかを見る為だ。



『どのような依頼を受けるか』、『依頼の優先順位をどう定めるか』を決定するのは司書長の役割である。

彼か、彼が不在の時は代理権限を持つ者が指示を出さなければ司書たちは新しい作業を始める事が出来ない。



重要な情報が無防備とも言える状態で野ざらしになっている無限書庫に置いて、情報の流出はあってはならない事態だ。

故にその辺りについては厳しい管理がなされ、手順もしっかりと定められている。



たとえ元帥や中将クラスの人間であっても正式な手順を踏まなくては情報の閲覧すらままならないのだ。



この書庫を私的に利用できる者は司書長のみ。

それも管理局からその人物の性格、能力等を認可されなければならないのだ。



ユーノ・スクライアは提督クラスの人物たちから推薦を受け、上層部の掲示した課題を見事にクリアした結果、私的な運用を許されたのだ。



勿論、私的利用に関しても本局の審査が入り、定期的な監査も行われている。

だがそれでもこの超巨大データベースを利用できる恩恵は凄まじい。



彼の考古学者としての実力は、無限書庫と彼の能力とか合わさった結果と言っても過言ではないのだから。



だからこそ彼と無限書庫を手中に収めようとする人間は後を絶たないのだが。





「ああ、司書長。おはようございます」

「おはようございます。オウハ司書長補佐」



司書長室には先客がいた。

正面にある大きめのデスクに書類を並べていた彼はユーノの姿を視界に入れると無駄のない動きで敬礼をする。



年は三十代前半。

目測ですら容易に二メートルを越えているだろう事がわかる身長。

男性らしい力強さを感じさせる体つきに局の制服がよく似合っている。

青みがかった黒髪を適当に撫で付けて整えられた髪型。

落ち着きのある顔立ちはしかし美形とは言い難く、無骨と呼ばれる部類に入るだろう。



ユーノと対比させると同じ性別でありながら何故こうも違うのだろうと疑問を抱かずにはいられない。

そんな男性だ。





何故か右目を閉じたままの彼、『シチセイ・オウハ』は手に持っていた書類をユーノに差し出した。



「これは?」

「例の『提督』からの依頼です」



ユーノの端整な顔が提督という単語によって引き攣る。



「ま、まさかまた……? 前の依頼から二週間しか経ってないのに……!?」

「ええ。どうもこの所、海の方が騒がしいようですね。前の同僚が酒の席でぼやいていました。恐らくその関係でしょう」



悲鳴のようなユーノの言葉に肩を落として頷くシチセイ。





クロノ・ハラオウン提督。

ユーノにとっては十年前からの付き合いの幼馴染であり、仕事仲間であり、親友(本人たちは全力で否定するが)である。

現在はXV級新造艦クラウディアの艦長として次元世界を行き来する海での仕事に従事している努力と実力によって伸し上がった秀才。



だが無限書庫においてその名前は忌むべき名でしかない。

その名前が話題に挙がれば司書たちは発狂するとも、泣き崩れるとも、逃亡するとも言われている。



それは何故か。

毎度毎度、ありえない量でありえない期日の資料請求を行うからだ。

その上、その請求を行う時間も選ばない為、業務終了寸前の気の緩む瞬間に徹夜確定になってしまった事もある。



そのお蔭で階級だとかそういう物を無視して司書たちからは恨まれているのだ。

とはいえ請求を突っぱねるわけにもいかないので司書一同、一日のうちにその名前の請求が来ない事を祈るばかり、という状態なのである。



彼の名前に際立った反応をしないのはユーノ、シチセイを除けば本当に限られた人間だけである。





「それにしたって……ああ、またこんな期限で送ってきて……これじゃ調べる時間がほとんどないじゃないかッ!?」

「依頼手続きをする時間すら惜しかったとおっしゃっていましたね。本当に急を要するそうです。なんでも危険度の高いロストロギアを大量に保有した組織と事を構える事になったと……」



書面を読み進め、シチセイの言葉に耳を傾けながらユーノは自らの顔を引き締めていく。

あの悪友がかなり重大な事態に直面している事がわかったからだ。



「ふぅ。本当にクロノのヤツは……緊急ならもっと事前に言ってほしいって何度言わせれば……」



思わずため息を漏らしながら愚痴をこぼす。

だがその表情は既に年相応の青年から無限書庫司書長のモノに変わっていた。



「それでは私は行きます。その件について捜索チームを組んで当たらせなければなりませんから」



まだユーノの指示は出ていないというのにクロノの依頼について調査を開始しようとするシチセイ。

一歩間違えれば、越権行為に当たるこの行動をしかしユーノは咎める事無く頷いて見せた。



「はい、お願いします。この世界と組織の情報ならC‐10区画とその周辺にありますから……」

「了解です。古参のメンバーから四、五人選抜して当たらせましょう。それでは先に行ってお待ちしています」



正に阿吽の呼吸。

お互いに相手が何をしてくれるか、どういう考えを持っているかを理解しているが故の先読み。

余計な言葉はいらない、高密度な勤務の中で培われた信頼がそこに見えた。



シチセイは流れるような動きで敬礼を行うと司書長室を後にする。

ユーノは彼が去っていく姿を見届ける事無く執務机に向かった。



大きめの執務机には既に分類別に分けられた書類がある。

彼が整理したのだろう。

期日が近い物、急を要する物などが彼の裁量によって判断されて並んでいる。



ユーノは読書魔法を使用し、複数の書面を同時に読み進め、サインが必要な物を引き寄せる。

瞬きの間に己の名が記された書類を横にのけて次の書類を読み込んで行く。



「それにしても……」



真剣な表情で書類を捌いていく彼の口元に小さな笑みが浮かぶ。



「先に行ってお待ちしていますって……シチセイさんには本当に敵わないなぁ」



先の言葉は『ユーノがこの依頼の調査を手伝おうとしている事』を完全に察した上の物だ。





シチセイ・オウハという男性が無限書庫に配属されてからかれこれ三年になる。

次元航行部隊、通称『海』と地上部隊、通称『陸』の部隊を幾つも渡り歩いた結果、この無限書庫に行き着いた奇妙な経歴を持った人。

私服が許されたこの部署においても制服を脱ぐ事はなく一見すると堅物で冷徹な印象を与える。

だがその様々な経験から来る的確な読みと冷静な観察眼はこの書庫にいる人間にはなかなか生まれない技能でありとても頼りになるのだ。



そしてその堅物だと思わせる態度がただ公私を切り離して考えているだけなのだと言う事も知った。



あの変貌振りにはユーノも司書たちも揃って目を丸くしたものだ。

スイッチが切り替わったとでも言えば良いのか。

目の当たりにした時は司書一同、二重人格では? と危惧したくらいだ。



そして彼は勤務中の態度こそ冷徹ではあるが、その行動はどこまでも真摯だ。



新米司書への配慮やないがしろにしがちなユーノ自身の休日の確保。

そして非人道的な発言をする他部署の人間や圧力をかけて依頼を強要してくる人物への対処など。

彼という存在はもはやこの場所にとってなくてはならないものになっているのだ。



ユーノ自身にとっても勤務時間外の彼は兄のような存在であり、またとある事柄の関係で『師匠』でもある。



「さぁ皆、頑張ってるんだ。僕も頑張ろう……」



そんな冷静で頼もしく、親しみが持てる自分の補佐の顔を思い浮かべながらユーノは自らを鼓舞して書類を捌いていった。





この後、シチセイが結成したチームにユーノが合流する事でクロノからの依頼は期日前に無事、完遂された。



的確にまとめられたレポートにより、クロノの部隊はロストロギアへの対処を万全にして臨み、敵対組織を制圧。

被害も武装局員の怪我人が僅かという文句なしの結果を叩き出した。



だが一般人は元より管理局内の人間のほとんどは意識していない。

彼らが出した結果の裏には無限書庫という強大なバックアップの存在があった事を。



被害を出さない為に情報と戦う者たちがいるという事を。









この出来事の二ヵ月後、物語は動き出す。



新暦0075年2月。



「新しい部署の発足?」

「ええ」



珍しく定時に仕事が終わった無限書庫。

司書たちが幸せそうな表情で帰っていく姿を見送ったユーノとシチセイは司書長室で話をしていた。



「正式名称は『古代遺失物管理部 機動六課』と言って一ヵ月後に試験的に発足される部署なんです」

「ほう。あのロストロギア関連専門の課に新部署か。とうとう六つ目とはずいぶん数が増えたもんだ。俺が入局した頃はまだ二課までしかなかったんだが……。それで? そこがどうかしたのか? ユーノ」



勤務時間を終えている為、シチセイは立場的には上の人間であるユーノに対して随分と砕けた調子で話している。

いくら勤務外の時間とはいえ、提督と同等の地位の人間に対してこのような態度を取るなど真っ当な局員が目にしたら卒倒しそうな状況である。



「……その部隊に僕が誘われているんです」

「へぇ? 無限書庫の司書長の引き抜きか。なかなか大それた事をするな、その部隊の連中……」

「ああ、えっと……そこの部隊の責任者が僕の幼馴染なんです。前に話しましたよね? はやてやなのは、フェイト達の事」



嬉しいけれど困ると言う複雑な笑みを浮かべながら頬を掻くユーノ。



「ああ、なるほど……(だから『ユーノ』を引き抜きにかかったわけか。恋する乙女ってヤツはすごいもんだな)」



思い浮かぶのは見目麗しい女性達。

それぞれでタイプが異なるが美人である彼女達はなにかに理由を付けてはユーノに会うために無限書庫を訪れる。



彼自身は彼らのやり取りを遠巻きでしか見ていないので会合の詳細までは知らないが。

それでもすれ違う彼女らが彼にどのような感情を抱いているかはわかっているつもりだ。



「(アレに下手に関わったら馬に蹴られる……)」



その現場を思い出してため息を一つつく。

あれほどわかりやすく想われているにも関わらず、誰一人とも進展しない目の前の『弟分』を思って。



「この鈍感……」

「えっ? すみません、よく聞こえなかったんですけど……」

「気にするな。それで、その部隊の引き抜きでどうして俺に話を持ってくる?」



脱線しかけていた話をむりやり引き戻す。

納得いかない顔をしているがそれでもユーノは話を戻した。



「実際問題として僕がここを離れるのは無理です。はやてたちの誘いは……嬉しいんですけど」

「まぁお前は行きたいだろうが、上が許可しないだろうな」



ユーノ・スクライアと言う人物はそれだけ管理局内で重宝されている。

現在の本局で最も重要な人物といっても過言ではないのだ。



その人物が一時的とはいえ他部署の専属になるという。

無限書庫の効率は確実に落ちるだろうし、仮に実現してしまえば局内に無駄な軋轢をもたらす事にもなりかねない。



「そう。そういう理由から僕が六課に直接、関わる事は……少なくとも今は出来ないんです」



悔しげに俯くユーノ。

自分で言った言葉に本心が逆らっている事が目に見えてわかる。



「つまり……お前の代わりに六課に行って欲しい。そういう事でいいのか?」

「……はい。僕は行きたいけれど、でも行けないから。だから僕が一番、信頼する貴方にお願いしたいんです」



お願いしますと言ってユーノは深く頭を下げる。

頭を下げられたシチセイはと言うと彼の提案を慎重に吟味していた。



「(まぁユーノが出向するというよりは遥かに現実味のある案だな。実際に俺がこの部署で出来る事の大半は他の司書たちにも出来るようにはしてあるし。……試験的って事はそんなに長い時間でもないんだろうな。半年、長くても一、二年程度って所か。それくらいならば俺がいなくて無限書庫の運営に支障はないはずだ。それに……)」



これは司書長としてではなく彼女達の幼馴染としての頼みだ。

『ユーノ・スクライア』から『シチセイ・オウハ』への打算も何もないただの頼み。

彼女らの力になってほしいという彼の願い。



それを無碍に断る理由など。



「(俺には無いな)」



シチセイは軽く頭を掻くとユーノの肩に手を置く。



「勤務外時間でそんな畏まった態度をする必要はねぇよ」



優しい声音にユーノは顔を上げる。

そこには彼が兄と慕っている男の笑顔があった。



「正式な辞令は明日にでもくれるか? ああ、その前に幼馴染さんたちにきっちり話をつけておけ(たぶん残念がるだろうが)」

「あ、はい! ありがとうございます!!」



また深々と頭を下げるユーノに苦笑しながらシチセイはふと思いついた事を口にした。



「ああ、そうだ。これだけは言っておくぞ、ユーノ」

「えっ?」



軽い調子ながらも真剣な様子の彼にユーノは疑問符を浮かべながらも姿勢を正す。



「俺はお前の代わりにはなれない。彼女達にとってお前は代わりの利く存在じゃないんだ。それだけはしっかり自覚しとけ。(じゃないとあの子達が不憫すぎる……)」



言葉の意味がわからず首を傾げているユーノにため息をつきながら、シチセイは一ヵ月後に自分が配属されるという部署に思いを馳せた。



「(嫌な予感がビシバシするんだが……)」



その予感がものの見事に的中する事を彼はまだ知らない。







あとがき

第一話の投稿になります。

作者の紅(あか)です。



今回はユーノとオリキャラの絡みをメインに物語が始まるところまでのお話とさせていただきました。

いかがだったでしょうか?

エースオブエースたちが出てきていませんがそれは次の話からという事でよろしくお願いします。

次回はいよいよ本編の流れになります。

オリキャラの介入によって本編にどのような変化が現れるのか。

そして六課への出向を立場的に諦めざるをえなかったユーノはどのように物語に絡むのか。

その辺りに注目していただけると嬉しいです。

それではまた次の機会にお会いしましょう。





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