魔法少女リリカルなのはStrikerS 

『翠の伏龍と蒼の賢者』

第七話 戦闘部隊とファーストアラート





無限書庫 司書長室



書類や本棚を除けば非常に質素なその部屋でユーノは彼からの報告書に目を通していた。





定期報告

『無限書庫司書長』ユーノ・スクライア殿



古代遺失物管理部 『機動六課』発足から二週間。

部隊発足に伴った書類整理や各部署との意思疎通の確認など概ねの事務処理を終え、部隊としてはようやくスタート地点に立ったという所。



『八神はやて』部隊長以下、後方支援部隊ロングアーチ及びバックヤードスタッフは日々の事務処理、情報収集に余念がなく若い年代で取り揃えられているとはいえ部隊としての能力は高い模様。

いまだ成長する余地がある事から今後はさらなる躍進が期待できる。



戦闘部隊『スターズ』及び『ライトニング』に関しては配属された新人の教育、育成に従事。

スターズ分隊隊長『高町なのは』教導官の指導の元、訓練に勤しんでいる模様。

ライトニング分隊隊長『フェイト・T・ハラオウン』執務官は八神部隊長と共に外回り及び執務官としての業務を重視しており、訓練への積極的な関与は今の所は見られず。

尚、ライトニング分隊隊長、副隊長及び自分はこの一ヶ月の間に『ガジェット・ドローンの不審行動の調査』としてミッドチルダ郊外に一度、出動。

この件に関しては疑問点が多く残っており、現在も調査が続行されている。

詳細は送付された資料を参考願えます。



部隊全体としては少々、慌しく落ち着きがない印象が強い。

こういった部隊運営に慣れていない者たちの集まりである事による経験の無さが原因と考えられる。

今後の成長に期待。





以上を持って定期報告を終了とする。



『無限書庫司書長補佐』兼『機動六課戦闘部隊補佐』シチセイ・オウハ





読み終えた書類をそっとデスクの中へ仕舞うと彼は安堵のため息をついた。



「とりあえず順調そう、かな?」



椅子の背もたれに深く寄りかかりながら呟く。

報告は当たり障りのない内容で、特に大きな問題は発生していない。



ユーノ自身の戦闘行動についても六課の人間に感づかれているという事はないようだ。

少々、度が過ぎるほどに細かく記された『出動内容』の資料が自分の行動がある程度『シチセイにばれている事』を物語っていたが。



「どうやって気付いたんだろ? 魔力残滓は残さなかったと思うけど……」



ユーノとしては『先日の戦闘の件』では彼にも余計な心配はかけたくなかったのだが。

やはり物事が流動的に動いている以上、何から何まで上手くはいかないようだ。

きっちりとした文面からは「あまり心配をかけるな」という彼の気遣いが見え隠れしていた。



「(あれから大体、二週間が経つけど……僕個人を狙った襲撃は今のところは無い。一度、退けたくらいで諦めるはずがないから、機会を窺っていると思っておいた方がいいな)」



ドゥーエ、トーレという謎の女性二人に襲われたあの日以降。

ユーノの周囲は不自然なほど、静けさを保っていた。

遺跡調査に出向いた際のガジェットによる襲撃もなく、彼女らのような人間が襲ってくるわけでもない。

上層部からなんらかの圧力がかかってくる事も想定していたのだが未だそういう動きもない。



「(ガジェットの目撃情報は途切れていない。でもこの一ヶ月間は……若干ではあるけれど出現頻度が下がっている。確信はないけど、もしかしたら相手は何らかの準備をしているのかもしれない)」



ガジェット・ドローンは機械兵器だ。

その製造には当然のように資金が必要であり、相応の時間も必要になるだろう。



「(ガジェットの製造。今後の行動の計画。前の戦闘で警戒されているのなら僕に対する対策を練っている可能性もある、かな?)」



そこまで思考した所で控えめなノックの音が彼の耳に届いた。



「はい。どうぞ」



並列思考を切り離した彼は、今日の業務として取り纏めていた資料に目を通す事に集中する。



「失礼します」



軽やかな響きが簡素な司書長室に響き渡る。

入ってきたのはユーノほどではないがやや長身の女性だった。

ストレートの黒髪は肩よりも下に伸ばされ、切れ長の瞳をした恐らく万人が認める美人。

局の制服をキッチリと着こなしたその女性の雰囲気は、今はいない誰かに通じる物がある。



「おはようございます。スクライア司書長」



キビキビとしたその女性は入室すると挨拶と共に深々と頭を下げる。

その仕草の一つ一つがユーノに彼の業務時の姿を連想させてしまい、ついつい苦笑してしまう。



「? どうかされましたか?」



前触れも無く口元を緩ませるユーノを、訝しげに見つめる女性。

ユーノは慌てて首を横に振ると、同時に先ほどまで思考して来た情報を全て意識の片隅に保存する。



「いいえ、なんでもありません。それじゃ今日も一日、頑張りましょう。スペシアさん」

「はい」



最近になって配属された司書長付きの秘書官『スペシア・テラー』を促し、ユーノは自分の戦場へと向かった。







機動六課隊員オフィス



「やはり妙ですね。今までの行動パターンを逸脱している」

「お前もそう思うか」



自身のデスクで端末を操作しながら肩越しにそのデータに目を通しているシグナムに言葉を投げる。

顎に手を当てて頷く彼女は、眉間に皺を寄せながら低い唸り声を上げた。



「二週間、収集してきた情報と照らし合わせてみてもやはり疑問は解消しません。むしろ……」

「深まるばかり、か。結論を急ぐつもりはないが……引っかかるな」

「同感です。検証をすればするほどに二週間前のガジェットの件は異質だと言う事の証明にしかなりません。一番の疑問は『なぜガジェットは今までにない行動を起こしたのか』という所ですが」



端末が映し出す何枚かの映像が切り替わり、当時の現場の状況が映し出される。

何かに貫かれたように地面を転がるガジェットの残骸。

爆発に巻き込まれ、倒壊した建造物。



「自分の私見ですが、今回の件の焦点はここにあると思われます」

「ん? これは……」



シチセイが指差したのは幾つかのスクリーンの一つ。

映し出されているのは爆発にでも巻き込まれたのか、派手にひっくり返って瓦礫に埋もれている黒塗りの車。



「現場の周囲一体は数年前から廃れており、滅多な事では人は通らない。しかし管理局のお膝元とも言える場所に位置している為、後ろ暗い人間が根城にするのにも不向きな場所です」

「ふむ。そんな所に乗用車がある事自体が不自然だな。……だが当時、現場には人間がいたという痕跡はなかったはず」

「そうです。故にそこから推測出来る可能性は三つ。一つはこの車の主が何らかの理由でガジェットに襲われていた場合。もう一つは車の主がガジェットを操作していた場合。最後は車がある事自体がまったくの偶然である場合」



指折り数えて可能性を挙げるシチセイに対してシグナムは両手を組んで顔を顰める。



「三つ目はとりあえず考えないとして、だ。一つ目の可能性の場合は車の主が現場付近にいなかった事が気がかりだな。ガジェットに連れ去られた可能性がある。そうでなくても襲われたのならば管理局の庇護を受ける為に現場にいればいいはず。姿を晦ませたのだとすれば車の主も管理局と接触の出来ない立場の人間という事になる」

「ええ、その通りです」



彼女の考察に特に訂正を加える事無く頷く。

彼もほぼ同様の事を考えていたのだ。

しかも彼の場合、襲われた人物にも察しが付いている。



「二つ目の可能性の場合、そもそもの目的がはっきりとしないな。先ほどお前が言った通り、現場には特筆すべきところなど何も無い。そんな所でガジェットを暴れさせる事に意味があるとは思えない。ましてや無作為に自分たちが所有する兵器を破壊し、こちらに情報を渡すような事をするとも思えない。やはりガジェットは何者かと戦闘を行ったと見るべきだな」

「車のナンバーや製造番号はロングアーチの方で抑えていましたが盗難車のようです。事が起こる数日前に届けが出されていた車と一致したと聞いています」

「……手がかりは途絶えたか。やはり『ガジェットと戦闘を行っていた者』を探し出す事が先決だな」

「そう思います(まぁ確実にユーノだから探し出されるとこっちは困るんだが)」



深刻な表情をするシグナムに同調するように眉間に皺を寄せる。

だが彼の内心は彼女の思考とは真逆だった。



ユーノは親しい者たちの全てに内密で、危ない橋を渡っている。

彼女らに今回の件が知れた場合、心配であるが故に彼の行動を『上』に報告するだろう。

ユーノが事情をある程度、説明すれば黙っていてくれるかもしれないがそれでも情報とはどこからか漏れる物。

その結果、彼の行動が制限されるのはこれからの事を考慮すると非常にマズイのだ。



「とはいえここから先はまず情報が入らない事には動けません。ロングアーチに一任しましょう」

「むぅ。止むを得んか」



苦渋を滲ませた表情を浮かべる彼女を少々、強引に丸め込む。

勘の良い彼女が何か自分ですら気付かなかったユーノの残滓に気付くかもしれない事への用心の為だ。



「(この人の勘の鋭さは身を持って知っているからな)」



映像が途切れ、端末の電源を切る。



「オウハ、付き合わせてすまなかったな」

「お気になさらず。納得できるまで自分で調べたいというシグナム二尉のお気持ちはわかりますので」



ずっと座っていたせいで固まってしまった身体を軽く動かすと彼は「それでは」と敬礼してオフィスを出て行った。

残されたシグナムは彼の後ろ姿を眺めながら自身の顎に手を添える。



「案外、面倒見が良いな」



感心しながら出した言葉は彼がこの後、どこに行くかを完全に見切っていた。



「本来ならライトニングは我々が見なければならないというのに。……あいつには世話をかける」



そう言ってシグナムは自分のオフィス端末を立ち上げる。

シチセイとの会話では止むを得ないとは言ったものの、彼女はまだ手がかりを諦めていなかったのだ。



「どんな些細な事でもいい。何か見つけられれば……」



剣を持って敵と対峙する時に見せる鋭利な瞳で画面を睨みながら、シチセイと検証していた情報を先ほどにもまして粒さに確認し始める。

その胸中には言い知れぬ不安が過ぎっていた。



「(この事件には、何か我々にとってとても大事な事が隠れている。そんな気がする……)」



脳裏を過ぎるのは自分たちの出自に関わる『闇の書』の事と友人の身に起こった悲劇。

改竄された記憶によって自分たちは『闇の書の所有者の末路』を忘れていた。

その結果、主を危険に晒し、自分たちを善意から止めようとしていた者たちを傷つけてしまった。



そして数年前、友人であるなのはの身に起こった悲劇。

彼女は致命傷に近い大怪我を負い、一時期は魔法の行使は出来ないとまで言われていた。

長い長いリハビリの末、今は教導官として働けるほどに回復したが、全てが元通りにはなったわけではない。



どちらも誰かが、いや『自分』が気付いていれば止められていたはずだったと彼女は考えていた。



「(もう二度とあんな事は起こさせない……この命を賭けてでも)」



次々と映し出される資料を、シチセイとの検証を踏まえた上で見直していく。

悲壮であるが故に揺るがないその覚悟が、自分の最愛の家族である主を悲しませる事を理解しながら。





機動六課 屋外訓練場



「……大丈夫か?」



地べたに座り込んでぐったりしている四人と一匹に分かり切った事を聞くシチセイ。



「す、すみま……せん。あんまり、大丈夫じゃ……ないです」



息も絶え絶えになりながらどうにか答えるエリオ。



「そうだろうな。(今日はいつにもまして厳しい訓練だったようだし……)」



彼は訓練場の出入り口でシャーリーと話しているなのはを一瞥する。

その様子は真剣で、ここからでも聞こえる言葉の端々から新人たちのデバイスについての話をしている事がわかる。



「(なるほど。記録用のデバイスから実践用への切り替えか。今日の訓練はそれの試験も兼ねていたわけだな)」



さりげなく聴覚を強化し、二人の会話に耳を傾けながら彼は疲れ切っている面々にタオルを渡してやる。



「あ、ありがとうございます」

「うう、腕を上げるのも辛いよぉ……」



それぞれが礼を言ってくるがシチセイは「気にするな」とだけ言うと、胸ポケットに入れておいた自身のデバイスを一瞥し、エリオに声をかけた。



「その様子では今日の『予習』は無理だな。しっかり身体を休めて午後に備えろ、モンディアル三士」

「あ……いいえ! 少し休めば大丈夫です!!」



一瞬、顔を歪めたが気丈に疲れを隠して声を上げるエリオ。

シチセイはそんな必死な彼の様子に無表情のまま首を横に振った。



「無理はするな。肝心な時に疲れて動けません、などと言うのは笑えないぞ?」

「あ……はい。すみません」



俯いてしまった彼の肩を軽く叩きながら「休む事も大切だ」と念押しする。

沈みながら返事をするエリオに心持ち満足げに頷き、彼は肩を叩いていた手を離した。

二人にしか通じない会話に、隣に座り込んでいたキャロが首を傾げる。

その動きに合わせて彼女の頭に乗っている小型竜『フリード』も主と同じ動作をした。



「エリオ君。何のお話をしてるの?」

「えっ? ああ、えっとね……」



気まずげに視線を中空とキャロ、シチセイへと忙しなく動かしながら言葉を捜すエリオ。

言い辛そうにしているとティアナ、スバルも口を挟んできた。



「なになに? エリオ、オウハさんと何か約束してたの?」

「そう言えば時々、エリオって訓練の後に早上がりするわよね?」



多少、体力を取り戻したらしくエリオを囲むように近づいてくる二人。

まだ足は震え、呼吸が荒いがそれでも大した回復力だ。



「ああ。魔法ではなく体術の手ほどきを少しな。訓練というほどでもないが。なぁ、モンディアル三士」

「は、はい。そうです」



黙っていた事が後ろめたいのか身体を縮込ませながら小さい声で答える。



「体術? もしかしてシューティングアーツみたいな物ですか!?」



シチセイの鼻先に顔をずいっと寄せて訊ねるスバル。

その勢いに思わず半歩、後ろに引きながら彼は首を横に振った。



「いや俺の術はあそこまで確立した物じゃない。恐らく六課の人間は誰も知らないだろうし、何よりも我流が多分に入っている。モンディアル三士に教えているのは槍捌きをする際に役に立つだろう体の運びと槍のような長い武器の扱いについてのレクチャーだけだ。体術その物を教えているわけじゃない。わざわざ言うような事でもないから黙っていたんだが……」



そこまで言った所でシチセイは口を噤んだ。

スバルの瞳に興味津々といった輝きが宿っているからだ。

彼女ほどでもないがキャロ、ティアナも似たり寄ったりの表情をしている。



「どういった物なんですか?」



わくわくしているのだろう心情をまったく隠さずに聞いてくるスバルにどう答えたものかと考え込むシチセイ。

別に教える事に躊躇いがあるわけでもないのだが……自分の使う体術、いや『拳法』が癖が強い事を自覚しているだけに成長期の彼女らに教えるのは憚られた。

まだ基礎的で大雑把な戦闘での動きに慣れる段階である彼女らに妙な癖を付けたくなかったのだ。



エリオに教えているのは自分の使う武術独特の技とは無関係の部分だったので問題はないと判断したに過ぎない。



「ん?」



シャーリーとの話が終わったのかこちらに歩いてくるなのはの姿が視界に入る。



「高町教導官。お話はお済みですか?」



彼はこれ幸いにとそちらに話を振って逃げる事にした。

スバルから視線を外す瞬間、彼女がむっと不満そうな顔をしたのが見えたが無視している。



「ええ、こちらは終わりました。何か盛り上がっていたみたいですけど……」

「お気になさらず。大した事ではありませんので」



彼の後ろで不貞腐れているスバルの姿に苦笑するなのは。



「皆、ご苦労様。午前の訓練はこれでおしまい。しっかりお昼を食べて午後に備えてね」

「「「「はい!」」」」



つい先ほどまで疲労困憊といった状態だったにも関わらずその返事には一点の淀みもない。



「(これが若さか……) むっ?」



心中で重いんだが軽いんだかわからない事を考えていると右腕をがっしり捕まれた。

そちらに視線をやればニンマリと笑っているスバルがいる。

どうやらさっきの話題について追及するつもりのようだ。

だがシチセイにはまだこの場を打開する手札が残っていた。



「高町教導官。先日の模擬戦の件なのですが……」

「えっ? あ、あの時の……」



全員の脳裏に先日、行われたなのはとシチセイの戦いが浮かぶ。

突然の話題に新人たちはおろか、なのはやシャーリーも困惑しているがシチセイは気にせず続ける。



「ええ。結果報告書の提出に辺り、お相手であった教導官に内容の確認をお願いしたいのですが……」

「あ、はい。わかりました。今、すぐにと言う事でいいんですか?」



この会話のシチセイの意図を読み取ったなのはは微笑みながら合わせる。

その対応にほっとしながらシチセイは言葉を続ける。



「教導官がよろしければ……お願いします」

「わかりました。それじゃ行きましょう」

「ありがとうございます。……っとそういうわけなのでナカジマ二士、先ほどの話はまた次の機会にしてくれ」

「あ、あう……。わかりました」



尊敬する上司を交えた見事な話術により、スバルはシチセイへの追及を諦めざるを得なくなった。

掴んでいた右腕を離し、去っていく二人の後ろ姿を見送る。

その様子を少し離れて見ていたティアナ、エリオ、キャロはシチセイの見事な対応に内心で感嘆の声を上げていた。



「うう〜〜。なんか上手く丸め込まれた〜〜〜」



捨てられた子犬のような情けない声を上げるスバルの頭をティアナが平手で軽く叩く。



「ほら、物欲しそうな顔してないで。シャワー浴びに行くわよ!」

「う〜〜、次は絶対に教えてもらう〜〜〜」

「まったく……ちゃんとしなさいよ! (それにしてもオウハさん。誰かに教える事に慣れている感じだったわね。機会を見て魔法について質問してみようかしら?)」



ズルズルとスバルを引きずりながら、模擬戦で見せた複数のシールド展開やチェーンバインドを操ったその腕前を思い出すティアナ。



「あはは……僕たちも行こうか、キャロ(もっと体力付けないと。せっかくシチセイさんが教えてくれてるんだ。絶対に無駄になんてしない!)」

「うん(エリオ君、頑張ってるんだ……私ももっと頑張ろう)」



ある意味で恒例のようになりつつある二人のやり取りを見て笑いながら続く二人。

そんなこんなで機動六課は今日も平和だった。





この翌日。

新人たちが新しいデバイスを受領したその瞬間を狙ったかのように六課内に平穏を切り裂くアラートが鳴り響く事になる。



「一級警戒態勢……いよいよか(新人たちの仕上がりが心配だが……あとは実戦を踏まえて慣れていくしかないか)」

「なのは隊長、フェイト隊長は現場の指揮。シチセイ戦闘部隊補佐には任意の判断でフォワード隊のフォローをお願いします」

「了解」



短く、端的な返答を返し準備が進められているだろうヘリポートへと駆けるシチセイ。

その右手には待機状態のデバイスが握り締められている。



「お前を使っての実戦はこれが始めただな。……改めて言う事でもないがよろしく頼む、ソウテン」



ボソリと呟かれた言葉に答えるように一瞬だけ輝くカード状態のデバイス。

それにほんの少しだけ微笑むと彼は、ヘリポートへ向かう事に意識を集中させた。







物語が動き出した。

欲望から始まる戦いは加速し、少女たちの戦いは走り出す。

止まらない思いはやがてぶつかり合い、多くの血が流れるだろう。



そして物語の裏側にいる少年もまたその渦中へと飛び込む事になる。

人知れず、ひっそりと。





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